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マニラに、慰安婦像が立つ! [元「慰安婦」問題]

マニラに、慰安婦像が立つ!

1)マニラに慰安婦像が立つ

 マニラのロハス大通り沿いの海岸遊歩道に、フィリピンで初めて「フィリピン人慰安婦像」が設置され、日本が太平洋戦争を始めた12月8日に除幕式が行われた。中国系フィリピン人でつくる財団(Tulay Foundation)やフィリピン元慰安婦団体リラ・ピリピーナが準備を進め、フィリピン政府機関の一つ、フィリピン国家歴史委員会(NHCP)が設置し、8日にマニラ市に引き渡された。
 目隠しをされた民族衣装姿のフィリピン女性が立ち、慰安婦被害者を象徴する。高さ約3メートル。台座には「日本統治下で虐待被害に遭ったフィリピン人女性の記憶である」と記されている。

フィリピン慰安婦像.jpg
<マニラ市ロハス通り沿いに立つ慰安婦像>

2)外務省がフィリピン政府に抗議した?!

 マニラの慰安婦像に対し、在フィリピン日本大使館は「日本政府の立場と相いれず、極めて残念だとフィリピン政府側に伝えた」とコメントし、菅官房長官は12日の記者会見で遺憾の意を表明した。
 日本政府にそのような申し入れを行う資格もなければ、権限もない。

 毎日新聞前ソウル支局長の記者、澤田克己が、在マニラ日本大使館がフィリピン政府に「『日本政府の立場と相いれない』と抗議した」ことに問題があると書いている。
 日本はこれまで中国や韓国に対して、歴史に対する捉え方は立場によって違いうるから、アジア太平洋戦争における日本の侵略についての中国や韓国の「歴史認識」を日本に押しつけるなと主張してきた。例えば、2013年2月の朴槿恵大統領就任式に出席した麻生太郎副総理兼財務相は「米国内でも南北戦争に対する評価は北部と南部で違う」ことを例に出して、歴史認識とは相対的なものであると説き、朴氏を激怒させたことがある。
 それなのに、フィリピンには日本の立場を押しつけて当然だという態度をとっているのだ。
 当然ながらフィリピン政府は「日韓合意」の当事者ではないから、「合意」の精神に反しているなどとは決して言えない。しかもマニラの像は在マニラ日本大使館前に立っているわけでもないので、外交上の儀礼も問題になりえない。

 日本大使館が抗議の根拠とした「日本政府の立場」とは何か、意味不明なので、澤田記者は問い合わせたところ、外務省は「フィリピンとの間ではサンフランシスコ講和条約で法的責任に関する問題はすべて解決済みというのが日本政府の立場だ」と答えたという。

 外務省の理屈からすれば、法的責任の問題が解決された後に慰霊碑を建てたらいけないことになる。だとすると、サンフランシスコ講和条約では日本も対米請求権を放棄し、法的責任の問題を解決させているから、米国政府から東京大空襲や原爆犠牲者の慰霊碑に文句を言われても致し方ないことになる。広島や長崎の原爆慰霊碑は、撤去すべきだというのか!
 
 もはや、日本政府、外務省の対応は、常識を逸している。日本政府内に「日韓合意」の拡大解釈が目立つ。しかもそれをフィリピン政府に押し付け、マニラの慰安婦像に抗議しているのだ! 
 外交上実に尊大な態度ではないか。日本政府にそのような抗議を行う資格もなければ、権限もない。そのことを知らなければならない。

 日本政府・外務省ばかりではない。12月にサンフランシスコ市議会が全会一致で慰安婦像の設置を決め、サンフランシスコ市長も賛成した。このことに抗議し、大阪市が姉妹都市を解消するに至っている。
 慰安婦被害は過去に存在したのであり、二度と繰り返さないことを願い「平和の像」を建てることは、抗議するようなことか! そうではなかろう。大阪市長がなすべきなのは、抗議することではなく、大阪市の土地に慰安婦像を建てるべきであろう。
 人権を尊重しない愚かな日本の政治と政治家を、世界中に晒しただけである。

3)各地で像が立つ

 慰安婦像設置は、韓国、中国、米国など各地に広がり、今回フィリピンに及んだ。私たちはこのような動きをうれしく思う、その広がりに勇気づけられる。そこには被害者を支持する人々の連帯がある。決して国家間の対立ではない、人権尊重という普遍的価値の訴えがある。

 慰安婦問題は日本軍、日本政府による国家犯罪であるから、日本政府が歴史的事実と法的責任を認め、公式謝罪と賠償を果たして初めて、根本的に解決する。責任を認めず、「アジア女性基金」や「日韓合意」による「癒し金」を配って被害者を黙らせてきた日本政府の態度こそ、長引かせるだけで、解決してこなかった原因なのだ。そのため、各地に像が立つ。

 上海市の像は、中国人、朝鮮人を象徴する被害者2人が並ぶ。サンフランシスコ市の像は、中国人、朝鮮人、フィリピン人被害者3人が手をつないで立つ。それを見て、私たちは思う。そこに日本人慰安婦被害者やほかの国々の被害者も加えた慰安婦群像を、ここ東京にこそ設置したい。
 慰安婦問題の根本的な解決を求める声が日本国内で広がるなかでそれは可能となる。







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安倍首相は、「少女像」を直視できない! [元「慰安婦」問題]

安倍首相は、「少女像」を直視できない!


 戦後72年を迎えたこの夏、韓国では植民地時代の日本政府批判の動きが続きました。戦時中、日本に強制徴用された徴用工の像がソウルなどに建てられたのをはじめ、「慰安婦」問題を象徴する「平和の碑 少女像」(以下:「少女像」)が全国約10カ所で新たに除幕され、日本政府に謝罪と賠償を求める市民団体が次々と記者会見を開きました。

 ソウル中心部の清渓川(チョンゲチョン)広場では、市民団体が南北朝鮮などに在住していたとする元「慰安婦」500人分の「少女像」のミニチュア像を展示しました。

 文在寅(ムンジェイン)大統領は8月14日、大統領府で独立運動などにゆかりのある214人とともに、元「慰安婦」と元徴用工4人も特別に招きました。

 8月14日から、ソウル市内を循環するバスには「少女像」が乗車しました。151番路線バス34台のうち5台の座席に、9月末までの期間限定ながら、「少女像」が設置されたのです。

 さっそく、菅義偉官房長官が「未来志向の(日韓)関係を発展させる努力に水を差すことになりかねない、適切な対応」を韓国側に求めました。「日韓合意」後、日本政府のとった対応は、ソウル日本大使館前の「少女像」を撤去するよう執拗に求める一方、釜山領事館前に「少女像」が市民の手によって設置されると、対抗措置として駐韓大使と釜山総領事を三か月にわたって帰国させました。

 日本政府は、「少女像」を目の敵にしています。「少女」であることにも不満なようで外務省は「慰安婦の少女像」と呼んだりしています。

 安倍首相、日本政府は、「少女像」がなぜ少女なのか、理解できないのです。

 「少女像」のモデルがなぜ14歳なのか、理解できないのです。
 安倍首相や河野外相、菅官房長官、外務省は、理解したくないかもしれませんが、歴史事実をきちんと理解し認めなければなりません。

 日本政府が1925年に批准した「婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約」は、21歳未満の女性の場合は、本人の承諾あるなしにかかわらず売春に従事させることを全面的に禁止し、成年であっても詐欺や強制的手段が介在しておれば刑事罰に問われることを定めています。ただ、この国際条約には植民地などに適用しなくてもよいとの規定がありました。日本政府と旧日本軍はこの規定を利用し、植民地である朝鮮と台湾にはこの条約を適用しないことにしました。すなわち、朝鮮と台湾の女性の徴集には国際法の制限はないとして、「慰安婦」の供給源としたのです。こうして未成年の女性や売春経験のない女性が多数徴集されました。(その後、このような適用はフィリピンやインドネシアなどの占領地でも同じように行われました。)

 このような歴史的経過が、14歳の少女を「少女像」のモデルとしている理由です。もちろん被害は「少女」だけに限られるものではありません。当時の植民地支配下の少女や女性たちの受けた被害に対する想像力を持とうとしない安倍晋三首相や日本政府、外務省には、この「少女像」が直視できません。直視せず、「癒し金」で黙らせようとする態度をとるから、かの地で「少女像」がどんどん増えていくのです。
 
 「少女像」の意味をまったく理解しないばかりか、「少女像」ではなく「慰安婦像」と呼称変更を求める声が、2017年1月29日、自民党・外交部会で相次ぎました。そこには、二重、三重の意味での無理解、無反省、人権意識の欠如が表現されています。

 「慰安婦」、「慰安所」という言葉は、戦前の日本政府・日本軍が、いかに女性の性を扱ったか、人権を蹂躙したかを示す「証拠」でもあります。「女性の性をもって兵士を慰安する」のが常識であったかつての日本軍、日本社会の姿を表現しています。海外のメディアのあいだに、”Comfort Woman”(=「慰安婦」)という呼称が定着したのも、「女性の性をもって兵士を慰安する」当時の日本軍の異様さが、呼称に表現されているからです。「少女像」ではなく「慰安婦像」と呼称変更を求めるのは、「慰安婦」制度、慰安所が「人道に対する犯罪」である歴史事実をまったく認めていない上に、反省もしていないからです。

 日本政府の無理解を咎めるように、国連の各人権委員会は、「慰安婦」制度=性奴隷制度と規定しています。
 
 安倍首相、日本政府、外務省、さらには自民党外交部会の議員が、「少女像」へ反発の気持ちを持つのはなぜでしょうか? 「少女像」が、日本軍の「慰安婦」「慰安所」制度の犯罪、人権侵害を暴露してしまうからです。少女や女性たちを「慰安所」に送り「慰安婦」とした歴史的事実を、隠してしまおうとしているからです。「少女像」を「慰安婦像」と呼称変更すれば、責任を逃れられるという考えすら持っています。
 
 安倍首相、「少女像」を直視してください。
 背後のある多数の「慰安婦」被害者の被害事実を直視してください。
 「慰安婦」制度が、日本政府・日本軍が犯した「人道に対する犯罪」であった歴史事実を直視してください。
 そうすれば、「少女像」を目の敵にするようなことはなくなります。(文責:林 信治)

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新たな民主主義を打ち立てた韓国民衆運動 [元「慰安婦」問題]

新たな民主主義を打ち立てた韓国民衆運動
「日韓合意」を撤回させよう!
              
1)民衆運動の高揚が、朴罷免を決定した

 昨秋から2017月3月現在まで韓国民衆運動は、驚くばかりの高揚を見せ、韓国政治は大きく転換した。韓国民衆運動の高揚が朴槿恵大統領の罷免を決定した。2016年10月以降、市民の「ろうそくデモ」はソウルをはじめ韓国の様々な街を埋めた。3月1日節には多数の人々がデモに結集し、朴弾劾を叫んだ。このような民主運動の高揚を背景に、3月10日憲法裁判所は裁判官8名の全員位置一致で罷免を決めた。

 憲法裁判所は、朴槿恵大統領の弾劾訴追事由のうち「私人チェ・スンシルによる国政介入の許容と大統領権限の乱用」の一点だけで憲法と法律を違反した判断し弾劾を認め、罷免が確定した。
 「ろうそくデモ」の民衆運動は、勝利したことで韓国政治に新たな民主主義を打ち立てたと言える。そして今後の韓国政治において大きな「力」を獲得したことになる。民衆運動高揚のプロセスは、民主主義を実質のあるものにしていく、民主主義が力を獲得していくプロセスでもあった。このダイナミックな進展を、世界はなかば驚きながらも称賛をもって認めた。次のいずれの大統領候補も、民衆運動の力を考慮に入れないわけにはいかなくなった。

2)「平和の碑少女像」撤去阻止運動が生まれた!

 朴政権の退陣を求める民衆運動の高揚のなかで、朴政権の悪政の一つとして、2015年12月28日の「慰安婦」問題「日韓両政府間合意」(以下:「日韓合意」)が批判の的になった。「日韓合意」のなかで日本政府がソウル日本大使館前の「平和の碑少女像」撤去を韓国政府に要求し合意したものだから、韓国の人々の怒りを買い、各地で日本政府や朴政権から少女像を守れ!  少女像撤去絶対阻止!の運動が起こった。これまで「慰安婦」問題に参加していなかった人たちが自主的自発的に、少女像を守る団体を立ち上げ、各地で新たな少女像設立運動へと広げていった。韓国内にはすでに60体以上の少女像が設立され、韓国全体へと広がっている。日本政府による少女像撤去要求が直接的原因となり、少女像設立運動が広がったとさえ言える。「平和の碑 少女像」(以下:少女像)が公共造形物に指定される動きも広がりつつある。勝手に撤去させないという意味である。
 
3)日本政府は少女像への攻撃・妨害をやめ、「慰安婦」問題を解決せよ! 

 日本政府は1月6日、釜山領事館前の少女像設置への対抗措置として駐韓大使と釜山総領事の一時帰国を発表した。合わせて両国間で進めていた韓日通貨交換(スワップ)の協議を中断し、ハイレベル経済協議も延期した。

 長嶺安政・駐韓大使と森本康敬・釜山総領事を1月9日に日本に帰国させた。3月22日現在、いまだ帰任させていない。

 日本政府は、帰任させるタイミングを失った。こういう場合、何も解決できない日本政府はアメリカ政府内のジャパンハンドラーの人たちに頼み込み、韓国政府に圧力をかけて解決してきた。しかし、トランプ政権はいまだ閣僚やスタッフの任命が終わらず、それどころではない。他方、朴大統領は3月10日に罷免が決まり、大統領選挙の5月9日までのこの間、政治的空白の時期となり、さらにタイミングを失っている。

4)日本・外務省は機密費を使い、
 世界の各地で少女像設置への妨害、撤去工作を行ってきた!

 日本政府・外務省は、米カリフォルニア・グレンデール市でも豪州シドニー市でも、少女像撤去、妨害工作を行ってきた。国際社会のなかで、歴史を知らない国家、人権尊重をしない政府として、振る舞っている。日本政府は日本の右翼団体と一緒になって少女像を撤去するよう圧力をかけ、自ら進んで国際社会の笑いものになっている。これは加害者側による暴力であり、犯罪行為であるとともに、厳然たる平和に対する脅威、破廉恥な政治工作である。

 2015年12月28の「日韓合意」以降、日本政府によって繰り広げられている日本軍性奴隷制犯罪の否定、強制性の否定、法的責任の否認、そして少女像に向けた攻撃と歴史修正主義の主張と行為は、あらためて「日韓合意」の持つ犯罪的な意味を確認させた。「合意」は撤回、破棄されなければならないことが、より明確となった。

5)「日韓合意」の撤回が、具体的な政治課題になった

 すでに、韓国では「日韓合意」撤回が具体的な政治課題となっている。民衆運動の高揚のなかで「日韓合意」の内容――日本政府は「慰安婦」被害の事実を認めず、公式謝罪せず、賠償もしない、「癒し金」10億円を払う――があらためて、多くの人々の知るところとなり、被害を受けた韓国民の側からすれば「屈辱的な」合意であるという評価がしっかりと定着し、再交渉、撤回が叫ばれるようになった。 

 「屈辱的な」という表現には、過去の日本による朝鮮植民地支配への批判が反映している。植民地支配に対する反省も謝罪もない日本政府の態度に、韓国の人々は怒っている。日本政府が「慰安婦」被害という人権侵害への謝罪と賠償をしないことは、植民地支配を反省、謝罪しないことを意味するととらえた。日本政府に対する怒りが、韓国の人々の間に広がっている。全国民的なナショナリズムの様相さえ呈している。

 韓国政府、外交部と日本政府による移転要求に対抗し、釜山の少女像を守る釜山女性会のチャン・ソンファ代表は、「国民の名においての侵略と戦争犯罪を知らぬ存ぜぬで一貫する日本政府を糾弾する」と発言している。

 3月1日節の第18回目のろうそく集会に、日本軍「慰安婦」被害者の李容洙(イ・ヨンス)さんが舞台に上がった。「25年間、雨が降ろうが雪が降ろうが日本の謝罪を要求するデモを開いた。今回の韓日慰安婦合意を導いた朴槿恵大統領を弾劾させ、ユン・ビョンセ外交部長官を解任させなければならない」と述べた(聯合ニュース)。すでに、朴大統領は罷免が決定した。「日韓合意」を主導したユン・ビョンセ外交部長官への解任要求がすでに叫ばれている。

 大統領選挙は5月9日である。いずれの大統領候補も「日韓合意」の再交渉、または撤回を掲げるに至っている。5月9日までの大統領選の過程で、「日韓合意」は白紙撤回しかないことが、よりしっかりと確認されるだろう。そして、「日韓合意」撤回が具体的な政治課題となるだろう。

 私たちも、日本で「日韓合意」は元「慰安婦」被害者の人権侵害に対し、日本政府が謝罪していなければ賠償もしていないことを訴えるとともに、「日韓合意」押しつけるのでは決して解決しない事態となっており、「日韓合意」撤回を求めていかなくてはならない。(3月22日記)

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映画『太陽がほしい』を観る [元「慰安婦」問題]

映画『太陽がほしい』を観る
  
 11月2日、明治学院大学で班忠義監督映画『太陽がほしい』の上映会があり、観た。一部、二部 2時間44分。班忠義監督は20年間、中国の「慰安婦」被害者、戦時性暴力被害者を追い、撮りためた映像をまとめて作品にした。中国の山西省を中心とする被害者たちが名乗り出てから亡くなるまでの、日々の暮らし、生きた姿を描き出している。

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<高銀娥さん>

1)被害者は、安倍首相の嘘を暴く

 映画に登場する山西省の被害者たち、万愛花さん、尹林香さん、劉面換さん、尹玉林さん、高銀娥さん、郭喜翠さんらは、みな日本軍に捕まり、駐屯地やヤオトン、トーチカに監禁され、レイプされた。慰安所に入れられたわけではない、戦時性暴力被害者だ。被害が起きた村は、山西省の前線であり、慰安所もなかった。

 安倍首相は「慰安婦女性を強制連行した証拠はない」と発言し、2007年安倍内閣では閣議決定までした。日本の新聞、TV、週刊誌は、そのまま口移しに「強制連行の証拠はない」と報道している。しかし、山西省の被害者たちの被ってきた被害は、安倍首相の発言がまったくの嘘だと暴く。

 被害者は皆、日本兵の銃剣で脅され、駐屯地に連れていかれた。「強制連行」である。「強制連行」の証拠ばかりが目の前に映し出される。監督は映画で、安倍首相の言葉が嘘であることを暴いて見せた。もちろん、被害は「強制連行」だけが問題なのではない。

2)山西省の張双兵さん
 被害者が名乗り出るには、相当な苦労があったことを映画は感じさせる。20数年前に班忠義監督が現地を訪ね、証言を映像に記録したいと申し出たとき、被害者らは顔色を変え即座に家に逃げ帰り、戸を閉め切ったという。それは被害者たちが被害のあとどのように扱われてきたかを物語っている。
 監督は、現地で被害者を支援する山西省の小学校教師、張双兵さんと出会い、何度も通ううちに被害者と会うことができるまでになったという。
 名乗り出た被害者も立派だけれど、張双兵さんのような人こそまた立派ではないか。張双兵さんも、被害者を訪ねても、すぐには信頼してもらえなかったと語る。病気になった被害者を病院に運び、身の回りの世話もし、信頼される関係を築いてきた。
 映画は被害者と張双兵さんの関係を映し出す。張さんは田舎の教師で裕福にも見えない、権力にも縁のなさそうだ。「被害者の身の上に同情して被害を記録する活動を始めた」と語ってはいたが、そのような行動はなかなかできるものではない。
 証言をまとめ、戦時性暴力被害への謝罪と賠償を日本政府に求めるように地方政府に要請したが、日中友好、経済協力をすすめた当時の中国政府の政策に反するとされ、上司である教育長から咎められ圧力を加えられた。そのことが原因で奥さんはうつ病になった。張さんのきわめて人間的な行動は、家庭を破壊することになった。それでも張さんは、被害者の証言を聞き取る活動を続けてきた。映画は奥さんの姿もとらえる。
 こういう人が中国にいること、しかも地方にその事実に感動する。ある意味で勇気づけられる。さらには、自分にひきつけて考えなければならないと思う。
 監督が、張双兵さん、さらには奥さんの姿までとらえ映し出したところに感心した。この映画の良さの一つだ。予期しなかったろうが、こういう場面を逃さない監督のセンス、あるいは人間性を感じる。

3)万愛花を見舞う日本人グループ

 万愛花さんは、早くから名乗り出て証言をしてきた。山西省の被害者を支援する日本人のグループもいくつかあって、何度か現地を訪れているらしい。
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<万愛花さん>

 ある4,5人のグループが、病床にいる万愛花さんを訪ね、通訳らしい女性が「日本人としてすみませんでした」と謝る、一緒に来た男性は日本の男性を代表して謝るという。そして、病床の万愛花さんに向かい、参加した若い男性、別の女性も一斉に頭を下げる。
 善良な人たちなのだけれど、ちょっとした勘違いがある。万愛花さんは語る。「日本人個人に謝罪を求めているわけではない。大砲も、鉄砲も、弾薬も日本政府が準備し、戦争を起こしたのでしょう、だから日本政府に謝罪を求める」と。でもその言葉が聞こえないかのように、日本人個人の謝罪を求めていると初めから勘違いしていて、しきりに謝罪する。
 少し滑稽にも見えるその姿を、映画はそのまま映し出す。日本人グループにもいろんな人がいる。これもまた現代日本の実情の一つに違いない。そんな場面も逃さずとらえる監督の眼に感心する。決して非難のために描いてはいないこともわかる。
 映画は理念的に造るものではない。誰もがいろんな問題点や欠点を抱え生きている、その上で多くの人が世の中を、人々の関係をよくしたいと奮闘している。その姿、その現実を班監督は認めている、普通に生きている人々に対する監督の信頼を感じさせる。それはいいことだし、この映画の良さでもある。

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<袁竹林さん>

4)映画の発するメッセージ

 このように書いていくと、きりがない。映画全体を紹介しきれない。あくまで一面の一面だ。何しろ20年間撮りためた映像であり、いろんな場面がある。映し出された映像そのものにまず引き付けられるのだけれど、同時にその場面を取り上げた監督の視点の確かさにも気づかされる。この映画の特徴の一つなのだろう。監督の気持ちがよくわかる、手作り感を感じさせる映画なのだ。

 映画に登場した被害者たち、万愛花さん、尹林香さん、劉面換さん、尹玉林さん、高銀娥さん、郭喜翠さんらは、すでにみな亡くなった。その人たちがどのような被害を受け、被害に対する無理解のなかで生きて、そうして証言を残してきたその姿を、あるいは遺志を、私たちは映画を何度も見直して受け取らなくてはならないのだと思う。
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「日韓合意」―ー どうしてこんな拙速な合意が! [元「慰安婦」問題]

どうしてこんな拙速な合意が!
1)突然の日韓合意!

 2015年12月28日、日本軍「慰安婦」問題に関する日韓両国外相間の合意が発表された。たまたま、私は記者会見を見た。韓国政府による突然の態度変更とそれによる合意であり、驚いてしまった。韓国政府はそれまでの見解を撤回し、日本政府の主張を受け入れた。韓国政府側からすれば一方的な譲歩である。
 だから、被害者側からすれば、韓国政府の裏切りである。被害者の要求を無視している。人権尊重の観点からすれば、合意はその解決を放棄している。国連人権員会の勧告を無視している。
 韓国政府にとっては「とにかく合意することが目的」であったようだ。したがって「日韓合意」は、被害者も真の解決も無視して成立した日韓両政府の「談合」(金昌禄教授)、「手打ち」(吉見義明教授)であった。

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<2月5日(金)、衆院院内集会>

2)「合意」内容はどのようにひどいか!

日本政府は法的責任を認め、賠償せよ!
 岸田外相の語った合意内容があまりにひどかった。日本政府は法的責任を認めず、10億円出すが賠償ではない、「癒しの事業」だとした。内容は、日本政府の従来の主張通りになっていた。逆に言うと、韓国政府は、「法的責任」を認めたうえで謝罪し賠償せよという、これまでの主張を放棄していた。

歴史事実の認知、研究、教育を行え!
 今回の合意では、「…当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた…」と「河野談話」と同じ表現をとりながらも、河野談話が述べた「歴史事実の認知、研究、教育」については、一言も触れなかった。この点では「河野談話」からも大きく後退した。

「最終的かつ不可逆的に解決」
 最終的かつ不可逆的に解決かどうかは、韓国政府の合意ではなく、被害者に受け入れられるかどうかにかかっている。安倍首相が「最終決着」と述べ、「合意した後、蒸し返さないように韓国政府がちゃんと責任を持て」とあたかも韓国政府や被害者に条件をつけたが、そうではなく「最終決着」に責任を持たなくてはならないのは、日本政府、安倍政権である。問題は転倒しており、責任は転嫁されている。

「平和の碑」撤去要求をやめよ!
 在韓日本大使館前の「平和の碑」や、米国等で設置される記念碑は、慰安婦問題を解決しようとしない日本政府に対するグローバルな市民の批判と行動の表現に他ならない。したがって、「平和の像」の撤去が、慰安婦問題の解決ではない。日韓両政府は問題を転倒してとらえているし、「平和の像」撤去要求は責任転嫁でもある。

*********

 「慰安婦」問題の解決に当たって、国連人権員会はこれまで何度も勧告を出してきた。また2014年、第12回アジア連帯会議は「日本政府への提言」を提出し、解決の方向を示した。
 今回の日韓合意をそれらと比べてみれば、合意内容がいかにひどいかわかる。しかも、「合意」は被害者の了解なしになされた。「合意」は解決には程遠い。「内容」においても「やり方」においても、被害者を納得させるものではないし、解決する内容でもない。今回の合意では慰安婦問題を解決することはできない。

3)日本政府から韓国政府に責任が転換された?

 合意によって日本政府が実行するのは、実質10億円を出すことだけであり、合意履行にほとんど障害はない。安倍首相が被害者に直接お詫びの手紙を出すこともない。(12月28日岸田外相が記者会見で、首相の謝罪の手紙は?という記者の質問に答えて、合意の発表とおりであると答え、特に首相の手紙を準備していないとした)
 他方、韓国政府には、様々な「責任」が生まれたことになる。合意により被害者と支援団体、国民を説得する=押し付けるのは、韓国政府の仕事になった。
 10億円を受ける財団は韓国政府が設立するのだろうが、どのように運営していくかは被害者や支援団体の意向を無視して進めることはできない。すでに反対運動は広がっている。また、日本大使館前の「平和の像」の撤去は、韓国政府が関係団体やソウル市を、そして国民を説得するのだという。

 これまで韓国政府は、日本政府の法的責任を認め、公式謝罪と賠償を求めてきた。歴史事実として記録、研究、究明、教育を主張してきた。今回の「合意」でもって、これら主張をすべて放棄した。
 「合意」では、「慰安婦」問題は絶対に解決しない。今後に禍根を残す。

4)韓国政府はどうして譲歩したのだろう?

 日韓関係が悪いことが、米国で韓国の印象に悪影響を与えかねない、と韓国政府は受け取ったのであろう。韓国政府の譲歩は、何かしら日韓関係そのものの重要性を鑑みてのものではない。米国政府、特に安全保障グループからの圧力を考慮したように見える。
 韓国の中国接近に対して、米国政府内では批判が相次いできた。2015年9月「抗日戦勝70周年式典」に朴大統領が参加し、習近平、プーチンとともに天安門上に並んだ。その姿は、韓中ロ接近を象徴するものとして受け取られ、特に米国の安全保障関係者、米軍を大きく苛立たせることになった。
 また、韓国資本家、支配層にとって、TPPが妥結したことは衝撃だった。すぐには妥結しないと予想していたのだろう。自らを除外した大規模FTAの締結に、韓国資本、支配層は孤立感を深め、朴政権に米日との関係改善、同盟強化に重心を移動するように強硬に迫ったのではないかと推測される。
 とはいえ、韓国のGDPの4分の1に相当する中国との巨大な貿易を抱える韓国にとって、中国と距離を置くことも不可能。韓国政府は、中国との関係は悪化させずに、米国の懸念を振り払うことを指向したのではないか。そのための一つの行動が、「慰安婦」問題の拙速な合意なのではないか。
 したがって、「慰安婦」合意は、決して歴史認識における日本政府の主張に影響されたわけでもなく、あえて言えば日韓関係を改善するためでもない。そのような考慮は、より「低い順位」に置かれていると思われる。
 いずれにせよ、朴政権にとって、韓米関係、安全保障、経済的利害は、被害者の人権回復より優先事項である、ということだ。

5)この先どうなるのだろうか?
 
 日韓合意は、「慰安婦」問題の解決にとって、大きな困難となった。これまで被害者の立場に立って日本政府に解決を求めていた韓国政府が、一転してその態度を変えてしまった。
 「慰安婦」問題の解決のために、日本政府の責任を追及してきたのだが、これに加えて合意した韓国政府の責任も併せて追及することになった。
 「合意」でもって「慰安婦」問題の解決とさせないこと、「合意」では決して解決にならないことを、訴え広めていくことが、人権を回復していく私たちの運動の当面の目標になった。
 韓国内では、日韓合意に反対し、韓国政府に撤回を求める激しい批判と行動がすでに起きている。
 他方、日本国内では、「合意」の意味や評価がまだ十分に浸透しておらず、人権団体、政党、市民団体のなかでどのような態度をとるべきか、必ずしも明確でないような状況があるように見える。
 2014年第12回アジア連帯会議「日本政府への提言」をあらためて本当の解決だと確認しながら、解決しない日韓合意であると訴えと広く訴えていかなくてはならない。

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1月6日、慰安婦問題 外務省行動 [元「慰安婦」問題]

 1月6日、外務省前で、12月28日の慰安婦問題、日韓合意に抗議するデモが行われ、ロラネット、ピースサイクルも参加した。
 その前に、内閣府に下記の要請書を提出した。

 今回の日韓両政府の合意は、被害者を抜きにした日韓両政府の「都合」による談合合意であり、このような内容では慰安婦問題は解決しない、禍根を残す。
  
 合意内容を見れば、日本政府の従来の主張のままであり、韓国政府の一方的な譲歩である。被害者の人権、国連人権委員会の勧告などは、全く無視されている。
 この時期に、このような譲歩を韓国政府、支配層がどうして行ったのか、その理由は何だろうか、不明なところがある。米政府の圧力が大きく関係していると思われるが、その圧力に一方的に支配、影響される韓国政府、支配層であったことに、あらためて驚きを覚える。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 
 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

 「慰安婦」問題を含む歴史問題に対して日本政府が取るべき態度は、各国の政府・人々と歴史事実を明らかにする努力を共同して行い、「慰安婦」問題を引き起こした当時の政治や軍のあり方について反省し総括し、歴史に対する共通の認識を作り上げ、それを人権尊重の現代政治や外交として再構築していくところにあると私たちは認識している。

 それができなければ何度、外交的合意を行っても解決しないし、信頼も生まれない。私たちにとっても人権尊重する日本社会を実現できない。
 日本軍「慰安婦」問題に関する12月28日、日韓両国外相間の合意は、解決するには程遠い内容であったし、合意は被害者の了解なしになされた。「内容」においても「やり方」においても、被害者を納得させるものではないし、すでに多くの人権団体から批判が沸き上がっている。
 合意を経ても、実際のところ先送りされており、今回の合意によって「慰安婦」問題は最終的に解決しはしない。

1. 日本政府は責任を認めよ!
 
 12月28日外相会談後の共同記者会見で岸田外相は、「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。 安倍(晋三)内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する」と合意内容を述べた。

 「軍の関与」は、河野談話の一節とほぼ同じ表現であり、安倍内閣も含めて歴代内閣が踏襲するとしてきた談話の表現を確認したことになる。
 そのうえで、「日本政府は責任を痛感している」と「国家の責任」を明確に認めた。ただし、両義的な表現であり、あいまいさを残している。
 これまでも日本政府は河野談話で「当時の軍の関与の下、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」を認めながらも、日韓賠償権協定で決着済であるとし「法的責任」を認めず、「人道的見地からの支援」事業を主張してきた。また、会見後の日本報道陣に対する記者会見で岸田外相は「これまでの立場と変わらない」と述べた。
 私たちは日本政府に、慰安婦問題に対する「法的責任」を明確に認めるよう、求める。

2. 歴史事実の認知、研究、教育
 
 今回の合意では、「…当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた…」と「河野談話」と同じ表現をとりながらも、河野談話が「……われわれはこのような歴史の真実を回避することなく、むしろこれを歴史の教訓として直視していきたい。われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する」と述べた「歴史事実の認知、研究、教育」については、一言も触れなかった。この点では「河野談話」からも大きく後退している。
 日本政府は、「河野談話」で約束した「歴史事実の認知、研究、教育」を、「談話」以降20年間以上、行ってこなかった。それどころか、ネット右翼や右派学者、マスメディアを動員し歴史を歪曲し隠蔽してきた。この20年間、国内的国際的な約束である「河野談話」を日本政府は果たして来なかったのである。その「歴史経過」がすでに私たちの前に横たわっている。そのような「累積」した日本政府に対する不信も解決しなければならない。
 にもかかわらず、「歴史事実の認知、研究、教育」については河野談話より後退している。このような日本政府の対応では、到底被害者の納得する合意、解決とはなりえない。

 どのような行為に責任を痛感し、「心からのお詫びと反省」をするのかを明らかにするためには、女性たちを意に反して連行した事実を認めた「河野談話」を踏襲する意志を明確に示すとともに、慰安所設置の主体が日本軍であった事実、およびこれらの行為が人権侵害であったことを認めなければならない。

 日本政府に対し、政府保有資料の全面公開、国内外でのさらなる資料調査、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングを含む真相究明、および義務教育課程の教科書への記述を含む学校及び一般での教育を奨励していくことを求める。
 また、歴史の事実や日本の責任を否定する公人の発言には、日本政府として、断固として反駁することを求める。

3. 「癒しの事業」ではなく、賠償とすること!

 今回の合意では、「日本政府の予算により、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒す措置を講じる。具体的には、韓国政府が、元慰安婦の方々の支援を目的とした財団を設立し、これに日本政府の予算で資金を一括で拠出し、日韓両政府が協力し、全ての元慰安婦の方々の名誉と尊厳の回復、心を傷の癒しのための事業を行う…」としている。
今回の合意にあるによる約10億円の支出は、日本政府による「癒し」の事業としている。人道的見地からの支援である。日本政府が「責任を痛感」したうえで、日本の国庫から拠出されるのであれば、明確に「賠償」とするように求める。

4. 「平和の碑」撤去要求をやめよ!
 合意は、「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し、韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」としている。
 在韓日本大使館前の「平和の碑」や、米国等で設置される記念碑は、慰安婦問題を解決しようとしない日本政府に対するグローバルな市民の批判と行動の表現に他ならない。性暴力根絶や、被害者の名誉と尊厳の回復こそ、人権の世紀、21世紀の課題であるとするグローバルな市民の心情が表現されている。
 したがって、「平和の像」の撤去が、慰安婦問題の解決ではない。日韓両政府は問題を転倒してとらえているし、「平和の像」撤去要求は責任転嫁でもある。「平和の像」撤去要求の撤回を求める。

5. 被害者の合意なしに解決しない! 最終決着しない!

 「慰安婦」問題の解決は、日本政府の「解決策」が被害者に受け入れられるかどうか、が極めて需要だ。なぜならば、国家間の謝罪と賠償なのではなく、日本軍「慰安婦」被害者の日本国に対する個人賠償請求権の問題だからである。そうであるにもかかわらず、日韓両政府は被害者の意思の確認もせず、一方的に合意を発表した。今回の「合意」は被害者の同意が欠けている。
 「最終的かつ不可逆的に解決される」かどうかは、韓国政府の合意ではなく、被害者に受け入れられるかどうかにかかっている。
 
 安倍首相が「最終決着」と述べ、「合意した後、蒸し返さないように韓国政府がちゃんと責任を持て」とあたかも韓国政府や被害者に条件をつけるかのように言っているが、そうではなくて「最終決着」に責任を持たなくてはならないのは、日本政府、安倍政権である。ここでも問題は転倒しており、責任は転嫁されている。安倍首相も外務省も、「被害者に受け入れられる解決案を提示する」その意味を、理解しなくてはならない。
 このことからしても私たちは「今回の合意は解決とならない」ととらえている。実際のところ問題は先送りされるし、解決には至らない。

 日韓両国外相の合意だけで「最終的かつ不可逆的な解決」などできないし、最終的な解決を「慰安婦」被害者の頭越しに両政府が取り決めることはできない。しかも被害者は韓国だけにとどまらない。私たちはフィリピンの元慰安婦被害者、戦時性暴力被害者と交流してきた。アジアの「慰安婦」被害者と向き合うことを求めてきたし、この時期にあらためて求める。

6. 国連等の国際社会に対する働きかけを控える?

 「国連など国際社会でたがいに非難、批判することを控える」と日韓両政府が表明したことは、「慰安婦」問題を、歴史的なかつ現代的な女性の人権問題だと認識していないことを示している。国連人権員会はこれまで何度となく、日本政府に慰安婦問題の解決を求めてきた。その意味が少しも理解していないし、国連人権員会の勧告の趣旨をないがしろにするものである。

 岸田外相は早速、国連ユネスコ記憶遺産への日本軍「慰安婦」に関する記録の登録する市民団体の活動は、「国連など国際社会でたがいに非難、批判することを控える」合意に反すると発言した。
 本来であれば日本政府こそが、重要な世界遺産として自ら推進すべき事業である。日本政府が保有する資料の全面公開し、国内外でのさらなる資料調査し、国内外の被害者および関係者へのヒヤリングなど真相を究明する事業を進んで実施し、二度と繰り返してはならない記憶遺産として登録する活動に、積極的に取り組まなければならない。そのような対応をして初めて日本政府は世界の人々の信頼を回復することができる。
 国連人権機関の勧告を真摯に受け止め、女性の人権の確立、日本軍「慰安婦」制度の歴史の記憶化に向けた国際社会の取り組みを妨害しないことを日本政府に求める。

2016年1月06日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森 進


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今年中に解決へ踏み出してほしい [元「慰安婦」問題]

 11月2日の日韓首脳会談で、両首脳は、早期妥結に合意した。また首脳会談後も、日韓外務省局長級会談は続いている。そのため、今回は要請先に、石兼公博 外務省アジア大洋州局長を追加しさせてもらった。
 私たちは、本年中に解決に向けて大きな動きが生まれるのではないかと期待している。
 「アジア女性基金」はすでに失敗が明白になった。日本政府は、「アジア女性基金」の延長のような、解決案を出さないようにしていただきたい。
 安倍首相、外務省は、この機会に一歩踏み出し、「慰安婦」問題を解決していただきたい。そのことで歴史に名を記していただきたい、そのように切望している。

 急に冬らしくなり、官邸前は、冷たい風が吹いた。

 以下の要請書を提出した。
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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様
石兼 公博 外務省アジア大洋州局長 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書
 
 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1.日韓首脳会談が開催されたこの機会に、「慰安婦」問題を解決するように求める
 
 11月2日、三年半ぶりに日韓首脳会談が開催され、引き続き日韓局長会議が行われ、慰安婦問題解決に向け、日本韓国政府間の協議が続いている。
 日韓首脳会談で、「両首脳は、今後も協議を継続し,本年が日韓国交正常化50周年という節目の年であることを念頭に、できるだけ早期に妥結するため,協議を加速化するように指示することになった」と合意した。

 加えて、安倍首相は「大切なことは、お互いに合意をすれば、その後はもうこの問題は再び提議しないということだ」と述べ、「最終決着」を言明した。

 すなわち、安倍首相は「早期妥結」と「最終決着」を公約したことになる。

 私たちは、「早期妥結」と「最終決着」の合意を歓迎する。「慰安婦」問題解決に向けて機が醸成しつつあり、安倍首相にはこの機をとらえ、解決にぜひ踏み出してもらいたいと切望している。

2.日本政府が法的責任のない「人道的措置」にこだわるかぎり解決はない

 しかし、日韓首脳会談以降、報道される日本政府の主張は、従来の主張と変わっておらず、これでは機をのがし解決できないのではないかと、不安にかられている。

 安倍首相を含め日本側は、1965年の日韓請求権協定で個人の請求権問題は解決済みと主張している。「日韓請求権協定で解決済みである、したがって法的責任はなく、それゆえ人道的措置で対応する」(11月11日、外務省・石兼公博アジア大洋州局長)というこれまでの姿勢を崩していない。法的責任を認めない謝罪、法的責任を認めない「人道的措置」である限り、「慰安婦」問題を解決することはできない。そのことは「アジア女性基金」で失敗し、すでに証明されている。

 他方、韓国政府は、「慰安婦問題は反人道的な不法行為であるため、韓日請求権協定で解決されたとみることはできず、日本政府の法的責任が残っているというのがわが政府の一貫した立場である」(11月11日、韓国外交部、李相徳(イ・サンドク)東北アジア局長)とし、被害者や韓国の国民が受け入れることができる解決策の提示を求めている。
 
 私たちは日本政府が、「1965年の日韓請求権協定により個人の請求権問題は解決済み」という主張に縛られる必要はない、と考えている。なぜならば、日韓請求権協定を超えて、被害者個人に賠償することが可能であることは、日本の法廷によって明らかにされているからである。

 2007年、中国人「慰安婦」訴訟において最高裁判所は、サンフランシスコ平和条約第14条(b)及び日中共同声明第5項における「請求権を放棄する」の意味について、被害者の個人賠償請求権を「実体的に消滅させる」ものではなく、「裁判上訴求する権能」を失わせるにとどまると解するのが相当であると判示しています。この最高裁判所の論理は、日韓請求権協定第2条1項の解釈にもそのまま当てはまる。それゆえ日本政府が自発的に被害者に対し謝罪し、証としての賠償することは可能である。(11月18日「慰安婦」問題解決オール連帯ネットワーク提出の「緊急要請書」より)

 したがって、安倍首相、外務省が従来の主張に固執することなく、解決に向け一歩踏み出すよう、要望する。
韓国の李局長(右)と石兼局長=(聯合ニュース) (320x299).jpg
<右から、石兼局長、韓国の李局長=(聯合ニュース)から>
 
3.個人賠償請求権の問題:被害者に受け入れられる解決を!

 「慰安婦」問題が「最終決着」できるかどうかは、日本政府の「解決策」が被害者に受け入れられるかどうか、にかかっている。なぜならば、国家間の謝罪と賠償なのではなく、日本軍「慰安婦」被害者の日本国に対する個人賠償請求権の問題だからである。

 安倍首相は「お互いに合意をすれば」と言ったが、「お互い」とは両国政府間だけでの合意では無理で、被害当事者の同意でなければ「合意」、すなわち安倍首相の言う「最終決着」とはなりえない。日本政府は「慰安婦」被害者と向き合わなければならない。安倍首相、外務省は、ここのところがまったく分かっていない。

 安倍首相が「最終決着」と述べ、「合意した後、蒸し返さないように韓国政府がちゃんと責任を持て」とあたかも韓国政府に条件をつけるかの如く言っているが、そうではなくて「最終決着」に責任を持たなくてはならないのは、日本政府、安倍政権である。安倍首相も外務省も、「被害者に受け入れられる解決案を提示する」その意味を、理解しなくてはならない。

 もっと言うならば、安倍首相、外務省は、「慰安婦」問題を、日韓政府間の交渉問題ととらえている。そうではない。「『慰安婦』問題は単純な両国間の問題ではなく、普遍的な女性人権の問題である」(11月13日、朴槿恵大統領)。この点でも、安倍政権の見識は、国際的な人権尊重の水準に達していない。

 私たちは、日本政府に、韓国を含めたアジアの「慰安婦」被害者と向き合うことを求めてきたし、この時期にあらためて求める。そして、被害者に受け入れられる解決を!求める。

4.被害者に受け入れられる解決とは何か?

 では、被害者が受け入れられる解決とは何か?
 2014年、第12回アジア連帯会議が提唱した「日本政府への提言」は、次のように指摘し、「事実認定と具体的措置」を求めた。

 「被害者が望む解決で重要な要素となる謝罪は、誰がどのような加害行為をおこなったのかを加害国が正しく認識し、その責任を認め、それを曖昧さのない明確な表現で国内的にも、国際的にも表明し、その謝罪が真摯なものであると信じられる後続措置が伴って初めて、真の謝罪として被害者たちに受け入れられることができる

 日本軍「慰安婦」問題解決のために日本政府は、

1.次のような事実とその責任を認めること
 ① 日本政府および軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置し管理・統制したこと
 ② 女性たちが本人たちの意に反して、「慰安婦・性奴隷」にされ、「慰安所」等において強制的な状況の下におかれたこと
 ③ 日本軍の性暴力に遭った植民地、占領地、日本の女性たちの被害にはそれぞれに異なる態様があり、かつ被害が甚大であったこと、そして現在もその被害が続いているということ
 ④ 当時の様々な国内法・国際法に違反する重大な人権侵害であったこと

2.次のような被害回復措置をとること
 ①翻すことのできない明確で公式な方法で謝罪すること
 ②謝罪の証として被害者に賠償すること
 ③真相究明:日本政府保有資料の全面公開
       国内外でのさらなる資料調査
       国内外の被害者および関係者へのヒヤリング
 ④再発防止措置:義務教育課程の教科書への記述を含む学校教育・社会教育の実施
      追悼事業の実施。誤った歴史認識に基づく公人の発言の禁止、および同様の発言への明確で公式な反駁等

 私たちは、上記の提言で求めた「事実認定と具体的措置」が、被害者に受け入れられる解決だと考えている。安倍首相、外務省が、「被害者に受け入れられる解決案」に、踏み出すことを要望する。安倍首相の主張する「最終決着」への道である。

2015年12月02日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代表:大森 進

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米サ市議会決議、要請書提出 [元「慰安婦」問題]


 10月7日、慰安婦問題の解決を求め、安倍首相、岸田外相宛の要請書を提出しました。遅くなりましたが、その要請書を下記に転載します。
 要請書提出の後、首相官邸前で道行く人に訴えチラシを配布しました。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

 日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)米サンフランシスコ市議会、慰安婦碑設置を決議

 米サンフランシスコ市議会は9月22日、市内に従軍慰安婦の記念碑や像の設置を求める決議案を全会一致で採択した。

 記念碑の建設は「人身売買や女性への暴力に反対し、過去の過ちを記憶するため」との趣旨であり、建設運動は中華系米国人を中心に韓国系や日系米国人の団体、人権団体も巻き込み、大衆的で組織的な活動が展開された。注目すべきは日系米国人の多くの団体が決議案を支持したことである。第2次世界大戦中に強制収容所に収容され、権利回復を闘ってきた歴史を持つ日系米国人社会は、人権侵害である慰安婦制度の意味をよく理解している。議案作成の中心となったエリック・マー市議らが、日系人にも配慮し、第2次世界大戦中に米国で日系人が強制収容された歴史についても触れ、議案に追加した。

 日本街に住む韓国系住民で、建設運動に参加したデービッド・ムン氏は「日系米国人の住民は最初から建設運動に非常に協力的だった」と話す。山田淳・在サンフランシスコ総領事も「日系人社会も一枚岩ではない」とその事実を認めた (9月23日、日本経済新聞)。

 建設運動に対しては姉妹都市である大阪市・橋下徹市長が反対する書簡を送ったほか、直前には現地の日本人を中心に建設反対の署名運動が起こり、約5千5百人がネットで署名していた。

 しかし、日本人による建設反対運動は米国では「歴史修正主義」とみなされ、逆に批判を招いている。サンフランシスコ市議会では「真実をゆがめる動き」と議員から強い反発を受けた。橋下市長の書簡については、2013年6月18日に、サンフランシスコ市議会が当時の橋下市長の「従軍慰安婦に対する発言」や「米軍は風俗産業を利用すべきとする発言」に対し、非難決議を上げてきた経過があり、今回の書簡もまた、同様の趣旨であるとしてほとんど誰からも関心を持たれておらず、決議採択に影響を及ぼさなかった。むしろ、橋下市長の書簡は日本国内向けの宣伝のために使われている。

 米国で初めて慰安婦像が建ったカリフォルニア州グレンデール市で在米日本人らが撤去訴訟を起こしたが、すでにSLAPP訴訟とされ棄却された。その経過を、サンフランシスコ市議会はよく承知している。

 公聴会では、目良浩一氏をはじめグレンデールの「慰安婦」碑に反対し市を起訴した数々のおなじみの人物も皆来て発言した。彼らがロサンゼルス日本領事館とも連絡しあっていたことも明らかになっている。
 彼らの発言にもかかわらず、サンフランシスコ市議会は全会一致で、決議を採択したのである。

 慰安婦の碑や像は米国ではこれまでカリフォルニア、ニューヨーク、ニュージャージー、ミシガンなどの州の郊外の小都市で建設されてきたが、今回大都市サンフランシスコ市で記念碑建設が決議された。慰安婦問題は「女性の人権問題」として捉えられ、リベラルな地域を中心に米国社会全体へ広がる気配を見せている。日本政府・外務省の主張は受け入れられず、策動は失敗に帰した。事態は一段階すすんだ。

 今回の騒動で、「歴史修正主義」、「真実をゆがめる動き」を行っているのは、日本の右派勢力ではあるが、その背後に日本政府・外務省がいることを、米国社会は当初は驚きをもって、最終的にははっきりと認識した。日本政府が、慰安婦問題の解決をしてこなかったばかりか、慰安婦記念碑建設反対を策動してきたその事実は、米国社会により広く明確に認識されることになった。そして、米国社会における日本政府の信頼を損ね、「人権を尊重しない日本政府」という評価を固定した。事態は、より一層深刻化し、一段階「悪化」したように見える。
 
2)日本政府・外務省はサンフランシスコ市決議への妨害行為を反省し、態度を改めよ!

 日系人コミュニティとは別に、日本政府をバックにして「日本人新一世」が、サンフランシスコ市議会で決議されないように活動してきた。「この決議案に対抗するために日本政府が5億ドルの予算を設けている」とジャパンタイムス紙は報じている。

 外務省は、サンフランシスコ市議会で決議されないように「水面下でできる限りのことはやってきた」(山田淳・在サンフランシスコ総領事)と公言している。

 政府・外務省は、決議案に対抗するために予算をつかってはならない!
 「河野談話」で代表される政府の立場に反しており、許される行為ではない。
 今回、幾ら予算を使ったのか、明らかにせよ!

 菅官房長官は9月24日の記者会見で、「サンフランシスコ市議会決議案は日本政府の考えやこれまでの努力と相反する内容を含んでいる」とし、「日本政府は慰安婦問題を政治・外交問題化させず、外国で各民族が平和と調和の中で共生することを望んでいる」と述べた。
 
 菅官房長官のような認識、外務省の対応こそが、米国では「歴史修正主義」とみなされ批判されている。サンフランシスコ市議会でも「真実をゆがめる動き」と議員から強い反発を招いているのである。

 安倍政権の慰安婦問題に対するこのような対応・態度は、日本国民への信頼を損ねるだけである。安倍政権は、サンフランシスコ市決議への妨害行為を反省し、その態度を改めよ!

3)慰安婦問題が韓国教科書に!
 日本政府は、慰安婦問題の解決に踏み出し、事態を解決せよ!
 
 韓国政府は9月22日、慰安婦問題に関する小学5~6年生、中学生、高校生用の教材を作ったと発表した。韓国政府によると、日本政府と日本の右派保守団体による「歴史歪曲」に対抗し、事実に基づいた歴史と「歴史認識」を教えるのが目的であるとしている。

 すでにモデル授業が公開で始められており、2016年度から小学5~6年生、中学生、高校生対象に慰安婦問題授業が行われる。

 韓国政府は、慰安婦問題とは何か、何が起きたのかを、きちんと事実に基づいて、この先もずっと次の世代に伝えていく立場を具体化し、教育政策として実行に移した。人権を尊重する立場に立つことでもあるから、韓国政府の主張に正当性がある。

 「(都合の悪い)過去はなるべく触れないで、未来志向」を呼びかける安倍政権とは大きく異なる。安倍政権の主張と態度には、韓国政府に比べてもどのような正当性もない。「この論争をいくらやっても、日本政府の主張に勝ち目はない」(アーミテージ)。

 このような事態、段階にまで進んでしまった事は、慰安婦少女像の設置とあわせて、慰安婦問題が、容易に解決できない日韓関係の「負の遺産」としてもはや固定してしまったことでもある。そのすべての責任は、慰安婦問題を解決しようとして来なかった日本政府にあるし、信頼を失わせた安倍政権の対韓外交の失敗でもある。

 日本政府が、慰安婦問題の解決に踏み出さない限り、このような事態を解決する道はない。慰安婦問題の解決に踏み出し、事態を解決せよ!

4)歴史認識、慰安婦、安保法制で孤立する日本外交
歴史修正主義を撤回し、侵略、植民地支配、慰安婦制度の反省の上に立って、未来志向の国際関係を確立すること

 9月28日、ニューヨーク国連総会で一般演説外交が繰り広げられた。シリアのアサド政権支持の是非を巡って、オバマ大統領とプーチン大統領の非難の応酬が続いた。
 その一方で、習近平主席が日本の侵略に対する非難を世界の前で行い、同時に米国に追随するだけの日本政府を重視しない姿勢を示した(中国外務省は日本課を廃止し、北東アジアを担当する課と統合した)。

 その習近平主席と示し合わせたように、朴槿恵韓国大統領が慰安婦問題を取り上げ、「解決策が速やかにまとめられなければならない」とした。また、集団的自衛権を行使できるようにする日本の安全保障関連法にも触れ、「最近は東北アジア安保秩序に重大な影響を及ぼしかねない新たな動きがあり、域内諸国に憂慮をもたらしている」と述べた。

 安保法制に対しては、朴大統領ばかりでなくロシア・ラブロフ外相も「開かれていない軍事同盟は地域の緊張緩和には役立たない」と批判している(9月21日、日ロ外相会談)。

 これに対し、安倍首相は、堂々と日本政府の立場の正当性を主張できなかったし、そもそも国連で演説する内容をもっていなかった。安倍首相の演説は、どこからも注目されなかった。安倍首相は安保法制成立を手土産に訪米したのだが、オバマ大統領は会ってもくれなかった。

 国連総会は、日本の影が薄いこと、歴史認識、慰安婦、安保法制で孤立していることをあらためて映し出して見せたのである。
 
 安倍政権がこれまでの態度を全面的にあらため、慰安婦問題解決に一歩踏み出すことを求める。
 侵略、植民地支配を行ってきたかつての日本政府、日本軍の歴史を、事実に基づいて明らかにすること、その反省の上に立って諸外国と共通の歴史認識のもとに、未来志向の国際関係を確立すること、を求める。


2015年10月7日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表: 大森 進

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慰安婦問題 要請書を提出 [元「慰安婦」問題]

 8月5日、安倍首相、岸田外相宛てに、慰安婦問題解決を求める要請書を提出し、その後首相官邸前で1時間ほど訴えました。 暑くて汗が噴き出ました。
 
 安倍首相が8月15日に出す予定の「戦後70年談話」に対して、学者や市民など国内外の団体、各国政府高官から、内容を危惧する発言や声明が相次いでいます。どれも共通する危惧を表明しています。

 発表前にもかかわらずあまりに批判が多いためか、安倍首相は談話に対する興味を失ったかのような態度さえ見られます。
 首相周辺からは「談話は閣議決定しない」とか、「談話発表後、記者会見はしない」などという声が漏れ聞こえてきます。

 慰安婦問題は、歴史評価、歴史認識の問題の一つです。ぜひ安倍談話で解決に踏み出してもらいたいと期待しています。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)三菱マテリアルが謝罪と補償の和解案を提示

 第2次大戦中日本国内の銅山や鉱山などで米国人捕虜らに強制労働をさせたとして、三菱マテリアルの木村光常務執行役員、岡本行夫社外取締役らが米ロサンゼルスで7月19日、元米兵捕虜でカリフォルニア州に住むジェームズ・マーフィー氏(94)と面会し、謝罪の言葉を伝えた(7月20日日経新聞)。生存しかつ連絡のとれた元捕虜は2名であり、マーフィ―氏だけが出席した。

 三菱マテリアルの前身である三菱鉱業が米英豪蘭の捕虜約900人を日本国内4カ所の鉱山に送り、過酷な労働を強いた。木村常務は「事業を継承する会社として道義的な責任を感じている」と述べ、謝罪の表明は自社単独で決断した」と説明した。
 米兵捕虜に対する強制労働について、日本政府はこれまでに謝罪しているが、企業による元捕虜への公式な謝罪は初めてである。

 また7月24日共同通信は、三菱側が、中国人元労働者が中国の裁判所に起こした損害賠償訴訟で中国人元労働者と遺族に謝罪し、補償金を支払う和解案を提示したと報じた。2014年3月、中国人強制労働者のうち生存者約40人は三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)を相手に、1人あたり100万元の賠償金とともに日中両国の主要日刊紙に謝罪声明を掲載することを求める内容の訴訟を北京第一中級裁判所に起こしている。
 三菱側が提示した和解案は、
 △使用者として歴史的責任を認め、深甚なる謝罪と哀悼の意を示す
 △1人当たり10万元(約160万円)を支払う
 △記念碑の建設費1億円、行方不明者の調査費2億円を支払う
 △慰霊追悼行事に元労働者らを招く費用として一人当たり25万円を支払う――であると伝えている(共同通信)。

 中国新聞網によると、三菱側は日本政府が第2次世界大戦中に強制的に3万9000人の中国人を徴用し、うち3,765人が三菱鉱業で強制労働に従事させられたこと、労働者のうち720人が死亡したことを認め、人権侵害があったことも確認した。

 和解案は現時点ではまだ合意には至ってはいない。「第2次大戦強制労働に関連する対日本賠償事件弁護士団」は7月24日、三菱マテリアルとの謝罪と補償問題について合意してないと声明し、三菱マテリアル側も、この問題についての問い合わせに「決定された事実はない」と回答している。

 1972年の日中共同声明によって中国政府および中国人労働者個人の賠償請求権は放棄されたとする日本政府の主張に従い、これまで三菱は中国人被害者の要求に応じてこなかった。したがって三菱側からの和解案の提示は、最近になって三菱側が従来の態度を改め、謝罪し補償し解決をめざす姿勢に転じたことになる。(三菱側の和解案の最初の提示は2014年1月としている、8月3日朝日新聞)

 日本の企業が、中国人元労働者に謝罪し、補償金を支払う方針を示したのは初めてで、補償の対象者も最多になる。海外ビジネスの環境改善と中国市場の開拓を念頭に置いた措置であり、三菱マテリアルの謝罪と補償は今後も続くものと思われる。

 他方、韓国人徴用被害者について、三菱マテリアルは中国とは「法的状況が違う」という立場をとっている。その理由を「系列の三菱重工が現在、韓国人強制動員被害者と損害賠償責任において訴訟中であることを意識した対応」と説明している。
 岡本社外取締役は、「植民地時代の朝鮮人強制徴用は国際労働機構が禁止した強制労働に該当せず、韓国人個人の賠償請求権は65年の日韓請求権協定で終結した」と日本政府の立場をそのまま主張した

 三菱マテリアルの中国と韓国、米国被害者に対する一貫しない対応には多くの問題がある。韓国内ではすでに三菱側の対応が差別的であると批判が広まっている。三菱は、あたかも相手を選び対処しているようであり、事の重要性を真に理解しておらず、そもそも人権意識に欠けている。

 ただ重要なことは、三菱が「個人の賠償請求権は存在しない」とする従来の立場を転換したことだ。三菱は「個人の賠償請求権も含め解決済」と主張する日本政府に従って来たわけだが、その姿勢も転換したことになる。

 中国市場やグローバル市場に進出し生き抜くためには、「戦犯企業」というイメージを払拭しなければならないと判断したのであろう。日中共同声明、日韓条約などによって解決済と強弁してきた日本政府の姿勢では、世界市場では受け入れられない現実を認めざるを得なくなったからだろう。

 今回の動きは政府間交渉の結果ではない。むしろ逆に日本政府をあてにしないで独自に対処する姿勢を示した。安倍政権の頑なな態度に従っていたのでは中国や世界で生き抜けないと判断したのではないか。(あるいは、岡本行夫社外取締役は安倍政権とも近しい人物であるから、安倍政権も三菱側の対応を承知したうえで、当ケースを通じて相手の反応を測ろうとしているのかもしれない。)

 いずれにしても、日本政府、外務省の主張が国際社会で受け入れられず孤立している現状、さらには日本政府、外務省には問題を解決していく上での見識が欠如し、なおかつ外交力がきわめて低い、頼りにならない存在であるという現状を証明している。

 さて、慰安婦問題を取り囲む状況もまったく同じではないだろうか?
 今こそ日本政府はこれまでの主張(個人賠償も含めすべて解決済とする従来の主張)を転換し、みずから主導して慰安婦問題の解決を表明することが必要であり、そのような転換を私たちは要求する。今が残された機会である。

 8月3日、韓国・朴槿恵大統領は民主党・岡田代表と会談し、「(慰安婦問題を)よい方向で解決すれば、韓日の安定的な関係に寄与する、事実上今が解決の最後の機会だ」と述べた(8月4日、日経)。 朴大統領の言うとおり、今が解決の最後の機会であるのは間違いない。

2)日本の名誉と信頼を損ねる自民党の提言

 7月28日、自由民主党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(委員長・中曽根弘文元外相)が、慰安婦問題における事実に基づかない報道等により、日本の名誉と信頼が大きく損なわれていると、提言を取りまとめ、安倍総理に提出した。

 提言書は、「諸外国において、慰安婦問題をめぐり『性奴隷』といったセンセーショナルな表現を含む碑や像が設置され、客観的な事実関係に基づかない一方的な主張による報道や、諸外国の中央及び地方の議会における決議が行われ、著しく日本の名誉を毀損し、国益を損なうものとして看過できない。早急に日本人及び日本の名誉と信頼を回復する必要がある。そのためには、慰安婦問題に関する客観的事実に基づく日本の主張や取組に対し、国際社会の正しい理解を得ることが重要だ」としている。
 
 提言の内容があまりにもひどいことに愕然とする。真実を明らかにして、人権侵害を回復しようとする意志、姿勢はひとかけらも含まれていない。慰安婦問題を否認し抹殺することが国益であり名誉と考えている。

 ①請求棄却、グランデール市慰安婦像撤去請求裁判
 提言書は、諸外国で慰安婦像の撤去を求めていくべきとしながら、米グランデール市の慰安婦像撤去訴訟において、2015年3月すでに判決が下され、訴えが棄却された事実には触れていない。請求棄却ばかりではなく原告はSLAPP裁判(strategic lawsuit against public participation 「市民参加を妨害するための戦略的訴訟」)と認定され、原告のボロ敗けに終わった。そのような事実さえ書いていない。
 「都合の悪い事実には触れない」のが提言の特徴の一つになっている。

 ② 慰安婦制度は性奴隷制
 慰安婦制度が性奴隷制度であったと、国連人権委員会勧告、各国の議会決議で批判されている点について、提言書は、「客観的な事実関係に基づかない一方的な主張、センセーショナルな表現」と批判しているが、その根拠を何も示していない。
 2014年、日本政府は国連・自由権規約委員会審査中に「慰安婦制度は性奴隷制度ではない」と主張していたが、最終所見の「慰安婦」問題に関する項目の表題に「性奴隷」という言葉が記載され、日本政府の主張が否定された。提言書はそのような事実にも触れていない。
 慰安所では、移動の自由、廃業の自由などさまざまな自由が剥奪されていたが、何よりも重要な点は日本兵との性交を拒否する自由がなかった。このことが「慰安婦制度は性奴隷制度」とされる最も重要な点である。この点に対するまともな反論さえない。

 ③「海外に広まった吉田証言の誤解を解く」
 『朝日』の吉田証言報道が国際社会の「慰安婦」問題認識に誤解をもたらしたとしきりに指摘し、吉田証言の誤りを世界に向けて宣伝活動することを提言している。しかし、どのような影響があったかはまったく記していない。
 海外では吉田証言はそもそも重視されていないし、影響もない。(通常右派は、クマラスワミ報告が吉田証言に言及していることを指摘するが、クマラスワミ報告が直接吉田証言に言及しているのは一カ所だけで、さらに別の箇所では秦郁彦氏が吉田証言の信憑性に疑義を呈していることにもちゃんと記載している。クマラスワミ報告における吉田証言の重みは右派メディアによって驚くほど誇張されている。)

 このように指摘していけば提言は、キリがないほどのごまかし、誤り、嘘で固められている。提言の内容を読み、あらためて驚くほどがっかりする。都合の悪い事実を無視し、慰安婦問題を強制連行の問題にすり替え、河野談話の意義をねじまげている。

 真実を明らかにして、人権侵害を回復しようとする意志はひとかけらも含まれていない。こころざしは低く、論述もきわめていい加減である。これがネトウヨの掲示板に書かれているのではなく、自民党の安倍政権に対する提言であること、自民党の、政権中枢にいる政治家の見解であることに、さらに愕然とする。日本国内ばかりでなく、世界中の人々、政府が、自民党・安倍政権の見識のなさ、人権意識の欠如を再確認し呆れることだろう。

 実際には委員らが安倍首相の考えはこうだろうと忖度してまとめたものでもあろう。この先、安倍政権の政治家、政府官僚、マスメディアが、大切に奉って対処するのであろうか。

 「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」と称しながら、実際には委員会は「日本の名誉と信頼を損ねている」。提言を直ちに撤回することを要求する。

3) 国際政治学者74名の声明、「歴史認識の確実な踏襲を!」

 7月17日、戦後70年の節目に安倍晋三首相が出す「安倍談話」をめぐり、国際政治学者ら74人が17日、共同声明を発表した。1931~45年の戦争を「国際法上、違法な侵略戦争だった」と指摘し、侵略や植民地支配への反省を示した「戦後50年談話」や「60年談話」の継承を求めた。
 声明は「日本が台湾や朝鮮を植民地として統治したことはまぎれもない事実」「過ちを犯したことは潔く認めるべきだ」「違法な侵略戦争であったことは国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着している」と述べ、戦後70年談話で国際的信頼を失うことのないようにと、説得的な叙述で丁寧に要請している。大沼保昭(明治大特任教授)、三谷太一郎(東京大名誉教授)両氏ら10人が発起人となり、歴史学、国際法学、国際政治学の研究者ら計74人が署名した。
 私たちもこの声明に賛同する。

 安倍首相が「過去の首相談話を全体として継承する」としながら、他方で「侵略の定義は定まっていない」と発言し、日本の戦争は違法な侵略戦争だったという歴史認識を否認しようとしている。村山、小泉談話に盛り込まれた「反省」「おわび」「侵略」「植民地支配」といった文言について「同じことを入れるのであれば談話を出す必要がない」と発言している。

 安倍首相の一連の発言がどれほど矛盾しているか、国内外を問わず多くの人々、政府はすでに気づいており、このような矛盾した発言を繰り返す安倍首相の本心はどこにあるのかを疑いつつある。さらには「過去の首相談話を全体として継承する」真の意味を安倍首相は受け入れていないのではないかと、発表前から国内外の多くの人々は共通する危惧を抱き、戦後70年談話によって日本が国際的信頼を失わないように、声明や発言を繰り返しているのである。

 7月後半以降の声明や発言を下記に記す。
 ○7月17日、日本の国際政治学者74名の声明、
 ○7月21日、ラッセル米国務次官補の発言:「韓国や中国と歴史問題で和解を進めるため、歴代内閣の立場を引き継ぐのが望ましい」、
 ○7月29日、日米欧韓の知識人528人声明、「過去を覆して未来に向かえず」
 ○8月3日、朴槿恵大統領は、民主党・岡田代表との会談で、「歴代談話の歴史認識を確実に踏襲することを期待する」と表明

 7月28日の読売新聞は、記事「戦後70年談話 苦慮する首相」で、「安倍首相は、独自色を出すため、当初閣議決定しない予定だった」、「過去の問題ではなく、未来志向の談話にする」、「中国韓国を刺戟しないように、談話発表に合わせた首相記者会見は見送る方向だ」(7月28日読売)と報じた。

 安倍首相とって「未来志向」とは、過去の違法な侵略戦争、植民地支配に対する反省とお詫びに触れないで未来だけを語ることのようだ。やたらと「未来志向」の言葉で飾るならば、国内外からごまかしたと受け取られるだろう。
 また、総理大臣は国政の最高責任者として日本を代表する立場にあり、「戦後70年談話」の閣議決定有無は、一般国民にとって、ましてや海外の諸国民にとって、意識されない。肝心なのは談話の中身である。ましてや「談話発表に合わせた首相記者会見を見送る」ことで、少しでも批判をかわそうとするのはそれこそ姑息というものだ。

 「日本が台湾や朝鮮を植民地として統治したことはまぎれもない事実」、「違法な侵略戦争であったことは国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着している」。このような歴史認識は、決して一部学者だけのものではなく、戦後国際社会が一貫して維持してきた。これを否定することは、中国・韓国のみならず、米国を含む圧倒的多数の国々に共通する認識を否定することになる。そればかりでなく、戦後70年にわたって日本国民が営々と築き上げた日本の高い国際的評価を、無にすることになりかねない。

 戦後70年談話で「過ちを犯したことは潔く認める」ことが重要だ。そうして初めて日本は国際社会のなかで信頼を勝ちとっていくのであり、そのことこそ本物の未来志向の基礎となる。戦後70年談話は残された機会であり、きちんと対応しなければならない。「過去の首相談話を全体として継承する」とは、いったいどういう意味であるのかを、安倍首相は「戦後70年談話」において、明確に表現しなくてはならない。そのことをあらためて要請する。

2015年8月5日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表: 大森 進


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安倍政権は、国内外の歴史家の声明にきちんと答えよ! [元「慰安婦」問題]

 6月3日、慰安婦問題の即時解決を求める要請書を提出しました。
 遅くなりましたが、下記に示します。

 米国や日本の多くの歴史学者が、慰安婦問題に対する安倍政権、外務種官僚、マスメディアの主張、考えが、誤りであることを指摘しているばかりか、誤りが大っぴらに語られている日本社会の現状を危惧し、さらに安倍政権、外務種官僚、マスメディアはその誤った主張を改めるように要求しています。
 
 安倍政権、日本の官僚、マスメディアの主張は、国際的に非難されており、孤立を深めています。その尋常でない事態を、多くの日本国民は知りません。


ーーーーーーーーーーーー
安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)海外の歴史家187名が「慰安婦」問題の解決を求め声明
 
 5月5日、米国をはじめとする海外の日本研究者ら187名が、連名で「日本の歴史家を支持する声明」を発表した(5月19日現在、456名が署名)。

 注目すべきは、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のエズラ・ヴォーゲル氏、『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワー氏、『歴史としての戦後日本』のアンドリュー・ゴードン氏、『歴史で考える』のキャロル・グラック氏、『国民の天皇』のケネス・ルオフ氏、『天皇の逝く国で』のノーマ・フィールド氏ら、日本研究で業績を成したトップクラスの研究者・歴史家ばかりか、米国のアジア政策にまで影響を与えるような名の知られた人物がほぼ全員名を連ねている。内容以前にこのような声明が発表されたこと自体、日本が国際社会のなかで信頼を失い孤立しかねない尋常ならぬ事態のうちにいることを指し示している。

 声明は、安倍首相が米国議会の両議院総会での演説を行った一週間後に発表された。表明されているのは、首相がこれまで「慰安婦」問題の解決を求める声を無視してきたばかりか、その史実を覆そうとする歴史修正主義的な動きを明白に後押してきた一連の行動への失望である。「慰安婦」被害者に対して「人身売買」被害にあったと同情を示してみせ、日本政府の責任への言及を巧妙に回避した4月29日の安倍首相の演説への失望と批判でもある。
 なかでも、日本政府が米国の世界史教科書の出版社や著者に「慰安婦」問題についての記述を書き換えるよう迫った件は、政治的立場を超えて米国の学界から反発を受けている。

 また、「日本の歴史家を支持する声明」というタイトルからうかがい知れるように、署名した研究者たちは日本における歴史研究が政治的な攻撃に晒されていることを危惧し、日本政府や歴史修正主義者たちによるまっとうな歴史学への攻撃を批判しているという性格も持つ。

 したがって、当声明が安倍政権、日本政府へ向けられた批判であることは明白だ。日本がこの先、人権を尊重しない、歴史の教訓を学ばない孤立した道へとすすむのか? と問うているのである。

2) 歴史学会・歴史教育者16団体が声明
 
 欧米の歴史学者の声明に続き、5月25日、日本国内の歴史研究者でつくる学会16団体約6,900人以上が、「慰安婦」問題の解決を求め声明を発表した。「『慰安婦』問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」)

 当声明は、歴史学研究会が2014年10月15日に発表した声明に続くものでもあり、今回は日本歴史学界における規模・知名度で上位5団体中4団体が参加し、参加団体数、人数が格段に広がった。4団体とは歴史学研究会、歴史科学協議会、日本史研究会、歴史教育者協議会。それぞれ会員1,200-2,200人を擁する全国規模の学術団体であり、会員たちの研究分野は日本史・世界史の古代史から近現代史にまでわたる。

 これまで安倍晋三首相は歴史歪曲について質問されるたびに、「歴史は歴史家に任せるべきだ」と答えて批判をかわしてきた。この声明には、「慰安婦」問題について、任せるべき日本の歴史家による歴史判断が示されている。この現実を安倍首相は厳粛に受け取らなければならない。

 声明は、日本軍による「慰安婦」に対する直接的な暴力だけではなく、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配、差別構造との連関を指摘している。例えば、性売買の契約に「合意」する場合があったとしても、「合意」の背後にある不平等で不公正な構造の問題こそが問われなければならない。日常的に階級差別や民族差別、ジェンダー不平等を再生産する政治的・社会的背景を抜きにして、直接的な暴力の有無のみに焦点を絞ることは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。すなわち、日本帝国による侵略戦争、植民地支配の歴史的な評価のなかで「慰安婦」問題をとらえなければならないことを強調している。そのような歴史認識こそ近年の歴史研究の到達点である。

 2014年8月『朝日新聞』による吉田清治証言記事取り消し事件を契機として、「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの不当な宣伝がなされた。その現実を批判する形で、歴史学会・歴史教育者団体は見解を表明している。
 
 「第一に、河野談話は、吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。」
 安倍政権が河野談話を継承すると言いながら、その実質を骨抜きにしようとする行為を続けていることは、もはや国内外で明白となっている。それは国内外の人々を愚弄するものであり、加害の事実に真摯に向き合うことを求める東アジア諸国との緊張を、さらに高めるものと言わなければならない。

 それに加えて募集の際の強制連行についても明確に述べている。「強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである」とし、強制連行を「家に乗り込んでいって強引に連れて行った」(2006年10月6日、衆議院予算委員会)ことだけに勝手に限る安倍首相の発言が誤りであることを直接、指摘している。

 「第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている」とし、「慰安婦」問題は強制連行に限られた問題ではなく、「慰安婦」制度自体が日本軍による犯罪であることも明確に述べている。

 そして、慰安所に動員された後、居住・外出・廃業のいずれの自由も与えられず、性の相手を拒否する自由も与えられていない、そのことを「性奴隷の状態に置かれていた」と規定し、国際会議で「性奴隷」という表現を決して認めない安倍政権、外務省官僚の主張をこれまた明確に批判している。
 
 また、北星学園大学や帝塚山学院大学の事例に見られるように、大学教員個人への誹謗中傷はもとより、所属機関を脅迫して解雇させようとする暴挙が発生していることに対し、「第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない」としている。

 「『慰安婦』問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」は、安倍政権、日本政府官僚の考えの誤りを適確に批判しており、私たちはこれを支持する。安倍政権、官僚は誤りを認め、態度を改めなければならない。

 でなければ、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになるばかりか、日本政府が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。
当該政治家、官僚、メディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことをあらためて求める。

3)安倍政権は、国内外の歴史家の声明にきちんと答えよ!

 戦後70年の今年は、日本政府にとって過去の植民地支配と侵略の問題に立ち向かい指導力を見せる絶好の、かつ残された数少ない機会だ。国内外の歴史家の指摘や批判にきちんと応えなければならない。
 今年8月に準備している「戦後70年談話」こそ、4月29日の米議会での安倍首相演説のように、レトリックによって歴史修正主義の歯に衣を着せ、巧妙に日本政府の責任を回避して済ませてしまい、被害者や国内外の歴史学者ばかりでなくアジア諸国を含む世界の人々に失望させることのないようにしなければならない。

 すでに安倍首相を含む日本の政治家、日本の官僚の人権意識の欠けた、反省のない歴史認識は、何度も世界の人々の前に明らかになっており、それ相応の評価がすでに定着している。
 安倍政権がこれまでの考えと態度をあらため、「戦後70年談話」で「慰安婦」問題を解決する決意を表明することを望む。

2015年6月3日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代表 大森 進

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国際社会から見放される安倍政権 [元「慰安婦」問題]

 4月1日に、下記の要請書を提出しました。
 午前中は小雨でしたが、15時ころからは晴れて一段と暖かくなりました。
 国会議事堂周辺の桜は満開でした。
 首相官邸前で、1時間ほど、慰安婦問題の解決を訴えました。

*********

安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書


 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)菅官房長官、「慰安婦問題は解決済み」
 
 韓国の朴槿恵大統領が3月1日独立記念日の演説で、日本側に慰安婦問題の早期解決を求めた。これに対し、菅義偉官房長官は3月2日の記者会見ですぐさま、1965年の日韓請求権協定で解決済みとの認識を重ねて示した。日韓関係改善の機会を、日本政府が意図してつぶす態度をとったのである。
安倍政権は登場して2年を過ぎたが、冷えこんでいる日韓関係・日中関係を解決することがいまだできない。こじれたら、関係改善のために米国に仲裁役を求めるだけである。米国もそんなことを持ち込まれても不愉快この上ない。
 近隣諸国と首脳会談ができない、日本政府が独自に解決する意思も力も持ち合わせていない現状は、日本政府が外交、国際関係においてそのステータス、信頼を得ることを放棄していることを意味する。

2) メルケル独首相、「日本政府は慰安婦問題を解決すべき」
 
 ドイツのメルケル首相が3月10日、民主党・岡田代表と会談した際に、「韓国と日本は価値観を共有している。軍慰安婦問題を確実に解決するのが望ましい」と述べたと、時事通信が報じた。また、自民党の二階俊博総務会長は3月11日、慰安婦問題について「日本から大いに言い分はあるが、解決していないことは事実だ。ドイツのメルケル首相にもちゃんとやりなさいと言われた。今の時代に早く解決しておくことが大事だ」と述べた。

 メルケル発言は慰安婦問題に対する国際社会の認識であり、日本政府の立場がそれから乖離している現状をあらためて教えてくれたが、さらに問題なのはメルケル発言に対する外務省のとった態度である。ドイツに対し内政干渉となりかねない発言であると抗議を申入れ、首相発言はなかったことにしてもらった。安倍政権と外務省官僚はこのようなことに一所懸命になる。そのことで国際社会からの孤立を深め、日本国民の国際社会における信頼、あるいは「国益」を損なっている。

 この行為を通じてドイツを含めた諸国首脳に、「慰安婦問題を解決するつもりなどない」という日本政府の本心を明確に伝えたのであった。日本政府は諸国の信頼をその分だけ失った。

3)安倍首相:植民地支配と侵略の定義は「さまざまあり、答えることは困難」
 
 安倍首相は、植民地支配と侵略の定義について「さまざまあり、答えることは困難」と繰り返し言明している。日本が侵略と植民地統治を行ったのは争いようのない事実であって、答えを出すのは難しいことではない。過去の日本帝国主義が朝鮮半島、満州、東南アジアなどの国に行った統治をどのように定義するかに、論争は存在しない。様々な理解も存在しない。

 もし日本の植民地統治と呼ばないのなら、どう呼ぶべきか? 中国国民、韓国国民、あるいはアジア諸国民は、帝国日本に植民地統治されなかったとは決して言わないだろう。

 植民地支配と侵略の定義に様々な議論があるとする安倍政権の歴史認識は、帝国日本がかつて行った「植民地支配」、「侵略」の意味を薄めること、歴史認識の修正を意図していることは明白であり、誰もがその「真意」を理解している。

 そのことで日本国民と日本政府の国際的な立場とこれまで信頼を、どれだけ傷つけているか、知ろうとしていないのは安倍政権、政治家、官僚ばかりである。

4) 秦郁彦氏「慰安婦は売春婦、どの国にもいた、日本だけが批判されるのはおかしい」

 日本大学名誉教授の秦郁彦氏は日本の外務省が推薦する慰安婦問題の「専門家」であり、河野談話検証委員の一人でもある。秦郁彦氏は、3月17日に外国人記者クラブで会見し、米マグロウヒル社教科書の記述について、「売春婦は人類史上、いつの時代にもどの国にも存在しており、慰安婦が特別なカテゴリーで扱われるものではない」と述べた。

 米国の教科書の訂正を要求しているのは日本政府・外務省であり、秦氏の発言はその意向に沿ったものである。米国やドイツの教科書に対する日本政府が訂正要求について、欧米諸国は「日本政府が極右学者、極右メディアを動員して教科書記述の訂正を求めている」ことをよく承知している。そのような行為は第二次世界大戦期の日本帝国主義の残酷な犯罪による傷跡をより深くするとともに、日本政府に対する現在と将来の国際的信頼をさらに失うことになる。

 歴史学者の口を借り、慰安婦被害者を売春婦と呼んで日本軍の責任を認めない日本政府を誰が信用するだろうか?

4)「戦後70年談話」、歴代政権の姿勢を明確に引き継ぎ発展させ、国際社会の信頼を回復することを求める。
 
 3月に起きた上記一連の出来事に対し安倍政権のとった態度は、いまだ公表されていない「戦後70年談話」がどのような内容で準備されているか、ある程度うかがい知ることができる。米国、中国、韓国など各国政府が発表される前から表明している通りの懸念を、残念ながら我々も表明せざるを得ない。

 国際社会は「戦後70年談話」を注視しており、日本政府の態度を見極めている状態が続いている。「戦後70年談話」が、「植民地支配」、「侵略」を否定した未来志向、「慰安婦問題は解決済」を前提とした未来志向であるならば、日本政府はさらに国際社会の信頼を失い、孤立を深めるだろう。

 最近起きた国際社会の変化の一例をあげるならば、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英国、ドイツ、フランスが米国の要請に反旗を翻し参加を表明し、豪州、韓国など各国がこれに続く事態となった。日本だけがアジア開発銀行(ADB)で対抗する姿勢を崩していない。安倍政権の歴史修正主義によって日本が国際社会から孤立し大きく取り残されつつある。いたずらに嫌中・嫌韓を弄んできたつけが、これらから深刻に出てくる。

 まず、慰安婦問題がいまだ存在すること、解決していないことを認めなければならない。解決済とする日本政府の態度をまず改めなければ、文字通り何も始まらない。

 「戦後70年談話」は残された数少ない機会であって、これを逃してはならない。歴代政権の姿勢を明確に引き継ぎ発展させ、国際社会の信頼回復に踏み出すことを求める。

 2015年4月1日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進


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外務省が米教科書「慰安婦」記述に是正要請したことに、抗議します [元「慰安婦」問題]

 2月4日(水)、内閣府に申し入れを行い、安倍首相、岸田外相あての下記の要請書を提出しました。
 要請書を提出後、首相官邸前で「慰安婦」問題の解決を訴えました。

 この日は、川内原発の再稼働に反対する人たちが、首相官邸前に集まりました。
 私たちの行動と一部重なったわけですが、原発の再稼働に反対する人たちに、「慰安婦」問題の解決を訴えることができて、よかったと思います。チラシも配布しました。

 以下に要請書を示します。
 今回は、外務省が、米教科書会社・歴史教科書の「慰安婦」記述を是正要請したことに抗議する内容です。

安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書


 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1) 外務省が、米教科書会社に、「慰安婦」記述の是正を要請
 外務省は1月11日までに、米カリフォルニア州ロサンゼルス市や同市近郊の公立高校で使用され、テネシー、ジョージアなどカリフォルニア以外の4州でも候補リストに入っている世界史の教科書に、「旧日本軍が慰安婦を強制連行したとする史実と異なる記述がある」として2014年11月7日、教科書の出版社に記述内容の是正を正式に要請したことを明らかにした。
 外務省は1月27日、自民党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(委員長・中曽根弘文元外相)の会合で、担当者がこの問題を説明した。

 是正要請した教科書とは、米大手教育出版社「マグロウヒル」(本社・ニューヨーク)が出版した「伝統と交流」。先の大戦を扱った章で「日本軍は14~20歳の約20万人の女性を慰安所で働かせるために強制的に募集、徴用した」、「逃げようとして殺害された慰安婦もいた」、「日本軍は慰安婦を天皇からの贈り物として軍隊にささげた」という記述に対してである。産経新聞によれば、外務省が是正を要請したのは、「約20万人とした慰安婦の数」と、「強制的に募集、徴用した」(=強制連行があった)とする記述に対してのようであり、またそのほかの表現も適切ではないとして、申し入れているようである。また日本の江戸時代を考察する項目で用いられている地図に「日本海(東海)」と韓国側の呼称も併記されていることについても併記をやめ日本海とするよう、是正を要請した。

 この問題は、産経新聞が2014年11月3日付で報じたことを受け、外務省が11月月7日、在ニューヨーク総領事館を介し出版社に記述内容の是正を申し入れたとされている。出版社側は「日本政府の問題意識は共有した」として責任者が協議に応じると回答し、12月中旬に正式な話し合いの場が持たれたという。
岸田文雄外相も14年11月18日の記者会見で、マグロウヒル社の教科書の慰安婦問題などに関する記述は「不適切」だとして訂正を求めていくことを強調していた。

 11月26日付の中国のネットメディア「環球網」によれば、米ラジオ局「ボイス・オブ・アメリカ」の中国語サイトは11月25日、日本政府の要請に対し、マグロウヒル社の広報副部長が「(教科書の内容は)学者たちが慰安婦の史実に基づいて書いたもの。われわれは著者たちの作品、研究、記述を支持する」と、訂正に応じないとする声明を発表したと伝えていた。この報道について外務省は「関知しない」としている。

2)外務省は、是正要請を撤回せよ!

① そもそも日本政府・外務省が、被害者らの証言を含む被害実態を調査していないことが問題である。被害者数約20万人に疑義をはさむのであれば、日本政府が被害実態の調査を行い、国際的な審査によって明確化すればいい。
 真相究明のため、「日本政府保有資料の全面公開」を行い、「国内外でのさらなる資料調査」と「国内外の被害者および関係者へのヒヤリング」を行わなければならない。日本政府はそのような「真相究明」を行ってこなかったし、行おうとしていない。

② 日本政府は、「慰安婦制度の強制性」を「募集の際の強制連行」の問題にすり替え、そのうえで「募集に際し強制連行を示す文書がない、強制連行の証拠さえなければ人権侵害ではない」と主張している。

③ その主張は、「河野談話」作成過程の調査で、「強制連行を示す文書が見つからなかった」ことを根拠にしているが、当時、日本政府が行った資料調査、収集はきわめてずさんであったことは今では明らかになった。それでも作成過程においても、スマラン事件でオランダ女性を強制連行し慰安婦にした文書は当時すでに見つかっていた。しかし、これを無視した。

④ 「河野談話」以後、日本軍の関与、慰安所の強制性、強制連行を示す文書がいくつも発見されており、多くの学者などが指摘している。そのことを示す文書529点を、2014年6月日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議は、日本政府あてに提出した。政府・外務省はこれらを一切無視したうえで、強制連行を示す証拠がないと言い続けている。

⑤ そのような経緯、日本政府のとってきた態度は、国内的にも国際的にもすでに周知の事実になっている。日本政府・外務省だけが、まるで誰も知らないから無視しても構わないかのような立場に立って、「強制連行の事実がない、強制連行の証拠さえなければ人権侵害ではない」と強弁し続けている。

⑥ 米教科書会社の記述に対する外務省の是正要請は、これまで間違った態度、対応の延長として出てきている。目新しいのはこれまで国内的に主張していたことを対外的にも主張し始めたことである。

⑦ このような行為は日本に対する国際的な信頼を損なうだけであり、即刻中止することを求める。国際的信頼を損なう行為を行っているのは日本政府であり、外務省である。このような恥さらしな行為を、即刻をやめるよう求める。

2015年2月4日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進


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安倍政権は「戦後70年談話」で、復古主義に踏み出すのを断念せよ! [元「慰安婦」問題]

 1月21日(水)、韓国水曜デモに連帯し、安倍首相・岸田外相宛の要請書を提出し、首相官邸前で、「慰安婦」問題の解決を訴えました。提出した要請書を下記に添付します。

 年頭記者会見で、安倍首相が8月15日、「戦後70年新談話」を公表する所存である旨を表明したところ、早速、米国政府から、河野談話、村山談話で示された歴史観を塗り替えることがないよう、厳しく求められました。 この批判の激しさにたじろいだ安倍政権は、さっそく河野談話、村山談話を継承すると言わざるを得ませんでした。本心は、新談話で歴史修正主義を謳い、復古主義により一歩踏み出すつもりでした。

 韓国、中国政府からも、新談話に対する懸念が表明されました。
 安倍政権、或いは安倍発言は、世界中から、不信をもって受け取らrています。

 1月21日はあいにくの小雨であり、また寒くもありました。人通りも多くなく、申し入れ後の15時から約1時間ほど、首相官邸前で訴えました。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)「戦後70年談話」で、
歴史修正主義、復古主義にさらに踏み出すのは、断念せよ!

 1月5日、安倍首相は年頭の記者会見で、戦後70年の節目の年に当たり、「未来志向の新たな談話」を世界に向けて発信すると表明した。そのなかで、「村山談話」を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を引き継ぐとも語った。

 菅義偉官房長官は1月9日のBSフジ番組で、今年発表する戦後70年の首相談話について「(村山談話を)全体としては継承するが、同じものをやるのであれば新たに談話を出す必要がない。戦後70年の歩みや未来志向ということを含めた談話になると思っている」と述べた。

 「村山談話」、「河野談話」に代わる新談話を、内外の反応を見ながら安倍政権は、これまで下記の方向で準備してきた。

 2014年11月、米ニュージャージー州地元紙スターレジャーに、日本の民間団体「歴史事実委員会」が「慰安婦」の強制連行を否定する意見広告を載せた。ここには安倍首相をはじめ下村博文文部科学相ら現役閣僚4人が賛同人として名を連ねていた(1月12日東京新聞)。「慰安婦の強制連行を否定」は「河野談話」の否認である。

 2014年8月26日、自民党の高市早苗政調会長は、戦後70年の節目を迎える2015年に向け、「慰安婦」募集の強制性を認めた1993年の河野洋平官房長官談話に代わる新たな談話を出すよう文書で申し入れた。標的は「河野談話」であり、「河野談話」の否認、撤回である。
 安倍首相は、自身に近い政治家に事前にアドバルーンを上げさせ様子をうかがい、その上で「村山談話」に代わる新しい談話を準備していることを正式に表明したのである。それが年頭記者会見であった。

 戦後70年新談話を作成する安倍政権の政治的意図は、「慰安婦」募集の強制性を認めた1993年の「河野談話」の撤回であり、「自虐史観」の「村山談話」の書き替えである。そのようなことは誰の目にも明らかだ。
 安倍政権は「戦後70年談話」で、歴史修正主義、復古主義に踏み出すのを断念せよ!
 
2)新談話に対する世界からの懸念と批判が相次いだ!

 新談話に対する激しい批判が、さっそく世界から相次いだ。

 米ニューヨークタイムズは今月3日付の社説で、談話見直しの動きを「深刻な過ち」と酷評し、「朝鮮半島などの女性らを性奴隷としたことを含む第二次世界大戦の加害に対する謝罪を書き直そうとしている」と激しく批判した。

 米国務省のサキ報道官は1月5日定例会見で、「これまでに村山富市元首相と河野洋平元官房長官が(談話で)示した謝罪が、近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだったというのが我々の見解だ」、「(日本には)過去に公表された談話がある。それ以上のコメントはない」と述べ、戦後70年の首相談話が「村山談話」や「河野談話」で示された歴史観を塗り替えることがないよう暗に求めた。
 サキ報道官は、「村山談話」だけではなく、安倍首相が年頭会見で言及しなかった「河野談話」をあげて、これを守れ、しかもそれは米政府の見解だと表明した。一報道官が、8か月も先に予定されている「安倍首相談話」に、ここまで突っ込んだ注文をつけるというのは異例である。
 米政府は、安倍政権による「戦後70年談話」が、特に「河野談話」を標的にしているその意図を、即座にかつ明確に理解し批判を表明した。米政府内に広く、安倍政権に対する不安と不信が定着している事実をも同時に明らかになった。
 サキ報道官の発言は、安倍首相と首相周辺が「河野談話」見直しを意図する言動を繰り返し、マスコミがそれを垂れ流し、東アジア地域を緊張させている状況に対する、アメリカ政府の強い懸念が背景にある。国務省の一報道官がここまで踏み込んではっきりと注文を付けるのは、議会調査局報告にあるようにアメリカ政府が安倍首相及びその取り巻きたちのこれまでの姿勢・言動に相当の不信感を抱いているからである。

 米政府の激しい批判を前にして、菅官房長官は1月6日の記者会見で、「日本の歴史認識は米国にも説明しており,十分理解していると思う」、「河野談話も継承すると国会で答弁してきた」と語り、さっそく戦後70年談話の内容のトーンダウン、修正を余儀なくされた

 1月15日、徐清源(ソ・チョンウォン)韓日議員連盟会長と与野党の国会議員8人が、首相官邸で安倍晋三首相に会った。この席で徐会長は「日本がまず元慰安婦の女性の名誉を回復するのに最善の努力をつくすことを望む」朴槿恵大統領のメッセージを口頭で伝えた。これに対し安倍首相は「日韓条約で解決済であるが、慰安婦問題には筆舌に尽くしがたい思いを持っている」とし、「私は河野談話を継承し、見直したりはしない」と述べ、例の二枚舌的態度で対応した。

 「戦後70年談話」は、「未来志向」と称しながらも、これまでと同じように内外の様子を見ながら、隙をみて「河野談話」、「村山談話」の修正を繰り返し狙っていく、政治行動の一つとして、この先2015年8月15日まで継続するだろう。そのような「戦後70年談話」発信は、日本政府と日本国民に対するこれまでと将来の国際的な信頼を損なうだけである。

 「河野談話」、「村山談話」を堅持し、過去の侵略と加害の歴史的事実を認め、「慰安婦」問題の解決に一歩踏み出して初めて、「戦後70年談話」は、「未来志向」となることができる。私たちはそのような「戦後70年談話」を求める。

3)安倍首相の二枚舌発言をやめよ!

 安倍首相は、これまで批判されるたびに何度も「村山談話、河野談話は変えない、継承する」と表明してきたが、日米同盟の相手国・アメリカ政府すら安倍発言を信用していない「現実」が、確認された。世界中が、安倍首相の二枚舌発言を知っており、したがって不信を抱いている。

 「安倍首相は何をするかわからない」と見ているのは日本人に限らないのである。「河野談話」に関してのみならず、安倍首相はそれまでの発言を平然と否定する発言を繰り返してきた。首相発言がくるくる変わっても、日本のマスコミも、官僚組織も、野党政治家すらも批判せず、逆に安倍首相の見解を競って先取りし主張してきた。安倍政権は、批判されればその都度、「村山談話」、「河野談話」を継承すると対外的に表明しながら、他方国内では、「河野談話」の強制性を否認し、「村山談話」は自虐史観として退ける世論を、マスメディア、官僚組織を通じて公然と煽り続け、その復古主義で政治的権力を固めてきた。日本の政治において、このような異常状態が続いていることも世界は知っている。

 「河野談話」堅持を表明することは、言葉だけに終わることなく、態度と行動でもって国際社会に真摯に対応しなければならない。今こそ「慰安婦」問題の解決に踏み込み、人権を尊重する日本政府として、国際的な信頼を回復しなければならない。
 安倍政権の二枚舌は、日本政府と日本国民の国際的信頼を損なっており、即刻やめること求める。

4)安倍政権は復古主義政策をやめよ!
  21世紀において「孤立し衰退する日本」へと導くだけだ

 安倍政権の復古主義に基づく政治路線、外交政策は、東アジアを含む世界で友好的な善隣関係を構築していくうえで、リアリティを欠いている。戦前の軍部・財閥が、侵略拡大の国内世論を煽り反対者を抑えつけ、そのことで天皇制政府権力を主導し、世界的な情勢をまったく無視して侵略戦争に突入していったのと、実によく似ている。敗戦と戦後出発の歴史と現実を否認し、今日の世界的な情勢をまったく無視した復古主義の政治路線を主導することが、現代日本の与野党政治家・官僚にとって、出世し権力に近づき政権に加わる条件となっており、戦前と同じく東アジア、国際政治において孤立を深めつつある。そのことは日本を確実に衰退へと導く。

 他方、安倍政権の復古主義は、奇妙なことに対米従属と一体となっており、米国政府の要求にこたえ集団的自衛権の行使を決定し、秘密保護法を制定し、沖縄・辺野古新基地建設を推し進めている。国際政治においてはまったくの米国依存状態である。
 ただ以前と異なり、米国にとり日本の重みは大きく低下した。米政府は、次の時代の世界共同支配に協力しかつ対抗する中国との関係構築に苦慮しており、この関係を破壊してまで安倍政権の復古主義を支持するわけにはいかない。
 米国にとって、国際政治において日本は米政府に必ず従う存在であり、日本政府側は日米同盟を第一義的にとらえているが、米国はすでに日本を重視していない。経済的にはTPPによるブロックで利用し、政治的軍事的には中国に前線で対応する一つのコマとして、現在の日本はある。
 安倍政権の復古主義は、国際社会のみならず、「従属」する米国の現実的な国際政治、国際戦略にも受け入れられていないのは、明らかである。

 安倍政権の復古主義は、現在と近い将来の世界の経済的発展の中心地域である東アジアから、日本を孤立させ衰退させるだけであり、安倍政権の政治路線の先に、日本の未来はない。米国への一国依存ではなく、東アジアを中心にバランスのとれた善隣友好関係を構築し、復古主義をやめ国際社会に認められる人権を尊重する日本に転換することを求める。


「戦後70年談話」で、歴史修正主義、復古主義に踏み出すのを断念すること!
安倍首相は二枚舌外交を即刻やめること!
「慰安婦」問題の解決を表明し、「戦後70年談話」を真に未来志向の内容とすること!
安倍政権の復古主義は、21世紀において「孤立し衰退する日本」へと導くだけだ!
国際社会に認められる、人権を尊重する日本に転換すること!

2015年1月21日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

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朝日非難キャンペーンは、計画通り [元「慰安婦」問題]

 遅くなりましたが、11月5日提出した「慰安婦問題の解決を求める要請書」を下記に添付します。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

 日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)言論の圧殺だ!――安倍内閣・自民党に責任がある

 「慰安婦」報道にかかわった元朝日新聞記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)に、3月から爆破予告など不当な脅迫や抗議が続いてきたが、10月31日北星学園大・田村信一学長は、元記者の非常勤講師と来年度契約を更新しないことを明らかにした。脅迫によって犯人の要求に応じたことになる。

 また10月13日、帝塚山学院大(大阪府)に元朝日記者の教授(67)を「辞めさせないと爆破する」と脅迫文が届いていた(10月30日明らかになった)。脅迫文には、元記者が「慰安婦」問題に関する記事を書いたことに対する批判があり、「辞めさせなければ、学生に痛い目に遭ってもらう。くぎを入れたガス爆弾を爆発させる」などと書かれていた。元記者は10月30日退職した(大学は「脅迫文とは関係ない」としている)。

 言論の自由の圧殺が堂々と行われている。戦前と同じような事態が進行している。「美濃部達吉の天皇機関説」に対する批判・弾圧などとそっくりではないか。

 自民党の国際情報検討委員会(原田義昭委員長)は10月2日、「決議」をあげ、「朝日新聞が慰安婦問題などにつき虚偽の報道であったことを認めた」ことを口実に、「いわゆる慰安婦の『強制連行』の事実は否定され、性的虐待も否定されたので、世界各地で建設の続く慰安婦像の根拠も全く失われた」などと指摘している。

 また、10月30日には、「慰安婦」問題に関する自民党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(中曽根弘文委員長)が初会合を持ち、稲田朋美政調会長は「客観的事実に基づいた政府の立場を内外に発信し、日本の名誉を回復すべく行動をとるべきだ」と強調。海外への情報発信強化策などを年内にまとめ、政府に申し入れる方針を表明している。

 外務省は10月10日、アジア女性基金の「拠金呼びかけ文」文中に「多くの女性を強制的に『慰安婦』として軍に従わせた」との記述が含まれていたことを理由に、「呼びかけ文」をホームページから削除した。次世代の党・山田宏幹事長が6日の衆院予算委員会で「問題がある」と指摘し、岸田文雄外相が削除を検討する考えを示していた。削除したのは「歴史認識」の項目に掲載されていた「『女性のためのアジア平和国民基金』への拠金呼びかけ文」(平成7年7月18日)

 さらに外務省(佐藤地・人権人道担当大使)は10月14日、日本軍「慰安婦」を「性奴隷」と位置づけた1996年の国連人権委員会「クマラスワミ報告」に対し、強制連行について語った「吉田証言」関連部分の撤回を、クマラスワミ氏に求めた(クマラスワミ氏は「証拠のひとつに過ぎない」として拒否した)。
 
 外務省の行為は、強制性を認めている「河野談話」の否認である。このようなみっともない真似をしてはならない。

 こうした一連の動きは、「日本が国ぐるみで性奴隷にしたと、いわれなき中傷が世界で行われている」(安倍晋三首相、10月3日の衆院予算委)と、まるで日本が被害者であるかのような宣伝のもとで、矢継ぎ早に行われている。
 言論の自由の圧殺が堂々と行われ、しかもそれを準備し煽っているのは、外務省であり、政府・自民党である。即刻、やめなければならない。
 

2)「吉田証言」は「河野・村山談話」に反映されずと、政府答弁

 他方、10月24日、安倍内閣は河野・村山談話に『吉田証言は反映されていない』とする答弁書を決定した。

 「安倍内閣は〔2014年10月〕24日の閣議で,慰安婦問題で謝罪と反省を表明した1993年の河野洋平官房長官談話と,アジア諸国に対する植民地支配と侵略への反省とおわびを表明した1995年の村山富市首相談話について、慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言は文言に反映されていない、とする答弁書を決定した。社民党の吉田忠智党首の質問主意書に答えたものである。」(10月25日、朝日新聞)
 
 安倍内閣が、「吉田証言」は「河野、村山談話」と関係がないと認めたわけである。

 「吉田証言」報道を朝日新聞が撤回したことを「利用」し、あたかも「慰安婦」問題そのものがなかったかのように騒いで非難・批判し、ましてやこの問題にまとわりついていた「強制性」の論点もまったく存在しなかったかのように、すさまじい攻撃・罵倒をくわえてきた安倍内閣は、いったいどういうつもりでこの「答弁書」を作成し決定したのか。

 安倍内閣は事実経過をよく知ったうえで、平気で嘘で塗り固めた政治的キャンペーンを繰り広げてきたのである。安倍内閣の二枚舌政治スタイルがここにある。

 上述の自民党「国際情報検討委員会」(原田義昭委員長)の決議、自民党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(中曽根弘文委員長)の主張のいずれにも根拠がないことになる。
 自民党は各委員会を立ち上げ、「慰安婦」問題でのキャンペーンを組織している。それは安倍政権の意向に沿った動きであり、政権にすり寄り閣僚に加えてもらいたい各議員の心持ちが透けて見える。

 「慰安婦」問題キャンペーン、朝日非難キャンペーンは、安倍内閣に責任がある。
 即刻あらためること。

3)復古主義政治路線をやめよ!
―――「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」

 朝日新聞批判キャンペーンは、決して偶発的なものではなく、しっかりと準備され計画されたものである。
 
 自民党の「明るい日本国会議員連盟」は、96年9月「教科書問題に関する決議」をあげ、南京大虐殺や日本軍「慰安婦」に関する記述を削除するよう要求した。96年12月には民間団体「新しい歴史教科書をつくる会」が発足し、それと連動するかのように、97年2月に「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(2004年2月に「若手」を削除する名称変更)を結成した。代表:故中川昭一、事務局長:安部晋三、幹事長:平沼赳夫で発足した同会には、菅義偉、高市早苗、下村博文の各氏ら、現安倍内閣の中心閣僚の多くが顔を並べている。
 
 「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の主張は、南京大虐殺はなかった、「慰安婦」は強制連行ではないから軍・政府に責任はない、沖縄集団自決は強制されたのではない、このように歴史を書き替えることを要求しており、それを実現する行動方針として、文部省に働きかけ教科書から削除する、NHKへ介入する、朝日新聞非難キャンペーンの実行を、明確に述べている。(『歴史教科書への疑問―若手国会議員による歴史教科書問題の総括』1997年12月1日発行、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会 」編集)
 
 実際に、約十数年かけて、その計画通り実行してきていると言える。この過程で、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」に国会議員を集め、官僚も歴史修正主義の人物に徐々に入れ替え、大手メディアも自発的に政府にすり寄る体質に変えてきた。
 その結果、安倍内閣の閣僚、自民党に中心議員は復古主義路線の政治家が占めることになった。NHKには2000年の女性国際戦犯法廷を扱ったETV2001に介入・恫喝し番組を改変させ、安倍内閣となった2013年には籾井会長、百田・長谷川経営委員を送り込んだ。そして、現在の朝日新聞非難キャンペーンである。

 私たちは、人権問題として「慰安婦」問題の解決を要求してきた。しかし、安倍内閣の復古主義政治路線は、あらゆる場や人に対し、マスメディアや政治家、官僚に対し「慰安婦」問題を捩じ曲げることをまるで「踏み絵」のように強要しており、私たちが「慰安婦」問題の解決を訴えることは、復古主義政治路線の動き一つ一つに対抗しやめさせることに他ならない状況になっている。

4)国際社会に受け入れられない――孤立し衰退する日本

 国際社会が日本軍「慰安婦」で問題にしているのは、「強制連行」があったかなかったか以上に、女性の人権を蹂躙した「慰安所」での強制使役=性奴隷制度である。

 東郷和彦元オランダ大使は『週刊金曜日』10月10日号で、「国際社会では、『強制連行』でなくても、騙された結果連れて行かれ、意思に反して『慰安婦』として働かざるをえなくなったら、十分にひどい話だと思われています」と語っている。そして、「日本は世界で『歴史問題』ではどうにもならない国、相手にもしたくない国へと自らを追い込みかねません」と警告している。

 安倍政権は、国際社会のなかで自身の主張が批判され受け入れられていないことを十分に理解した上でなおかつ、復古主義、歴史修正主義の政治的キャンペーンを行い、国内世論を主導し、国際的にもその主張で押し通そうとしている。

 ますます世界から孤立し、国連の各人権委員会からたびたび批判勧告がなされ、中国、韓国と首脳会談さえ開くことができない。
 戦前の戦争指導体制、戦犯となった軍人と政治家(祖父岸信介)を復権させたいとする復古主義路線の政治家(実際に復古主義路線が実行できると思っているのか、ただ閣僚になりたいからなのか不明だが)たち、安倍晋三や安倍内閣の閣僚たちが政権の座についているものの、その主張・路線は国際社会のなかで到底受け入れられるものではない。日本は国際社会と対立と矛盾を深め、近い将来いっそう孤立し、そのことで米国により依存、従属せざるを得なくなる道を歩んでいる。

 安倍政権の復古主義は奇妙なことに対米従属と一体となっている。米国政府の要求にこたえ集団的自衛権の行使を決定し、秘密保護法を制定し、沖縄・辺野古新基地建設に邁進する安倍政権ではあるけれども、ワシントンは次の時代の世界共同支配に協力しかつ対抗する中国にはきわめて気を使っているものの、日本政府にはたいして気にかけてもおらず、重視もしていない。米国にとっては、経済的にはTPPによるブロックで利用し、軍事的には中国に前線で対応する一つのコマとして、現在の日本はある。

 元米国務副長官のリチャード・アーミテージ氏と元国防次官補のジョセフ・ナイ氏は10月29日、都内で開かれたシンポジウムに出席し、戦時中の日本軍「慰安婦」問題をめぐり強制性と日本軍の関与を認めた河野官房長官談話「見直し」を安倍晋三首相がもくろんでいることや、日本の首相による靖国神社参拝に対し、懸念の声をあげた。

 ナイ氏は「河野談話のいいことは、歴史問題について明確に処理したことだ」と指摘し、「これを否定すれば日本に大きなダメージとなる。米国との関係を傷つける波及効果も与える」と強調。首相の靖国参拝については、「歴史問題のシンボルのようにとらえられている。靖国神社に参拝すると大きな打撃を近隣諸国に与え、米国との関係でもマイナスの波及効果になる」と述べ、戦没者追悼は別の方法を追求すべきだと求めた。
 「ジャパン・ハンドラー」であるナイ氏やアーミテージ氏は、対峙する中国の意向を考慮するという米国の戦略的利害から発言していることは了解しておかなければならないが、安倍政権の復古主義は、国際社会のみならず、つくしてやまない米国にも受け入れられないのは明らかである。

 安倍政権の復古主義は、21世紀において「孤立し衰退する日本」へと導くだけだ
 「河野談話」を堅持し、「慰安婦」問題の解決を表明すること。
 国際社会に認められる日本に転換せよ!

2014年11月5日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進


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9月17日提出、「慰安婦」問題の解決を求める要請書 [元「慰安婦」問題]

 少し遅くなりましたが、「慰安婦」問題の解決を求める9月17日提出の要請書です。

 「慰安婦」報道をめぐる朝日新聞叩きとそれに便乗した報道は、人権意識の欠けたきわめてデタラメなものです。
 誤った報道に対し、「河野談話」を堅持すると表明した日本政府はそのような報道は間違いである、と批判し、政府の立場を明確にしなければなりません。国連の人権委員会から、そのように勧告されています。
 しかし、安倍政権は放置しているだけでなく、むしろデタラメな「慰安婦」報道を準備し組織しています。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書


 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)「河野談話」は「吉田証言」を根拠にして作成していない。事実に反したマスコミ報道に反論し、これをやめさせること

 
 8月5・6日の朝日新聞の「慰安婦」問題特集から端を発した「慰安婦」バッシング報道は目に余るものがあります。朝日新聞は2つの点を修正・取り消したのみで「慰安婦」問題の事実を取り消したわけではありません。

 しかし、このことに政府内外の右翼的な人々は抑えていた自論を展開するチャンスとばかりに朝日報道にかこつけて<強制連行はなく、民間が勝手にやり、政府に責任はなく慰安婦は金目当てで、「慰安婦」証言も裏付けがない等>というキャンペーンをこのときとばかりに繰り拡げています。自論の展開には、朝日の「過ちを認めたもの」が何であれ、関係がないようです。

 というのも、吉田清治氏の発言・著書は1982年~のことであり、「慰安婦」問題は、このことを根拠にしたわけではありません。「慰安婦」問題が大きく取り上げられるようになったのは、1991年の韓国の金学順さんが実名で名乗ったことがきっかけです

 1990年1月に韓国では尹貞玉・梨花女子大教授(当時)が日本や東南アジアを訪ね、韓国紙ハンギョレ新聞に「挺身隊『怨念の足跡』取材記」を連載しました。そして日本ではこの年6月に参院予算委員会で当時の社会党議員が「慰安婦」問題を調査するよう政府に質問したのに対して、旧労働省の局長が「民間業者が軍とともに連れ歩いている状況のようで実態を調査することはできかねる」と答弁

 これが韓国内で報じられ、強い反発が起きました。金学順さんは翌年91年8月に意を決して、「事実は違う、私が生き証人だ」と名乗り出たのです。

 いわば日本政府の不誠実な対応が引き起こしたのが今日の「慰安婦」問題の発端なのです。内外の強い批判の高まりから政府はその後調査を約束し、軍や朝鮮総督府、慰安所経営の関係者の証言、日本の関係省庁、米公文書館など大量の資料を集めたのです。

 吉田証言については当時の内閣外政審議室が「つじつまが合わないので、談話には採用しなかった」と述べているのです。

 「慰安婦」問題を吉田証言が発端という、事実に反する論拠で、またこれを朝日新聞が否定したのだから、全て「慰安婦」問題はなかったかのような、自民党内外・右翼マスコミのミスリードを許してはなりません。

2)吉田清治氏の「強制連行」と河野談話の「強制性」

 河野談話発表の4か月前に当時の谷野作太郎外政審議室長は参院予算委員会で「強制は単に物理的に強制を加えることのみならず、脅かし・畏怖させ本人の自由な意思に反した場合も広く含む」と答弁しています。

 また、河野談話でも「募集・移送・管理等も甘言、強圧による等、総じて本人達の意志に反して行われた」と結論づけています

 吉田氏の証言を参考にしていないばかりか、吉田氏のいう「強制連行」をも、そもそも問題としていなかったのです。つまり、この時は女性たちが自由意志を奪われた「強制性」を問題として発表されたのが「河野談話」なのです。河野談話の根拠が崩れた、とばかりに自民党内から高市早苗政務調査会長(8月26日当時)が、河野談話に代わる新しい官房長官談話を、戦後70年にあたる来年に提出したいという申し入れ書に対して、政府は「見直すことはない」と、歴代政権と同じく継承していく姿勢を示しています。この姿勢を堅持するなら、当然、今起きている、被害者を置き去りにし、冒涜する反「慰安婦」キャンペーンにきちんと批判、反論するのが当然ではないでしょうか。

3)9月6日、夕刊フジでの安倍首相の発言を批判し、撤回を求める

 9月6日(土)、安倍首相は夕刊フジで「慰安婦」朝日報道に対し、「報道機関は信頼・信用・正確さ・事実に即しているかが常に問われていると思う。(誤報で)多くの人が悲しみ、苦しみ、国際社会において日本の名誉が傷つけられている、そうした結果を招いたことへの自覚と責任のもとに常に検証を行うことが大切だ」と発言しました。

 「河野談話」を見直さないと言いながら、反「慰安婦」キャンペーンに明確に反論しない姿勢がここによく現れているのではないか、すきあらば、周囲の状況から、また少しでも報道に瑕疵があるなら、それを援用して事実を薄めようとする態度。

 すでに国際社会の中で日本の名誉はこの「慰安婦」問題では地に堕ちているのです。「事実」に即しているのか、きちんと調査していれば吉田証言の有無で「慰安婦」問題が左右されるわけがありません。事実に目を向けず故意にねじまげているこの姿勢を国際社会はむしろ悲しみ、苦しみ、日本の名誉を回復するためにも、事実に向き合い、被害者の納得する解決をせよと、促しているのです。安倍首相の発言はそっくり自らに向けるべき内容です。

4)国際社会から遊離した日本の「慰安婦」問題の否定発言

 「慰安婦」問題の解決を促している米国の識者の1人、米コロンビア大教授(日本近現代史)キャロル・グラックさんは8月6日、朝日新聞のインタビューに明確に応えています。

 「慰安婦」問題が世界的な注目を集めているのは3点の理由からとして

 ① 「慰安婦」は国際法の分野で女性の権利侵害の歴史的な実例として1990年代から広く言及されている。ボスニア紛争などでの大量虐殺と集団レイプから、国際刑事裁判所の設立(98年)に影響し、国際法の文献で「慰安婦」が第二次大戦中の性的犯罪として取り上げられることは通常のことだ。「慰安婦」問題は女性の権利に関わる国際的な問題となっている。

 ② NGOや女性団体の活動が拡大、国際的な協力も飛躍的に発展。韓国での活動に日本の女性活動家が加わり、90年代に他のアジア諸国と韓国系米国人、カナダ人が声をあげるようになり、米国の議会では日本政府に賠償と謝罪を求める決議が繰り返されてきた。また、政府レベルでも、2011年の韓国憲法裁判所の決定は、「元慰安婦らへの個人補償が日韓請求権協定の例外にあたるのか、韓国政府が日本政府と交渉しないのは違憲」とした。このことを機に韓国政府は日本に対してだけでなく、ニューヨークやジュネーブの国連機関を通じて国際社会に「慰安婦」問題をアピールしている。そして、国連の諸機関は、自由権規約委員会、社会権規約委員会、女性差別撤廃委員会、近くは人種差別撤廃委員会等で、日本政府に謝罪と賠償、戦中の「慰安婦」制度の調査を繰り返し勧告してきている。

 ③ この25年で「慰安婦」と女性の権利に関する世界の考え方が変わった。日本の政治家が「強制連行を裏付ける公文書は見つかっていない」といった発言を繰り返すたびに、世界中の反感を引き起こしている。米国で「慰安婦」の碑や像が増えつつあることは
その一例だ。

 また同じくジョージ・ワシントン大教授(国際政治学)のマイク・モチヅキ氏の同紙のインタビューに次のように応えています。

 ① 「慰安婦」問題は日韓問題を超えて国際社会の関心事。「河野談話」を見直す動きが出るたびに日本のお詫びや反省の言葉は偽物だったと映り、韓国系の活動をさらに活発化させている。 

 ② 米国にも歴史問題がある。父も祖父も太平洋戦争中に強制収容された日系人だが、80年代に連邦議会が謝罪。日系人リーダーは感激して「こんな日が訪れるとは想像もしていなかった。過去の失敗に向き合える米国を誇りに思う」と涙したのです。
その後、収容所を保存し、強制収容の歴史を学べるよう、記憶を風化させず、2度と同じ過ちを繰り返さない取り組みもしている。

 ③ 多くの日本人が「もう十分、未来志向で行こう」というが、それを言うのは被害者の側、日本人はまず「私たちは忘れない、過ちを繰り返さない」と言い続けるべき、と述べています。

5) 日本政府の態度が「慰安婦」問題をこじれさせている原因

 日本国内では、同じく朝日のインタビューに応えて、中央大教授の吉見義明氏が述べています。

 ① 被害者に寄り添う報道が必要で、報道する側はその解決策を示す必要がある。日韓関係の両政府の応酬の末にここまでこじれたかの印象を与えるが、こじれの根本の原因は、被害者の声にきちんと向き合おうとしない日本政府の姿勢にこそある

 ② 河野談話は「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」としながら、その主体が誰なのか、明記していない。その責任が曖昧なまま、アジア女性基金では本来政府が担うべき「償い金」を民間が支払うという根本の「逆転」を許してしまった。これでは被害者が納得できるはずがない。(筆者注:このいわゆる「アジア女性国民基金」の支給範囲もごく一部の国に限定されてそれ以上調査しようとしなかった)

 ③ 解決のための根本は、女性の人権侵害をした主体は軍であることを政府が明確にみとめること。
 国外では「慰安婦」問題が浮上したあと、旧ユーゴやルワンダで起きた女性への集団レイプと「慰安婦」問題が戦時下での女性への性暴力として繋がっているという認識が広がってきている。が、国内ではこの問題が私たちの未来のためにも克服すべき課題だという理解がなかなか進んでいない。

 また、慶応大教授の小能英二氏は同じくインタビューに応え、

 「日本の保守派には軍人や役人が直接に女性を連行したか否かだけを論点にしてそれがなければ日本には責任がないと主張する人がいる。そんな論点は日本以外では問題にされていない。見苦しい言い訳にしか映らない。「原発事故は電力会社が起こしたことだから政府は責任がない」とか「(政治家の事件で)秘書がやったことだから私は知らない」と言う弁明と同じ、通用しない言い訳だ。

 以上、少々長くなったが「日本一国しか視野にない」「できるなら政府はこれ以上の責任を取りたくない」という保守的姿勢を取り続ける限り、国際社会での孤立は更に進む。アジアで生存している余命わずかな被害者たちは、日本の言い訳にさらに傷ついている。

 一刻も早い解決を促すよう要望する。

2014年9月17日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進

事務局:  平田 一郎


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「慰安婦」問題はなかったとするキャンペーンをやめよ! [元「慰安婦」問題]

 9月3日(水)、毎月第一、三水曜日に行っている安倍首相、岸田外相宛ての「『慰安婦』問題解決を求める要請行動」を行いました。 3日は内閣改造であり、ちょうど首相官邸で新閣僚の記者会見が行われていて、要請書を渡すだけになりました。
 私たちが要請行動を始めて、2年が経過しました。韓国の日本大使館前の水曜行動に合わせてはじめたわけですが、「慰安婦」問題は未だに解決しておりません。
 それどころかこの8月は、朝日新聞の検証記事への批判の形をとって、、「慰安婦問題はなかった、捏造だ、強制連行の証拠はない、日本軍の責任はない」という一大キャンペーン、かつてないほどのデタラメな、人権意識のかけらもない宣伝が、読売・産経新聞、TV,週刊雑誌などで繰り広げられています。

 安倍政権は、このような謀略的な、被害者を傷つける宣伝に対し、これを批判し、止めようとはしていません。
 大手マスメディアは、安倍政権が政府としては言えないこと、安倍政権の本心を、進んで自主的に語っているのであり、権力におもねっています。マスメディアの自殺です。その実情を私たちは直視しなければなりません。

 このような日本政府、日本社会の人権を軽視する風潮、情報をコントロールする現状は、国際社会からもあきれられていますし、批判されています。国際的に孤立化しかねません。
 
 9月3日提出した要請書を下記に示します。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)朝日新聞の検証記事へのバッシングと反「慰安婦」キャンペーンをやめさせよ!

 8月5、6日の両日にわたって朝日新聞は 「慰安婦問題を考える」とする特集記事を発表した。
 8月5日付朝日新聞は「慰安婦問題の本質直視を」
 ① 日本政府による「河野談話」の見直しなどの動きが韓国内の反発を強め、日韓関係はかってないほど悪化した。一部論壇やネット上には「慰安婦問題は朝日新聞の捏造」とする批判があり、読者への説明責任を果たす。
 ② 研究が進んでない90年代初めの記事で、事実関係の誤り(吉田清治氏の朝鮮での官憲と一緒になった奴隷狩り的強制連行や挺身隊と「慰安婦」の混同)を訂正する。
 ③ しかし、そのことを理由に「慰安婦問題は捏造」、被害者は「売春婦」などと貶める論調は、事実に反する。日本軍兵士の性の相手を強いられた女性たちがいたこと、自由を奪われ女性としての尊厳を踏みにじられた事実こそ問題の本質であり、これを直視することが日韓両国の和解に資すると考える。
 とするものである。

 朝日新聞の検証記事をバッシングする形で、メディアや政治家たちが、「慰安婦」被害という戦争犯罪に当たる歴史的事実までなかったという、かつてない一大キャンペーンを繰り広げている。「慰安婦問題は捏造、朝日新聞の記事による」、「強制連行はなかった」、「業者のやったこと、日本軍・日本政府の責任はない」などと、産経、読売の大手新聞、TV、雑誌等多くのメディアが、一斉にしかも歴史事実を捏造する同じ内容を繰り返し載せており、きわめて異常な事態である。

 石破茂自民党幹事長に至っては、国会で朝日新聞の責任者を喚問して責任を追及すると語り、報道の自由の国家統制を一層露骨にすることを口走るありさまである。
 日本維新の会の橋下徹・大阪市長は、性懲りもなく安倍政権の意向・本音を先取りして発言し、自身が役立つ存在であることを訴え政権に加えてもらおうとした。
 高市早苗・自民党政調会長は、8月30日の読売テレビ番組で、強制性を認めた河野談話に関し「来年、安倍晋三首相が何らかの談話を出す。その内容に大いに期待している」と述べ、河野談話に代わる談話を出すように政府に求めた。

 このようなキャンペーンは、計画的に準備され仕組まれたものであり、「慰安婦」問題にとどまることなく、次は「南京大虐殺否定」、「沖縄での集団自決で日本軍の強制否定」等々に展開していくとさえ公言している。

 安倍政権は、上記のような「慰安婦」への中傷や歴史事実の捏造報道を野放しにしており、これを否定し糾弾する政府見解を述べようとしていない。安倍政権は「河野談話の見直しをしない」と表明しながら、実際には河野談話への中傷や非難をなすがままに任せている。
現在のような事態に対する原因と責任は、「慰安婦」問題を解決しようとしない安倍政権にある。

2)2007年3月の第一次安倍内閣の閣議決定の撤回をもとめる!

 朝日新聞へのバッシングの形をとって繰り広げられている「慰安婦」被害はなかったというキャンペーン内容は、奇妙なことにどれも一致している。
 一例は「強制連行はなかった」というキャンペーンである。

 この論調の根拠は、河野談話までに「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」と述べた第一次安倍内閣による2007年3月16日の答弁書(内閣衆質166第110号)にある。

 河野談話は、「慰安婦の募集については、軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが、その場合も、甘言、強圧による等、本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり、更に、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった。また、慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」と述べており、特に募集の際の問題に限っていないし、強制連行の言葉も使っていない。

 しかし、閣議決定は「募集の際の問題」=「強制連行」に勝手に限ってしまった。その上で「軍や官憲によるいわゆる強制連行」とは、「軍や官憲による暴行・脅迫を用いた連行(軍・官憲による略取)という意味」であり、そのことを「直接示すような記述」はなかったとしているのである。

 この点でも、「慰安婦」への中傷や問題を否定する試みの責任の一端は政府にある。
 2007年3月の第一次安倍内閣の閣議決定の内容自体が事実に反しており、この撤回を求める!

3)「慰安所は日本軍が設置し管理した」、この厳然たる歴史的事実を認めよ!

 朝日新聞の検証記事は、慰安所設置において「軍の関与」を指摘しているものの、責任の主体が民間業者なのか軍なのかあいまいなところがある。
 1937年7月日中戦争の本格化に伴い、日本陸軍は1937年9月に「野戦酒保規程」を改正し慰安所の設置を法的に整え、500名以上の大隊(のちに250名以上)に慰安所設置を認めた。「野戦酒保規程」に従い部隊の責任者が慰安所を設置し、経理将校などに慰安所管理・運営、すなわち細かい慰安所規定を作り、経営や募集にあたる業者を選定し、管理監督させた。あくまで日本軍の慰安政策として「慰安婦」制度が作られ、民間業者を手足として使ったのであり、軍が「主体」である。この厳然たる歴史的事実を認めなければならない。

 「野戦酒保規程」に基づく慰安所設置のため、婦女売買に関する国際条約に反しないように、翌1938年2月内務省警保局長が通牒「支那渡航婦女の取締りに関する件」を出している。この通牒は「慰安所」設置を前提にしたものであり、設置に政府が関与していることを示している。

 日本政府、日本軍が慰安所を設置したことを明確に示した上記のような歴史事実は、1993年の河野談話以降の資料の発掘や研究により明らかにされている。日本政府が河野談話以降、発見された資料や研究成果を無視するのは、その意味をよく知っているからである。6月20日に出された河野談話の検証結果報告書も談話の作成過程に限って「検証」しており、日本軍が主体となって設置し管理した歴史的事実に触れようとしていない。

 しかし、このような態度をとっているのは日本政府だけであって、国際社会は河野談話以降の資料や研究をも丹念に取り入れ、日本政府による実態の認識が不十分であることも丁寧に指摘し、日本軍の関与を認め、さらに人権侵害に関与した責任者の追及、法の裁きまで求めている。

4)日本政府は人種差別撤廃委員会「慰安婦」問題の解決の勧告に従うこと

 国連の人種差別撤廃委員会は8月29日、人種差別撤廃条約の履行を調査する対日審査を踏まえ、「最終見解」を公表した。
 「最終見解」のなかで「慰安婦」問題については、日本政府による実態の認識や被害者への謝罪、補償が不十分であることに懸念を表明。その上で日本政府に対し、
(1)元「慰安婦」の人権侵害の実態を調査すること、侵害に関与した責任者の責任を追及し法の裁きを受けさせること
(2)すべての元「慰安婦」とその家族への「誠実な謝罪と十分な補償」を行うこと
(3)「慰安婦」への中傷や問題を否定する試みを糾弾すること
を勧告した。

 国連は人種差別撤廃委員会ばかりでなく、これまで自由権規約委員会、社会権規約委員会、女性差別撤廃委員会、拷問禁止委員会などで、日本政府に対し「慰安婦」問題の解決を求める数々の勧告を出している。日本政府はこれらを無視し続けている。

 日本政府は、国連の人種差別撤廃委員会の「最終見解」を受け入れ、従うこと。

以上


2014年9月3日


フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

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政府は国連人権規約委員会の勧告に従え! [元「慰安婦」問題]

 8月6日、内閣に安倍首相、岸田外相あての、「慰安婦」問題の解決を求める要請書を提出しました。
 今回の要請書は、7月24日に出された国連 自由権規約委員会の勧告とそれに関係する問題について要請しました。 勧告では、他の問題とともに「慰安婦」問題の解決ーーー被害事実を認め、公式謝罪と賠償ーーー を求めています。
 7月25日には、さっそく菅官房長官が強制連行を示す証拠がなかったと反論し、勧告を軽視する態度を示しています。
ーーーーーーーーーーー
 7月24日、国連 自由権規約委員会が勧告

 国連の自由権規約委員会が7月24日、日本政府に対する勧告を出した。「慰安婦」問題については「公的な謝罪」や「完全な賠償」を求め、秘密保護法については国民の「知る権利」の保障に懸念を示すなど、勧告は日本政府にとって厳しいものとなった。
 自由権規約委員会は、国連人権条約にもとづいて作られた機関の一つであり、条約の批准国を順番に審査するもので、2014年は6年ぶり日本が審査対象となった。
 勧告に拘束力はないが、日本は自由権規約を批准しており、委員会の規約に対して日本政府が今後どのような対応を示すのか、国際社会は大きな注目を集めている。

 1)人権委員会議長「日本は国際社会に抵抗している」

 代用監獄や死刑制度、「慰安婦」問題については、日本政府は過去に何度も委員会から勧告を受けた。しかし、勧告を無視する日本政府の姿勢が今回も明らかになった。ナイジェル・ロドリー議長が「日本は国際社会に抵抗しているように見える」と苦言を呈したという。ロドリー議長はさらに、「今後の審査では、今回指摘されたものと同じ問題を再び繰り返さないよう望む」と厳しく釘を刺した。「人権後進国の日本」という印象を色濃く残した。

 2)遅れた刑事司法制度

 特に関心を集めたのは、45年以上不当に拘禁されていた袴田巌氏の問題であり、代用監獄、取り調べ、死刑制度、死刑確定者の処遇など、日本の刑事司法を取り巻く数多くの問題点が指摘された。
 
 3) 秘密保護法に懸念――「秘密の定義が広くて曖昧」

 自由権規約委員会は特定秘密保護法についても厳しい勧告を出した。「秘密に特定できる事項の定義が広く、曖昧である」、「ジャーナリストや人権活動家の活動に深刻な影響を及ぼしうる重い刑罰が課せられている」ことに懸念を示している。具体的には、指定される情報のカテゴリーを狭く定義し、国家の安全保障を害しない、正当な、公益に資する情報を流布したことで個人が刑罰を受けないようにすることを求めている。

 4)ヘイトスピーチに「刑事罰を」!

 ヘイトスピーチや排外デモも、今回の審査の対象となった。
 2013年に、日本国内で行われたヘイトデモの件数は約360件に上るが、日本政府は、表現の自由を侵害するとして、ヘイトスピーチの規制を棚上げしてきた。審査の場でも日本政府の担当者は、「法規制するほど人種差別は深刻ではない」と答弁したが、その主張は認められなかった。
 勧告では、「差別、敵意又は暴力の扇動となる、すべての宣伝を禁止するべきである」、すなわちヘイトスピーチや排外デモを禁止せよ!と勧告している。「裁判官、検察官および警察官が、憎悪および人種的動機に基づく犯罪を発見する訓練を受けるようにするための努力を強化するべきである」、さらに「加害者とされる者が徹底的に捜査され、起訴され、有罪判決を受けた場合には適切な制裁をもって処罰されるようにするために、すべての必要な措置もとるべきである」などと、刑事法的な規制も求めている。

 5)「慰安婦」問題、「公式な謝罪」と「完全な賠償」を!

 「慰安婦」問題では、「慰安婦」を「性奴隷」と表現した南アフリカのゾンケ・マジョディナ委員に対し、日本政府は「『性奴隷』と呼ぶことは相応しくない」と強く反論した。この時、「慰安婦」の強制性を否定する一部の日本人グループが一斉に拍手をした。ロドリー議長がこの拍手に対し「許されない行為だ」と厳しく発言しこれを制した。審査終了後に、日本人グループが、マジョディナ委員を取り囲み、非難の言葉を浴びせかけ、事務局によって救いだされる事態になった。このような非常識な事態に、各委員から非難の声が上がった。
 最終的にまとめられた勧告では、「公式な謝罪を表明すること、および締約国の責任の公的認知」「被害者とその家族への完全な被害回復措置」「被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての企みへの非難」のため、「あらゆる措置をとるべきである」とする、日本政府にとって厳しいものとなった。

 この勧告について、菅義偉官房長官は7月25日の記者会見で、「わが国の基本的な立場や取り組みを真摯に説明したにも関わらず、十分に理解されなかったことは非常に残念だ」と話し、河野談話の策定過程などを検討した客観的な報告書でも、強制性はなかったことが明快になっていると、勧告の内容を真っ向から否定した。

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 安倍 晋三 総理大臣 様
 岸田 文雄 外務大臣 様

 日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

 1.国連人権規約委員会による勧告に従い、被害者救済のために政府として公的な謝罪、賠償を行うこと。

 2014年7月15日~16日、国連の自由権規約委員会による日本政府報告書審査が行われ、7月24日には委員会による総括所見(最終見解・勧告)が提出された。これは前回(2008年)の審査時よりも強い勧告であり、締約国である日本政府は勧告に従って改善に向けた措置を採る義務がある。今回、委員会は「慰安婦」問題について明確に日本政府の法的責任を認めている。私たちは、日本政府が今回の最終所見に従い、国際基準に則って被害者に対し公的な謝罪・賠償を行い、戦争によって女性の人権が踏みにじられることのないよう、一刻も早く法的・制度的措置を採ることを要請する。

 1-1. 国連人権規約委員会の以下の勧告に従うこと

 締約国は、以下を確保するため、即時かつ効果的な立法的及び行政的な措置をとるべきである。
 (i) 戦時中、「慰安婦」に対して日本軍が犯した性奴隷あるいはその他の人権侵害に対するすべての訴えは、効果的かつ独立、公正に捜査され、加害者は訴追され、そして有罪判決がでれば処罰すること。
 (ii) 被害者とその家族の司法へのアクセスおよび完全な被害回復。
 (iii) 入手可能なすべての証拠の開示。
 (iv) 教科書への十分な記述を含む、この問題に関する生徒・学生と一般市民の教育。
 (v) 公での謝罪を表明することおよび締約国の責任の公的認知。
 (vi) 被害者を侮辱あるいは事件を否定するすべての試みへの非難。

 1-2. 加害事実の認定を行うこと

 日本政府は今回の審査で、「慰安婦」の募集に際し強制連行の事実があったことを否定した。被害者らは植民地統治下において「甘言、強圧による等、総じて本人たちの意思に反して」なされたと述べつつも、強制連行の事実は確認できないとする日本政府の答弁は、強制連行の証拠さえなければ人権侵害ではないと言っているようなものであり、責任逃れの答弁である。これに対しては議長も「理解しにくい。性奴隷である疑念があるなら、日本政府はなぜこの問題を国際的な審査によって明確化しないのか。」と厳しく批判している。
 これまでにも軍・政府が「慰安婦」の募集、「慰安所」の設置に関与した事実を示す証拠は度々提起されてきた。またそれ以上に、被害者となった女性たちは度々日本政府に訴え出ている。それらの証言以上に「証拠」として有効なものはない。被害者らの証言を重く受け止め、日本政府が「慰安所」の設置、募集に関与したこと、また強制連行の事実があったことを公的に認めるよう要請する。

 1-3. 被害者の訴えに基づいて責任者を処罰すること、またそのために必要な司法制度を整備すること

 委員会は、被害者によって日本の裁判所に提起されたすべての損害賠償請求が棄却され、加害者に対する刑事捜査及び訴追を求めるすべての告訴告発が時効を理由に拒絶されてきたことに懸念を示している。
 時効や損害賠償請求の棄却という司法的措置により、原告の訴えはこれまで日本において正当に審査されず、加害者の責任追及・処罰が行われてこなかった。国家による性暴力被害者の人権が救済され、あらゆる人の人権が国家によって踏みにじられることが今後もないよう、「慰安婦」問題が日本の司法制度によって裁かれる必要がある。そのために必要な法的措置を採るよう要請する。



 2014年8月6日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進


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河野談話 検証報告書は何だ!? [元「慰安婦」問題]

 安倍政権は、河野談話 検証報告書を、6月20日公表しました。

 3月のオバマ来日前に、米国政府からきつく言われ、安部政権は「河野談話の見直しはしない」に転換しましたが、河野談話 検証報告書では、これまでの日本政府の主張をくどくどと言い訳めいて述べています。河野談話を貶めることになるのがわからないのでしょうか。

 河野談話作成過程とそのあとの「アジア女性基金」事業において、法的責任を認めないという日本政府の立場は変えないで、民間団体「アジア女性基金」から償い金を配り何とか納めてもらおうと「努力」したことを、縷々述べています。ほとんど官僚の作文、言い訳に見えます。

 今や、政治解決に踏み出さなければ解決しない事態に陥っているのに対し、過去の「努力」を説明してどうなるというのでしょうか?

 リチャード・アーミテージ元米国務省副長官から、「人権を尊重する日本であろうとするなら、日本政府はこの論争に決して勝つことはできない」(2014年3月4日発言)と批判されました。それはアメリカ政府の見解でもあります。
 過去の経緯云々ではなく、政治的解決に踏み出さなければならないと強く批判されたにもかかわらず、いまだに日本政府に責任はない、いろいろ努力したと、くどくどと言い訳を述べ続けています。

 「政治解決に踏み出さない、そんなつもりはない」という安倍政権の意思表示に他なりません。

 このような検証報告書を出せば、韓国側は反論せざるを得ず、対立を大きくすることになりますが、そんなことよりも、言い訳のほうを優先するというこの無責任体制、「国際感覚」のなさは、いったい何なのでしょうか!
 事態を解決する意思も力もないと、自分から表明しているに等しいのではないでしょうか!

 実際のところ解決できないので、いずれアメリカ政府に仲介してほしいと訴えることになるのでしょう。4月にアメリカ政府に仲介してもらい、やっと実現した日米韓首脳会談のように。

 だいじょうぶか! 安倍政権

 7月2日、ロラネット、フィリピンピースサイクルが、毎月第一水曜日、第三水曜日に首相、外相あてに要請書を提出しています。今回は、河野談話 検証報告書に対する批判、要請でした。以下に、転載します。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書 
 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

「人権を尊重する日本であろうとするなら、日本政府はこの論争に決して勝つことはできない」 (リチャード・アーミテージ元米国務省副長官、2014年3月4日発言)

 安倍政権は6月20日、河野談話作成過程に関する検証結果「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯」を発表した。安倍政権の対応と検証報告書について要請する。

1)安倍政権による検証報告書の目的は何か!

 当初は、「河野談話を見直す」ための論拠として「検証」するつもりであったが、オバマ訪日前の準備過程でアメリカ政府に強く批判され、2014年3月に安倍政権は「河野談話の見直しはしない」と表明せざるを得なかった。そのため表向きは「検証結果の如何に関わらず見直しはしない」としながら、「作成過程のみを対象に」検証を行うという、矛盾した作業となった。2007年の第一次安倍内閣での誤った閣議決定のように、将来的に利用できる政治的論拠をつくっておくことにしたようである。

 このような検証を、一方の当事者である日本政府が単独で行うのでは検証にならない。日韓双方が検証目的を合意した上で協力しなければ意味はない。

 検証報告書は、河野談話の作成過程での日本・韓国間での「やりとり」を報告している。通常「やりとり」は伏せられるし、日本側から伏せるように提案もしている。しかし、今回の作成過程の検証で日本側が一方的に約束を破り、「やりとり」の一部を、日本政府の主張を補強するために公表した。

 信義則に反する行為であり、まとまるものもまとまらなくなるのは、誰でも予見できる。今回の日本側の行為は、混乱が生じたり、政治的な対立を激化させることになっても責任を負わない、という政治的態度である。
 当然のことながら、韓国政府は検証報告書が公表された6月20日に、早速遺憾の意を表明し、「検証結果の細部の内容に対するわれわれの評価と立場を別途明らかにし、国際社会と共に適切な措置をとる」と言明した。黙らせるどころか、逆に火を付けた格好である。

 これが検証報告書のもたらした一つの結果である。
 このような安倍政権、外務省を中心とする官僚の外交姿勢こそ問題であり、正さなければならない。

2)「作成過程のみを対象に」検証を行う目的

 「検証結果」は、まるで河野談話が、韓国政府からの日本政府に対する要望があったから作成されたかのように印象付けようとしている。検証報告書の目的の一つである。

 安倍政権は、これまで河野談話の意義を不当に貶めようとしてきたが、検証報告書もそのような内容、印象をつくりだすものになっている。この先、検証報告書の一部を切り取って、そのような宣伝の根拠として利用されることが出てくるだろう。

 ただし、この点は必ずしも「成功」していない。検証結果は、河野談話が当時の日本政府が自身の判断で作成したことを記さざるを得なかった。

3)「狭義の強制性」:「官憲による暴力・脅迫を用いた連行」のみを「強制連行」と位置づけていたこと

 「一連の調査を通じて得られた認識は、いわゆる「強制連行」は確認できないというものであった」と報告書は述べている。この点は日本政府の見解を繰り返しているだけである。
 河野談話の根拠となった公文書の中には、当時法務省が所蔵していた「バタビア臨時軍法会議の記録」があり、そこには「ジャワ島セマランほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性らを慰安婦として使う計画の立案と実現に協力した」、「部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」等の記述がある。これは、安倍首相のいう「狭義の強制連行」があったことをも立証するものである。そのことを検証していない。

 朝鮮半島からの連行については「狭義の強制連行」を示す日本政府、日本軍の公文書が見当たらなかったという理由で、「強制連行は確認できない」という結論を導いているが、これは当時から日本政府が「官憲による暴力・脅迫を用いた連行」のみを「強制連行」と位置づけていたことを示していたからである。甘言を弄して、だまして連れて行くのも、或いは人身売買で連れて行くのも、本人たちの意に反した連行であり、強制連行以外の何ものでもない。この「ごまかし」も検証していない。

 さらに重要なことは、日本軍「慰安婦」制度の問題が、連行時の強制性よりも、慰安所での強制使役、すなわち女性たちから居住の自由、外出の自由、廃業の自由、拒否する自由を剥奪し、性行為を強要した人権侵害行為があった点である。
 このような認識はすでに国際的常識となっている。日本政府だけが「狭義の強制連行」だけに限って、或いはすり替えて論じている。検証チームは、このことをこそ検証しなくてはならないのに、見過ごしている。
 
4)ずさんだった日本政府が行った資料調査、収集

 河野談話の作成過程で、日本政府が行った資料調査、収集がきわめてずさんであったことが今では明らかになっている。資料調査と報告が漏れていたり、内閣府まで届いていなかったものもある。また、河野談話以後、国内外で幾人かの研究者、政府機関が多くの資料を発見し、指摘している。

 資料調査、収集がきわめてずさんであったことこそ検証されなければならなかった。河野談話作成過程の重大な落ち度であるし、のちに2007年の誤った閣議決定の根拠に使われた。検証報告書はこの問題に少しも触れていないし、なおかつ報告書によれば、「日本側の資料収集、調査に対して、韓国側は一切疑っていなかった」ことが読み取れる。信義に反する行為があったこともまた検証されてしかるべきであった。

5)アジア女性基金
                   --誠意を尽くしたと訴えたかったアジア女性基金ーーー

 検証報告書は、日本政府が自身の法的責任を認めないためにいかに努力したか、そのために民間団体・「アジア女性基金」を設立し「償い金」支給や医療・福祉事業を実施させたか、その経緯を報告書の半分の量を使って述べている。
 被害者から批判があがり、韓国では基金事業は頓挫してしまった。検証報告書は、この経過をも日本政府の立場から一方的に叙述している。
 むしろ、日本政府の法的責任を認めないで民間団体にやらせたことが、根本的に解決しない原因であった。20年という貴重な年月をかけて、そのことがあらためて明らかになったのである。
 「アジア女性基金」では解決しないその理由、原因を検証しなければならなかった。

6)人権国家として踏み出せ!

 日本政府にとって、重大な人権侵害であった日本軍「慰安婦」問題を解決することは、21世紀の日本が人権国家として踏み出す第一歩であり、なおかつ近隣諸国との関係を正常化する基礎を築くことである。
 「慰安婦」問題を解決するうえで重要なことは、隠そうとしてきた今までの態度をあらため、日本軍が行った加害行為を、犯罪として認め、歴史に対し被害者、被害国政府と共通の認識に立つこと、そのうえで日本政府は法的責任を認め公式に謝罪し賠償すること、曖昧さのない明確な表現で国内的にも国際的にも表明しなければならない、さらに二度とこのような被害が生じないための措置をとらなければならない。

以下要請する。

●日本政府は、検証報告書を含めた河野談話を貶める行為を即刻やめること

●検証作業を行うなら、少なくとも日韓両政府で合意し協力して実施すること、検証報告書を撤回すること

●「狭義の強制連行」に限定した、2007年の誤った答弁書(閣議決定)の即時撤回を要求する

●河野談話を発表する前もその後も、ずさんだった日本政府が行った資料調査、収集を検証し認めること、第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議」が6月2日に提示した数百点の証拠を認識し、責任を明確にすること

●「アジア女性基金」では決して解決しないと認めること

●国連諸機関の勧告遵守、特に、被害者の名誉を傷つける暴言と暴力的な行動に対し、公開的で公式的に反駁すること

2014年7月02日

フィリピン・ピースサイクル
フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)代表 大森 進

事務局: 平田 一郎

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現代若者考 [元「慰安婦」問題]

現代若者考

 米政府から強く批判され、3月14日安倍首相は「河野談話の見直しをしない」と発言し、これまでの「公約」を転換した。このことに関連して、孫崎享が面白いことを言っていた。

 「ネット上で、安倍政権の右翼的姿勢を支持する論調があふれているのは、政権の意向を先読みして理解と賛同を示す対応であり、現代の若者の一つの姿ではないか。それはまた、置かれている現状の厳しさの表現でもある。  私(孫崎)の学生時代には学生運動が盛んだったし、政府を批判するデモや集会もあった。しかし、髪を刈り背広に着替えて試験を受ければ、そのまま就職できた。より「寛容」な社会だった。  それに比べるなら現代は若者にとってなかなか「厳しい」のであって、安定した職に就くことは容易ではないし、職についても常時、会社に対する人格的な関与と従属を要求され続ける。支配者の意向を常に意識していなければ受け入れられない、と意識している。  決して若者ばかりではない。日本維新の会、みんなの党などは、安倍首相の言いたいことを先取りし、自分たちが役に立つことを懸命に示し、政権に加えるよう求めている。これと似ている。上昇志向の、上ばっかり見ているヒラメ官僚、ヒラメ・ジャーナリスト、ヒラメ裁判官など・・・・がむしろ一般的な姿となっている。若者にもそういう者は確実にいるだろう。  今回、安倍政権が「河野談話の見直しをしない」と表向きは自身の立場を転換したことで、ネット上での「よいしょ」は戸惑って、一部は収まるのではないか。」

 なるほど、こういう見方もあるのかと感心した。確かに、この4月5月、ネット上での「慰安婦」非難の論調は減ったように見える。もちろんなくなりはしない。ただ「ネット右翼」をよく知らないで、勝手にイメージを拡大し恐れているばかりではいけないということでもあるだろう。(文責・林信治)

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日米会談の意味、安倍はなぜ「河野談話見直しはしない」に転換したか? [元「慰安婦」問題]

 4月、日米会談の意味、

4月24日、記者会見後の安倍首相とオバマ米大統領.jpg
<4月24日、共同記者会言語に握手する安倍首相とオバマ大統領(共同)>

 安倍はなぜ「河野談話見直しはしない」に転換したか?

 1)米国の戦略 アジアへのリバランス戦略

 中国の経済的発展によって、GDP、軍事予算の米中バランスは、大きくかつ急速に崩れつつあるし、この傾向は当分変わらない。
 2013年GDP 米国:1680兆円(16799億ドル)、中国:980兆円     
 2014年国防予算 米国:約60兆円(6000億ドル)、中国:約13兆円(1316億ドル)

 現在と近い将来、アジアは世界の大きな社会的・経済的発展をとげる中心となっており、この流れを推しとどめることはできない。米国の利害や安全保障は、ますますアジアとリンクしている。他方、米国には軍事予算を増やす条件はない。これまでの中東への軍事的配置が過剰となり、他方、アジアへの配備が不足している。この再配置も必要となっている。この変化に対応したのが米国の「アジアへのリバランス戦略」である。

 米国にとって、焦点は中国との関係をどのように打ち立てていくか、にある。米国戦略は「二重の意味」がある。一方では、中国の勃興に対して、アジアの同盟国、新興国との関係を再編し、米国の安全保障上の役割を強化するとともに、TPPを推進し中国に対抗しうる経済的関係の拡大を図る。他方では、米国資本は、拡大する中国経済圏の発展に関与を深め、自身の経済発展を図ろうとしている。そのことは米中の経済関係を拡大し、一体化していくことでもある。
 したがって、米国政府は現在、中国政府に対し非常に気を使っている。別の言い方をするなら、東アジアにおける米国にとって第一の同盟国であった日本の地位は、大きく変化したし、ある意味後退した。第一のパートナー、競争者は中国であり、日本の持つ意味合いは低くなった。日米安保条約のもつ意味あいも相応して変化しつつある。

 2)オバマ政権、安倍政権への不信

 オバマ政権にとって問題は、安倍政権がこの世界情勢の変化と米国戦略の変更を十分に理解していないのではないかという不信感にある。安倍政権は発足後、中国周辺諸国を歴訪し、復古主義的な非現実的な「中国包囲網」の形成をめざすかのような行動をとった。また政権発足後、中国・韓国との首脳会談を開くことさえできない。内弁慶で、実際のところ何もできない安倍政権である。
 安倍政権による歴史認識の見直しは、米国にとってはいたずらに中国を刺戟する余計なことに他ならない。2013年10月、ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が来日し、靖国神社ではなく千鳥ヶ淵を参拝した。そこには歴史問題にどのように対処していくのか米国政府の意志が示唆されていた。しかし、安倍首相はこれを無視し、12月に靖国神社を参拝した。

 米国政府の安倍政権に対する「不信」は広がった。安倍は世界情勢とこれに対する対処=米戦略を理解しているのか。安倍は自分では解決できないくせに、尖閣で問題を起こし困ったら米国に頼る態度を見せた。
 2月21日―23日、安倍が訪米時に、オバマ米国政府は安倍を露骨に冷遇した。晩餐会は昼食会に切り替えられ、会談後の記者会見も簡単な中身のないものだった。
 米国は、安倍首相が歴史認識問題などで『タカ派路線』を強調した場合、日中関係、日韓関係が一層悪化することを懸念している。オバマ米政府の中国、アジア重視の戦略を狂わせるものだからである。

 3)オバマ来日、日米首脳会談 

 4月にオバマが訪日し、日米会談が行われたが、その目的は、米国のリバランス戦略への理解と同調を求め、安倍の外交姿勢を転換させることにあった。その流れのなかで、「河野談話見直しはしない」への転換がある。
 ただ、安倍政権は国内的には「尖閣が日米安保条約の適用範囲である」とオバマ発言の一部を切り取って喜び、首脳会談の成果だと喧伝した。マスメディアは安倍政権の意向を自主的に忖度し、意図的に意味を変更し報道した。
 「尖閣が日米安保条約の適用範囲である」ことは、米国政府が1971年以来表明しており、何ら新しい変化ではない。尖閣が日本政府の施政権下(=実効支配)にあると確認したうえで、オバマは、次のように発言した。
 ① 米政府は、領土問題について日中いずれの立場にも立たない、
 ② 戦闘が起きた場合、武力介入は日米安保条約第5条(=米議会の承認)にしたがって運用する。実際のところ、米議会が日中どちらの領土でもない尖閣への武力介入を決定することは、まずありえない。
 ③ 日本は決して武力対立を起こしてはならない、と釘を刺した。
 しかし、日本のマスメディアはNHKも含め、「尖閣が日米安保条約の適用範囲」であると認めたと、あたかも米国が日本の立場に立ったかのように国民をだます報道し、上記①~③の発言は報道しなかった。

 4)安倍はなぜ「河野談話見直しはしない」に転換したか?

 米国にとっては、日韓関係を改善し、日米韓三国の協力体制を緊密なものにしたうえで中国に対峙したいのであるが、安倍政権のせいで日韓首脳会談は開かれず、日韓関係が悪化したままである。
 「靖国神社参拝」「河野談話見直し」など「歴史認識」における安倍政権の政治的対応が、中国・韓国やアジア諸国の批判と反発を引き起こし、国際関係をこじらせ、東アジアにおける「不安定要因」を拡大してしまった。米中二極をにらんだ米国戦略に支障をきたす安倍政権の外交姿勢に、米政府は「失望」を表明した。
 日米首脳会談の前に米政府は安倍政権に強力に働きかけ、外交姿勢の転換を迫った。3月4日にはアーミテージ元国務副長官は、「人権を擁護する日本であろうとするなら「慰安婦」問題での論争に日本は勝てない」と発言し、安倍政権の態度の転換を求めた。

 国際的批判、というより主に米政府からの批判にさらされ、安倍首相は3月14日の予算員会で「河野談話の見直しはしない」と表明しその立場を転換した(4月1日に、閣議で答弁書決定)。そのことで初めて、日米韓首脳会談開催が可能になった。韓国にとっては首脳会談開催を受け入れる前提条件であったし、米国は韓国政府の立場に同調したのである。

 4月のオバマ来日・日米首脳会談の最大の目的は、安倍政権によって傷つけられた日米韓関係を修復し、米中二極をにらんだ米国戦略に整合するように日米同盟の方向性を再確認することにあった。4月22日には、アーミテージ元国務副長官が石破幹事長と会談した。「ジャパン・ハンドラー」と言われる怪人物まで動員し、安倍政権へ安全保障を含む米戦略への同調を強要したのである。
 米国の怒りに触れた日本政府は、2月の訪米で安倍が冷たくあしらわれたにもかかわらず、オバマ大統領を「国賓」として遇し、天皇会見・宮中晩餐会を開き、機嫌をとった。米政府は恩を売り、日本政府がありがたがっていっそう日米同盟の傘の下に入るように仕向け、そうして米とともに中国に対峙する方向にシフトすることになったようである。

 5)安倍政権は、「慰安婦」問題の解決に踏み出せ!

 安倍政権は「河野談話の見直しをしない」と表明したのは、米政府に言われてこれまでの態度を一部転換したのは確かである。あくまで対外的な事態の「取り繕い」であり、決して「慰安婦」問題の解決に踏み出したわけではない。「河野談話の見直しをしない」だけで、決して何かをするわけではない。

 韓国政府はまず日本政府が行動するように求めている。中国政府もアメリカ政府も、国際社会全体がまず日本政府が行動することを求めている、そのような情勢にある。
 オバマ大統領が、「慰安婦」問題は重大な人権侵害であると述べたその水準まで、日本政府が行動できるかにかかわっている。
 実際のところ、現時点での日本政府のスタンスは、
 ① 安倍政権は河野談話見直しの「公約」をいったん取り下げ、「河野談話の見直しはしない」と表明することにした。
 ② 韓国に対しては「法的責任は日韓請求権協定で解決済」との主張は変えない。
 ③ 元「慰安婦」への支援は、「アジア女性基金の取り組みに理解を求める」
 と、従来と変わっていない。
 アメリカに言われて①「見直しはしない」と表明しただけでは、安倍政権は国際社会に受け入れられることはありえないし、「慰安婦」問題を解決することはできない。

6)「慰安婦」問題は人権問題!  今こそ、「慰安婦」問題解決に踏み出せ!

 「慰安婦」問題に対する米政府の立場は明快である。オバマ大統領は4月25日、韓国・朴槿恵大統領とソウルで会談後の記者会見で旧日本軍の「慰安婦」問題は「歴史を振り返るなら、実に甚だしい人権侵害であった」と明確に述べた。日本政府だけが国際的に孤立していることが、あらためて浮き彫りになった。

 「慰安婦」問題は、決して韓国、米国との外交関係改善のための課題だけではなく、それ以前に重大な人権問題である。そのことを日本政府、日本社会はいまだ十分に認識していない。
 安倍政権が「河野談話見直しをしない」と表明した今こそ、「慰安婦」問題を解決する機会である。
 この機会をとらえ日本国内で「慰安婦」問題の解決を迫る声をいっそう大きく上げていかなくてはならない。これまでの態度を改めさせ、解決に向けて一歩踏み出させる運動を広げていかなくてはならない。(文責:林信治)

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「河野談話」つぶしを許さない! [元「慰安婦」問題]

「河野談話」つぶしを許さない!

 1 ) 3 月7日、「河野談話つぶしを許さない」緊急院内集会 ,

 3月7日に緊急に開催された院内集会「河野談話つぶしを許さない!」に参加しました。海外を含むマスコミ31人、議員及び秘書を含めて170人の参加者があったそうで盛会でした。決議文を採択して、後日安倍首相に提出しました。
 集会では、吉見義明教授が、「慰安婦」制度は日本軍の犯罪であること、強制連行したかどうかだけが問題であるかのように描き出す安倍政権のごまかしだと批判しました。
 林博史教授は、戦後法務省が日本軍兵士から聞き取り調査した文書を公文書館から見つけ出し、日本軍が「慰安婦」制度を運営した新しい証拠を提示しました。河野談話以後、日本軍が慰安所の設立運営に関与した証拠がぞくぞくと見つかっていますが、日本政府は無視しています。
 2000年国際女性戦犯裁判のNHKドキュメンタリー番組への政治介入を裁判で闘った西野留美子さんは、あの時と同じ政治介入が、現在、NHKの新会長に就任した籾井氏によって行われようとしていると告発しました。籾井会長、百田・長谷川両経営委員は安倍政権によってNHKに送り込まれたのであり、安倍政権が決してやめさせようとしていないことがその証拠です。

 2)「河野談話」つぶしをさせてはならない! 極秘検証チームは直ちに解散せよ!

 安倍政権による「歴史の書き替え」は、現在のところ「河野談話」「村山談話」つぶしが政治的焦点となっています。「河野談話」を決して潰させてはなりません。
 安倍政権による河野談話見直しの動き対し、米中韓を始め海外から批判が相次ぎました。国際的批判の大きさにたじろいだ安倍内閣は、3月10日には「『河野談話』見直しはしない」と菅官房長官が談話を発表し、取り繕いました。あくまで取り繕いです。なぜならば、「河野談話の元になった元慰安婦の証言内容に韓国との擦り合わせがあったとの疑いがあるので、検証作業を極秘チームで行う」とも言明しているからです。被害者や韓国側を貶めるにもほどがあります。被害者の証言こそ大切です。
 安倍政権による河野談話検証の隠された意図は、日本軍による「強制連行」を否定することにより、軍「慰安婦」と関連した責任を回避しようとすることに他なりません。
 安倍内閣は「河野談話」見直しはしないと言明しましたが、本心は「河野談話」つぶしにあり、そのための「根拠」をつくりあげておこうとしているのは明白です。
 検証チームは「極秘」だそうで、どこからか御用学者を集めてくるのでしょうか。NHK経営委員になった百田尚樹や長谷川三千子のような類の学者・文化人でしょうか? 私たちは原発事故以来、御用学者が腐るほどたくさんいることを知りましたし、原発事故のウソが明らかになっても御用学者は決して責任をとらないことに、あきれかえりかつまたイラついております。私たちは政府内に極秘検証チームを立ち上げることに反対します!
 河野談話が認定したことから、一歩の後退も容認できません。それ以上に、日本軍と政府の責任をさらに明確にしなければなりません。

 3) 国際的な信頼を失う!

 「慰安婦」問題は人権問題でありながら、すでに外交・国際関係の問題に転化しています。日中、日韓関係は現在最悪の状態にあり、安倍内閣は一度も首脳会談を開くことができません。その責任は一方的に日本政府にあります。
 安倍内閣が歴史の書き替え、直接的には「村山談話」「河野談話」を書き換えようとしている、そのことが日中日韓関係を悪化させている根本的な原因です。
 歴史に対するドイツと日本の態度は明らかに異なります。ドイツは歴史を正視し、隣国の信頼を勝ち得ました。日本は歴史を正視しないため、中国韓国さらには国際社会の信頼を失いつつあります。侵略と人権侵害の歴史を正視し、深く反省して初めて、日本がアジアの隣国と和解を実現することができます。
 日本軍「慰安婦」問題を解決することこそが、今も続く戦時性暴力慣行を根絶する第一歩であり原動力となるのです。これほど重要な日本軍「慰安婦」問題を解決するため20余年国際市民社会と国連が行ってきた努力を無視し、否定・拒否している日本政府は、その態度を改め、国際社会の要求を謙虚に受け入れ被害者の名誉と人権を回復する措置をとらなければなりません。そうでなければ、日本は国際的信頼を失うのであり、日本政府が[戦時性暴力根絶に関するG8宣言]を遵守すると言明したことも、国際刑事裁判所の被害者信託基金に寄与するということも、空虚な言葉遊びにしかなりません。

 4)日本政府、マスメディアによる情報操作を許すな!

 日本国内では河野談話つぶしの情報操作が、政府・官僚が先頭に立って堂々と行っています。「慰安婦」募集の際に「強制連行」を指示する日本政府・日本軍の文書があったかなかっただけが問題であるかのように情報を操作しています。そもそも当時の法律でさえ強制連行は犯罪ですから、官僚は犯罪となる証拠を残さないのが通常です。また、「騙して連れて行ったのは問題なし、強制連行だけが問題」という安倍内閣のあきれた解釈も、当時の法を無視する者であり、常識を超えています。
 安倍内閣・官僚は「被害者の証言は信用できない、加害者である日本政府・日本軍側の強制連行を指示した証拠が見つからない」と主張しています。(北朝鮮による拉致被害はどうなるのでしょうか。日本政府の主張はほとんど被害者の証言だけをもとにしており、北朝鮮政府・軍が指示した証拠などの裏はとっていません)。
 「慰安婦」が存在し悲惨な被害があったこと、日本軍が関与したことは、「慰安婦」被害者の訴えた裁判で(10件のうち8件の裁判で)、日本の裁判所は「事実認定」をしています。政府は司法に従わなくてはなりませんが、安倍政権・官僚、マスメディアはこんなことも無視しています。
 以前は一部の右翼しか言ってなかったことが、今では安倍内閣、官僚、NHK新会長の発言、TV、雑誌などマスメディアの主張になっています。特集すれば売れるということで、雑誌は毎回、嫌中・嫌韓記事ばかりです。デタラメばかりで読むに堪えません。すっかり右翼が、あるいは安倍内閣が世論をリードする状態になってしまいました。浦和レッズサポーターの垂れ幕「Japanese only」が出るような素地が日本社会全般に広がっています。
 現在の日本国民の多くは、「慰安婦」問題とは何が問題なのか、理解していませんし、まず歴史事実を知りません。「河野談話」の重要性を多くの日本人が理解していません。「河野談話」つぶしを許さない活動は、このような日本社会の現状、「慰安婦」問題に対する無理解を変えることでもあります。何とかして変えていかなくてはなりません。

 5)私たちの要求

 3月7日の集会は、このようなことを再確認する集会でありました。引きつづき私たちは下記のことを要求します。
 1.安倍政権は、河野談話否認につなげるに極秘検証チームの立ち上げをただちにやめること  2.日本軍「慰安婦」問題の解決のために、河野談話を堅持すること  3.被害者の聞き取り調査、ならびに河野談話以降に発見された「慰安婦」関連資料など資料調査をおこなうこと  4.そうした証言や資料に基づき、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制であったことを認め、法的責任に基づき被害者の人権回復をおこなうこと  5.放送法違反を公言するNHK籾井会長、百田尚樹、長谷川三千子経営委員を即刻辞めさせること
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日本軍『慰安婦』にされた少女たち」 [元「慰安婦」問題]

「日本軍『慰安婦』にされた少女たち」

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 1993年にでた石川逸子さんの「日本軍『慰安婦』にされた少女たち」(岩波ジュニア新書)が、2013年11月に内容を追加して再出版されました。被害者と同年代の中高生向けて書かれています。もちろん大人が読んでも感銘を受けます。
 名乗り出た被害者と支援者の国際的な運動の広がりがあり、1993年には日本政府は「河野談話」を出すに至りました。
 しかし、政府の対応はそこから一歩も進んでいません。それどころか、「談話」の見直しを公言しています。そんな情況だから、もう一度出版しなければならないと、著者の石川さんは強く思われたのでしょう。手にとって、読まれてはいかがでしょうか。
 日本人被害者・城田すず子さんのことが書かれています。日本社会では名乗りでると被害者が非難されます。名乗り出るのが困難な社会とは、人権が保障されていない社会です。城田さんの眠る館山「かにた婦人の村」を訪ねてみたくなりました。

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吉見裁判支援 発足集会 [元「慰安婦」問題]

 吉見裁判支援 発足集会 

 2014年1月11日(土)吉見裁判を支援する発足集会が、 韓国YMCA ホールであったので参加した。200名集まった。
 すでに裁判は進行中で、3月3日(月)15時~から、第3回の口頭弁論が行われる。東京地裁103号法廷、終了後日比谷図書文化館4階で報告集会。

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 吉見裁判とは?

 吉見裁判とは、2013年5月27日、日本外国特派員協会において橋下大阪市長が「慰安婦」問題について講演した際に、同席した日本維新の会・桜内文城衆議院議員が、吉見義明教授の本を「捏造」であると発言したことが、吉見氏の名誉を棄損するとして提訴した裁判である。すでに2度の口頭弁論が開かれた。

 裁判に至る経緯

 桜内議員の発言は、突然起きたものではない。「慰安婦」問題について日本軍と日本政府の責任を認めず、さらには歴史的事実さえなかったことにしようとする最近の一連の政治的主張・宣伝の一つとしてある。
 橋下市長の発言に対する取り組みは、2012年から始まっている。橋下市長が「吉見さんの名前を挙げ、その著書に慰安婦募集にあたり日本政府、日本軍が強制連行した記述はない」と発言したので、吉見さんは2012年6月4日に第1次公開質問状(回答期限7月5日)を提出し、橋下市長に対し、発言の撤回と謝罪を要求した。
 回答がなかったので第2次公開質問状(回答期限8月31日)を7月29日(月)に提出するため大阪市役所に行くと公表した。マスメディアも注目したためか、7月26日(金)になってfaxで第1次質問状への回答が来た。中身はない。7月29日に市役所へ行くとマスメディアが報じたので、急遽出したものと思われる。内容は「国際基督教大学(ICU)・西岡力教授の記述を元に発言した、謝罪はしない」という中身のないものだった。
 これを正すためにさらに公開質問状の準備をしていたところ、3013年5月13日、橋下市長は「慰安婦」制度は必要だった、沖縄米軍は風俗産業を活用してもらいたいと発言した。この発言は海外にも大々的に報道され、国際的な批判が集中した。韓国外務省が即日批判声明を出した。翌日5月14日米・国務省、中国外務省が非難声明を出した。海外からの批判は大きく、これまで注目され続けてきた橋下市長への批判が大きくなった。発言としては、非常識で低劣なものではあるものの日本の大手メディアやネットで日常的に報道されている内容だったが、橋下市長と「維新の会」の政治的影響力を削ぐ機会として利用され、これ以降、実際に橋下市長と「維新の会」の「勢い」は陰りを見せることになった。維新の会やみんなの党は、安倍首相の政治的主張・本音を先取りして宣伝することで勢力を拡大し、自派を政権与党に高く売り込み、政権与党に加わろうとしてきた。「慰安婦」問題においても橋下市長は安倍首相の本音を先取りして発言したつもりなのである。しかし、事態は橋下市長の思惑とは逆へと進んだ。

 これを打開すべく5月27日、橋下市長が外国特派員協会で記者会見し「誤解」を説こうとした。大々的に注目される中で、その場に居合わせた、桜内議員が「吉見教授の著書は捏造」と発言したのである。

 だから、吉見裁判はこのような流れのなかで始まったものであり、橋下市長への公開質問状による追及と一体のものである。

 吉見裁判の内容 (川上詩朗弁護士の報告から)
 裁判で何が争われているか? 桜内議員は何と主張しているのか?
 桜内議員は5月27日記者会見では、「これは(吉見教授の著書)すでに捏造であることはいろんな証拠で明らかになっております。」と発言したのだが、裁判での主張は変化してきている。「吉見教授の著書が捏造である」とは到底主張できないと判断したのであろう。「『慰安婦』が日本軍『性奴隷』であるとしているのは捏造である」と言い換えてきた。

 裁判としては、
 1) 「吉見さんの本が捏造である」と発言しているのは明確であり、吉見教授への名誉棄損が問題になる。桜内議員はそのように言っていないと主張しているが、「一般聴取者の普通の注意と読み方」から判断されることになる。
 2) 桜内議員は、吉見教授が「『慰安婦』は日本軍『性奴隷』であるとするのは捏造」と言い換え、主張を2)に置いて宣伝している。桜内議員・維新の会は吉見裁判を「慰安婦=性奴隷捏造裁判」と名づけ、ニュースレターを発行し、維新の会ホームページにも書き、「『慰安婦』は日本軍『性奴隷』とは捏造」というキャンペーンを張ろうとしている。

 「慰安婦」制度は、日本軍の犯罪であり、日本軍の性奴隷制度であったことは明白である。国連人権委員会も各国もそのように認識している。
 連行の仕方が強制であったかなかったではない。慰安所から逃げられなかったのであり監禁罪が成立する、だまして連れ去った場合は誘拐罪、未成年の場合はたとえ本人が同意していても人身売買罪、慰安所で性交を拒否すると暴行された、暴行罪。遺棄されたり殺された例もある。慰安所の経営は日本軍の意向、利益に従っており、日本軍の犯罪である。これを日本軍による性奴隷制度という。
 したがって、吉見裁判は「『慰安婦』制度は日本軍による『性奴隷』制度である」ことを明確にする裁判でもある。

 吉見義明教授の発言 
 
 当日、吉見教授も参加しており発言した、
 吉見氏によれば、2012年8月21日から橋下市長が「慰安婦」問題について、突然の発言をしはじめた。しかし内容は、いろいろ変化している。2012年には、「慰安婦」には同情はするけれど謝罪はしないと語った。2013年には、「慰安婦」制度は必要だった、在米司令官に性風俗産業の利用を進言したいと発言した。その後発言は変転した。2013年8月には、「自分は河野談話と同じ立場」と発言もした。
 幾度も変転してはいるが、性奴隷制度とは認めない、国家賠償は不要、その点は一貫していて、かわらない。
 橋下市長へは、二度の公開質問状を含め三度、質問状を出している。きちんとした回答はないが、一定の効き目はあったと思われる。

 そのほかに、吉田裕・YOいっション共同代表、荒井信一さん、川上詩朗弁護士、大森典子弁護士、梁澄子さんが報告、発言した。

 吉見裁判を支援するというより、一緒に行動しようということで、本日の集会で「YOSHIMI裁判いっしょにアクション(YOいっション)」を立ち上げ、今後イベントやアクションを行っていくことになった。
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橋下発言に対するwamの「抗議声明」 [元「慰安婦」問題]

 橋下市長の発言に対するwamの「抗議声明」を読みました。
 
 橋下発言に対する、明快で適確な抗議です。 まったくその通り、だと思いました。
 ここに、転載し、紹介します。

---------------------

抗議声明

日本維新の会共同代表・橋下徹大阪市長の発言に抗議し、謝罪と発言撤回、退陣を求めます

 2013年5月13日の大阪市庁舎での記者会見で、大阪市長であり、政党の共同代表であるあなたは、かつて日本軍がアジア全域に慰安所を作り、アジア各地の女性たちを性奴隷にして強かんを繰り返した日本軍「慰安婦」制度を「必要だった」と述べました。
 「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」と言ったのです。

 これを聞いて私たちは、激しい怒りを抑えることができませんでした。それは、今も心身の傷に苦しんで尊厳の回復を求めている被害者たちを、一層深く傷つけるものだからです。
 女性を戦争の道具とし、性暴力を肯定することは、全ての女性を冒涜し、女性の人権を著しく侵害するのだということを、あなたはご存じないのでしょうか。

 あなたの“「慰安婦」制度必要論”は、各地におびただしい数の慰安所を作った旧日本軍の論理そのものです。
1937年の「南京大虐殺」では多数の強かん事件が発生し、中国の人々の反日感情の高まりと国際的な非難の声を抑えようとした軍の上層部は、強かん防止のためにも慰安所の設置を急ぎました。これが中国各地に慰安所が作られるようになったきっかけです。

 しかし、慰安所の設置は兵士の「性的な欲求を解消」するどころか、更なる強かん事件を生み出しました。

 あなたは、「当時の歴史を調べたら、日本国軍だけでなく、いろんな軍で(慰安婦を)活用していた」と言っていますが、日本軍のように戦地や占領地の全域に、それも15年以上もの長期間、慰安所を設置・運営し、占領地や植民地の女性たちを監禁して強かんし続けた国は世界に見当たりません。
 万が一そのような軍隊が他国にあったとしても、だからと言って日本軍の犯罪が許されるわけではありません。

 また、あなたは繰り返し、「軍や官憲による、慰安婦の強制連行を示す証拠は無かった」と主張しますが、被害者の証言から分かる事実に、なぜ向き合うことができないのでしょうか。

 私たち資料館は7年にわたり日本軍「慰安婦」制度の被害と加害の事実について記憶し記録する活動を続けています。アジア各地で被害に遭われた、たくさんの女性たちの証言から分かるのは、彼女たちが意に反して慰安所へと連行され、強かんされた事実です。そして休暇を取ることも、辞めることも、逃げることも許されず、強かんされたという事実です。

 日本軍が制度として慰安所を設置・管理・運営したことが持つ意味を直視してください。

 日本軍が「慰安婦」制度を作り上げて女性たちを犠牲にしてきたことは歴史的な事実として、世界の人々が知っています。戦時性暴力が重大な人権侵害で、根絶すべき戦争犯罪であるということもすでに国際的に認知されてきました。

 このような戦争犯罪を肯定する人が公職にあり、衆議院では第3にある党の共同代表であることに、私たちは恥ずかしさと強い憤りを覚えます。

 さらにあなたが沖縄の普天間基地を視察した時、米軍の司令官に、「もっと風俗業を活用してほしい」と発言し、「ばかげている」といなされました。しかしあなたは、「アメリカはずるい。アメリカは一貫して、公娼制度を否定する。しかし米軍基地の周囲で風俗業が盛んだったことも歴史の事実」と開き直っています。
 このように差別的で人権を無視し、旧態依然とした性意識が染み付いている人が、政治的リーダーであることに大きな恐怖をおぼえます。

 私たちはあなたの発言に対して激しく憤り、強く抗議します。
 直ちに「慰安婦」被害者を深く傷つけたことを謝罪し、発言を撤回してください。
 そして大阪市民とすべての日本人に対して、公職にあるまじき発言を繰り返したことを謝罪し、その責任をとって退陣されることを求めます

2013年5月17日

アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)

運営委員一同 館長:池田恵理子


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吉ハルモニが橋下発言を批判! [元「慰安婦」問題]

 吉ハルモニが橋下発言を批判!
 ―――5月18日、広島県福山市で日本軍「慰安婦」被害者証言集会―――

 5月18日(土)、福山市で、「慰安婦」被害者証言集会があり、参加しました。70名ほど参加がありました。5月13日の大阪・橋下市長の暴言があった直後で、証言者も、参加者も、橋下市長の発言への、怒りと批判を口にしました。

 吉元玉ハルモニが、被害を証言しました。そのなかで橋下市長の発言にも言い及びました。「私は私のような被害をなくすことを願い、証言しています。それなのに日本人のなかには、聞くに堪えないとんでもないことを言う人がいます。過ちを犯したなら、キチンと事実を認めて、きちんと謝罪すべきです、にもかかわらず、被害者が今生きているにもかかわらず、ひどい言葉で被害者の心を傷つけるのです」と発言されました。

130518 吉ハルモニ 福山・「慰安婦」証言集会 (320x253).jpg
<5月18日、広島県福山市の証言集会で発言する吉元玉(キル・ウォノク)ハルモニ>

 梁澄子さん(日本軍「慰安婦」問題全国ネットワーク共同代表)が講演されました。はからずも、橋下市長の発言への全面的な批判になりました。
 橋下市長は5月13日発言では、「「慰安婦」制度は必要」と話していたのが、その後、「当時の人たちが必要だったと思っていた」と訂正、そのあと、「戦争を遂行する男たちに…慰安が必要なことは理解できる、けれども自分は容認者ではない」と変わりつつあります。
 他方で、「第2次世界大戦当時、各国とも同じことをしていたのに、日本だけが非難されるのはおかしい」という責任逃れの理屈を述べ、「どうして日本だけ非難されるのか!それは、日本軍が「暴行、拉致、脅迫」していたと誤解されているからだ」と説明しました。
 すなわち橋下市長は「暴行、拉致、脅迫の事実はない、誤解だ」と言っているわけです。梁さんは、「それは違う、事実はある」とはっきり指摘しました。
 1990年代以降、日本で行われた裁判10件のうち8件で、「事実認定」されていること、他にも事実を認めた「公文書」の存在、すなわち「東京裁判 証拠資料」であり、「オランダ政府の公文書、調査報告(1994年1月)、スマラン事件裁判記録」などをあげました。

 橋下市長は、募集に際して『銃などを突きつけた強制連行はなかった』、他方で『騙したり誘惑して送る』のはまったく問題ないと言っているわけですが、梁さんは、「聞いてあきれてしまう、果たして本当に弁護士なのか? そうとは思えないほど、法律知識が欠けている。「略取」も「誘拐」も同等に犯罪だということを、知らない。(略取:脅して、誘拐して連れ去る、誘拐:騙したり、誘惑して連れ去る)」と批判しました。まったくその通りです。
 「略取」も「誘拐」も当時の法に照らしても同様に犯罪だし、実際に1937年3月5日、大審院判決でも有罪判決が出ていることも、紹介されました。

 橋下市長も「連行の仕方」だけが問題であるかのように描こうとします。橋下や有力政治家の発言、ネット右翼の宣伝も、「連行の仕方」だけに限定しようと苦心しています。そもそも「連行の仕方」だけが問題なのではありません。日本軍が性奴隷制を軍組織の一部とし運営し保持してきたことが問題なのであり、したがって「慰安婦」制度そのものが犯罪なのです。個人の犯罪ではなく、日本軍、日本政府による犯罪です。
 梁さんは、そのこともキチンと指摘されました。

 橋下市長の発言に対する明快な、わかりやすい説明、批判でした。また、「慰安婦」問題をどのようにとらえるのか、基本的な立場もはっきりと述べられました。

 この後、広島、岡山、大阪、奈良などで証言集会が続きます、橋下市長発言の批判もキチンと行い、問題解決へとすすむ力を大きくしようと誓い合って集会を終えました。

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美輪明宏が語った日本人「慰安婦」 [元「慰安婦」問題]

 美輪明宏が語った日本人「慰安婦」

 美輪明宏、作詞作曲「祖国と女たち」、「慰安婦」の悲しみを歌った1970年代の歌です。ご存知の方も多いかもしれませんが、私は最近知りました。検索すればYou tubeで聴くことができます。一度、聴いてみてはいかがでしょうか?
 ソン・シンド(宋神道)さんも兵隊と一緒に歩哨に立ったと語っていた、と言います。
 唄は、日本人「慰安婦」が、名乗り出ることがきわめて難しい日本社会であったと告発しています。この点は現代、より一層ひどくなっています。「名乗り出ることができない社会」とは、人権が擁護されない社会でもあります。
 最後の「大日本帝国 万歳……」の絶叫は、日本人として扱ってもらえない嘆き、非難への反発として発されたものと理解されます。
 何はともあれ、美輪が自身で作詞作曲して歌っていることに感心しました。

 「美輪明宏のラジオでの発言」TBSラジオ 2012年8月12日
 で今度は、あの、女の人のね、今従軍「慰安婦」のことでね、モメたりもしてますけれどもね。あれはねぇ、ま、私が戦後仲良くなった従軍「慰安婦」で帰って来た人たちはね、みな日本人でしたよ。貧しい農家のね、娘さんたちが、あたしが売られて行けば、父ちゃんも母ちゃんも弟たちも餓え死にせんですむからっていうことでね、でそれで、満州にいい働き口があるって言われて、行ってみたらそれが従軍「慰安婦」でね。それでね。あの、敵が来るとね、あの、銃を渡されてね男たちと一緒に戦ったんですって。でそして、あの、とにかく、流れ弾に当たって死んだりするでしょ? そうするとね、日本婦人までも戦わせてそういうことをしたって、日本軍の恥になるからってんでモンペを脱がされちゃって、あの、中国服にね、着替えさせられて放り出されちゃって、後は野ざらし雨ざらし。線香一本上げてもらえない。埋めてももらえない。そういう状態だったって。

 でそして帰って来たら帰って来たで、村の人たちに、とにかく、「慰安婦」やってたって汚らわしい、どの面下げて帰って来たかって。うちでも家名に泥を塗ったって言われて。うちの為、国の為にあたしたちは行ったのに、なんだこれはって、もうボロボロボロボロ涙を流して。あたしはホントもらい泣きしましたよ。可哀想でね。で、それがね。「私の歌」を聞いてね。ああこれで私は成仏できますって言ってくれた時に、ホント私は良かったですけどね。ま、戦争というものはね、いろんなことがあるの。もう二度としちゃ駄目ですよね。ですから日本ももっとプライドを持ってね。えーとにかく今度は知性と凛とした気概を持ってね。ご先祖様に恥をかかせないように、気概を持って政治家も何も、官僚もすべてが生きていってもらいたいですね。
――――――――――――

「祖国と女たち」美輪明宏、作詞作曲

 北は青森から 南は沖縄
 売られ買われて 今日も旅行く
 違うお国訛りで 慰めあいながら
 捕虜の女囚も 同じ仲間さ
 荒れ果てた肌に やせこけた頬
 今日も覚悟の 最後のけ化粧
 万歳 万歳

 毎日百から二百 兵隊相手に
 朝日が昇り 月が落ちるまで
 いずれ死んでゆくことが 決まっている男
 虚ろに空を 見つめる女
 涙も渇れはて 痛みもないさ
 そこには 神も仏もいない
 万歳 万歳

 誰の子かわからぬ 赤子残して
 死んだ女やら 銃を片手に
 愛する若い兵士と 散った女やら
 歌える女は 子守唄を唄う
 あまりの怖さに 狂った女
 嫌な将校に 斬られた女
 万歳 万歳

 男はなんていいんだろう 羨ましいじゃないか
 勲章をもらえて、恩給もつくさ
 死ねば死んだで 名誉の戦死とやらで
 立派な社に 奉られるんだろ
 私も男に 生まれていたら
 今ごろきっと 勲章だらけ
 万歳 万歳

 戦に負けて帰れば 国の人たちに
 勲章のかわりに 唾をかけられ
 後ろ指をさされて 陰口きかれて
 抱いた男たちも 今は知らん顔
 祖国の為だと 死んだ仲間の
 幻だいて 今日も街に立つ
 万歳 万歳、ニッポン 万歳
 大日本帝国 万歳 万歳
 大日本帝国 万歳
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「慰安婦」問題を解決し、「東アジアの時代」に参画すべし [元「慰安婦」問題]

 「慰安婦」問題の解決を求める官邸前要請行動

 1)3月6日官邸前要請行動
 3月6日(水)14:30~16:00、「慰安婦」問題の解決を求める要請行動を行いました。ソウルの日本大使館前の水曜デモは毎週行われています。それに連帯し昨年の9月から、第一、第三水曜日に首相官邸前で要請行動を始めました。今回で11回目になります。
 持続してきたことで回を追うごとに少しずつまわりにも知られ参加者も徐々に増えてきました。3月6日は暖かかったこともあり8名の参加となりました。
 最初に、内閣府に首相・外相あての要請書を提出しました。そのあと官邸前で訴え、チラシを配りました。文末に添付します。

130220 官邸前 014○ - コピー (320x215).jpg

 2)外交的に孤立する安倍政権
 安倍政権が発足直後に「河野談話」(1993年)見直しを表明したのに対し、各国から批判が相次ぎました。中国韓国のみならず、アメリカ、オーストラリアからは直接見直し反対を表明されました。アメリカではニューヨーク州議会で「慰安婦」問題の早期解決を求める決議があがりました。米連邦議会では2007年にすでに決議があがっていますが、そのあと日本政府が何もしていないこと、安倍政権登場を機に日本社会の右傾化への危惧が高まったことから、連邦議会では「第二の慰安婦決議」採択の動きが起きています。

 3)中韓政府に相手にされない安倍政権
 韓国では朴槿恵(パク・クネ)新大統領は、3・1独立記念日の演説で、「日本は韓国のパートナーとなり21世紀の東アジア時代をリードしていくためには歴史を正しく直視すべきだ」と述べました。朴槿恵大統領は保守派であり、かつての朴正煕元大統領の娘でありますが、韓国はもはや「反共独裁」の国ではありません。中国・東アジアとともにその一員として生きていくことを目指し、善隣友好関係の構築を外交方針としています。そのことは従来の日米に偏重した経済政治外交関係からの脱皮を意味しています。一言でいえば、朴大統領の目は「日本ではなく中国」の方を向いています。「日本政府は軍国主義を清算していない」という認識で、中韓政府は一致しています。
 日中関係は、この20年大きく変化しました。対中国輸出は香港台湾経由を含めれば総額の30%を占めており(対米向けは15%)、日中経済はすでに「相互依存関係」にあります。しかし安倍政権は中国包囲網を構想し外交方針としています。アナクロニズムとしか言いようがありません。かつて日本電機産業の発展はアジア諸国を従えた「雁行的発展」と称されました。日本は先頭を行く「雁」でしたが、アップルやサムソンの台頭でいまやその先頭の一羽だけが落ちた状況になりつつあります。中韓との対立はその状況を促進させるでしょう。
 安倍政権は、「慰安婦」問題を消し去ろうとしています。また領土問題を煽り、中韓との対立を抜き差しならぬものにしています。東アジアで孤立することは、アメリカの傘の下により一層入ることであり、TPP参加も米主導の対中国ブロック経済形成への荷担を意味します。

 4)今こそ、「慰安婦」問題の解決を!
 朴大統領の言うとおり、これからは「東アジアの時代」であり、東アジアが世界の成長の中心となります。その発展に寄与するなかに日本の未来があり果たす役割があります。
 米国の傘の下で、力と支配による国際関係の構築、利益の追求を求めるべきではなく、人権尊重、善隣友好関係の構築によって日本は東アジアとの新たな関係を構築しなくてはなりません。そのためには歴史を正しく直視し、過去の侵略を謝罪し賠償しなければなりません。「慰安婦」問題を解決しなければなりません。領土問題を速やかに終息させ二度と国境線の変更を求めないことを宣言しなければなりません。サンフランシスコ条約による単独講和が今になって影響を及ぼしているかのように見えるのは歴史の皮肉でしょうか。

 歴史を直視すること、「慰安婦」問題の解決は、「東アジアの時代」に日本が参加するための入場切符のようなものになりました。「慰安婦」問題の解決は被害者への謝罪と賠償ですが、そのような意味では決して過去の問題にとどまっていません。「慰安婦」という人権蹂躙の歴史を解決することは日本社会が生まれ変わること、それを近隣諸国と世界に示すことをも意味しています。

 5)今後も続けます! 参加ください。
 「慰安婦」問題の解決を求める首相官邸前要請行動は、今後も続けます。参加ください。

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--------------

安倍 晋三  総理大臣  様
岸田 文雄  外務大臣  様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書


日本軍による性奴隷制問題を直ちに解決すること

1. 日本政府は、日本軍「慰安婦」被害者に対し、明確で真摯な謝罪と政府による国家賠償を行い、問題をただちに解決すること。

2. 安倍政権は、「河野談話」(1993年)を率直に引つぎ、生存被害者が一人でも多く生きているうちに、誠意をもって、被害者の納得のいく解決を図ること。

3. 日本軍「慰安婦」制度という戦争犯罪を実行した政府・当事者として、直接に被害者と関係各国に対し、最優先の外交課題として解決への協議を開始すること。
 世界とアジアの各国政府・国連など国際機関は一致して、これを、今世紀最大の人権侵害・人身売買と呼んでいる。政府はまた、台湾、朝鮮、中国東北部の植民地支配とアジア侵略戦争を反省し、関連する戦争被害問題を解決すること。

 3月1日は朝鮮独立万歳運動の記念日である。1919年日本による植民地支配から朝鮮独立を宣言する200万人のデモがおき、7,500名を殺害、4万6千人を逮捕して鎮圧された。これは日本の植民地支配からの独立を宣言した非暴力の闘いとして行われたものである。
 1945年に日本の植民地支配が終了して68年が経過し、いまだに日本の政府は「植民地支配は合法的であった」と主張し、安倍政権は侵略の歴史を消し去ろうとしている。

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)新大統領は3・1記念式典で演説し、「日本が韓国のパートナーとなり21世紀の東アジア時代をリードしていくためには歴史を正しく直視すべきだ」として、日本政府の歴史問題に対する積極的な姿勢を促した。また、日本が歴史問題に積極的な姿勢を見せてこそ「両国間に堅い信頼が生まれ、真の和解と協力が可能になる」と主張した。その上で、「過去の歴史に対する真の省察が行われて初めて共同繁栄の未来が開かれる」「加害者と被害者という歴史的立場は1000年の歴史が流れても変わることはない」と主張した。(報道から)
 日本軍「慰安婦」問題はこの侵略の歴史の象徴なのであり、断罪された戦争犯罪人たちが残したものを一つ一つ解決してゆく入り口なのである。この問題の解決を今こそ行わなければ、日本政府と日本の社会は、現在と将来の国際社会から孤立する。
 日本政府は、負の歴史遺産を将来に残さず、過去の軍国主義を清算すること、それは日本が国際社会での名誉ある地位をもとめる唯一の進路である。

 日本国憲法前文では
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
 われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」
と規定している。
 国家公務員の頂点に立つ総理大臣は、憲法のこの規定に服する義務がある。


 
2013年 3月6日
 
          フィリピン・ピースサイクル
          フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)   代表 大森 進

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1月29日ニューヨーク州で「日本軍『慰安婦』決議案304号」を採択 [元「慰安婦」問題]

 1月29日、ニューヨーク州上院で「日本軍『慰安婦』決議」304号が満場一致で採択されました。
 決議文を下記に転載します。
 また、決議採択の経過を報じる「中央日報」の記事も転載します。
 
 決議案が上程された1月16日以降、ニューヨーク州議員あてに、日本の右翼団体から「慰安婦などいなかった、性奴隷されたとは真っ赤な嘘」などというデタラメなメールが殺到し、そのことが逆に、米・ニューヨーク州議員の「慰安婦」問題にたいする問題意識を掻き立て、歴史認識を書き変えようとする現代日本社会の危険な動きを再認識させました。その結果、上程から2週間で満場一致での採択に至りました。

 ニューヨーク州だけではなく、米連邦議会でも「第二の『慰安婦』決議」採択の動きがはじまりした。
 2007年に米連邦議会は「慰安婦」決議を採択しましたが、そのあと日本政府は「慰安婦」問題の解決に向けて何もして来ませんでした。それどころか「『慰安婦』などいなかった」という歴史の書き替えが大ぴらに宣伝されてます。さらに「河野談話」見直しを掲げる安倍政権が登場してきました。
 このような情況に対し、国際的に厳しい批判が寄せられています。人権擁護団体を中心に米社会からの批判が湧き上がっています。
 これらの国際的批判の動き、経過を日本のマスメディアはほとんど報道しておりません。多くの日本人は何も知らない情況です。日本人だけが「慰安婦」問題を知らない事態がひろがっています。
 知らないことと相まってあるいは補完するかのように、日本人のあいだで「被害者意識」がひろがっています。

ーーーーーーー
 ニューヨーク州「日本軍『慰安婦』決議案304号」
 決議文 ; J304-2013
 「慰安婦」として世界に知られたこれらの人々にささげられたニューヨーク州の記念碑を追憶するための議会決議
130129 ニューヨーク州議員.jpg
<日本軍「慰安婦」決議案をニューヨーク州上院に発議したトニー・アベラ上院議員、1月31日「中央日報」より>

 日本による植民地の時代とアジア・太平洋の諸島を占領した戦争の時代、1930代から第二次大戦の間、およそ20万人の若い女性たちは軍隊による強制売春である「慰安所制度」に強制連行された。
 そして2012年6月16日、ニューヨーク州ウェストベリーにあるアイゼンハワー退役軍人記念公園に、「慰安婦」追悼記念碑が建立された。これは「慰安婦制度」の犠牲者たちの名誉を回復し追悼するためであった。
 この「慰安婦」追悼記念碑は、同種の記念碑としては、アメリカ合衆国内では、二番目の記念碑となった。それは「慰安婦」に追い込まれた女性たちの苦しみの象徴として、また「慰安婦」制度をつうじて犯された人道に対する犯罪の記憶の刻印となっているものである。
 歴史上におきた重大な史実に注意喚起を増大するために設立されたニューヨーク州における歴史的記念碑を確認することは、立法機関としての慣例である。
 国際連合は、地球上でいかなる時でも常に240万人の人々が人身略取の犠牲になっており、そしてこの80%が性奴隷とされていると報告している。だからこそ今ここに、ニューヨーク州のこの追悼記念碑が「慰安婦」として世界に知られるに至った人々にささげられたものであると決議し、立法機関として公報し記憶することを決定した。
 さらに当決議の写しが、適切に遵守されるよう韓国系アメリカ人公共政策委員会、クッファーバーグホロコースト資料センター、韓国系アメリカ人市民権利拡大エンパワメント(権利拡大)の各団体に伝えられるべきである。(翻訳:平田一郎)

 ニューヨーク州「日本軍『慰安婦』決議案304号」の原文です。
 J304-2013 Text
LEGISLATIVE RESOLUTION memorializing a Memorial Monument in the State of New York that pays tribute to those who have become known to the world as 'Comfort Women'

WHEREAS, During the Japanese colonial and wartime occupation of Asia and the Pacific Islands from the 1930s through the duration of World War II, approximately 200,000 young women were coerced into the Comfort Women system of forced military prostitution; and
WHEREAS, On June 16, 2012, the Comfort Women Memorial Monument was established in the Veterans Memorial at Eisenhower Park in Westbury, New York, to honor and commemorate the victims of the Comfort Women system; and
WHEREAS, The Memorial Monument, being the second memorial of its kind in the United States, symbolizes suffering endured by comfort women and serves as a reminder of the crime against humanity committed through the Comfort Women system; and
WHEREAS, It is the custom of this Legislative Body to recognize historical monuments within the State of New York that are established to increase awareness of serious events that have taken place in history; and
WHEREAS, The United Nations reports that 2.4 million people across the globe are victims of human trafficking at any one time, and 80 percent of them are being exploited as sexual slaves; now, therefore, be it RESOLVED, That this Legislative Body pause in its deliberations to memorialize a Memorial Monument in the State of New York that pays tribute to those who have become known to the world as 'Comfort Women'; and be it further
RESOLVED, That copies of this Resolution, suitably engrossed, be transmitted to the Korean American Public Affairs Committee, the Kupferberg Holocaust Resource Center and Korean American Civic Empowerment.

 決議採択の経過を伝える中央日報の記事を下記に転載します。

 日本の極右団体の妨害でも「慰安婦」決議採択したニューヨーク州上院
 中央日報日本語版 1月31日(木)10時42分配信

 日本軍「慰安婦」決議案をニューヨーク州上院に発議したトニー・アベラ上院議員が29日、満場一致で決議案採択後に韓国や日本のメディアなどを相手に記者会見をしている。
 「ニューヨーク州の上下院議員の相当数が日本の極右団体から醜悪な電子メール攻撃を受けました。「慰安婦」問題をよく知らなかった議員さえそのメールを見て背を向けました」。
 1月29日にニューヨーク州上院で満場一致で通過した「日本軍『慰安婦』決議案304号」を発議したトニー・アベラ議員によれば、
 当初「外交問題には触れない」というニューヨーク州議会規定のために決議案通過が容易ではないものと心配したが、日本の極右団体の水準以下の妨害工作がむしろ逆効果を生み、16日に上程した決議案が2週間ぶりに反対討論すらなく一気に採択された。

 ニューヨーク州の上下院が「慰安婦」決議案を上程すると、議員には「なでしこアクション」という日本の極右団体が主導した数百通の電子メールが殺到した。「韓国人女性を日本軍の性的奴隷として搾取したというのは真っ赤な嘘」という内容だった。日本の「なでしこアクション」が主導した“電子メールテロ”であり、実際ニューヨーク州議員に送られた電子メールのほとんどがこの団体のホームページに提示されたサンプルをコピーしたものだった。
 ニューヨーク州だけではない。昨年11月にはニュージャージー州のローカル紙「スターレジャー」に「慰安婦」の存在を否定する広告が掲載された。極右派ジャーナリストの桜井よしこと自民党、民主党、無所属議員39人が主導したものだった。この広告は「許可を受けて売春行為をした「慰安婦」は日本軍将校より収入が多かった」という妄言まではばからなかった。

 ニューヨーク州上院に続き2007年に「慰安婦」決議案を採択した連邦下院も糾弾レベルを高めた新たな決議案の採択の動きを見せている。アベラ議員は、「韓国をはじめアジアと欧州で20万人の幼い少女が日本軍の性的奴隷として引っ張られていったのは20世紀最悪の女性人身売買だった」と話した。彼は「米国はどんな理由であれ女性人身売買を認めない。謝罪どころか醜悪な妨害工作で歴史を歪曲しようとする試みは結局逆効果を生み出すだけだ」と強調した。
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安倍政権、国際的に孤立――2月6日(水)、首相官邸前要請行動 [元「慰安婦」問題]

 2月6日(水)、第1060回ソウル・水曜デモに連帯した首相官邸前要請行動を行いました。

 安倍首相・岸田外相宛て「要請書」を内閣府に提出し、その後首相官邸前で要請行動。6日は未明から雪が降り、要請行動中は小雨に変わりましたが、首相官邸前で訴えとチラシ配布を行いました。
 そのあと、三鷹駅前に移動し、同じように「慰安婦」問題の解決を訴えチラシを配布しました。

 2012年12月27日、安倍新政権は「河野談話」の見直しを表明、また歴史認識の変更、書き変えを意図していますが、各国政府、人権団体は新政権の動向に注目しています。
 「河野談話」見直し表明に対しては、さっそく批判の動きが起きました。
 1月29日、米ニューヨーク州上院では「慰安婦」問題野解決を求める決議が満場一致で採択されました。米連邦議会でも「第二の『慰安婦』決議」採択の動きがはじまっています。

 安倍新政権発足後、日米・日韓首脳会談を打診しましたが断られました、そのため年初にアセアン・豪州を訪問し、そこで「中国包囲網」形成を持ちかけました。しかし、アセアンでも豪州でも、即座に拒否されました。「中国包囲網」形成を外交方針にするなど、ほとんど幼稚で現実知らずの国際感覚です。2013年の中国・東アジアは世界のなかでどのような位置を占めているのか、まったく理解していません。日本と中国でさえすでに深い相互依存関係にあり、この関係を無視して現在と近い将来の日本の進むべき道、あるべき姿を構想することはできません。日本外交には国際関係に対する現実的な認識が欠如していることを暴露してしまいました。

 それに加え、カー豪外相からは岸田外相に対し、「河野談話」見直しに反対すると会談の場で直接表明されてしまいました。

 提出した「要請書」を添付します。

130206 首相官邸前 004 (480x360).jpg
<2月6日(水)、第1060回ソウル水曜デモ連帯、首相官邸前要請行動>

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安倍 晋三  総理大臣  様
岸田 文雄  外務大臣  様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

日本軍による性奴隷制問題を直ちに解決すること

1. 日本政府は、日本軍「慰安婦」被害者に対し、謝罪と賠償を行い、問題をただちに解決すること。

2. 安倍政権は、「河野談話」(1993年)の見直しを即刻やめ、「河野談話」継承を安倍内閣として確認すること。

 菅義偉官房長官は12月27日の記者会見で、「河野談話」の見直しを示唆した。
 中韓両国政府は、「日本政府は歴史問題をきちんと清算していない」という評価において一致しており、この先「日本政府が歴史問題のどのような認識を選択するのかが、この地域の平和と安定に影響を与える」(1月11日、韓国訪問中の中国・張外務次官の発言)と安倍政権の姿勢に注目している。
 安倍政権による「河野談話」見直しは、中国・韓国を含むアジア諸国との外交関係を即時に悪化させるものである。
 中国・韓国ばかりではなく欧米メディアも早速、「女性を性奴隷にしたことを含む第二次世界大戦中の加害の歴史を書き直そうとするものである」と安倍政権の姿勢を厳しく批判している。
 豪州のカー外相は1月13日、岸田文雄外相との共同記者会見で、「慰安婦」問題で旧日本軍の強制性を認めた1993年の「河野談話」について「近代史で最も暗い出来事の一つであり、見直しは望ましくない」と述べた。
 「河野談話」の見直しは、決してしてはならない。外交関係を危うくするばかりでなく、日本社会の国際的な信頼を損なうものである。安倍内閣として即刻「河野談話」継承を確認することを求める。

3. すでに、日本軍性奴隷制問題(日本軍「慰安婦」問題)は日韓の二国間問題ではなく、国際的な重大な人権侵害問題となっている。また、外交課題となっており、即時解決に取り組むこと。

 日本軍が性奴隷制を軍組織の一部とし運営し保持してきたこと、重大な人権侵害を行ってきたことは、歴史的な事実としてすでに全世界に明らかになっている。日本政府がその歴史的事実に正面から向き合おうとせず、それどころか、これを隠し歴史を書き換え、責任を逃れようとしていることもまた、世界の人々はよく知るに至っている。
 「慰安婦」問題の解決を今こそ行わなければ、日本政府と日本の社会は、現代と将来の国際社会から信頼を失い孤立した存在になってしまいかねない。
 安倍政権発足に伴い、すでにそのような批判は起きている。
 米連邦議会では、「第ニの決議」採択する動きがすでに広がっている。
 下院外交委員長のエドワード・ロイス議員(共和党)は1月23日、ニューヨークの韓国人団体「韓米公共政策委員会」の代表団と会い、「第二の『慰安婦』決議」に賛成する意向を示した。また、民主党議会選挙対策委員会(DCCC)の委員長を務めるスティーブ・イスラエル議員も同日、韓米公共政策委員会のイ・チョルウ会長らと会った席で決議を提案する考えを示した。
 米下院は2007年7月、旧日本軍による「慰安婦」の強制連行について、日本政府に謝罪を求める決議を満場一致で採択した。しかし、決議採択から日本政府の対応は何も変わっておらず、それどころか安倍新政権の「河野談話」見直し方針が伝わるや、あらためて採択が必要だとする声が広がっている。
 民主・共和党指導部の実力者である両議員が支持の意向を表明したことから、米議会で約5年ぶりに超党派的な慰安婦決議が採択される可能性が強まった。
 韓米公共政策委員会は決議の内容と関連し、2007年の決議の大枠を維持する一方、旧日本軍による慰安婦募集の強制性を認めた「河野談話」の見直しに反対する文言が含まれるよう、議会に求めると表明している。
 
 1月29日には、ニューヨーク州上院で「日本軍「慰安婦」決議案304号」が満場一致で通過した。これは、安倍政権に対する最も早い国際社会の批判・反応である。

 米国議会で「第二の『慰安婦』決議」が採択される前に、安倍政権が自らすすんで「慰安婦」問題の解決を表明することを求める。

4. 日本政府は、日韓請求権協定で日本軍「慰安婦」問題がすべて解決済みとの、政府見解をあらためること。
韓国ソウル日本大使館前での、高齢となった被害者たちと支援者たちによる水曜デモは本日で21年目、1060回目となった。またオランダでは、対日道義負債補償請求財団が日本大使館前で要請を続けている。これらの要請に真摯に応じ、被害者の納得のいく解決を図ること。

 韓国政府は、これまでの日本政府の対応から、「日本政府は軍国主義を清算していない!」、「右翼的傾向を強めつつある」という、批判的な認識を持つに至っている。この点では中国政府と認識を共有している。
 韓国政府として「慰安婦」問題の解決を要求してきたが、日本政府は一切無視してきた。日本政府や日本のマスメディアは、「日韓関係のこじれ」を李明博大統領の竹島上陸から話を始める。韓国側に一方的に原因と責任があり、「日本は被害者である」と事態を描き出す。
 しかしこのような描き方は、きわめて一方的な、自分の都合に従った理解である。それに至る経過、その前の「慰安婦」問題解決の協議さえ拒否してきた日本政府の対応の経過は、一切報じない。都合の悪い事実は無視し、日本は被害者であると描き出す姿勢は、他方で「歴史認識」の欠如もしくは隠蔽と相応している。
戦前において「ABCD包囲網」の被害者として日本を描き出した時も、当時の現実的な国際関係の認識欠如もしくは隠蔽が、そこに相応し存在していた。
 ましてや、安倍政権は「河野談話」見直しを表明、歴史認識の書き替えを行おうとしている。その姿勢が変わらない限り、日韓関係を根本から改善することもできないし、本当の信頼関係を築きあげることはできない。
安倍政権は、日韓請求権協定で日本軍「慰安婦」問題がすべて解決済みとの、政府見解をあらためる姿勢を示すことから始めること、それ以外に解決にいたる道は存在しない。

 「『慰安婦』などいなかった!」、「南京虐殺などなかった!」 などと何でもかでも日本人のやったことを擁護するのが日本政府と日本人の利益となると考える人があるが、それは明確に間違っている。隠し通すことや、歴史を隠し、書き変えることで、逆に国際社会のなかで信頼を失い孤立する。現在と将来の日本と日本人の信頼を失ってしまう。
 アジアの人たち、国際社会は、「慰安婦」問題、南京事件などを日本人よりよく知っている。
 日本政府と日本の市民にとって真の利益は、「慰安婦」問題の解決を含む過去の歴史問題の解決すること、日本の軍国主義を清算すること、そのことによってアジアと世界の国々、アジアと世界の人びとの信頼をあらためて獲得し、人権国家として再出発することにある。
 
2013年 2月6日 
     フィリピン・ピースサイクル
     フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)  代表 大森 進
 
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新政権に望むーー 日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める [元「慰安婦」問題]

 1月16日、首相官邸前で「慰安婦」問題の解決を求める訴えを行いました。要請書も提出しました。そのあと、三鷹駅前でも、同じ訴えを行いました。
 13日に降った雪が大量に残っており、一部雪かきもしながらの行動でした。

 さて、安倍政権が発足しました。
 早速、「『河野談話』の見直しの検討に入る」、さらには「朝鮮学校は高校授業料無償化の対象から外す」と表明しました。
 「河野談話」見直しについては、米国政府から「懸念」がすでに表明されました。国際社会は、安倍政権の動向に注目しています。

 安倍政権は、日韓、日米首脳会談を申し入れましたが、なかなかいい返事をもらうことができません。

 2012年12月、韓国・パク・クネ候補が次期大統領に当選しました。日本政府や日本のマスメディアは、「親日」であったパク・チョンヒ元大統領の娘であることから、新大統領も「親日」であるかのように期待していますが、実際には先行した「期待」、あるいは「幻想」にほかなりません。

 韓国政府の目は、日本ではなく中国に注がれています。その「現実」を知らなくてはなりません。
 東アジアの一員として生きることを決めた21世紀の韓国は、これまでの日米に偏重した政治・経済関係を徐々に薄め、中国・東アジアとの政治・経済関係構築へと、重心を移してきましたし、この方針はより確かな、強固なものになっており、新政権となっても変更はありません。

 韓国経済は中国・東アジアに経済進出し、各国市場に浸透し、密接な関係、相互依存関係をすでにつくりあげています。その上でのグローバルな展開、輸出特化型経済を志向しています。この基盤をより安定的なものにするため、韓国政府は全方位善隣友好関係の構築を、基本かつ必須の外交方針としています。この方針は、新政権になろうと一切変わりません。

 仮に、日中間で尖閣などの「領土問題」や何らかの対立が発生したとしても、もちろん対立内容の評価によるとしても、韓国政府が、中国政府ではなく日本政府を一方的に支持すると期待はできません。そのような国際関係、情況にあることを知らなくてはなりません。日中関係の「悪い状態」が続く限り、韓国政府が日本政府の側に立ってくれるという期待は、必ず裏切られるでしょう。

 安倍首相はアセアン諸国首脳と会談し、中国と領土問題を抱えるアセアン諸国と一緒になって、中国包囲網を形成しようと試みましたが、「思惑」は空回りしています。「つけ焼き刃の外交」とはこういうのをいうのでしょう。もちろんこのような日本政府の対応を中国を含むアジア諸国は注視しています。

 韓国政府は、これまでの日本政府の対応から、「日本政府は軍国主義を清算していない!」、「右翼的傾向を強めつつある」という、批判的な認識を持つに至っています。この点では中国政府と認識を共有しています。

 「慰安婦」問題の解決を韓国政府として要求してきましたが、日本政府は一切無視してきました。日本政府や日本のマスメディアは、「日韓関係のこじれ」を李明博大統領の竹島上陸から話を始めます。韓国側に一方的に原因と責任があり、「日本政府と日本国民は被害者である」と事態を描き出します。
 このような描き方は、きわめて一方的な、自分の都合に従った理解です。
 それに至る経過、その前の「慰安婦」問題解決の協議さえ拒否してきた日本政府の対応の経過は、一切報じません。都合の悪い事実は無視する日本政府であり、日本のジャーナリズムです。

 ましてや、「河野談話」見直しを表明した安倍政権は、到底、韓国政府、韓国国民を満足させることはできません。話し合って「合意する」などあり得ません。
 政権発足したばかりなので、出方を見ており、表面的な対立をあおるようなことは控えていますが、本質的に日韓関係を改善する可能性はありません。

 他方、日本の安倍政権は「極端な、バランス感覚のない価値観」の閣僚で構成されているため、日韓関係は絶えず波乱含みの展開になると予想されます。日韓関係を悪化させる日本政府側の要因が存在します。 閣僚や政治家が失言や国内向けパフォーマンスで失態を演じ、外交関係を悪化させるという事態を容易に予想させます。 

 「『慰安婦』などいなかった!」、「南京虐殺などなかった!」 などと何でもかんでも日本人のやったことを擁護するのが、日本政府と日本人の利益となると考える人がいますが、それは明確に間違っています。隠し通すことや、歴史を隠し書き変えることで、逆に国際社会のなかで信頼を失い孤立してしまい、現在と将来の日本と日本人の信頼を失ってしまうことになります。
 「慰安婦」問題、南京事件などを知らないのは、現代の日本国民ばかりです。アジアの人たちはよく知っています、国際社会はよく知っています。日本人よりよく知っています。

  私たちの主張、立場は、「慰安婦」問題の解決を含む過去の歴史問題の解決すること、日本の軍国主義を清算すること、そのことによってアジアと世界の国々、アジアと世界の人びとの信頼をあらためて獲得し、人権国家として再出発することにあります。そこに日本政府、日本国民にとって真の利益があると確信しています。
 
20130116首相官邸前慰安婦008○ (320x194).jpg
<1月16日、首相官邸前>
――――――――――――


安倍 晋三  総理大臣  様
岸田 文雄  外務大臣  様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

日本軍による性奴隷制問題を直ちに解決すること


1. 日本政府は、日本軍「慰安婦」被害者に対し、謝罪と賠償を行い、問題をただちに解決すること。


2. すでに、日本軍性奴隷制問題(日本軍「慰安婦」問題)は日韓の二国間問題ではなく、国際的な重大な人権侵害問題となっている。外交課題として解決に取り組むこと。

3. 「河野談話」(1993年)の継承を政府として確認すること。

4. 日本政府は、日韓請求権協定で日本軍「慰安婦」問題がすべて解決済みとの、政府見解をあらためること。
 韓国ソウル日本大使館前での、高齢となった被害者たちと支援者たちによる水曜デモは本日で21年目、1056回目となった。またオランダでは、対日道義負債補償請求財団が日本大使館前で要請を続けている。これらの要請に真摯に応じ、被害者の納得のいく解決を図ること。


2013年 1月16日
 
   フィリピン・ピースサイクル
   フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)       代表 大森 進

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<三鷹駅前で訴えとチラシ配布>

以下、国際世論の状況として、韓国紙の報道より、翻訳(M氏)、転載。

金錦来長官、米国のホンダ議員と「慰安婦」問題で議論
[トゥデイ  2013-01-08 08:32]

 (ファン・ユンジュ記者)=女性家族部は、金錦来(キム・グムレ)長官が8日午後2時に、女家部でマイケル・ホンダ米国下院議員と会い、日本軍「慰安婦」問題について議論すると発表した。
 金長官はこの席で、日本軍「慰安婦」被害者問題は、人類の普遍的人権に反する行為で、戦時に威嚇を受ける女性の人権の保護の側面で、接近しなければ、と強調する予定だ。
 韓・米・日議員会議(1月9日~10日)に参加するために訪韓したホンダ議員は、2007年に米国の下院で日本軍「慰安婦」問題解決決議案(H.RES.121)の可決に、主導的に参加していた。
 可決された決議案は、「慰安婦」制度を「日本政府による強制的軍隊性売買制度として、残虐性と規模面で前例のない、20世紀最大規模の人身売買中の一つ」だと規定している。
 一方、女家部に登録された日本軍「慰安婦」被害者236人のうち、生存者は58人にすぎず、女家部は現在、日本軍「慰安婦」被害者の生活安定の支援、健康及び情緒的安定治療のための、支援事業及び記念事業を推進している。

米国のホンダ議員、チャスン僧侶を表敬訪問…「慰安婦」問題を議論
[聯合ニュース  2013-01-08 15:36 ]からの転載


 (ソウル=チャン・ハナ記者)=大韓仏教曹渓宗の総務院長、チャスン僧侶は、8日午前、訪韓したマイケル・ホンダ米国下院議員の表敬訪問を受け、日本軍「慰安婦」問題の解決などについて意見を交わした。
 日系3世のホンダ議員は、2007年に米国議会で、日本軍「慰安婦」決議案を発議するなど、「慰安婦」問題の解決に努力してきている。…中略
 これにホンダ議員は、「クリントン国務長官も、『慰安婦』という表現よりは、性奴隷と正確な表現を使わなければならないと語るなど、関心が多い」として、「日本の安倍政府も、そのような認識と実践が必要だが、まだそうでないようだ」と、もどかしがった。
 ホンダ議員は 
 ▲ 日本国民の戦争・「慰安婦」問題に対する認識の不在 
 ▲ 戦犯問題から自由になれない日本の指導者たちの一族(집안) 
 ▲ 日本の天皇の名誉と威信などを、日本が責任ある謝罪ができない理由として数えた。
 ▲
 続けて、「日本の市民社会の連帯を通して、政界に圧力を行使し、国際社会の次元での圧力と説得を通して、日本が民主国家としての役割をするようにすることが必要だ」と付け加えた。
チャスン僧侶は、ホンダ議員の意見に同意を表し、「韓日仏教の交流を通して、歴史教育プログラムを運営する方案などに対して、協議していく」と語った。

◇ この問題解決に向け、アメリカ合衆国ニューヨーク州議会の上院、下院でも、さらに決議案が準備されていることを付け加える。

20130116三鷹駅南口037○ (320x223).jpg
<三鷹駅南口>
 
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