SSブログ

ウクライナ戦争 4)ロシアは停戦に応じるか? [世界の動き]

ウクライナ戦争 

4)  ロシアは停戦に応じるか? 

A:ロシアは停戦交渉に応じるか?

 プーチンは、「ウクライナ紛争を終わらせるためには最終的には合意を締結する必要がある」と一貫して言い続けています。
 
 ロシアがどのような態度をとってきたか、調べてみてわかりますが、2014年からのマイダン革命、ドンバス戦争以降、これまでロシアは一貫して戦闘停止、平和的解決を主張し行動してきました。プーチンに領土的野心はなく、求めているのはロシアの安全保障の確保だからです。現在も停戦に応じる立場をとってきています。拒否しているのは、アメリカのバイデン政権です。したがって、停戦交渉に応じるでしょう。

 ウクライナ戦争はすでに「アメリカ・NATO vs ロシアの戦争」に変質しています。すでにゼレンスキー政権だけで停戦を決めることはできません。代理戦争をやらせているアメリカ政府、バイデン大統領の「決断」にかかっています。逆に言えば、バイデン大統領が指導力を発揮しないかぎり、この戦争は続きます。

 ロシアの主張は、当初からプーチンが主張している通り、ロシアの安全保障の確保、ウクライナの非軍事化と非ナチ化です。ウクライナ全土の占領ではありません。

B:22年3月初めに停戦交渉があった

 23年1月31日になって、イスラエルのベネット前首相が22年3月に停戦交渉したこと、およびその内容を暴露しました。You tubeに載っています。「プーチンとゼレンスキーは合意し、ショルツ(独)とマクロン(仏)も賛成したが、ボリス・ジョンソン(英)とブリンケン、サリバンが反対し、潰れた」と述べています。

 ナフタリ・ベネット/イスラエル首相(2021年6月~22年6月まで首相)は、22年3月4日モスクワを訪問しました。なぜイスラエルが仲介したのでしょうか? もともとロシアにはユダヤ人が多い、ロシアからイスラエルに移住したユダヤ人も多いこと、などから深い関係にあります。ゼレンスキー/ウクライナ政府が反ユダヤのネオナチ政権であることも理解しています。ウクライナ戦争が起きた時、親米国であるイスラエルは「中立」の立場をとり、ロシア侵略非難の国連決議にも経済制裁にも賛同していません。「中立」がイスラエルの安全保障にとって絶対に必要だからです。イスラエルにとってロシアは国家安全保障上、きわめて重要です。シリアを軍事的に支えているのはロシアであり、ロシアがイスラエルに対してシリアを止めている面もあるので無視できないのだろうと、私は理解しています。

 ベネットの暴露によれば、22年3月4日の会談での合意内容とは、
⑴ プーチンは「ロシアはゼレンスキーを殺さないと、約束する」と言いました。そのあと、ベネットがすぐにゼレンスキーに連絡を取ったところ、ゼレンスキーは「それは確かか?」、ベネットは「100%確かだ」・・・というやり取りがあったと述べています。
⑵ それからプーチンは、「(NATO加盟をあきらめるならば、)ロシアはウクライナの武装解除要求も取り下げる」と譲歩しました。――この時、「ウクライナの非軍事化」を下ろしたことになります。「非ナチ化」は触れていません。
⑶ 一方、ゼレンスキーの譲歩は「ウクライナはNATO加盟をあきらめる」でした。

 この3項目でロシア、ウクライナ双方は一旦、合意しました。この時点でベネットはロシア、ウクライナ間では「和平合意」に成功しています。そのあと、ベネットは西側の指導者の説得をしなければなりませんでした。西側指導者が和平を壊しました。

 ベネット前首相によると「(英国の)ボリス・ジョンソン首相は、まったく譲歩しなかった。マクロンとショルツは賛成した。アメリカ政府は、ブリンケン国務長官とジェイク・サリバン補佐官が最終的に反対しつぶした。2人は「プーチンに報復せよ」と主張したし、「和平へのチャンスでもある」という発言もしたが、最終的にはつぶした。そして、結果的には「和平合意」は実現しなかった。ただ、今でもあの時は「和平のチャンスだった」と確信している。」と述べたのです。

 当時、このような内容の一部は、報道されていました。このことを2023年1月31日になって、ベネット首相が暴露したのです。

 そのあと、22年4月、トルコのエルドアン政権が仲介に入りました。
 22年4月21日、チャヴシュオール外相は、「NATOには戦争を長引かせたい国がある。戦争を継続してロシアを弱体化させたい人々がいるという印象があった。彼らはウクライナ情勢を気にしていない。」と語り、仲介が不成功に終わったと述べています。

C:アメリカのウクライナ戦争の目的は、ロシアの弱体化

 22年4月25日、ポーランドで米オースティン国防長官が「アメリカのウクライナ戦争の目的はロシアの弱体化だ」と本音を言いました。バイデンも同じ発言をしました。

 アメリカ政府が和平合意をつぶしたのは、アメリカ政府にとってウクライナ戦争の目的が、ウクライナの防衛、ウクライナ国民の安全確保ではなく、「ロシアの弱体化」であったからであることも、明らかになりました。

 そのために、トルコの仲介は成功しなかったとチャヴシュオール外相は述べているのです。
これらの経過を見てもわかりますが、停戦を拒否しているのは、バイデン/ネオコン政権です。バイデン政権の戦争目的が、「ロシアの弱体化」だからです。ウクライナの死者増大、破壊は考慮していません。

D:ロシアの目的

 繰り返しますが、ロシアの主張は、ウクライナの非軍事化と非ネオナチ化であり、そのことを通じたロシアの安全保障の確保です。ウクライナ全土の占領ではありません。ロシアと軍事的に敵対しない(NATO加盟しない=ロシアに向けたミサイルを配備しない)ウクライナ政府の樹立であり、非ナチ化です。ロシアに軍事的な脅威をもたらそうとする政府は認めない、緩衝地帯をつくる、緩衝国家でなくてはならない、ということです。NATOがミサイル配備している現状では、確かにロシアにとって、NATOの東方拡大停止、ウクライナの非軍事化・緩衝国家化は現実的な要求であると、思われます。逆の言い方をすれば、NATOの存在、東方拡大が大元の原因であることになります。

 停戦後、ロシアはウクライナのロシア語系の人々(ウクライナ人口の約3割)の自決する国家――ルガンスク共和国、ドネツク共和国――を通じた独立国家の運営はできるでしょうが、占領して敵対するウクライナ人を長期的に支配する(ウクライナ全土支配)ことは難しいはずです。軍事的(長期にわたり相当数の軍隊を張り付かせなければならない)にも、政治経済的にも。私はそのように理解しています。おそらくプーチンもそう考えているでしょう。

 23年2月22日にイーロン・マスクがヌーランドを批判した時に、ヌーランドは「私たちが、この侵略の被害者たちを支援しなければ、ロシアの侵略が世界中に広がる」(ワシントン・ポスト)と反論しました。これは、ネオコンらしい言い方です。ネオコンはこういう言い方を多用します。ベトナム戦争にアメリカ軍が本格的に介入した際の「ドミノ理論」(ベトナム社会主義国家を認めれば周辺に社会主義国がドミノのように広がるから、ベトナム戦争にアメリカは介入しなければならない)とよく似ています。こういう「論理建て」で宣伝し、戦争介入・戦争拡大へと突き進んできました。私たちの多くも聞き覚えがあるのではないでしょうか? 日本の主要メディアは、ヌーランドの言い方をそのまま繰り返していますから。ヌーランドの主張とは峻別した考えを私たち自身が持たなくては、戦争拡大、ウクライナ戦争継続の主張を拒否できません。

E:国際法違反の戦争

 それから、あらためて指摘しておかなくてはならないのは、国連憲章、国際法違反の戦争は、第2次世界大戦後、アメリカがずっと行ってきたことでもあります。アメリカの専売特許です。そう断言して間違いありません。

 ロシアの「特別軍事作戦」と最も類似しているのは1998年にコソボ支援と称し、アメリカ政府がNATO軍を送りセルビアを攻撃したことです。「セルビアによる独裁政治と弾圧があり、コソボで5,000人の虐殺があった」として、NATOは軍を送り、セルビアを爆撃しました。5,000人虐殺の事実はなかったことが、侵攻後に明らかになりましたが、NATOの爆撃によって、コソボはセルビアから離れ実質的に独立しました。現在コソボには大きな米軍基地があり米軍が駐留しています。仮に上記の理由があったとしても、NATOが軍を送り攻撃するのは、国連憲章違反、国際法違反であると指摘されてきました。ロシアによる「特別軍事作戦」とよく似ています。
 もちろん違うところもあります。セルビアからNATOへの脅威はありませんでしたし、ドンバスでは14,000人の死者が出ています。そのような違いはありますが。

 リビアへの攻撃(米、英、仏、伊)によるカダフィ政権打倒も、国際法違反です。米、英、仏、伊は、カダフィが独裁だとして、空爆しリビア軍を撃退しました。そのうえで、地上戦はアルカイダ系の雇い兵(LIFG)で戦闘させ占領し、カダフィを虐殺しました。その結果、現在ではリビアの石油は、リビア国民のものではなくなっています。

 イラク戦争も大量破壊兵器があるとしてフセイン政権を倒しましたが、のちに大量破壊兵器はなかったことが暴露されました。これも明確な国際法違反です。アメリカ政府とNATOは、罪を犯しても罰せられていません。責任を取っていません。こういうでたらめな世界秩序をつくってきているのです。

 アフガン戦争も、アフガン・タリバン政権が、オサマ・ビンラディンを匿っていることを理由に「反テロ戦争」としてNATOがアフガンに侵攻しタリバン政権を倒しました。タリバン政権は、「公正な裁判が保障されるのであれば、ビンラディンを引き渡す用意がある」との立場を取りましたが、これを無視して侵攻しました。これはアメリカ軍、NATOがタリバン政権に戦争を仕掛ける理由にはなりません。国連憲章違反、国際法違反です。

 中南米政府に対するクーデター………など、上げれば限りがありません。

 アメリカ政府による国際法違反、国連憲章違反の例は、数に限りがありません。現在ではアメリカ政府は国連を通じた支配に代わってNATOによる戦争と脅し、NATO以外でも有志連合による軍事作戦、ドルを背景にした経済制裁によって、世界支配するに至っています。国連からNATOへのシフト、それがアメリカ政府の現代的な世界支配の「やり方」となっています。私たちはこのような現代の現実をきちんと認識しなければなりません。国連無視は、アメリカ政府がやってきたことです。

 こういうことを書き連ねるのは、私は下記のことを言いたいからです。言いたいことは、4つ。

⑴ダブルスタンダードに立ってはならない、ということ。アメリカとNATOのこれまでの国際法違反、戦争を批判しないでおいて、ロシアの批判をする政府、団体・人を、私は信用しません。 議論する前提として、ダブルスタンダードに立たないことを、まず求めます。 ⑵第2次世界大戦以後に限っても、自身の戦争で殺した人数を数えれば、アメリカがダントツです。決してロシアでも中国でもありません。その事実がどうしてなのか、深刻に考えなければなりません。考える力のない者は真の知識人、ジャーナリストではありません。(伊勢崎賢治/東京外語大教授、22年12月10日宮古島での講演) ⑶現代において人類に最も危険な存在は、アメリカとNATO、欧州です。アメリカ・欧州は地域戦争、雇い兵を使った戦争・クーデターなどを起こして混乱をつくり出し、G7以外の国々・人々を新植民地主義によって支配しています。ナオミ・クラインは「ショック・ドクトリン」と呼んでいます。この現実に対して批判する立場に立たなくてはなりません。 ⑷ 欧州は今回、ロシアとの戦争に引き込まれることによって、アメリカに従属する関係になりました。まるで日本のようです。EUを結成した一つの理由は、欧州を共同市場としアメリカに対抗しより独立的に振舞える欧州を実現しようという志向があったはずですが、ウクライナ戦争を前にして一挙にアメリカの支配を受け入れた欧州、アメリカの戦争政策に従属した欧州となったことに、私はショックを覚えました。国連憲章も国際法も、あるいは欧州不戦条約も歯止めにはならず、NATOによる欧州支配が実現したのは大きな驚きでした。私たちが国連憲章違反、国際法違反を指摘するのは、私たちが何を守ろうとするのか、何を実現しようとしているのかも、同時に明確に意識しなければなりません。


 アメリカ政府による戦争と新植民地主義こそ、もっとも現代の最も重大な危険、敵として明確に意識し批判する立場に立たなければ、そのような平和運動、労働運動、市民運動・・・・でなければ、対抗することはできません。取り込まれてしまいます。欧州の既存の平和運動・環境運動・・・・は、現代の最も重大な危険に対する批判が欠如しているからこそ、ウクライナ戦争を前にして「祖国擁護」に取り込まれつつあります。第2インターへの先祖返りでしょうか? アメリカ政府の依存することを選択した欧州では 「背教者カウツキー」(の子孫)が大量に生まれているように見えます。ここに必要なのは、「国際主義」です。(続く)


nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。