SSブログ

香港の「逃亡犯条例」改正でデモ [世界の動き]

香港の「逃亡犯条例」改正でデモ

 中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案を巡る大規模な抗議デモが香港で激しさを増している。香港政府は改正案を完全に撤回し、事態の収拾を図るべきだ。改正案が可決されると、中国に批判的な香港の活動家が本土に送られて、不当な扱いを受ける恐れがある。香港の人々が反発する理由はある。

 香港の行政長官は、各業界団体代表ら親中派が多数を占める「選挙委員会」による投票で選ばれ、中国政府が任命権を持つ。民意をきちんと代表する存在ではない。民意を反映させる仕組みが整っていない中で、政策を改めさせる手段は、おそらくデモぐらいしかないのだろう。今起きているのは、やむにやまれぬ行動であろうと推測する。

 ただ、香港のデモのなかに大量の星条旗があった。星条旗を掲げてデモをする多くの人がいたということだろう。

 NED(全米民主主義基金)からの支援を受けている団体、個人がいる場合、その団体とその主張は、一切、信用できないし、するべきではない。NEDは「他国の民主化を支援する」名目で、これまで不当な干渉や政権転覆、クーデターを実行をしてきた前歴がある。すぐさま手を切るべきだ。

 米政府は、サンチャゴ・クーバに裁判なしで拘束し収容する刑務所を持ち、多くの収容者がいる。また英警察は、19年4月11日、ウィキリースのジュリアン・アサンジを「出頭命令に応じなかった」という理由だけで逮捕し、ロンドン郊外の刑務所に裁判なしで拘束している。米政府、英政府は、今回の問題で中国・香港政府を批判しているが、その資格はまったくない。

 香港政府に求められるのは、大規模なデモを繰り広げる声に真摯に耳を傾け、民意に従うことだ。対話なしには何も解決しない。



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

映画『主戦場』を観る [映画・演劇の感想]

 映画『主戦場』を観る

[20190823]190528 映画『主戦場』パンフ 026.jpg


 観客が圧倒される映画だ。慰安婦問題の論争の渦中へ、そんまま突っ込む。
 櫻井よしこ(ジャーナリスト)、ケント・ギルバート(弁護士、タレント)、吉見義明(歴史学者)、渡辺美奈(女たちの戦争と平和資料館)、藤岡信勝(新しい歴史教科書をつくる会)などなど、論争の中心人物たちが続々と登場し、自分の考えを主張する。息をつかせない展開に観客は圧倒される。これでもかこれでもか、というくらいいろんな人物が登場し主張が重ねられる。そんな映像が2時間、最後まで続く。観客は初め映像に圧倒されるに違いない、しかし、いずれ慰安婦問題を自分はどのようにとらえるべきか、どのように判断すべきか、迫られていることを自覚するに至るだろう。

 監督はミキ・デザキという日系米人だそうだ。論争者にインタビューする。インタビューするためには、その前後で、主張の意味と批判者の論点と対比し、きちんと理解し整理しなければならず、おそらく毎回が大変な作業であったに違いない。そのような作業を経て、ミキ・デザキは最終的には自分の判断に到達し、自分なりの考えで慰安婦問題の全体像を、映画としてまとめるに至っているようなのである。

 そのような作業が必要なのは観客も同じであって、自分のなかで論点を対比し、きちんと理解し整理しなければならない。映画を観た後、あの主張は根拠があるのだろうか? 果たして本当だろうか? 自分で調べて納得することが求められている。おそらく監督がやったように。

 これまで慰安婦問題を扱った映画の多くは、被害者に寄り添い、被害事実やその後たどった生活、歴史的背景などを描いた。それぞれが貴重な映画である。ただこの映画はそれらとはずいぶんと違う。描くのは論争であって、慰安婦の被害事実について、あるいは歴史的背景について、ではない。慰安婦問題とは何であるかまったく知らない人にとっては、かなり心が「揺さぶられる」ことになるだろう。おそらくわかりにくいだろうし、画面に登場する主張―反論―再反論・・・についていくことができなければ不満も残るかもしれない。

 論争の綿密な検討から慰安婦問題の真実へ、あるいは解決の方向へと接近しようとミキ・デザキが試みたと同じように、観客は自身の責任でその作業を重ねることが求められている。何でもかでもすべて、与えられていると思うのは、間違いだ。

 ほとんどの日本人なら避けるであろう論争の真っ只なかにミキ・デザキは飛び込んで、主張内容を検討し、議論によって問題の本当の意味、評価へとたどり着こうとする姿勢を、この映画で見せている。監督の姿勢に感心する。とともにすごく新鮮に映る、生命力にあふれている感じさえする。そうして映画は、慰安婦問題の何が問題なのか、その全体像を描く。おそらくほとんどの日本人は、ミキ・デザキが描き出した慰安婦問題の全体像、その深刻さを認識していなかったのではないかと思う。

[20190823]190528 映画『主戦場』パンフ 010.jpg

 日系米人だそうだが、その考え方は「現代日本人」とはまったく異なる。目の前での対立や論争をことさら回避し、自身の主張を述べることはせず、ひたすら「気くばり」と「忖度」という処世術、あるいは「空気を読むという強制力」に支配されて対応するのが、現代日本人と日本社会の特徴だ。自分の主張を人前で述べない現代日本人は、いずれそのうち主張そのものを持たなくなる。考えの違う人と議論し、自身の考えを深めることなど、到底しないし、できなくなりつつある。
 
 おそらく、この映画はミキ・デザキによる現代日本人、日本社会への批判も含まれている。日本の知識人の多くは、例えば慰安婦問題などの激烈な論争に対しては、距離を置いて我関与せず、どっちもどっちという第三者、あるいは超越した立場を装って逃げてしまう。そのような態度への批判も含まれているのだろう。

 そもそも『主戦場』という題名に、監督の批判がうかがえる。慰安婦問題できちんと論争し決着をつけることが、現代日本人にとって今、『主戦場』だぞ! 避けても放置しても解決しないぞ! この問題を解決しなければ日本に未来はないぞ! 私には、ミキ・デザキがこのように主張していると聞こえる。
 
 この映画を観て、自分がどのように判断するか、関与するかを、考えたらどうだろうか?





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

米国は中国に勝てるか?  [世界の動き]

米国は中国に勝てるか? 

1)中国のインターネット市場

 中国のインターネット利用者数は8億人を超え、米国は3億人弱である。
 賢明にも米フェイスブックを締め出した中国市場は、スマホ普及という基盤が整備され、しかも5Gという大容量の通信がすでに一部実用化し、質的にさらに高度な情報、サービスが可能となりつつある状況下にある。この市場をめがけて、中国地元スタートアップ企業がひしめき、中国資本がこぞって投資している。いずれ、中国インターネット市場に、グーグルやフェイスブックに相当する大手が出現し、さらに世界市場に進出するだろう。

 グーグルやフェイスブック、ツゥィッターは、スノーデンが指摘するように、あらゆるメールやインターネット上の情報を米政府(NSA、CIA)に提供する関係にある。米支配層・金融資本と手を切ったインターネット上の企業の出現が新たな地平を開くだろう。
 
2)ハイテク分野で、米中が激しくぶつかり合っている

 人口知能(AI)開発は、技術面からみて米国がまだ中国の先を行っている。ただ、中国市場はAI開発に必要なデータ量を圧倒的に多く入手でき、中国のスタートアップ企業間でデータ共有の動きもあり、AI領域では中国は極めて早い速度で進化している。

 そもそも、インターネット利用者数が8億人を超える中国市場では、莫大なデータを蓄積できるという強みがある。最終的にデータ量が、AI開発の帰趨を決定する。

 5Gの技術開発では、すでに中国企業が世界に先行し、多くの特許を抱えるに至っている。

 華為ZTEは、19年8月世界に先駆けて中国市場で5Gスマホの販売を開始した。
 5G基地局の通信設備では、華為製とZTE製は特許においても、価格においても、例えば競合企業であるノキア、エリクソンを圧倒している。

 米政府が華為に経済制裁しているのは、次世代通信技術で主導権を握られると、これまでの米国政府と米企業によるインターネット支配が崩れかねないからだ。トランプ政権は「国家安全保障上の脅威」という言葉で自分に都合よく表現しているが、NSAやCIAが、インターネット上の情報をグーグルやフェイスブックに提供させるという出来上がった支配が崩れかねない、という意味にすぎない。そのようなシステムが崩壊しても何も問題はない。アメリカの横暴な世界支配が崩れるのは、世界中の圧倒的大多数の人々にとって、とても良いことだ。ほかの諸国や国民にとっては、逆に「個人の安全保障上の脅威」が消滅することであり、歓迎すべきことだ。アメリカの軍産複合体やネオコンが流すフェイクニュースが、フェイクニュースだときっちりと暴露され、駆逐されることになるだろう。

 それだけではない。米政府・米支配層は、5G時代を迎えビッグデータをやり取りするイノベーションや新ビジネス創出で、中国企業に先行されてしまうという危機感を持っている。おそらく米政府が政治的に介入しなければ、近いうちに中国企業に先行されるだろう。介入しても押しとどめることができるとは限らない。

通信インフラ
 中国はすでに世界に海底ケーブルを張り巡らしつつある。2018年にブラジル―カメルーン間6,000㎞に海底ケーブルを敷いた。「一帯一路構想」参加国に大容量通信データ輸送を担うインフラを提供し、高速大量通信の社会基盤を形成しつつある。通信インフラは、ハイテク産業の孵化器ともいえる。

 今一つの通信インフラは、衛星による位置情報サービスだ。米国はGPS(全地球測位システム)で位置情報サービス開発で先行してきたが、中国はそのお株を奪いつつある。

 18年に衛星稼働数で、通信衛星・中国北斗は米GPSを抜いた。衛星分野での米中逆転が、よりはっきりしてきた。北斗は、世界の3分の2以上の国の上空で、最も多い衛星となった。中国は、94年~20年まで累計106億ドル投資してきた。北斗を今後さらに、10基程度打ち上げ、一気に米国を突き放す。
 (2018年の衛星数:中国北斗35基、米GPS:31基、ロシア:24基、EU:22基)

 中国の位置情報サービス、千尋位置網絡は、衛星・北斗と2千以上の地上基準局のデータを併用し、誤差が数㎝の超高精度サービスをすでに開発している。自動車の無人運転サービス拡大の起爆剤になるだろう。
 世界の主要半導体メーカーは、位置情報機能をもたせる場合、単一の半導体製品に衛星・北斗に対応する設計が求められている。
 米国が衛星分野で中国に圧力を強める可能性もあるが、すでに位置情報ビジネスの世界では「中国抜き」はありえなくなっており、圧力をかければ位置情報ビジネスは中国の独占化を招きかねなくなっている。
 
3)米中覇権争いの焦点、華為 

 米国の貿易赤字が問題だとして、トランプ政権は中国企業を標的にした関税、保護主義で横暴に振る舞っているが、実際のところ目的は、貿易赤字解消ではなく、中国のハイテク技術の抑え込みにある。中国のハイテク技術が米国を凌駕するのを押しとどめ、このまま米国支配が続くことを狙っている。果たして米政府が狙い通り、押しとどめることができるか? ハイテク技術での「抑え込み」を、米国部品や技術、米国市場を「人質」にして、実行しようとするのだから、米企業や米市場も傷つきかねない。

 実際狙われているのは、中国のハイテク企業、5Gで先行する華為である。
 「安全保障上の理由」から、5G市場への華為参入を禁じた。米政府の横暴に豪と日本両政府が従い5G基地局から華為を締め出すことにした。英、カナダ、ニュージーランドなども米国支配に従うfファイブアイズ「5」+日本「1」だ。トランプ政権は「安全保障」を持ち出せば、どのようなことにでも適用し実行できる、と考えている。

 米商務省は8月19日、華為への禁輸措置を続けると決定した。

 しかし、5Gのスマホや通信設備では、技術的には、すでに華為やZTEが先んじている。8月には、華為、ZTEは5Gスマホを中国で発売開始した。5Gの通信設備は、エリクソンやノキアも生産しているが、華為やZTE製が3割程度安いという。とても競争にはならない。

 華為にとっての問題は下記の通りだ。

スマホのOS 「アンドロイド」

 華為は、スマホに米グーグルの基本ソフト「アンドロイド」と、地図やメールなどのグーグルの関連アプリを採用している。「アンドロイド」自体は無償公開されていて禁輸の対象外だが、OSの更新や関連アプリは対象となっており、実質使えなくなるのではという懸念が広がり、19年1~6月期、華為のスマホ売り上げは、中国外では落ちた。ただ、中国人の「民族意識」を刺戟し中国国内での売り上げは増えた。

 現時点では、OSの更新は可能だが、禁輸措置が厳格に実施されることになれば、アンドロイド関連サービスが制限され、華為のスマホが利用できなくなることも予想される。

 8月9日、華為は、「アンドロイド」に代わる自前のOS「鴻蒙(ホンモン)」を発表した。最悪、OSを止められた時の「対応策」は、とりあえず準備したということだ。新OS上で動くアプリなども早急にそろえるだろう。

 しかし、どれだけ自前でOSを開発しても、世界で7割のシェアを握るアンドロイドや関連サービスに匹敵する水準をすぐ実現するのは難しい。アンドロイドに慣れた海外の利用者の華為離れは避けられないだろう。したがって、OSが禁輸対象となった場合、短期的には(おそらく数年にわたって)、華為、ZTEなどに大きな影響を与えるだろう。
 その後、スマホのOSは「アップル」と「アンドロイド」と、例えば「鴻蒙」に三分される世界が広がり、最終的にはアンドロイドと「鴻蒙」はどちらかに収束することになろう。 「鴻蒙」に収束するようなことになればグーグルはその地位を失う。

スマホ用半導体
 禁輸措置発動後も、米マイクロン・テクノロジーズや米インテルは、華為とZTEスマホに使うメイン半導体の供給を続けている。米国外で生産するなど禁輸措置の対象にならないように工夫し対応しているとみられる。米商務省が華為の子会社46社を対象に加える方針を示したが、禁輸措置が厳格に実施されることになれば、これまでの部品調達が難しくなる恐れがある。

 華為は子会社・海思半導体で自前の半導体開発を進めている。ZTEは自前の半導体開発はしておらず、米マイクロン・テクノロジーズから供給を受けている。トランプの保護主義に対抗し、中国政府は急遽、半導体を含む部品の自前で調達する態勢を確立するための支援策を採ろうとしている。仮に自前で半導体を調達できるようになれば、米マイクロン・テクノロジーズや米インテルは巨大な市場、顧客を失うことになる。

 スマホ用半導体設計において9割以上のシェアを握る英アーム・ホールディングス社抜きに、容易には設計はできないと言われている。ただアーム・ホールディングスも今現在、華為との「大半の取引が継続している」。中国が自前で半導体を設計することになれば、アーム社も巨大な収入が消えるので「継続した取引」を望んではいるだろう。

 スマホ用半導体は、時間があれば中国製への代替えは進むとみられるが、問題はどれだけ時間がかかるかだ。

5) 米国は中国に勝てるか?

 米国と中国の覇権争いは、すぐには決着はつかない、長期化するだろう。
 米中いずれもが、傷を負うだろう。世界経済が後退する要因にもなるし、すでに一部影響を及ぼしている。

 ただ、注目すべき点は、中国が提唱する「一帯一路構想」に、世界の全ての地域から、152の国がすでに参加しているという現実だ。中国政府は、「一帯一路構想」の基本原則として「平和と協力、開放性と包括性、受容と理解、そして相互利益」を提起している。大多数の世界の国が、自身の覇権を維持するため米政府とIMFが駆使する、「いじめ」、金融破壊、侵略と占領よりも、「一帯一路構想」を良い選択、あるいはよりマシな選択肢として見ているということだ。

 一方、米政府は「米国第一主義」を掲げ、自国と米資本の利益のためには、ほかの国々や同盟国の立場や利益さえ踏みにじるという態度に出ている。すでに現在の米国には以前のような「余裕」がない。だからこのような態度に出るのだ。

 そもそもオバマのTPPは、公然とは語られなかったが、実際のところ中国封じ込めの手段でもあったのに、トランプは選挙のため、すなわち自身の支持基盤――米中西部の白人層――の票のため、これを破棄した(新自由主義のTPPを導入すれば、トランプの支持基盤である白人中間層がいっそう没落し、格差が拡大する、票田を守るためTPPを破棄した。TPP破棄はトランプの行った数少ない「いいこと」だ。)。

 あるいは、中国、ロシア、英、仏、独とともに2015年まとめ上げた「イラン核合意」を、トランプは一方的に破棄した。シリア戦争で敗れたものの中東で戦争状態を継続したい軍産複合体・ネオコンが主導する米戦略のために、イラン石油輸出を止めシェールオイル輸出拡大のために、破棄したのだ。イラン包囲「有志連合」は、国連安全保障理事会を無視する「有志」の集まりにすぎない。米に従う有志は、EUから離れ孤立する英国と米国の顔色をうかがう安倍の日本だけだ。

 同盟国や周辺の国々は、いちいちこういうことに従っていられない。

 いまは、米国の力は落ちているし、中国、新興国の力は増している。そのような条件のなかで米国が中国と覇権争いを始めたにもかかわらず、同盟国をまとめないで、米国だけの目先の利益実現のため、強引に、より横暴に振る舞うのであれば、同盟国も含め多くの国が、米国から離反するのは当たり前だろう。 

 米国が中国を「封じ込める」には、少なくとも「米国第一主義」を捨てることが条件になるだろう。米一国で中国を封じ込めるなどできない。これが最低限の条件である。だが、そのような判断ができる米政府、支配層ではすでになくなっているし、同盟国を再組織する力量もなくなっている。目先の利害に囚われ行き当たりばったりの行動をとっているのが実態だ。

 もちろん、この条件を満たしたからと言って、中国封じ込めが成功するとは限らない。(決して、封じ込めるべきだと言っているわけではない。米国支配が崩れるのはいいことだ。) すでに米国による世界支配は終わりを告げつつあるということだ。

 トランプ政権には、同盟国との連携やグローバルな組織・制度を活用した「大義」が必要条件だが、そのような方向には逆行している。目先の利害、2020年の大統領選への影響という、極めて自分の都合、目先の取引に終始している。

 米中の覇権争いは、2020年大統領選以後も続く長期戦の様相を呈しており、米国は再び多国間の協定や同盟国との関係緊密化に戦略のカジを切る必要があるが、そのような戦略転換の姿勢はトランプ政権にはないし、ネオコンのボルトン安全保障補佐官やポンぺオ国務長官にもない。 

 このような状況であれば、米中覇権争いは、米国の敗退がより早くなるのではないか?
 各国、あるいは米同盟国が、どの程度離反していくかが、米国の敗退の一つの目安になるだろう。




 
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

最近のフィリピン政治情勢について [フィリピンの政治経済状況]

最近のフィリピン政治情勢について


1) ドゥテルテは「したたか」に、権力を掌握した 

 大統領に就任した16年当時、ドゥテルテの政治的基盤はきわめて脆弱だった。彼は力強い政治運動、政治グループの支持で当選したわけではないし、旧来の支配層(「上流階級・上流家族」)出身でもない。メディア向けの巧みなパフォーマンスで人気投票に近い選挙に持ち込み、勝利者となった。政権発足後、既存のフィリピン資本家、旧来の支配層、政府官僚らとどのように折り合いをつけるか、注目したが、この政権掌握過程が極めて「したたか」だったのだ。

 旧来の政治家や支配グループであるマルコス家やアロヨ元大統領グループを、利権を通じ政権に取り込んだ。一方に利権を示し、他方に反対する者には警察による強圧で対応し、最終的に旧来の政治家や利権グループはドゥテルテ支持者となった。議会は旧来の支配者、地方の有力者からなっており、議会におけるドゥテルテ支持が多数派になっている。 

 政権発足前からドゥテルテは、NPA(新人民軍)やMILF(モロイスラム解放戦線)などとの内戦終結・和平協定締結を公約に掲げ、和平を望む国民や左派の一部、労働組合員からも支持され当選した。MILFとは19年2月、イスラム自治政府発足までこぎつけている。

 政権発足時には国民民主戦線(NDF)など左派グループから4人の閣僚を迎え、融和的な姿勢を見せたが、一年後の17年9月以降、四閣僚を徐々に追い出した。ロペス環境天然資源相(環境問題活動家)、タギワロ社会福祉開発相(元フィリピン大学教授、女性解放研究者)、マリアーノ農地改革相(KMP出身)、リサ・マサ国家人貧困撲滅委員会共同代表(ガブリエラ名誉議長)。

 同時にNPAとの和平交渉もドゥテルテ側から頓挫させ、17年12月にはNPAを「テロ組織」に認定し、「敵対」する姿勢へと転換した。18年、労働雇用省のマグルンソッド副長官(KMU元議長)など政権内の民主的な官僚が追い出される過程はさらに加速し、政府内での軍や警察の影響力は大きくなっている。

 選挙の際、和平を掲げ左派や多くの市民から支持を集めたが、権力を掌握して来た今、他の支持基盤を持ったし国民の支持率も高いので、左派は不要になり弾圧に転じたというわけだ。

2) 麻薬摘発から、労働組合、農民運動リーダー殺害へシフト

 政権発足後にはじまった麻薬摘発による「政治的殺害」は、ドゥテルテの政敵をも殺害し、強圧政治によって政権の権力基盤を「安定」させた。前アキノ政権では、「冷遇」されていた国軍や警察は、権力に役立つ姿をアピールし、政権内の地位を確保し強化してきた。

 最近では軍と警察は、労働組合や農民のリーダーらの殺害へシフトしている。19年3月には、ヴィサヤ地方東ネグロス州の3つの町で14人の農民がフィリピン国軍と警察によって殺害。18年秋には警察が教員組合の組合員リストを入手したことが暴露され、労働組合員の掃討作戦の準備ではないかと、批判された。軍と警察は、麻薬摘発による殺害から、NPAや労働組合リーダーの掃討作戦へと大きく踏み出しており、そのことで政権内で存在意義を誇示している。

 人民運動の核であるフィリピン共産党勢力に対する軍・警察による殺害・弾圧を、フィリピン資本家層、旧来の支配層は黙認している。

3) ドゥテルテ政権は誰の政権か? 

 フィリピンはこの10年、年率7%前後の高い経済成長を遂げ、フィリピン資本は膨大な資本蓄積をしており、資本家の層も「厚く」なっている。

 旧来のフィリピン資本と言えば、米国政府や欧米日の外国資本にすり寄って利益を得る買弁資本が典型だったが、蓄積に伴いより自立・独立志向を強めている。アセアン経済共同体(AEC)を発足させ、大国である米国、中国、日本などとは、一国ではなくアセアンとして交渉する方向へと転換した。最近の米中経済摩擦においても、米国の保護主義を批判し、順調な経済発展を破壊しかねないこの地域での紛争や対立には、強い拒否反応を示している。アキノ前政権までは、アメリカの傀儡政権という性格を強く残していたが、ドゥテルテ政権はより自立的な米中等距離外交への転換を、鮮やかに果たした。これまでの政権と異なり、アセアンの一国として、さらには中国との関係改善のうちに「民族的な」経済発展を構想している

 ドゥテルテ政権は誰の政権か? と問われれば、フィリピン資本家層の政権と答えなければならない。

 ドゥテルテはこれまで優遇してきた外国資本の免税廃止や、法人税の減税を打ち出しており、その点でもフィリピン資本家層の政府であるといえる。

 中国との関係を正常化し中国からの投資を歓迎し、「一帯一路構想」への協力を進めるドゥテルテだが、日米は南沙諸島(スプラトリー)領有問題を煽り、米比日共同軍事演習を実施し、他方でフィリピン政府が必要としているインフラ投資に日本が融資する姿勢を見せ、フィリピンをインドを含む中国包囲網の一員に引き込もうとしている。
 ドゥテルテは、両天秤にかけるような態度で「米中等距離外交」を展開しているように見える。

 フィリピン資本家層は、最終的には大統領が変わっても資本家層の支配が揺るがない「民主的代議制」を志向しているが、それをドゥテルテによる強権政治によって実現するという矛盾した過程をたどっている。

4) 人々の側は? 

 人民側の運動は、大衆的な支持や運動を組織することが十分にできていない。経済発展のなかで生まれつつある都市の「中流市民」は、政治的代表を持つに至っていない。このような現象は、新自由主義のもとで人々が階層化され、余裕をなくし孤立する個人が増え、ネットでのつながりは増えながらリアルな人々の関係・連携が希薄になる現代の特徴を示している。世界的に広がっている共通の現象でもある。

 7月の総選挙・上院選挙にみられる通り、地方の有力者や旧来の支配者が当選している。内戦や軍・警察による政治的殺害、強権政治は、人々を孤立させ、政治と政治運動から遠ざけ、その分だけドゥテルテのパフォーマンス政治、劇場型政治へ、「民衆の期待」が吸い取られている、これらの政治状況をなかなか突破できない現状があるように見える。




nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

人喰いバナナ農園―-スミフル社 [フィリピン労働運動]

人喰いバナナ農園―-スミフル社
スミフル社争議、いまだ解決せず!

190807 スミフル・バナナ園07.jpg
<フィリピン、ミンダナオ、スミフル社バナナ園>

 フィリピン・ミンダナオのコンポステラ渓谷にあるスミフル社が経営するバナナ農園・梱包工場で、18年10月、正規雇用化や団体交渉を求めてストライキに参加した労働組合員749名が解雇されました。

 解雇された労働者のうち300名がマニラに行き、大統領府、労働雇用省、国家労働関係委員会に訴えました。日本でも、スミフル労働者を支援する団体が、今年1月22日にはスミフル社の親会社である住友商事へ抗議行動を行いました。また6月には、スミフル労働者が来日し、749名の
不当解雇と、フィリピン最高裁が復職を命令したのに従わないスミフル社、親会社の住友商事を告発しました。

 抗議行動もあってか、6月18日に、住友商事は、スミフル社の株式を合弁相手にすべて売却する、スミフル社は子会社ではなくなると発表しました。

 フィリピン労働雇用省は、「749名の解雇は不当解雇である、スミフル社による控訴は認めない」とする最終判断を19年5月25日にくだし、スミフル社と解雇された労働者に通達しました。

 しかし、スミフル社は通達後も、解雇した労働者を復職させませんでした。労働雇用省はさらに7月22日付で執行令状に基づく行政指導を行い、組合員の復職(10日以内の復職)を命じました。

 ところが、スミフル社はその行政指導さえも拒み、労働雇用省に「行政指導」の破棄を求める要請書を7月31日付で提出していることが判明(8月6日判明)しました。

 スミフル社はそもそも認められない控訴を根拠に、行政指導の執行拒否と行政指導そのものの破棄を求めています。

 8月6日、500名の解雇された組合員は、国家労働関係委員会の担当者とともにスミフル社復職の意志を伝え出勤しましたが、スミフル社は復職も出勤も認めませんでした。それどころか、警察や警備員を配置し出勤者への監視行動を続ける始末です。

 現在は、スミフル社が7月31日に提出した「労働雇用省による行政指導破棄の要請書」に対する労働雇用省の返答を待っている状況です。

 しかし、スミフル社の要請書の主張は、すでに労働雇用省が再三の検討を行い、不当解雇であると結論を下したものであり、ゆるぎないものです。スミフル社の対応は、不必要に争議を引き延ばし、経済的に優位の立場にある会社側に事態が有利に働くことを期待しているものに他なりません。

 そもそもスミフル社と組合員らが長期にわたる争議に至った背景には、スミフル社がフィリピンの最高裁判決を無視し、組合員の待遇改善と労働組合との団体交渉に応じなかったことに起因しています。

 私たちは、スミフル労働郷労働組合の闘いを支持します。スミフル社がすみやかに行政指導に従い、組合員の復職を実現することを強く求めます。

190806 スミフル事務所前に詰めかけた労働組合員.png
<8月6日、最高裁の復職命令を受け、スミフル社に出勤した500名の解雇された労働者>
 ※
スミフル社争議の経過
2008年:スミフル社の前身Fresh Banana Agricultural Corpration(以下:FBAC)における労働慣習が「偽装請負」に当たるとし、労働者らがFBAC社の「請負業者」ではなく、直接雇用と団体交渉権を求めて、組合設立手続きを行うが、会社側は組合設立を拒否した。労働雇用省は組合員らの主張を認めて、組合を正規の組合と認めるが、FBAC社を吸収合併した新法人スミフル・フィリピン社はこれに異議申し立てを行う。
2010年:労働雇用省の仲裁・調停人は組合員らの主張を認め、会社による異議申し立てを棄却した。
2012年:控訴審は組合員の主張を及び労働雇用省の判断を支持し、会社側による控訴を棄却。
2017年6月7日:フィリピン最高裁は控訴審を支持し、会社側による控訴棄却、組合員の再雇用化を義務付ける。
2018年10月:最高裁判決後も一向に組合員らの正規雇用化を認めず、団体交渉にも応じないため、労働組合はストライキを決行。
 会社側が雇った暴力団・チンピラによるスト破り、暴行。会社側はストライキへの参加を理由に組合員ら749名を一斉解雇。
18年11月:スミフル労働組合事務所が何者かに放火される。
2019年1月22日:スミフル親会社である新宿・住友フード会社(Sumitomo Food Corporation)の前で抗議行動。
19年1月30日:労働雇用省の仲裁・調停人が、一斉解雇を不当解雇であるとする報告書を作成
19年3月25日:労働雇用省 国家労働関係委員会は、委員会決議として、1月30日の仲裁・調停人による調査を追認した。
19年5月25日:国家労働関係委員会は、3月25日日付の委員会決議に対する申立てを検討した結果、「組合員らの解雇が不当であったこと、これを控訴不能な最終決定」とする。
19年6月:スミフル労働者2名が来日し、日本でスミフル労働者支援キャンペーン行動を実施。
19年6月18日:住友商事は子会社「スミフル・シンガポール」の保有する株式49%全てを合弁相手に売却すると発表。9月末までの売却完了予定。
19年7月22日:労働雇用省は5月25日判断を受けてもなお当該組合員の復職していないことを受けて再雇用を命じる行政命令を発令。
19年7月31日:スミフル社は本来認められないはずだが、控訴中であると主張し、行政命令に従うことを拒否。
19年8月6日:不当解雇された約600名のが復職を求めて出勤するも、スミフル社は出勤を認めず、警察を含む人員を配置し監視行動を実施。
 組合代表者との会合で、スミフル社が7月31日日付で労働雇用省に要請書を送付していることを組合に開示し、「要請書に対する労働雇用省判断が出るまでの最大15日間のあいだは組合員の復職を認めない、ただし賃金相当の支払いは保障する」と発言。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

スミフル労働組合NAMASUFAの声明 [フィリピン労働運動]

スミフル労働組合NAMASUFAの声明
NAMASUFA-NAFLU-KMU
2019年8月5日
190807 スミフル・バナナ園.jpg
<スミフル・バナナ園>

スミフル闘争の最近の進展について
スミフル労働者は政府に復職命令を実施するよう要請する

 2019年7月23日、国家労働関係委員会(NLRC)は、スミフル労働組合(以下:NAMASUFA)の解雇されたすべてのストライキ労働者に対する「復職命令の執行令状」を発行しました。令状は、すべてのストライキ労働者に、ミンダナオ・コンポステラ渓谷にあるスミフル・フィリピン社が責任をもって、労働者に以前の仕事を割り当てるよう指示しています。

 2018年10月1日、スミフル社が一方的に労働協約締結と正規労働者化の団体交渉を拒否したため、労働組合連合KMUの現地組織であるNAMASUFAの749人の労働者が、ストライキを行ったことを思い起こします。

 私たちのストライキは、18年10月11日、ストライキ破りのため会社が雇った暴力団、フィリピン国家警察、フィリピン国軍などのグループによって無残にも蹴散らされ、数人のストライカーが負傷し、持ち物が略奪されました。そのため、18年11月24日に約300人の組合員がマニラを訪れ、比大統領を含む中央政府機関へ問題を訴えました。

 労働組合NAMASUFAの役員と組合員は、労働雇用省(DOLE)、国家労働関係委員会(NLRC)、国民調停調停委員会などに訴え、解雇が不当であることを再確認させました。このマニラで勝ち得た闘争の進展をもってマニラから戻り、19年8月6日に出勤することを、スミフル経営陣に正式に通知しました。

 国家労働関係委員会による復職執行命令の令状発行は、法的戦いの勝利ですが、スミフル労働者はスミフル社が簡単に命令を実行するとは信じていません。スミフル社には、「労働組合員を正規労働者化せよ!」という最高裁判所の出した合法的な命令でさえ、拒否してきた前歴があります。この最高裁決定は、2017年6月7日、「コンポステラ渓谷のスミフル社梱包工場の220名の労働者を、会社は正規労働者とすること」と宣言しましたが、これまで、スミフル社は無視してきたのです。

 したがって、労働組合NAMASUFAは国家労働関係委員会(NLRC)と労働雇用省(DOLE)に、復職命令の完全な実施を確保し、法律を回避する巨大資本家の不法な気まぐれを許さないことを保証するように強く求めています。

190807 スミフル・バナナ園05.jpg
<スミフル労働組合のポスター>

*********

 スミフル社が国家労働関係委員会から執行令状を受け取ってからわずか3日後、NAMASUFAの別の組合員が、コンポステラ渓谷、シオコンのバランガイ(村)で、軍の疑惑のあるエージェントによって嫌がらせを受けました。事件は、19年8月2日午後5時30分ごろに発生しました。2人の正体不明の男性が、組合員のアントニオ・アピラー・ジュニア(Antonio Apilar Jr.)の家に行き、彼を探しました。彼らはアピラーを見つけられず、空中で3発銃を発射して、その場を去りました。

 アピラーは、この事件をすぐに組合役員に報告しました。早くも19年7月15日には、正体不明の二人がアピラーの家にきて彼を探しましたが、アピラーは会わず、兄弟を正体不明の人に会わせ、後者は連絡先番号を残しました。

 アピラーは、電話番号を残した人物に連絡を取り、何が問題なのか尋ねました。その人物は、復職命令が既に出されているため、彼らはアピラーと話がしたいと答えました。彼は最初に「彼の名前にまつわる問題」をクリアしなければなりません、なぜなら彼は「NPAの支持者」として「リストアップ」され、軍や警察から脅しを受けているのです。

 もはやこの種の嫌がらせを知らない人はいません。上記のパターンは、フィリピン軍の手なれた仕事であり、過去2年間、コンポステーラ渓谷およびその他の地域で、中傷宣伝と「アカ」というレッテル貼りを行ってきたのです。

 われわれはこのような脅しを何度も受けてきたし、いまも受けているのです。

nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

イラン戦争を回避せよ! [世界の動き]

イラン戦争を回避せよ!
「有志連合」に参加するな!
               

1) ついに戦争の瀬戸際か!

 トランプ米大統領が6月20日、イランへの軍事攻撃を承認した後、攻撃中止命令を出したと米ニューヨーク・タイムズ紙が報じ、CNN他、複数のメディアも伝えた。

 米政府高官がニューヨーク・タイムズに明らかにしたところによると、米政権はイランのレーダーシステムやミサイル関連施設を標的に、6月21日未明の限定攻撃を計画し、攻撃実施の初期段階として艦船が配備され、航空機は飛行中だったが、直前の20日夜になってトランプ大統領から軍当局者に、当面攻撃を中止するとの命令があったという。

 米AP通信が米政府職員の話として、国防総省が爆撃を勧め、トランプは政府や議会の指導者らと20日協議したところ、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官が強硬策を主張したものの、議会指導者らが慎重な対応を求め爆撃の中止を決めたという。(以上、IWJ)

 この爆撃中止命令に、ポンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官は強固に反対し、今なおイラン戦争を主張している。

 アメリカ政府内には、イラン攻撃、あるいは戦争に対する「若干の路線の違い」らしきものが存在する。トランプは、取引のための脅し、ブラフとしてイラン攻撃、戦争を煽ってきた。取引をうまくやり、20年大統領選挙に持ち込みたい。他方、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官らネオコンは、実際のイラン攻撃から戦争にまで踏み込もうとしている。

2)緊張がつづく、有志連合とペルシャ湾封鎖で危機を煽るアメリカ

 イギリスが公海上の海賊行為 イラン潰しを狙うアメリカに加担
 ・イギリス―― アメリカの一匹目の犬、積極的に噛みつく役割
 
 7月4日早朝暗闇に紛れて、ジブラルタル海峡を横断していた推定1億2000万ドルの価値の原油を積んだ船グレース1に、多数のイギリス特殊部隊員が乗り込み拿捕した。イギリス政府は、「石油の向け先がシリアなので、EU制裁を実施するためタンカーを拿捕した」と主張しているが、イギリスの言い分は到底信じがたい。イランは、イギリスの動きを「海賊行為」と非難して猛然と反撃した。

 この拿捕は、正体不明者によるペルシャ湾近くの石油タンカー攻撃事件に続くもの、すなわちイラン戦争を開始する口実つくりだ。ボルトンや他のアメリカ当局者等は証拠もなしに、タンカー攻撃はイランのせいだと非難し、他方、イランは否定している。そもそも制裁されているイランにとって貴重な収入源である石油輸出を止めかねない、タンカー攻撃をやるはずはない。

 イギリス政府は、自分の利害から、ワシントンに忠実な戦争挑発共犯の役割を演じている。EU離脱も控えている「落日の帝国」イギリスは、他のヨーロッパ諸国とともにイランと核合意したはずなのに、このようなあくどいことをやる。

 「イランの命綱である石油輸出をゼロに封じ込める」と、トランプとボルトンらが繰り返し公言している。この容赦ない犯罪的なイラン挑発が、どうして戦争を招かないのか不思議なくらいだ。

 トランプ政権は、戦争開始の機会を一旦やり過ごした。しかし、イランへの攻撃をあきらめておらず、イラン戦争を実行する「有志連合」を呼びかけている。

 米軍軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は7月8日、「有志連合」の方針を示し、説明会を設け参加国を募り70ヵ国が参加した。「有志連合」とは、国連安保理決議に基づく行動ではないことを意味する。国連安保理がすべて正しいわけではないが、米政府は国連の理念や決まり事をも無視するあくどい戦争挑発をしているということだ。「有志連合」を呼びかけたのは、米国が単独で戦争を仕掛けたら世界で孤立しかねない、財政負担も大変だ、「有志連合」への集まり具合で戦争に突入するかどうかの判断基準とする、そのような議論がアメリカ政府内であったということだろう。

 「有志連合」に容易に参加しそうなのは、英国と日本だ。多くの国が「有志連合」に加われば、米国はイランとの戦争に踏み切る可能性がより高くなる。

 戦争を求めているのはアメリカであり、イランではない。戦争へ踏み切る口実を求めているのもアメリカである。ペルシャ湾での最近の一連の事件は、アメリカが意図的に引き起こしていると考えるのが自然だ。現在は、フェイクニュースから容易に戦争と破滅へと、進みかねない極めて危険な事態にある。

 かつてジョージ・W・ブッシュディック・チェイニーが嘘をついて、アメリカと諸国をイラク戦争に追いやった前歴がある。これと全く同様に「チーム・トランプ」がそうする可能性は高いままだ。ネオコンは、「嘘の口実でイラク潰し」を成し遂げた「成功体験」を忘れることができない。うまくつくられた嘘に基づいて、アメリカがイランとの戦争を始めた証拠が、将来見つかるかもしれない。もっとも、イラク戦争の結末を知っているわれわれは、ことが終わったあとに見つかっても元に戻せないことを知っている。

3)マッチポンプ、アメリカ帝国

 トランプ政権が、核合意から一方的に離脱し、中東に軍事的緊張を引き起こした。にもかかわらず、トランプはイランを非難し続けている。
 7月7日で、60日間の警告期間は終わり、イランは既に次第に核合意から次第に離脱する準備に入り、
濃縮ウランの生産量を増やしている。アメリカが核合意を破棄したのであり、イランの措置は何ら不法なことではない。ましてやアメリカ政府から非難されることではない。

 アメリカ政府の狙いは以下の通りだ。

 ・イランで戦争状態をつくりだし、アメリカ軍による中東支配を実現する。戦争状態、緊張状態を継続することは、米軍の影響力を大きくすることであり、米の軍産複合体にとって都合のいい世界となる。周辺諸国に米国製武器をさらに買わせることができる。

 ・石油を通じて世界を支配する―-米国の力で、イランの石油を売らせない、輸出させないようにして、石油を通じて世界を支配する。とくに中東から石油を購入している中国、インド、日本などを米国に従わせる。イラク戦争によって、日本を従わせたように。アメリカはシェールオイルを増産しており、イランと中東石油が途絶えても影響は小さい。

 ・中東を米国―イスラエル、サウジによって支配する新しい中東、新しい支配秩序をつくる。

4)イランの対応、ロシアと中国の対応 

 イランは、屈服する姿勢を見せていない。トランプが大統領選挙のために無法な脅しをしているのであり、トランプが容易に引き下がらないことも知っている。それゆえ交渉の相手とさえ認めていない。

 米国に対抗するのは、イラン―ロシア―中国―インドのラインだ。
 アメリカの対イラン戦争によって、ロシアと中国の権益は脅かされ、手に負えない状況になりかねない。ロシアはシリア戦争でアメリカを退けることの尽力したが、イランを含む中東でのより大きな戦争に巻き込まれかねない。中国はイランの石油を大量に買っている。「米国の制裁にも加わらない、買い続ける」とすでに表明している。

 インドもイラン石油の輸入者だ。インドをロシア―中国側に誘い込むことが一つの外交的対抗策であり、一つの焦点でもある。ヒンディー主義者で反動的なモディ政権ではあるが、自国の利害からロシアとインドは良好な関係にあり、トランプ政権の反対にもかかわらず、ロシアからS-400を購入する姿勢を見せている。 

 事態は流動的だが、もう一つのカギは、EUである
 EUの誰も、トランプのイラン戦争には加わりたくない、しかし米国から制裁されたくないという「ジレンマ」にいる。大したジレンマではない、そこに大義はない、利益計算しかない。極めて頼りない「悩み」に囚われている。アメリカを孤立させ、単独行動主義のいじめっ子にしてしまわなければ、EUに未来はないにもかかわらず、だ。

 これまでのところ核合意に参加したヨーロッパ諸国が、アメリカの「核合意破棄から戦争政策」へ正面から立ち向かい押しとどめようとする強い姿勢を、明確には見せて来なかった。

 7月31日ロイターは、独マース外相が、米のホルムズ海峡有志連合に不参加を表明したと伝えた。ドイツは「軍事解決はない、外交的な手法でイランとの緊張緩和を目指している」とし、「米国主導の有志連合への参加によって、それが困難になる可能性がある」と述べた。

 EUは今のところ、「イラン核合意」を遵守する立場であり、「有志連合」への参加を表明していない。ドイツの不参加表明が、EU不参加への確実な流れとなれば、トランプの「イラン封じ込め」は失敗に終わる可能性が高くなる。

 ポンペオ米国務長官は7月29日、ワシントン市内での経済団体の会合で、「有志連合」の結成に、「望んでいたよりも時間がかかるだろう」と述べ、有志連合による圧力でイランを押し込めるという米政府のプランに各国が賛同していない現状を認めた。

5)周辺諸国 

 中東地域のアメリカとの同盟諸国間の反応にはいくらかの差異がある。

 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「イランへ徹底した懲罰」を提唱し、中東の支配者になりたがっている。イスラエルはアメリカがイランを攻撃することを望んでいる。イスラエルは、米国―サウジと一緒になった新しい中東支配を空想しており、その邪魔者であるシリア、イランをアメリカの戦争によって破滅させたい。イスラエル政府は、より冒険的で破滅的な、戦争による地域覇権を奪取する夢想的政策に、いっそう傾斜している。

 アメリカによるイラン戦争をはっきりと支持し歓迎しているのは、サウジアラビア、UAEとイスラエルの支配者だ。いずれもイランに対し、偏執的な敵意を持っている。

 サウジの「イラン懲罰」を、中東のアメリカ同盟諸国は受け入れていない。「中東諸国は、イランとの軍事衝突で、自らが前線となる可能性が高く、イランとの二国関係を追求しているクウェートとオマーンは、イランに一方的に圧力をかけようとするサウジアラビアの試みを、長い間、不快に思っている。」(ワシントンポスト)

 世界最大の天然ガス輸出国カタールは、サウジアラビアとUAEによる2年間にわたる貿易と政治的つながりの封鎖で、痛い目にあわされてきた。カタールはアメリカ同盟国であり、サウジアラビアと提携してきたスンニ派アラブの隣国だが、北のシーア派イランとも地域の親密な貿易と歴史的なつながりを何世紀も共有している。反イラン枢軸で地域を分極化しようとする、アメリカとサウジアラビア、UAEによるたくらみに賛同などできない。

 クウェートも同じ境遇にいる。戦争になれば最前線となるだろうし、アメリカから膨大な戦費をむしり取られかねない。

 シリアとトルコは、断固としてイラン戦争に反対している。トルコ・エルドアンは、アメリカの同盟国でありながらから、受けたひどい扱い(=米によるクーデターで倒されかねなかった)に腹を据えかねており、ロシア―イランとの関係を強くしている。アメリカからの恫喝や制裁にもかかわらず、ロシアから防衛ミサイルS-400を導入した。米国製の武器(パトリオット)を買っても、値段が高いばかりかその使用権は米軍・NATOが握っていることを思い知ったのだ。
 シリアも、ロシアーイラン―トルコとともに、シリア戦争を最終的に終わらせようとしており、イラン戦争など望んでいない。

 大惨事の戦争が勃発すれば、中東地域はワシントンによる石油業界のグローバル支配のもとに置かれかねず、いくら同盟国だからとはいえ、中東諸国はアメリカの戦争に賛同するわけにはいかない。

6)アメリカの言いなり、日本政府
 ・日本― 二匹目のアメリカの犬、従順なだけの犬。請求書が回ってくる。

 トランプ政権は日本政府へ、「有志連合」に加わり、イラン戦争のためにペルシャ湾への出動を要請している。

 安倍政権の外交政策は、「強いアメリカ政府に従う、そのほうが利益になる」という卑屈な方針で実績を重ねており、その論理からすれば、これを拒否する理屈は持っていない。

 安倍首相はトランプ大統領の言うことは何でも聞く。F35戦闘機を買え!イージスアショアを買え!と言われ買うことにした。7月21,22日、ボルトン安全保障補佐官が来日した際に、「米軍駐留費の日本負担を5倍にせよ!」と恫喝のような要請をした。これもまともに断ることなどできないだろう。

 F35もイージスアショアも、日本の防衛にどう貢献するか、怪しい。むしろ危険を招く。しかし、安倍政権にとって、そんなことはどうでもいい。

 ただ、トランプから、「自衛隊を海外に出して一緒に戦闘してくれ」と言われても、法整備において難しいところがまだまだあるし、憲法9条もある。安保法制をいじって自衛隊を海外に送ったとしても、実際に自衛隊を戦わせるには、まだ様々な準備が必要だ。だから憲法に戦闘を行える条項を入れる、例えば「世界の平和維持のため、国際貢献を行う武力を持つ」などの改憲が必要だ。「有志連合」への参加というこの機会をとらえ、改憲過程を早めかねない。

 国連憲章は本来相手が武力攻撃してきた時のみ、武力行使を認めている。今回の「有志連合」もあくまで有志であって、国連安保理決議に基づく、行動ではない。
 国連安保理を無視して、それでもアメリカに迎合し戦争をできる態勢、憲法や法整備をしようとするのだから、容易ではない。

7)ホルムズ海峡での緊張を低下させるのは極めて簡単だ

 現在の危機の原因はきわめて明確だ。トランプ政権が一方的に核合意を破棄したからだし、勝手に対イラン経済制裁を強めたからだ。

 したがって、解決策は簡単だし、明確だ。米国が、イランと6カ国(米・英・仏・独・ロ・中)が2015年7月に結び、国連の安全保障理事会でも決議された「包括的共同行動計画(JCPOA)」を順守すればいいだけだ。
 ロシア、中国、ドイツは、イラン核合意を尊重せよと強く主張している。英・仏もイラン核合意を維持する立場だ。

 ホルムズ海峡での緊張を鎮め、解決する方法は、トランプの「有志連合」へ参加せずトランプを孤立させ、トランプのイランに対する攻撃をあきらめさせることだ。トランプが18年に一方的に破棄した国際的核合意=イラン核合意を尊重し、制裁と地域の軍艦を撤去し、根本的変化のために、国際法と外交と平和的交渉を尊重することだ。
 
 この状態を、より確実なものにすることだ。(8月7日記)









nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

中国の世紀 [世界の動き]

中国の世紀

1) 中国の世紀 

 世界は、アメリカ―中国貿易戦争、対ロシア経済制裁、米によるベネズエラのクーデター失敗、米によるイラン戦争の危機など、おもにアメリカが引き起こす危機的な状況がある一方で、中国経済の一層の質的な発展拡大は、新たな様相を見せ始めている。

 19年4月末、北京で第2回「一帯一路フォーラム」(The Belt and Road Initiative: BRI)が開催された。40人の政府首脳と90の国際組織代表者を含め、150の国から代表者5,000人が参加した。中欧と東欧の16ヵ国に加わえ、G7の一国イタリアが覚書に署名した。スイスとルクセンブルグも同様に、「一帯一路」に参加する意志を示した。

 6月5日、モスクワでプーチン-習近平が会談し、二国間関係から、ユーラシア統合プロセスを、もう一つ上のレベルに格上げした。一帯一路構想(=新シルクロード)とユーラシア経済連合、特に中央アジアの内部や周囲との革新的相互連絡から、朝鮮半島の共同戦略に至るまで、全てを論じた。

 アメリカ抜きのこのような議題を論じる場が生まれていることに、世界の大きな変化を見い出すことができる。世界覇権の構造転換が進んでいる。

 「一帯一路構想」は、2013年にアスタナとジャカルタで習近平が初めて演説で触れ、14年11月10日に北京で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、中国政府が経済圏構想として提唱した。その時以来わずか5年で、150以上の国の注目と支持を獲得した。中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、史上最大規模のインフラ投資計画、そのうえでの貿易促進、資金の往来を促進する一大経済圏構想である。

 大阪でのG-20サミットでも、主役は中国―ロシア―インドだった。
 増大した中国生産力の水準は、すでに中国国内市場の需要をはるかに上回る規模に達しており、さらなる中国経済の発展にとって、国境を越えた一大経済圏の形成は必要であり、必然でもある。東南アジアからシルクロード圏に至る新たな中国経済圏、緩やかな多国的な協力関係の形成を志向している。

 中国は、2017年、一帯一路構想の基本原則として平和と協力、開放性と包括性、受容と理解、そして相互利益を提起しており、アメリカやIMFによる略奪的なグローバル経済秩序に対するありうべき対案として、各国に受け入れられつつある。

2) 日本の没落 

 そこには、世界第2位の経済力を獲得しながら、次の発展段階=「東アジア経済圏構想」を構想も実現もできず、その結果、土地価格高騰とバブル経済、そしてその破綻という結末に至り、以来30年間、経済停滞が続く日本経済の姿に対する綿密な研究、批判と反省があり、その反省と批判から出てきた構想であるということもできる。

 遅きに失した感があったが、2009年9月、鳩山政権が発足し「東アジア共同体」を提唱した。日本・中国・韓国を中心とした東アジア経済圏を形成し、集団安全保障体制を構築し、通貨の統一も構想した。日本の資本家層、支配層にとって、確かにこの方向にしか日本の次の発展はなかった。しかし、日本政府や日本の支配的政治勢力は、外交方針として対米・対欧関係を重視することしか頭になく、アジアに軸足を置く事はなかった。東アジア地域経済構想の必要性を理解しなかったし、このために必要な歴史問題に解決にも熱心でなかった。鳩山政権の「東アジア地域経済構想」を、米国の影響力を徐々に減らしていくだと受け止めた米国支配層やこれに呼応する日本の政治勢力は、つぶすことに躍起になった。実際のところ、日本経済の次の発展にとって必要なものだった構想は、既存の利害に拘泥する政治勢力によってつぶされた。今振り返ってみれば、あれが転換する最後の機会だった。安倍政権は、いまだに日米にインドを巻き込んだ中国包囲網刑死絵に躍起になっている。

 その結果、日本のGDPはこの30年間、500兆円のままであるにもかかわらず、中国のGDPは1500兆円近くとなり日本の3倍となっている。2~3年以内にはインドのGDPは日本を越える。

3) 「一帯一路」はIMFと同じか?

 欧米日政府とメディアによる「一帯一路構想」に対して浴びせられる主な批判の一つが、「知的財産の窃盗」だが、この幾分か誇張された主張を中国は認め、習主席は中国は知的財産を共有すると誓約した。中国は、すでにジュネーブの世界知的所有権機関に登録される新特許で、大差で世界のトップの地位にある。

 欧米日による「一帯一路構想」に対するもう一つの批判は、参加している比較的貧しい低開発国にとって「負債の罠」を作りだすということだ。この批判を煽りながらも、IMFと世界銀行や、特に主要大国アメリカが、債務国を貧しくするため金融操作を行ってきた、遥かに酷い実績があることを認めていない。「鏡に映る自分の姿」から中国を批判している。

 IMFと世界銀行救済措置の「代償」は、債務国経済の「構造調整」と呼ぶ。最近では、ギリシャを見ればいい。IMFがつける注文は、貧しい国が医療や教育やインフラに対する支出を減らし、国家の役割を最小にし、国内産業を外資も含め民間に売却、民営化し、労働者保護の法規制を取り払って賃金と労働条件を低下させ(実際には、「労働市場」を柔軟にするという言葉が使われる)、国家資源に対するの海外からの投資や所有に対する規制を撤廃したり減らすことである。そうした国々は、このような政策によって貧しくされるだけではなく、国民は国家主権と自身の経済政策を策定し実行する権限を失う。IMFと世界銀行の主要受益者は、巨大多国籍企業・金融資本となる。

 だから、様々な国々が「一帯一路構想」に殺到したのも、ほとんど驚くことではない。アメリカなどの多国籍企業・金融資本によるグローバル経済支配がいかに苛烈であるかを、裏側から証明している。IMFと世界銀行と付き合い支配された悲惨な経験が、今、152もの国が「一帯一路構想」に参加している主な理由なのだ。IMFや世界銀行が提示するプラン、金融秩序より、「はるかにマシ」なのだ。
 
 実際のところ、ロジウム・グループが「負債の罠という疑問」と呼ぶ分析を発表した。中国が対外債務再交渉に携わっていた24カ国40件の調査である。
 その調査結果によれば、「財産差し押さえ」はまれで、再交渉後、大部分のケースで借り手に好都合な結果だった。40件中18件で「負債は帳消し」とされ、11件で「債務は延期」された。4件が「借り換え」られ、4件で「条件が再交渉」された。

 一例がマレーシアである。2018年の首相選挙前に、当時候補者だったマハティールは、マレーシア東海岸鉄道建設プロジェクトはマレーシア政府の負債が大きすぎると批判した。マハティールが当選後、プロジェクトは保留にされたが、中国は条件再交渉に同意した。わずか8カ月後の2019年4月に新合意がまとまり、建設が再開された。
 マハティールは「一帯一路構想」フォーラムに出席し、構想に対する支持を誓った。「私は完全に一帯一路を支持している。私の国マレーシアがプロジェクトから利益を得るだろうと私は確信している」と述べている。

 
4) 「一帯一路構想」へ152ヵ国が参加した理由

 「一帯一路構想」フォーラムでプーチンは、「断片化された世界の政治的、経済的、技術的な状態や、国連安全保障理事会を回避して、違法な一方的制裁や、より酷い場合には貿易戦争を押しつける保護貿易主義のリスクに対処する効果的な方法を我々が見出すことは重要だ。」と述べ、アメリカによる世界支配の現状を批判した。

 世界の全ての地域から、152の国が「一帯一路構想」に参加したという事実は、大多数の世界の国が、アメリカが自身の覇権を維持するため駆使する、「いじめ、金融破壊、侵略と占領」よりも、「一帯一路構想」を、より良い選択、よりマシな選択肢として見ている証拠だ。

 アメリカが画策したクーデター未遂後にベネズエラに対し更に軍事的恫喝をし、ペルシャ湾への空母機動艦隊を派遣してイランに追加制裁を課し、イラン政府に「メッセージを送り」恫喝した。貿易赤字を理由に、中国からの輸入に何千億ドルもの追加関税から、いつの間にか5G などの最先端技術での中国メーカー潰しに転じている。唯一の超大国という地位を利用し、好き勝手なことを行っている。

 これら全ての行動は、国際法、国連憲章と既存の多国間貿易協定に違反している。超大国なので誰からも罰せられない。「一帯一路」への参加国が広がっている要因は、アメリカによる自分勝手な世界支配への批判であり、アメリカ支配秩序から脱却したいという志向があるからだ。





nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。