SSブログ

ウクライナ戦争 5)私たちはどのような態度をとるべきか? [世界の動き]

ウクライナ戦争

5)私たちはどのような態度をとるべきか?

 現在、起きている戦争をやめよ、止めろ!と主張するのが、平和運動/反戦運動であると私はとらえています。私の立場は非戦です。人が死ぬのを黙ってみている平和運動はありません。すぐさま停戦せよ! ウクライナに武器を送るな! まずは、この立場に立つことです。

 そのうえで、どうするべきか? ウクライナ戦争の根本的な対立内容は、ウクライナをけしかけたロシアに対する戦争計画、NATOの東方拡大、ロシアにとっては安全保障の危機だと判断しています。これを解消することが、長期的に見れば、かの地での対立、戦争の原因を解消することになります。

 当たり前の要求であり、認識だと私は思いますが、日本の平和運動団体、市民運動、環境運動、労働運動などの団体・グループは、このような認識を持つことがなかなかできていません。

A:日本政府に対して何を要求すべきか?

 そのうえで、私は、ウクライナ戦争において停戦の現実性が増してきた現在、「岸田政権は停戦を仲介せよ!」と日本政府に要求すべきだと考えています。(岸田政権は3月21日ウクライナを訪問しましたので、実際には違う道を選択しました。それでも私たちはオールタナティブなプランとして日本政府に要求すべきです。「実現しそうにないから要求として掲げない」というのは間違いです。)

 仮に、岸田政権が停戦を仲介する立場に立てば、各国政府と世界の人々に向かって日本政府は戦争に対して軍事力ではなく外交/話し合いによって解決する立場をとることをアピールすることになります。そうすることで、日本政府は名誉ある地位を獲得するとともに、各国の信頼を得るでしょう。そのことによって軍事費を倍増し、隣国を敵視しミサイル配備しない、善隣友好と平和外交を行うと宣言することにもつながります。中国に対しても、アメリカの尻尾にくっついて「台湾有事」を煽るのではなく、敵対ではなく友好を掲げ、外交交渉し、決して戦争とならない善隣友好の関係をつくりあげるべきです。そのことが日本の安全保障にとって最も必要なことです。

 凋落の見えてきたアメリカ政府は、①世界一の軍事力、②国際通貨であるドルを利用した経済制裁で、世界の覇権を維持しようと躍起になっています。中国に対しても「台湾有事」を煽り戦争状態/緊張状態を作ることで覇権を維持しようとしています。仮に戦争となっても、核戦争でない限り、戦場となり破壊されるのは東アジア=台湾、中国東海岸、日本・・・に限られ、アメリカ本土には及ばないので、アメリカにとっては万々歳です。中国の覇権を阻止したいのです。

 「台湾有事」は、ウクライナ戦争と同じ「代理戦争」であり、台湾や日本はウクライナと同じ「捨て駒」です。岸田政権は、ゼレンスキー政権のように代理戦争を行い、アメリカの捨て駒にされたいのか? ということです。ウクライナの死者、破壊・惨状は、明日の日本の姿であり、日本にとっては、破滅、安全保障の破壊です。もちろん台湾、中国にとっても。

 現代における日本にとっての安全保障とは、ウクライナ戦争停戦であり、「台湾有事」阻止であり、日中友好です。戦争の時代となれば、日本(日本資本も含め)の出番はありません。アメリカにさらに従属することになります。それは悲惨な未来です。

 アメリカ政府の影響から離れ中国との友好関係を築くこと、アメリカの主導する対中国経済制裁による世界の分断経済ではなく、開放経済であることが日本の安全保障をより確かなものにします。それ以外にありません。アメリカ政府による中国への経済制裁は世界経済の分断を生み出し、供給網が分断されコストが膨らみ、インフレが高進しています。したがって、米中分断阻止こそ、当面の経済危機回避でもあり、そこに日本の果たすべき役割があります。

 しかし日本政府、岸田自民党政権は、そのようなことは何も考えておらず、アメリカ政府にただ従うことしかしていません。きわめて危険です。

※ 「米中等距離外交」は、決して非現実的な対応ではありません。目の前に「手本」があります。ASEAN諸国は、「米中等距離外交」を掲げ、アメリカの傘下に入らず、米中双方と付き合うことで、安全保障を確保し、経済発展を実現しています。22年4月、シンガポールのリー・シェンロン首相は、アメリカ政府に向かって「我々に米国か中国かの選択を迫るな!」と強く要求しました。22年5月、シンガポールを訪問した米オースティン国防長官は、その気迫に圧倒され「米国は、貴国に対し米中、いずれかの選択を迫ることはしない」と明言させられました。ちなみにシンガポールは軍備を持っていません。
 TPPを離脱したアメリカには、市場として魅力がないのです。一方中国は「一帯一路」で市場を開いています。アメリカはもはやASEAN(ASEANばかりではありません)をつなぎ留めておく経済戦略を提示できる力がないのです。

 したがって、ウクライナ戦争に対してどういう態度をとるべきか? 「台湾有事」という偽の宣伝にどう対処すべきか、ロシアや中国との関係をどうすべきか? 世界情勢の理解の上に立ち、米戦略への従属した日本政府の軍備倍増、中国との危険な対立へ進む危険な外交・軍事政策に対して、別の道筋・オールタナティブなプランを提示することが、日本の平和運動、環境運動・・・・にとっても、必要です。

 ウクライナ戦争に対しては、⑴即時停戦・休戦せよ! ⑵武器支援するな! ⑶NATOは東方拡大するな!解体せよ!を掲げるべきです。「台湾有事」「米中軍事対立」に対しても、「米中対立の緩和」、交渉/会談を!という態度をとるべきです。「ウクライナ戦争」へどのような態度をとるか、ときわめて似ています。しっかりした考え方を持たない限り、戦争への総動員体制へ取り込まれた80年、90年前の戦前と同じように、戦争への総動員体制に組み込まれてしまいます。(「安保3文書」は戦争への総動員体制について規定あり)

 そんな問題意識は、特に最近特に欠如していると感じています。日本の労働運動、市民運動、環境運動、平和運動………に参加している人たちは、国際情勢に疎くなっています。世界は明らかに変動しており、変化する国際的な動きについて、情報を独自に集め検討し理解し、そのうえで運動の方向・内容を随時検討し見直すことができていないのではないでしょうか? それがなければ、新たな現実に対応できなくなります。日本の運動全体の「老化」「衰退」が進むことになります。

B:ヨーロッパの平和運動の新たな動き

 ヨーロッパでは、これまでの平和運動団体、環境運動団体の多くは、ウクライナ戦争を前にしてNATOがロシアと戦争することを支持してきました。ドイツ外相である「緑の党」ハーベック党首はきわめて好戦的であり、ロシアとの戦争の積極的な推進派です。

 ヨーロッパの環境運動、平和運動の多くが、「祖国擁護」の立場から、自国とNATOのウクライナ戦争支援/武器支援を支持する現象が生まれています。グレタ・トゥーンベリさんが、22年12月「CO2排出削減のために、原発稼働を容認する」と発言し、私は(そして世界の多くの人は)ずいぶん失望しましたが、そのような発言が出る背景には、「ロシアとの戦争は「祖国擁護」なので致し方ない、それを前提にした考えがあるのでは?」と解釈しています。詳細の事情を知っている方があれば、お教え願ください。

 ヨーロッパでは、戦車「レオパルド2」のウクライナ提供を決めてから、各地で武器支援するな! 戦争を拡大するな!のデモが目立ち始めました。 ⑴即時停戦・休戦せよ! ⑵武器を送るな! ⑶NATOを脱退せよ! のスローガンを掲げる団体のデモが各地で生まれています。

 23年2月26日に反NATO、ウクライナへの武器輸出に反対のデモは、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、スペイン、ポーランド、モルドバで行われました。G7諸国中5ヵ国で反戦デモがありました。これまでにはない新しい動きです。現在は、NATOは分裂へのモメントが働く局面へ移行しつつあります。欧州各国にとって、アメリカ政府と一緒になって(NATOがその推進組織ですが)、ウクライナ戦争の戦線拡大、戦争関与にさらに踏み込むことは、より難しくなっています。それどころか、現在と近い将来の足かせとなりかねない情勢が生まれています。

 NATO、G7の政治指導者ばかりでなく、市民運動や平和運動、環境運動に取り組む市民も、起きている新しい事態、動きを正確に把握し、現実政治・戦争政策に対するより徹底的な批判と行動とることが必要となっています。現状の動きは変化していくので、私たちの批判や行動はこれに対応していかなくてはなりません。私は、この⑴~⑶の要求を掲げないものは、現代ではすでにニセモノの市民運動や平和運動、環境運動……と化したと、とらえています。⑴~⑶を掲げるのが、真の平和運動ですし、真の環境運動ですし、国際主義です。 戦争を前にして「真贋」がはっきりするものです。

 日本の平和運動、環境運動、市民運動にとっても、真贋の判定基準になると私は考えています。

C:中国の停戦提案

 別の面からもすでに停戦への動きは起きています。

 23年2月24日、中国政府は早期停戦と和平交渉を促す12項目の仲裁案を発表しました。3月9日の日経記事(北京/羽田野主 記者)は以下の通りです。

**********

 「これまで中国政府は、ウクライナ戦争に対する具体的な行動には慎重な態度をとってきたが、今回、仲裁案を公表し、その態度を今回変えたといえる。
 その背景は、中国人民解放軍直属の軍事科学院――軍の最高意思決定機関や中央軍事委員会への提言や報告がその役割――が、2022年12月ウクライナ情勢をめぐるシミュレーションをまとめた。その内容は、「23年夏ごろ、ロシア軍が優勢なまま終局に向かう」というものだった。「ウクライナ、ロシアとも経済的疲弊が激しく、23年夏にも戦争継続が難しくなる」との見立てだ。
その根拠の1つ目は、23年夏以降、米国の支援が見込めないことだ。
これまでの米国の支援額は、ウクライナへの援助額全体の約半分を占めてきた。22年12月、米議会は450億㌦(約6兆円)の支援を決めたが、この予算は23年夏には切れると見込まれている。新たな追加支援支出は、米共和党が米下院で多数派を握ったこと、米政府債務が上限31.4兆ドルに達していることから、難しくなっている。
日本の首相官邸幹部は、「秋以降は米国の支援がどうなるかわからない」と語っている。
 米国が主導しウクライナ戦争を推し進めており、欧州はNATOとして武器支援を拡大しているものの、独仏などには早期停戦を望む声がくすぶっている。
したがって、中国の仲裁案提示により停戦協議が始まるとのシナリオには、それなりに現実味がある。中国政府は軍事科学院の報告を受けて、仲裁案の作成を始め、2月24日の公表となった。
2つ目は、中国とウクライナは良好な関係を保ってきた。ウクライナを失う必要はない。仲裁案には、「経済復興計画策定」を盛り込み、すでに経済支援策の検討に入った。
3つ目は、(中国が)停戦の主役を勝ち取ることだ。習近平氏のロシア訪問も検討中だ。…中国が主導して停戦に持ち込めば、中国とも米国とも距離を置く途上国「グローバルサウス」を引き込む契機になる。
 中国にとって欧州との経済関係は重要であるし、「欧州からの中国向けの直接投資や技術移転はまだ見込めるだろう」と期待しており、関係改善が経済回復にもつながる。
このような情勢判断から、「停戦協議の開始前に中国が積極的に関与すべきだ」との判断に至った。
これが、中国がウクライナ戦争に対するこれまでの慎重姿勢から、一転して仲裁案を提示するに至った背景であろう。」
**********

 ウクライナ戦争後を睨んだ世界各国の動きが表面化しています。中国の停戦提案はその動きの一つです。

 また、2月10日、訪米したブラジルのルーラ大統領は米CNNテレビのインタビューで、「ブラジルは戦争に加わらない、武器供与はしない」と語りました。そのあとバイデン大統領と会談しており、そこでもブラジルの立場を説明したと思われます。

 それから、最近、新たな動きが続いています。

 アメリカの地位は、徐々に低下しており、中東やアフリカ、ASEAN、南米における影響力は目に見えて低下しました。その分、アメリカ陣営内では、欧州、豪、日などの同盟国への負担強要・支配が厳しくなっています。ウクライナ戦争を機にNATOをテコとして、ドイツとヨーロッパはアメリカへの従属を強めました。日本は先にアメリカの言うなりの政府となっています。英国もEU離脱で存在感を失いアメリカの使い走りになることで存在感を示す以外に選択肢がなくなりました。3月20日、劣化ウラン弾をウクライナに供与すると発言するに至っています(英紙ガーディアンなどによると、英国防省のゴールディー閣外相が、「ウクライナに劣化ウラン弾を供与する」と議会で発言)。

 それらは、G7が既存権益維持に躍起となり、反動化していることでもあります。G7反対運動は、そのような認識の上に立った運動を行うべきです。

 その一方で、中国の姿が大きくなってきました。
 23年3月10日、中国が仲介して、対立していたと思われたイランとサウジアラビアが関係正常化に合意し、2ヶ月後にお互いの大使館が設置されます。中国が一気に正常化に漕ぎ着けました。アメリカ政府はただ座視するだけです。イラン、サウジアラビアは共に中国、ロシアが加盟するBRICSへの加盟を希望しています。

 ウクライナ戦争後の世界再編はどうなるか、を睨んだサウジとイランの対応です。特に、サウジはアメリカの勝手な振る舞いにうんざりし、距離を取ろうとしています。その向かう先が中国中心のBRICSでした。

 これは画期的な出来事でした。中東におけるアメリカの地位が低下し、サウジもアメリカの影響下からより離れる選択を中国を仲介にして行ったのです。

 南米ブラジルと経済同盟メルコスールを結成したアルゼンチンもBRICSに参加を希望しています。両国はドイツからのウクライナ支援、武器支援の要請を断りました。

 メキシコ、インドネシア、イラン、サウジアラビア、トルコ、エジプト、アルジェリア、ベラルーシなど、20ヵ国がBRICS加盟を希望しています。

 アメリカ、NATO諸国、G7の主導してきた世界秩序に対する批判・反発は、中国を軸にしたBRICSへの結集という世界秩序再編の動きとなって、顕在化しています。それはウクライナ戦争を起こして、しかも止めようとしないアメリカとNATO、G7への失望があるのでしょう。

 アメリカは世界の覇権を維持しようと、⑴世界一の軍事力、⑵世界通貨ドルを根拠とした経済制裁で、支配し従わせようとしてきましたが、そのようなアメリカによる世界秩序に対する反発と「拒否」が広がるとともに、中国がその受け皿として登場しています。中国人民元を基準とした通貨バスケットによる貿易決済が急速に生まれています。アメリカ・ドル一極体制が解体する兆しが見えてきました。世界の覇権が英から米に移り、やや遅れて国際通貨が英ポンドから米ドルに切り替わってきた歴史が思い出されます。

 ウクライナ戦争後を睨んだ世界各国の動きが表面化しているのでしょう。アメリカ、NATO、G7による秩序から離れ、中国とBRICを中心とした新たな世界秩序への移行が始まっています。アメリカ、G7(日本も含む)は、やがて時代遅れの産物と化すのではないでしょうか?

 ウクライナ戦争後は、アメリカと欧州の権威と地位が低下した世界となるとグローバルサウスの国々は判断しているのでしょう。中国による停戦提案は、こういった世界の変化(アメリカの凋落、欧州の権威失墜)を睨み提示されていると理解すべきです。

 私は、ウクライナ戦争については、中国の停戦提案を支持すべきだと考えています。「戦争継続/戦争拡大」は誰であれ間違いです。「停戦提案」は誰であれ、より正しいと判断します。市民運動、民主運動レベルでも、支持するべきではないかと思います。

D:G7に対して、私たちは何を掲げるべきか?

 23年5月、広島でG7が開催されます。
 G7反対の取り組みが準備されていますが、G7こそウクライナ戦争をやっている当事者です。アメリカとG7がつくり出している現世界秩序が、問題となっているのです。全米民主主義基金やソサイアティ財団(ジョージ・ソロス)で親米勢力を育て、暴動・混乱を起こしたら傭兵を使い戦争を仕掛け、社会に混乱状態をつくり出して政権を打倒し、傀儡政権を使って支配する、そのあと資源を略奪する――こういうG7が推し進めてきた世界秩序が、いま問われているのです。日本もその一員に加わっています。ウクライナ戦争もその一つと言えるでしょう。そのような理解に立たなければなりません。

 広島で開かれるG7反対運動は、①ウクライナ戦争の即時停戦・休戦せよ! 交渉で解決せよ! ②ウクライナへ武器支援するな! ③G7は戦争継続するな!戦争を拡大するな!④戦争の原因であるNATOの東方拡大をやめよ! NATOを解体せよ! をメインスローガンとして掲げるべきだと考えます。これを掲げなければ、G7反対にはなりません。

以上

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。