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ウクライナ戦争  3)ロシアの言い分は正しいか? [世界の動き]

ウクライナ戦争

3)ロシアの言い分は正しいか? 

 ロシアにも言い分はあります。その検討をするべきでしょう。

 ロシアの要求(「特別軍事作戦」の目的)は、A ウクライナの非軍事化、NATO非加盟、 B ウクライナ政府の非ナチ化 であると主張しましたし、現在もそのように主張しています。

A ロシアの要求「ウクライナの非軍事化、NATO非加盟」に根拠はあるか?

 「ウクライナがNATO に加盟すれば、モスクワまでの距離は500㎞となり、そこにNATOが戦略核兵器を配備すれば、ロシアは安全保障の戦略を失ってしまいます」(23年1月、ダボス会議でキッシンジャーの発言)。

 おそらく、その通りなのでしょう。私は「核軍事戦略」が、どのようにして「均衡」を保っているのか?・・・・について詳しくありませんので、詳しい方に教えていただきたいと思っています。

 ウクライナ戦争を引き起こした歴史的な背景は、NATOの東方拡大にあります。1991年ソ連解体の直前にワルシャワ条約機構は廃止されました。しかし、これに対抗し組織されていたNATOは廃止されず、それどころかじわじわと東方へ拡大していきました。すでにポーランド、バルト3国が加盟し、ウクライナ加盟が日程に上がってきました。NATOは軍事同盟です。加盟すれば、戦略核ミサイルを含めあらゆる軍事力の配備が可能になります。これはロシアの安全保障にとって極めて重大な脅威です。ロシアは一貫してNATOの東方拡大を止めるよう求めてきましたが、NATO側は無視してきました。

 ロシアの安全保障にとって重大な脅威であることには間違いありません。

 1960年代初めアメリカはソ連を攻撃可能な大陸間弾道ミサイルだけでなく、西ヨーロッパとトルコに中距離核ミサイルを配備しました。これに対抗し1962年夏、ソ連はキューバに密かに核ミサイルと発射台などを配備しました。これを知ったアメリカ/ケネディ政権は、核ミサイルの撤去を迫りました。当時のケネディ政権は重大な脅威と感じたのでしょう。最終的にケネディ大統領とフルシチョフ第一書記の交渉により、ソ連が核ミサイルを撤去してこの危機は一応、収まりました。

 アメリカ政府は、核ミサイルが近い距離に配備されれば核戦略は崩れることをよく知っているはずです。そうであるのに、この30年、一方的にNATOを東方へ拡大してきたわけです。

 22年2月27日(日)フジテレビ「日曜報道 THE PRIME」で、安倍元首相がプーチンの意図について問われ、安倍首相の「理解」を述べています。

 安倍「プーチンの意図はNATOの拡大、それがウクライナに拡大するという事は絶対に許さない、東部二州の論理でいえば、かつてボスニア・ヘルツェゴビナやコソボが分離・独立した際には西側が擁護したではないか、その西側の論理をプーチンが使おうとしているではないかと思う。」、
プーチンは基本的に米国に不信感をもっているんですね。NATOを拡大しないことになっているのにどんどん拡大している・・・・・・。ポーランドにTHAADミサイルサードミサイルまで配備している……プーチンとしては領土的野心という事ではなくて、ロシアの防衛、安全の確保という観点から行動を起こしていることもあるだろうと思います・・・・・・。」 (孫崎享ブログ23年3月25日から)

 ここに「大元の原因」があります。これはだれしも認めるところでしょう。ウクライナ戦争は停戦すべきですが、戦争と対立の危機を最終的になくすには、NATOの東方拡大をやめること、軍事同盟NATOによる脅威でもって世界を脅し支配するアメリカ政府の現在のやり方をやめること、最終的にはNATO解体することが必要になるでしょう。

 そのような認識をぜひ多くの人と共有したいと希望します。この「真実」を「忘れる権利」は、誰にもありません。常に意識し、事態に対応しなくてはなりません。

 私は、ロシアによる「ウクライナのNATO非加盟」「ウクライナの非軍事化」の要求には正当な根拠があると判断しています。

B ロシアの要求 「ウクライナ政府の非ナチ化」
B-1:ウクライナ政府はネオナチ政権なのか?

 まず、ウクライナ政府がネオナチかどうかですが、この一年、意識的に調べてきました。やはりネオナチです。ステパン・バンデラの系譜であるネオナチ集団が権力を握っており、恐怖政治を敷いています。最近ではいくつかの報道が出てくるようになりました。しかし、西側政府と主要マスメディアは、これを意図的に隠しています。

 ウクライナ政府の呼びかけに応じて、世界の極右団体(=ナチズムを復興しようという勢力、白人至上主義)がウクライナに結集しています。ウクライナ政府、軍隊、議会にネオナチがかなり浸透してきており、すでにネオナチが政府権力を握っています。

 2019年ゼレンスキー政権もネオナチと関係を深め、ネオナチ政権となりました。

 ウクライナにはいくつものネオナチの団体、私兵集団、政党と議員が存在しています。「アゾフ大隊」が最も有名ですが、それだけでなく、「右派セクター」、「C14」、「ドニプロー1大隊」、「エイダー大隊」・・・・・など数限りがありません。

 その特徴は、まず民間の私兵集団・武装組織として発足し、市民を暴力で襲い時に殺人を犯し人々を黙らせ、ウクライナ政府である警察や軍の一部になっていくことで、政府内に基盤を持ち警察組織や正規軍となり、さらに政党を結成し議会に議員を送り出すに至っています。そのようにして今や、ウクライナ政府はネオナチの政権となっています。思想はナチズムであり、ステパン・バンデラを始祖としています。

 「アゾフ大隊」は、2014年マイダン革命以後、ウクライナ政府内務省の認可を受けたパトロール警察となり、アゾフ大隊私兵集団がロシア人、親ロ派の政党、団体、労働組合などを武力攻撃してきました。のちに国家親衛隊所属(=正規のウクライナ軍)になりました。

 アゾフ大隊指導者はアンドリー・ビレツキーで、ネオナチ政党National Corpを創設し、議席も持っています。アンドリー・ビレツキーの思想はかつてのナチス・ドイツの思想そのものです。例えば、「ユダヤ人のような劣等人種に対する最後の戦いで白人世界をリードする」という発言も残しています。現在は、ユダヤ人ではなく、ロシア人を標的にしています。アメリカのネオコンの意向と合致しているからです。2014年以降、ロシア人、ネオコンに敵対する政党と支持者、労働組合…などを暴力・武力で襲ってきました。

 ウクライナの大富豪イゴール・コロモイスキーは、アゾフ大隊のスポンサーであり、資金を提供しました。ちなみにゼレンスキーを大統領候補に引き立てたのもイゴール・コロモイスキーです。

 ビクトア・メドヴェドチェック野党第一党党首が、アゾフ大隊に襲われました。2020年8月、アゾフ大隊はメドヴェドチェックの支持者(野党支持者)の載ったバスも襲っています。この野党は2014年のクーデター(マイダン革命)以前には、政権を担っていました。テロ行為であり、犯罪ですが、捕まりません。21年5月ゼレンスキー政権はアゾフ大隊を告発するのではなく、逆にメドヴェドチェック党首を国家反逆罪で逮捕しました。彼は今獄中にいます。先日(23年3月中旬)、ロシアとの捕虜交換で釈放されたとの報道がありました。

 「右派セクター」の指導者はドミトロ・コチュバロ(Dmytro Kotsyubalo)です。ゼレンスキー大統領は22年1月、ウクライナ英雄勲章授与しました。

 「C14」は、ギャング組織、ヘイトグループ(ニューヨーク・タイムズ)。 指導者はイェウヘン・カラス。顧客から金をもらって敵対する相手を襲うことで、勢力を拡大してきました。ロシア人粛清だけでなく、ロマ人粛清もやっており、アメリカ政府と懇意で大使館にも出入りしています。2017年11月、「ウクライナ保安庁から親ロ派に関する情報が「C14」に送られる態勢になっている」ことが報じられました。また2018年3月には、キエフ市が市内の警備活動を「C14」に委託しました。「警備活動」により、ロシア人、親ロ派の人々、ドンバス戦争に反対する人々を粛清しています。

 2021年11月、有名な極右活動家であるドミトリー・ヤロシが、ウクライナ軍最高司令官顧問に就任しています。

 ゼレンスキーは2019年5月の大統領選挙で、「⑴ネオナチを解体する、⑵ドネツクの戦闘を止める、⑶ミンスク合意を遵守する」と公約して大統領に当選しました。ゼレンスキーはユダヤ人であり、ネオナチとは関係ないとアピールしました。国民の多くは、ポロシェンコ前大統領によるドンバスへの攻撃、ロシアとの戦争を嫌っていましたので、ゼレンスキーに投票しました。

 しかし、ゼレンスキー政権成立直後から、ネオナチは議会では「ミンスク合意」破棄を主張し、ウクライナ軍と私兵集団による「合意違反」を頻発させました。アゾフ大隊、右派セクターは、東部ドネツクに兵を送り、ロシア語系市民を攻撃しました。大統領となったゼレンスキーはこれを抑えるのではなくネオナチに接近し、ドンバス戦争を支持しロシアと戦う方針に転換しました。その過程で、ゼレンスキー政権は、(内部にネオナチに敵対する者のいない)完璧なネオナチの政権となりました。

 2014年以降、ウクライナ政府はネオナチが権力を握っており、ネオナチによるテロ支配が横行しています。ゼレンスキー政権となっても、ネオナチ政権であることは変わりません。ゼレンスキーはアメリカ政府とウクライナのネオナチのマリオネットであり、彼が全権力を握っているわけではありません。

 アメリカ政府、特にそのなか巣食うネオコン(中心人物はビクトリア・ヌーランド国務次官)は、ネオナチを育て支援し利用することを一貫して行ってきました。「ロシアを弱体化する」「ロシアを4つに分断し支配し、資源を奪う」というネオコンの戦略目標のために、ウクライナのネオナチを育て支援してきました。ウクライナ政府がナチ化することを、西側は止めませんでした。

 プーチンが軍事作戦の目的の一つを、非ナチ化を掲げているのは、ウクライナのネオナチ政権が、人種差別思想に基づき、ロシア語系ウクライナ人を弾圧・迫害・攻撃しているからです。それだけでなく、アメリカのネオコン政権とNATOの手先となって戦争挑発、戦争準備をしてきたからです。

 アメリカ政府・NATOは、ウクライナ政府がネオナチ政権であること、ネオナチがウクライナ政府、ウクライナ軍、議会に深く浸透していることを隠しています。2014年のマイダン革命(ネオナチによるクーデター)は、米国が資金援助しました。ビクトリア・ヌーランドによれば50億㌦つぎこんだと言っています)。

 上記以外に、ウクライナで何が起きているのか、断片的にいくつかのことを下記に記します。

〇 2014年のマイダン・クーデターのあと当選したポロシェンコ前大統領は、「ロシア語を公用語から外す、ロシア人は公務員/軍人には採用しない、年金は支給しない」と演説し、実際その政策を実行しました。ポロシェンコ演説はyou tubeで公開されています。ポロシェンコはまた「ミンスク合意」を遵守するつもりはないと公言していました。彼の発言/政策もネオナチの思想からきています。

 ウクライナ軍がドンバス地域のロシア語系市民を直接攻撃しました。ウクライナのロシア語系市民は生きていくことができません。ドンバス、ルハンシク、クリミアなどで選挙が実施された時、親ロシア派が圧倒的多数で支持されたのは、これが理由です。

ウクライナでは公式にはロシア語使用禁止です。ロシア語文学はすでに読むことはできなくなりました。プーシキンも、トルストイも、ドストエフスキーも読むことはできません。

2014年から、東部のロシア系住民に対してアゾフ大隊などが民間人を攻撃してきました。14,000人殺されたと国連に訴えています。22年2月24日ウクライナ戦争後の現在もウクライナ軍によるドンバス地域の住宅、都市など民間施設への無差別攻撃・砲撃として続いています。

ウクライナ軍の戦闘では、民間人を盾に使っています。マウリポリでも、バフムトでも。これは交戦中の行為としては「戦争犯罪」(伊勢崎賢治/東京外語大学教授 22年12月10日宮古島での講演で、「長周新聞」)です。

ウクライナ共産党は解散命令が出ており、指導者たちは獄中にいます。(日本共産党を除き)世界の共産党は抗議声明を出しました。野党13党(ゼレンスキー政権の与党以外の党)は禁止されています。ロシアとの戦争に反対する指導者は獄中にいます。

18歳~60歳の男性の出国は禁止されています。最近、ネオナチの軍人が、オデッサなどの街中で男性を捕まえ何件もの強制徴兵を行ったことが問題になっています(ウクライナTV--ロシアでも西側でもなくウクライナ政権のTV放送)。兵が足りなくなっているのでしょう。
 こういうウクライナを、西側政府と主要メディアは「自由と民主主義」のウクライナと報じています。

 断片的に記しましたが、これらネオナチ政権が何をしているか、ウクライナ社会の実態も引き続ききちんと調べ継続して全体像を明らかにしなくてはなりません。

 ウクライナのネオナチとその所業について、自身で調べることが大切です。ウクライナ政権支援が決して「自由と民主主義」支援ではないことが判明します。

Bー2:ネオナチ政権であることをもって、ロシアは「特別軍事作戦」発動の理由とできるか?

 上記のことを踏まえたうえで、次のことを確認しなければなりません。

 「ウクライナ政府がネオナチ政権であるという理由で、ロシアの「特別軍事作戦」は許されるわけではありません。」 

 どんな独裁政権であったとしても、他国が軍事加入することは、国連憲章、国際法からすれば、それは違法です。

 ただし、アメリカ政府、NATOは、そのことを批判する権利を持ちません。なぜならば、例えば、リビアのカダフィ政権が独裁政権であることをもって、アメリカ、英、仏、伊はリビアを空爆し、他方でアルカイダ系の雇い兵が地上戦を行い、カダフィ政権を倒しました。

 また、アメリカ政府は、シリアのアサド政権は独裁政権であるから認めないとして、アメリカ軍を派遣しシリア国内に勝手に14もの基地を建設し、現在もなお駐留し、シリアの石油を盗掘・販売しています。(青山弘之 東京外語大教授)

 ほかにもたくさん例はありますが、アメリカ政府、NATOがこれまで国連憲章、国際法に違反した戦争を自分勝手に行ってきたという事実です。しかも、現在も行っています。アメリカ政府、NATOがこれまでやってきたリビアやシリア、コソボそのほかの戦争行為は国連憲章、国際法に照らして正当だと主張するなら、ロシアの軍事作戦も適法として認めなければならないでしょう。

 ロシア政府は「特別軍事作戦」の根拠として、ロシアはネオナチ政権だから作戦を実行したとはしていません。ウクライナ軍から攻撃を受けたドネツク共和国、ルガンシク共和国から要請があったので、集団的自衛権を行使し、作戦を実行したと説明しています。私は、「根拠としては危ういところがある微妙な説明」だとは思います。

 ウクライナの非ナチ化の実現を、他国(この場合はロシア)が軍事力で実行することはできません。ウクライナ国民だけにその権利があります。ネオナチの思想や行動を批判はできますし、そのような訴えをウクライナ国民に対して行うことは可能ですが、軍事作戦を実行する理由にはなりません。
(続く)

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