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ウクライナ戦争  1)現時点は、停戦すべき戦況になっている [世界の動き]


友人の皆さんへ

 「ウクライナ戦争とは何か? 私たちはどのような態度をとるべきか?」

 突然このような文章を送ることをお許しください。
 ウクライナ戦争続いています。どうしてこのようなことになったのか、どうしたら終わるのか、について以下の項目に従い、私の考えを一方的に書きました。ウクライナ戦争の背後にある対立の全内容を把握しなければならないと考えたため、ずいぶん長くなりました。友人の皆さんのお考えを聞かせていただければ幸いです。


1)現時点は、停戦すべき戦況になっている 
2)ウクライナ戦争は、どうして起きたのか?
3)ロシアの言い分は正しいか? 
4)ロシアは停戦に応じるか? 
5)私たちはどのような態度をとるべきか?

 日本のTV、新聞はすでに情報統制されています。みずから進んで統制されようとしている面さえあります。アメリカ政府、アメリカ戦争研究所(ネオコン)、CIA、豪戦争研究所、英政府 それらの情報を報じる主要メディア・・・・などから発信される情報がそのまま日本のTV、新聞で報道されています。その傾向は、ここ10年ほどで急速に強まりました。ウクライナ戦争を機に一段とひどくなりました。NHKはウクライナ政府、ウクライナ国営TVの報道を、真偽の検討もなくそのまま流しています。

 一方、最近の日本の労働運動、平和運動、基地反対運動、環境運動、市民運動・・・・・など人々の側も、国際情勢にきわめて「疎い」のが特徴になっています。主要メディアの一方的な報道の影響下にあります。 国際情勢について、まともに研究していませんし、情報をきちんと得ようとする姿勢もその努力もありません。「国際主義」はどこに行ったのでしょうか?

 私の立場は非戦です。ウクライナ戦争が早く終わること、もしくは停戦、あるいは休戦でもいい、とにかく目の前の戦争を止めることが重要だ、死者を出さないようにすることが平和運動であると考えています。そのよう立場から、私の考えを書きました。長いですがお付き合いください。

ウクライナ戦争 
1)現時点は、停戦すべき戦況になっている

 現時点の戦況は、一言でいえば、朝鮮戦争において休戦協定を締結するに至った状況ときわめてよく似てきています。ウクライナ戦争はすでに一年を超えており、戦争が始まった時期からも状況は大きく変わりました。犠牲者が多く、長期戦化し、「戦争をもはや続けられない」事態となりつつあります。
まず停戦すること、武器を送って戦争拡大してはなりません。平和運動、環境運動・・・・にかかわる市民はそのような立場に立つべきと考えます。まず、停戦すべき理由から始めます。

A:停戦すべき第一の理由
-ウクライナ兵/ロシア兵の死者が増え続けている

 戦争から1年以上を経過し、犠牲者が増大しています。これが停戦すべき第一に理由です。即時停戦は多くの人の要求であると確信しています。

 戦闘から1年を経たウクライナ戦線はどうなっているでしょうか?

 ロシア政府、ウクライナ政府ともに正確な死者数を公表していません。アメリカ国防総省(23年2月)は、ウクライナ・ロシア双方とも戦死者は10万人以上と公表しました。すでにウクライナは相当数の兵を失っています。アメリカ国防総省の死者数は、実際よりは少ない「数」でしょう。なぜならば、これまでウクライナ政府、アメリカ政府ともに、「ウクライナ軍が勝った!」という宣伝に熱心であり、実際の死者数、被害を過少に公表してきた「実績」があるからです。戦況報道には、明らかに2種類あります。一つは、「レトリック」であり宣伝です。こう言った宣伝を払いのけ、客観的な戦況の把握に努めなければなりません。

 ゼレンスキー政権の報道は、明らかに誇張と嘘があります。これまでのウクライナ政府の戦況報告を記録し時系列に並べてみれば、わかります。不審に思うなら一度やってみてください。22年11月15日、ウクライナ軍の迎撃ミサイルがポーランド領内に飛びポーランド人2名がなくなりました。アメリカ政府、NATOともにウクライナ軍の迎撃ミサイルによるとしましたが、ゼレンスキーは「ロシアのミサイルだ」という主張を最後まで下ろしませんでした。ウクライナ政府の報道は特に、そのまま受け取ってはならない、割引いて受け取らなくてはならないことを教えています。

(日本のTV、新聞はすでに、アメリカ政府、CIA、米戦争研究所などの情報+ウクライナ国営TVの報道を、そのまま流すだけです。例えば、NHKはウクライナ(政権)のTV報道をそのまま垂れ流しています。ロシアのTV報道は偽情報として報道しません。過去の報道の数の対比、扱い方を見れば明らかです。それから、事実や元の資料を報道しないで、識者?の見解だけ報道します。例えば、「プーチン演説」をそのまま報道するメディはなく、識者?の評価だけを報道しました。このような姿勢の報道機関・ジャーナリストは、「信用できない、もはやジャーナリスト/学者/報道機関ではない」ことを教えてくれています。)

 ロシアの報道については、SPUTONIKを見ていますが、ウクライナTVのような誇張、嘘はより少ないことがわかります。ただし、ロシア側に立った主張であり、かつまたすべてのことがわかるわけではありません。戦死者数、ウクライナ軍の攻撃によるロシア軍側の被害などについては、軍事秘密扱いなのか正確な情報を伝えてはいません。 

 戦況報道は、一般的には自国側/自軍側を有利に報道する傾向があります。それしか情報がなければ、ジャーナリストは双方の情報を入手し、読み比べて戦況を判断します。すべてはわかりませんが、ある程度わかることはあります。日本ではそんなことさえしないジャーナリスト、TV報道、新聞報道ばかりです。それを鵜呑みにして語る人ばかりです。日本の市民運動、労働運動……にも、そういう人があまりに多いのです。

 さて、戦況ですが、22年末から23年3月まで、ウクライナ軍の犠牲が急速に大きくなっています。特に東部戦線のバフムト攻防戦で多くのウクライナ兵士が死んでいます。特にロシア火砲の優位によりウクライナ兵の損失がロシア側より何倍も多い理由となっています。ワシントン・ポストは「ウクライナは損失により熟練した軍隊と軍需品が不足し悲観論が高まっている」(23年3月)と書いています。

 ウクライナ軍の累計の死者数は、きわめて大雑把ですが、現時点までで私は、約25万人程度にのぼるのではないか、と推定しています。死んだ兵士の約3倍は負傷し兵としては役に立たなくなるとされていますので、約100万人程度のウクライナ兵がすでに失われているのではないでしょうか。(ウクライナ政府は死亡した兵、負傷した兵の数を公表はしていません。) 厳密に正確な戦死者数は、なかなかわかりません。ここで言いたいことは、兵士の死傷者数の多さからして、すでに停戦しなければならない戦況だということです。

 22年11月30日にフォンデアライン欧州委員長が「ウクライナ兵死者数は10万人を超えた」と発言した後、そのyou tubeは消されました。フォンデアライン発言に対し、ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領府顧問は翌12月1日、ウクライナ軍の戦死者は「1万~1万3,000人」だと反論しました(読売新聞オンライン)。フォンデアラインとて少なめに言うでしょうから、当時、少なくとも10万人以上の死者だったのでしょう。それからでも約4ヵ月が経過しています。

 おそらく、ウクライナ軍は兵隊がいなくなりつつある状態でしょう。「ウクライナは過去9年間、アメリカの訓練を受けた下級将校の多くを失い、侵略開始時にウクライナ人がロシアの敵に差をつけるのを助けた指導者軍団を損なった」とウクライナ当局者は述べています。

 SUPTONIKによれば、バフムトでの最近のウクライナ兵捕虜は50歳以上の高齢兵と20歳前の若者兵が多く、しかもほとんど訓練を受けていないと報道しています。NATOのポーランド兵やルーマニア兵(形式上は志願兵)、さらには元IS、アルカイダ系の傭兵もずいぶん入っており、その数%以上は戦死していると指摘されています。

 ロシア軍も相当数、兵隊を失っています。詳細は分かりませんが、約10万人程度ではないでしょうか。仮にそうであれば、負傷者も含め約40万人となり、あくまで推定ですが、これとて膨大な人数です。最近の砲弾の数、ミサイル数、その頻度を比べると、ロシア軍が優勢のようですが、どちらかが優勢かではなく、すでに犠牲者が膨大な数に上っており、とにかく即時停戦すべき戦況なのです。

 ウクライナ戦争は、そもそも「代理戦争」であり、現時点ではすでに「ロシア vs アメリカ/NATO間の戦争」に変質しています。アメリカ政府、NATOの「ロシア弱体化」という目的達成の前に、ウクライナ兵の死者増大、兵士枯渇、武器不足が起きています。停戦すべき第一の理由です。倫理的にも犠牲者を出し続ける意味がありません。

 朝鮮戦争は3年たって、双方が消耗して、それまでの主張は降ろし、38度線を引いて休戦に入りました。38度線には何の「根拠」もありません。戦争をはじめてみたが、「もはや続けられない」と双方が判断する戦況まで進んだからです。当時、李承晩大統領は休戦に反対し「北進統一」を頑固に主張しましたが、アメリカ政府はこれを押し切り、休戦協定を締結しました。李承晩は休戦協定に参加せず署名もしていません。この時、李承晩はアメリカ政府のマリオネットでした。ゼレンスキーも似た存在であるのは明白でしょう。代理戦争であるからには停戦・休戦を決めるのはアメリカ/バイデン政権であり、ゼレンスキーではありません。

B:停戦すべき第二の理由
--ウクライナへの「支援疲れ」、欧米とロシアの衰退

 NATOは武器支援/経済支援に躍起です。ウクライナの2022年のGDPは▲30%(ウクライナ政府による、日経)と公表しています。世界銀行は、2022年末までに国内総生産(GDP)が40%近く減少すると予測していました。詳細は不明でしょうが、ウクライナはすでに、十分破壊されています。

 ウクライナはすでに経済的に破綻しています。ウクライナ政府単独では、すでに戦争を継続できません。ゼレンスキー大統領がアメリカやEUを歴訪し、毎回、武器支援、経済支援を訴えている理由です。武器だけではなく、食糧やあらゆる生活物資、建設資材、輸送機器、発電機・・・・・などを支援しなければ、戦争を続けられない状態に陥っています。

 22年3月にはゼレンスキーは停戦に応じようとしました(後述)が、アメリカ政府が止めました。それ以降、停戦には応じない姿勢を貫いています。それはゼレンスキーが「クリミア奪還」を掲げたことに表現されています。「クリミア奪還」とは「停戦などしない、戦争継続する!」という意味です。ゼレンスキーは、アメリカのマリオネットでしょうから、ヌーランド米国務次官などのネオコンから言わされている可能性が高いでしょう。

 おそらく、戦争をもはや続けることができなくなり、停戦もしくは休戦せざるを得ない状態に追い込まれつつあり、その時期は近いと思われます。しかし、「レオパルド2戦車提供」を決めましたから、アメリカ、NATOはやめるつもりはありません。

 アメリカ、EUは「レオパルド2戦車」提供を決めたものの、春までに配備できそうにありません。仮に、大量の戦車を提供しても戦況を変えることはできません。ウクライナ軍はバフムト周辺には400両のT72などの戦車を配備していましたが、今やそのすべては破壊されました。和平合意のために少しでも有利となるよう一部地域を奪回しておきたいという程度の考えでしょうが、それさえ難しいと思われます。

 戦車提供で戦況は変わるか?

※米陸軍退役軍人ダニエル・デイビス中佐 戦車戦専門家、元NATO騎兵隊副司令官のインタビュー記事。

 ダニエル・デイビス 「戦車提供が戦況を変えると報道されているが、実際の戦闘現場ではそうではない。戦闘の90%は戦車を操縦する人の能力にかかっている。その能力育成には数年かかる。」、「戦車戦は、小隊としての戦闘、中隊としての戦闘、大隊としての戦闘などそれぞれ訓練による戦術習得が必要であり、かつまた歩兵や戦闘機・その他との連携した機動的な戦術の訓練など、・・・・6週間の訓練では不可能である。……我々は訓練に6年要した。…また(戦場での戦車の故障率は非常に高いため)戦車の修理・部品供給態勢の整備なども必須だ……」

 このような戦況を、アメリカ軍、政府は認識しているはずです。しかしネオコンのバイデン政権にとって、ウクライナとウクライナ国民がどうなろうと眼中にありません。

 おそらく、戦車提供にかかわる報道は、ドイツにもっと本気で戦争に関与するようにするバイデン/ネオコン政権による政治的圧力でしょう。私はそのように見ています。実際に、ショルツ首相はレオパルド2戦車提供に態度を転換し、ウクライナ支援継続を表明しました。

 ウクライナ戦争は、米軍・NATO vs ロシアの戦争に変質しました。戦争は長期戦となり、ロシア、ウクライナともにどちらかが一方的に勝利することはもはやありません。そのため、アメリカ政府にとって、ヨーロッパ、とくにドイツを引き込もう、さらには日本からも支援金を出させたいというのが現局面です。バイデン政権は、あくまで戦争継続であり、決して停戦をする姿勢を見せていません。

 一方、ロシアも犠牲と負担を負っています。しかしロシアは、戦争に対する耐性が予想以上にあることが、最近指摘されています。22年のロシアGDPは▲2.1%であり、大方の予想を裏切って「軽微な影響」しかありませんでした。NATO(=G7)が経済制裁しましたが、期待した効果を上げることはできませんでした。経済制裁に参加した国が少なかったこと、石油やガスの輸出先を欧州から中国、インドなどに切り替えたこと、石油・ガス価格が上がり収入が増えたことなどがその理由です。22年の経済収支は▲5兆円でしたが、外貨準備高が25兆円ほどありそれで補填しています。長期的には、ロシアも厳しい条件下ありますが、ウクライナに比べて予想外に「軽微」ではあり、プーチン政権とロシア社会の対応能力も指摘されています。ミサイル・砲弾・弾薬などの生産・供給は、NATOを凌駕しているとNATO関係者が語っています。

 佐藤優氏は23年2月、大地塾(月例)での講演で、次のように語っています。

 「……むしろ、ロシア防衛戦争として、多くのロシア国民がプーチン政権を支持するに至っている。プーチンの支持率は80%程度。22年9月、プーチン政権は予備役の招集を公表した。その時支持率が一旦60%台に落ち、22年はのべ200万人(観光客を含む)が国外に脱出したと報じられた。しかし、そのほとんどは帰国した。反プーチンの人たちの一部が欧州に出国したが、西側の報道・非難があまりにでたらめなことに失望し、多くの人は帰国した。アメリカ・NATOの目的が「ロシアの弱体化」「ロシアの分断支配」であることを知り、ロシア人は悲惨であったゴルバチョフ・エリチン時代を思い出した。ソ連社会主義解体後、欧米資本とその手先のオルガルヒが国有財産を略奪/簒奪してしまい、多くのロシア人は貧困に陥った。プーチンは不法に乗っ取られた石油やガスを再び国有化し、その収入(国家予算の約40%)を国民に再配分(年金・社会福祉費、軍事費……)し、数年で立て直した。国家資本主義態勢をさらに再編することで、ウクライナ戦争に対処しようとしている。  プーチンに批判的だった人もアメリカ・NATOの戦争目的を前にして、「これは仕方のない戦争だ」として、プーチンの戦争を支持するに至っている。カザフスタン、トルクメニスタン、ジョージアなどロシア語の通じる国への出国者は現地にとどまっているようだが、ほとんどが帰国した。プーチンの支持率も80%程度まで回復している。」(以上、佐藤優/大地塾での講演 23年2月)

 プーチン政権とロシア社会の対応能力については、23年2月22日、プーチンの「一般教書演説」を参照ください。

 現時点では、戦争が長期化するのは明白です。

 停戦となる要因の一つとして、戦争を推進してきた側の「支援疲れ」が影響します。ロシアも疲弊していますが、ウクライナへの武器支援・経済支援で、アメリカ、欧州が疲弊し、アメリカ、欧州の弱体化が進みかねない状況が生まれています。そこからNATO内の分裂が目立ってきました。アメリカのネオコン政権は、ドイツ、フランスを武器支援、戦費調達の点でさらに一段と戦争に引き込みたいのですが、ドイツ、フランス、イタリアなどは嫌がっています。アメリカ、ポーランド、バルト三国、ルーマニアなどは、ポーズでしょうが、好戦的な姿勢を強めています。23年2月以降、NATO内の分裂が表面に出てきました。

 また、戦車(レオパルド2)提供を決めたことに対し、独・仏・伊・オーストリア・スペインなどで、市民による「即時停戦!ウクライナへ武器を送るな! NATO即時撤退(もしくはNATO脱退)」を掲げた平和運動が急速に拡がりつつあります。特に戦争後1年を経過した2月26日、欧州各地で上記の「即時停戦!ウクライナへ武器を送るな! NATO即時撤退(もしくは脱退)」のスローガンを掲げたデモが繰り広げられました。これは「新たな、注目すべき動き」です。私はこれこそが「国際主義」だと評価しています。(日本の平和運動、市民運動、労働運動・・・は、この動きに注目しなければなりません。)

 欧州経済はロシアの安いガスを受給できず、代わりに5~6倍の価格(長期契約でなくスポット価格であり、かつLNG船で運ぶため、高い!)であるアメリカのシェールガスに切り替えたため、ドイツの化学産業は一挙に衰退しその輸出力を失いました。ドイツ政府は企業と国民に多額の燃料補助金を支出せざるを得なくなりました。燃料価格・資源価格は高騰し、6~10%のインフレに見舞われ、欧州経済は後退局面に入りました。

 アメリカはこれまですでにウクライナに武器支援に11兆円注ぎ込みました。その分米財政は赤字になります。武器支援の資金で実際には、アメリカ製武器を買うのでアメリカ軍産複合体に資金は流れてはいますが。あとは、汚職体質のウクライナ政府高官の懐にも流れます。アメリカ政府の支援とて無制限ではありません。

 アメリカ政府の債務は23年1月19日に上限31.4兆ドルに達してしまいました。バイデン政権は、就任以来、大判振る舞いし、債務の増え方が異常です。オバマの8年間+トランプの4年間で使った以上の額をバイデンは2年間で使ってしまいました。債務上限額(31.4兆ドル)自体は、議会で引き上げることはできますが、現局面は米国債を買ってくれるところがありません。

 米国債の買い手は、①商業銀行、②外国政府、③FRB ですが、世界経済は景気後退局面に入っていますので、この3者とも売っています。

 ウクライナ戦線は膠着しており、戦争を継続するには、さらなる武器支援、食料・生活物資支援が必要です。米国内では下院が共和党多数となったため、特に23年夏以降、これまでのように際限なくウクライナに武器援助することはできなくなりました。

 アメリカ政府も資金援助の限界が近づきつつあります。そのため23年半ばころには、停戦・休戦せざるを得ないのではないかと推定する報道が出はじめています。
 
C:停戦すべき第三の理由
-ー第3次世界大戦、核戦争の危機

 停戦すべき第三の理由は、第3次世界大戦と核戦争の危機が現実化していることです。レオパルド2戦車に続き、ゼレンスキーは戦闘機、あるいは「297㎞の長距離射程の米国製ミサイルATACMS」を要求しています。ともに、現時点までアメリカ政府が提供を拒んできた兵器です。提供することになるかもしれません。(バイデン政権のネオコンが提供前の兵器を指定してゼレンスキーに要求させているという見方もあります。)

 これらはさらなる戦争拡大、第3次世界大戦や核戦争の危機が現実化していることにほかなりません。ゼレンスキーは、単独では戦争を継続できないので、NATOを一段と戦争に引き込むことによって、自身が生き残りたいという立場にありますゼレンスキーはロシアに対して核兵器を使え!と公言しています。 欧米、日本のメディアは報じません。

 こんななかで、23年2月中旬、ビクトリア・ヌーランド米国務次官(国務省No.2、ネオコン、夫はネオコンのロバート・ケイガン、2014年マイダン革命=クーデターを企て実行した中心人物)が「ゼレンスキー政府の主張するクリミア奪還を支持すべきだ」とする新たに主張しはじめました。これまでバイデン政権はクリミア奪還まで明言していませんでした。新たな戦争拡大・介入への発言です。ウクライナ戦線が膠着していても、ネオコンは決して「懲りていない」ことが分かった瞬間でした。極めて危険です。バイデン政権の中枢にいるのです。

 これに対し、ネオコンでない米資本家層からでしょうか、批判が出ています。ヌーランド発言に対し、「ネオコンは核兵器を使うつもりだ、きわめて危険だ!」と感じ取りました。

 ヘンリー・キッシンジャーが、23年1月ダボス会議で「第3次世界大戦を回避せよ! そのためには停戦せよ! NATOを東方拡大するな!」と提言しました。キッシンジャーは以前から、第3次世界大戦となる危険性/核戦争の危険性を指摘し続けています。「ネオコンのバイデン政権」の危険性をよく理解しているのでしょう。

 イーロン・マスク(テスラ経営者)は、ヌーランド国務次官のクリミア攻撃発言は「ロシアに宣戦布告する発言で危険だ」と批判しました。23年2月23日 ツイッターで、「ヌーランドほどウクライナ戦争を推進している人はいない。(2014年のことを言っている。イーロンは「ウクライナ戦争は2014年から始まった」と主張している)。」と書き込みました。米主要メディアがネオコンに支配されていることも指摘してきました。イーロン・マスクのツィッター買収はそれに関連しているかもしれません。

 トランプ前大統領は、2月23日、「ウクライナ紛争は、ヌーランドが戦争挑発して起きたものだ。」指摘しました。また「(自身が大統領であった時)政権内にいたネオコンやグローバリストたちから、戦争挑発のアドバイスを何度も受けたが、私は従わなかった。………私が唯一、戦争挑発を拒否した大統領だ。」と(誇張を含めて)述べています。

 フランク・コスティオーラ/ネチカット大学名誉教授が、2月10日(金) ワシントン・ポスト論説記事で、冷戦に冷静に対処した米外交官ジョージ・ケナンの功績を讃え 「外交は冷戦の危機を救った、今日再びその力を発揮することができる」として、バイデン政権(ネオコン)の進める戦争政策を批判し、外交で解決せよと要求しました。こんな記事が、ワシントン・ポストのような主要メディアに載ったのは初めてです。これまでは決して載りませんでした。

 ほかにも、Jack Matlock元ソ連大使、 William Perry元国務長官(クリントン政権時)、 John Mearsheimerシカゴ大学教授などが第3次世界大戦、核戦争の危機から、ウクライナ戦争を停戦せよ、外交交渉で解決せよと主張し始めています。2月20日のヌーランド発言を機に、これまで報道してこなかった主要メディア上での主張が目立つようになりました。ビクトリア・ヌーランドを名指しにしているのは、ヌーランドこそが戦争を推し進めている中心人物だと評価しているからでしょう。

 ※ なお、ジェフリー・サックス/コロンビア大学教授、ノーム・チョムスキーなど左派系米知識人の一部は、ウクライナ戦争が始まった当初から、「戦争の背景には、NATOの東方拡大がある、ウクライナ戦争は2014年から始まっている、決して22年2月24日からではない、即時停戦すべきだ」などと主張し続けており、メディアやネット上で大量の非難を浴びせられ続けられ、主要メディアからは排除されてきました。しかし、最近発言が再び注目されてきています。

D:停戦すべき第4の理由
--戦況の評価から――すでに停戦すべき時期だ

 戦況の評価については、明らかに2種類の相反した評価が存在しています。
 一つは、欧米主要メディア、ウクライナ政府からのウクライナ大勝利という戦況報道・評価です。これは「レトリック」にすぎません。日本の主要メディアはこれをそのまま報道しています。実態とは程遠く、宣伝のための報道、偽報道にほかなりません。このようなワイドショー報道に影響を受けているようではだめです。

 「レトリック」ではないリアルな戦況評価を、報道を選び読み解くなか自身のなかにつくり上げなければなりません。できなければ騙され、コントロールされるだけです。

 断片的に報じられる報道から「戦況」の把握に努める必要があります。断片的ですが、おおむね次の通りです。 〇すぐには決着がつかない、〇長期戦となる、〇全体としてウクライナ軍の武器・弾薬不足、〇膠着状態だがロシア軍やや優勢、〇そのなかでもバフムトでのロシア軍の地域的勝利、などが現時点の戦況の特徴でしょう。

 注目した記事/報道を下記に記します。

 23年2月16日、アメリカの三軍のトップ、マーク・ミリー統合参謀会議議長は「戦争は長期化する、どちらかが勝利する見込みはない」と発言。23年春以降に1,000台程度の戦車をウクライナに提供するという条件をも考慮して。

 3月22日には、「ロシアもウクライナも軍事力によって目的を達成することはできないだろうと確信している」、「ある時点で、人々は、軍事手段を通じてこの戦争を実行し続けることのコストが非常に困難であることに気付くだろう」、「軍事的にロシアを完全にウクライナから追い出すのは非常に困難であり、莫大な血と財宝が必要だ」このため、「誰かが交渉のテーブルに着く方法を見つけようとしており、それが最終的にこの問題が解決される場所だ。トルコ、中国が和平案を提示している」と述べるに至っています。(ビジネスインサイダー)

 2月6日ニューヨーク・タイムズ 「……劣勢で疲弊しきったウクライナ軍が東部戦線でロシア軍の攻撃を受けている。ロシアの総攻撃はすでに始まった。ウクライナ軍によるとバフムトは間もなく陥落するだろう。ウクライナ軍は第1次世界大戦型の古い塹壕型の消耗戦をやっている。第1次世界大戦がそうであったように資源を持つ側が勝利する。 ……となるとあの連中(ネオコン)は、必死な行動に出るだろう。NATO有志連合をロシアにぶつけるだろう。独仏はより消極的になり、NATOは分裂することになる。

 英テレグラフは、「ロシアは兵力数ではるかに有利である。楽観的な報道がなされているが、ロシアの軍備は膨大で、工場は24時間の生産体制、西側は長距離ミサイル、戦車、装甲車の提供を約束したが、間に合うとは思えない。我々は今後数週間のうちにロシアが大きな利益を売ることを覚悟しなければならない。現実的となる必要がある。そうでなければ衝撃によって西側の決意は揺らぐことになるだろう。

 また、中国人民解放軍直属の軍事科学院(軍の最高意思決定機関や中央軍事委員会への提言や報告がその役割)が、2022年12月ウクライナ情勢をめぐるシミュレーションをまとめており、それによれば「23年夏ごろ、ロシア軍が優勢なまま終局に向かう」、「ウクライナ、ロシアとも経済的疲弊が激しく、23年夏にも戦争継続が難しくなる」と評価しています。この評価に基づき停戦仲介案を提示しました(次の5)項で詳述)。

 ほかにもあるでしょうし、今後も把握に努めなければならないでしょうが、今のところの戦況は概ね上記のようです。

 実際の「戦況」からしても、即時停戦すべき時期となったと、私は考えています。
 具体的には、停戦とは、まず双方が武力使用停止を合意すること。次に「ミンスク合意2」が停戦条件、あるいはその出発点として浮上してくるでしょう。 

 奏法の武力停止が重要です。「まず、ロシア軍の撤退」を主張する人がいますが、戦況を理解していませんし、現実的ではありません。双方が兵を引くことが重要です。ロシア軍の一方的撤退は、例えば、ブチャの虐殺のような悲劇、同じ悲劇が繰り返されるでしょう。ブチャの虐殺はウクライナ軍/ネオナチの仕業だととらえています。(ウクライナ軍/ネオナチの仕業と証言する当時現地にいた記者がいます。ウクライナ政府から犠牲者の身元がいまだに明らかにされないことも理由の一つです。「犠牲者は白腕章をしていた」とする映像もあります。・・・これらから上記のように判断しています。いずれ、全容がわかるでしょう。)
(続く)


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