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イラン戦争を回避せよ! [世界の動き]

イラン戦争を回避せよ!
「有志連合」に参加するな!
               

1) ついに戦争の瀬戸際か!

 トランプ米大統領が6月20日、イランへの軍事攻撃を承認した後、攻撃中止命令を出したと米ニューヨーク・タイムズ紙が報じ、CNN他、複数のメディアも伝えた。

 米政府高官がニューヨーク・タイムズに明らかにしたところによると、米政権はイランのレーダーシステムやミサイル関連施設を標的に、6月21日未明の限定攻撃を計画し、攻撃実施の初期段階として艦船が配備され、航空機は飛行中だったが、直前の20日夜になってトランプ大統領から軍当局者に、当面攻撃を中止するとの命令があったという。

 米AP通信が米政府職員の話として、国防総省が爆撃を勧め、トランプは政府や議会の指導者らと20日協議したところ、マイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン大統領補佐官が強硬策を主張したものの、議会指導者らが慎重な対応を求め爆撃の中止を決めたという。(以上、IWJ)

 この爆撃中止命令に、ポンペオ国務長官とボルトン大統領補佐官は強固に反対し、今なおイラン戦争を主張している。

 アメリカ政府内には、イラン攻撃、あるいは戦争に対する「若干の路線の違い」らしきものが存在する。トランプは、取引のための脅し、ブラフとしてイラン攻撃、戦争を煽ってきた。取引をうまくやり、20年大統領選挙に持ち込みたい。他方、ポンペオ国務長官、ボルトン大統領補佐官らネオコンは、実際のイラン攻撃から戦争にまで踏み込もうとしている。

2)緊張がつづく、有志連合とペルシャ湾封鎖で危機を煽るアメリカ

 イギリスが公海上の海賊行為 イラン潰しを狙うアメリカに加担
 ・イギリス―― アメリカの一匹目の犬、積極的に噛みつく役割
 
 7月4日早朝暗闇に紛れて、ジブラルタル海峡を横断していた推定1億2000万ドルの価値の原油を積んだ船グレース1に、多数のイギリス特殊部隊員が乗り込み拿捕した。イギリス政府は、「石油の向け先がシリアなので、EU制裁を実施するためタンカーを拿捕した」と主張しているが、イギリスの言い分は到底信じがたい。イランは、イギリスの動きを「海賊行為」と非難して猛然と反撃した。

 この拿捕は、正体不明者によるペルシャ湾近くの石油タンカー攻撃事件に続くもの、すなわちイラン戦争を開始する口実つくりだ。ボルトンや他のアメリカ当局者等は証拠もなしに、タンカー攻撃はイランのせいだと非難し、他方、イランは否定している。そもそも制裁されているイランにとって貴重な収入源である石油輸出を止めかねない、タンカー攻撃をやるはずはない。

 イギリス政府は、自分の利害から、ワシントンに忠実な戦争挑発共犯の役割を演じている。EU離脱も控えている「落日の帝国」イギリスは、他のヨーロッパ諸国とともにイランと核合意したはずなのに、このようなあくどいことをやる。

 「イランの命綱である石油輸出をゼロに封じ込める」と、トランプとボルトンらが繰り返し公言している。この容赦ない犯罪的なイラン挑発が、どうして戦争を招かないのか不思議なくらいだ。

 トランプ政権は、戦争開始の機会を一旦やり過ごした。しかし、イランへの攻撃をあきらめておらず、イラン戦争を実行する「有志連合」を呼びかけている。

 米軍軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長は7月8日、「有志連合」の方針を示し、説明会を設け参加国を募り70ヵ国が参加した。「有志連合」とは、国連安保理決議に基づく行動ではないことを意味する。国連安保理がすべて正しいわけではないが、米政府は国連の理念や決まり事をも無視するあくどい戦争挑発をしているということだ。「有志連合」を呼びかけたのは、米国が単独で戦争を仕掛けたら世界で孤立しかねない、財政負担も大変だ、「有志連合」への集まり具合で戦争に突入するかどうかの判断基準とする、そのような議論がアメリカ政府内であったということだろう。

 「有志連合」に容易に参加しそうなのは、英国と日本だ。多くの国が「有志連合」に加われば、米国はイランとの戦争に踏み切る可能性がより高くなる。

 戦争を求めているのはアメリカであり、イランではない。戦争へ踏み切る口実を求めているのもアメリカである。ペルシャ湾での最近の一連の事件は、アメリカが意図的に引き起こしていると考えるのが自然だ。現在は、フェイクニュースから容易に戦争と破滅へと、進みかねない極めて危険な事態にある。

 かつてジョージ・W・ブッシュディック・チェイニーが嘘をついて、アメリカと諸国をイラク戦争に追いやった前歴がある。これと全く同様に「チーム・トランプ」がそうする可能性は高いままだ。ネオコンは、「嘘の口実でイラク潰し」を成し遂げた「成功体験」を忘れることができない。うまくつくられた嘘に基づいて、アメリカがイランとの戦争を始めた証拠が、将来見つかるかもしれない。もっとも、イラク戦争の結末を知っているわれわれは、ことが終わったあとに見つかっても元に戻せないことを知っている。

3)マッチポンプ、アメリカ帝国

 トランプ政権が、核合意から一方的に離脱し、中東に軍事的緊張を引き起こした。にもかかわらず、トランプはイランを非難し続けている。
 7月7日で、60日間の警告期間は終わり、イランは既に次第に核合意から次第に離脱する準備に入り、
濃縮ウランの生産量を増やしている。アメリカが核合意を破棄したのであり、イランの措置は何ら不法なことではない。ましてやアメリカ政府から非難されることではない。

 アメリカ政府の狙いは以下の通りだ。

 ・イランで戦争状態をつくりだし、アメリカ軍による中東支配を実現する。戦争状態、緊張状態を継続することは、米軍の影響力を大きくすることであり、米の軍産複合体にとって都合のいい世界となる。周辺諸国に米国製武器をさらに買わせることができる。

 ・石油を通じて世界を支配する―-米国の力で、イランの石油を売らせない、輸出させないようにして、石油を通じて世界を支配する。とくに中東から石油を購入している中国、インド、日本などを米国に従わせる。イラク戦争によって、日本を従わせたように。アメリカはシェールオイルを増産しており、イランと中東石油が途絶えても影響は小さい。

 ・中東を米国―イスラエル、サウジによって支配する新しい中東、新しい支配秩序をつくる。

4)イランの対応、ロシアと中国の対応 

 イランは、屈服する姿勢を見せていない。トランプが大統領選挙のために無法な脅しをしているのであり、トランプが容易に引き下がらないことも知っている。それゆえ交渉の相手とさえ認めていない。

 米国に対抗するのは、イラン―ロシア―中国―インドのラインだ。
 アメリカの対イラン戦争によって、ロシアと中国の権益は脅かされ、手に負えない状況になりかねない。ロシアはシリア戦争でアメリカを退けることの尽力したが、イランを含む中東でのより大きな戦争に巻き込まれかねない。中国はイランの石油を大量に買っている。「米国の制裁にも加わらない、買い続ける」とすでに表明している。

 インドもイラン石油の輸入者だ。インドをロシア―中国側に誘い込むことが一つの外交的対抗策であり、一つの焦点でもある。ヒンディー主義者で反動的なモディ政権ではあるが、自国の利害からロシアとインドは良好な関係にあり、トランプ政権の反対にもかかわらず、ロシアからS-400を購入する姿勢を見せている。 

 事態は流動的だが、もう一つのカギは、EUである
 EUの誰も、トランプのイラン戦争には加わりたくない、しかし米国から制裁されたくないという「ジレンマ」にいる。大したジレンマではない、そこに大義はない、利益計算しかない。極めて頼りない「悩み」に囚われている。アメリカを孤立させ、単独行動主義のいじめっ子にしてしまわなければ、EUに未来はないにもかかわらず、だ。

 これまでのところ核合意に参加したヨーロッパ諸国が、アメリカの「核合意破棄から戦争政策」へ正面から立ち向かい押しとどめようとする強い姿勢を、明確には見せて来なかった。

 7月31日ロイターは、独マース外相が、米のホルムズ海峡有志連合に不参加を表明したと伝えた。ドイツは「軍事解決はない、外交的な手法でイランとの緊張緩和を目指している」とし、「米国主導の有志連合への参加によって、それが困難になる可能性がある」と述べた。

 EUは今のところ、「イラン核合意」を遵守する立場であり、「有志連合」への参加を表明していない。ドイツの不参加表明が、EU不参加への確実な流れとなれば、トランプの「イラン封じ込め」は失敗に終わる可能性が高くなる。

 ポンペオ米国務長官は7月29日、ワシントン市内での経済団体の会合で、「有志連合」の結成に、「望んでいたよりも時間がかかるだろう」と述べ、有志連合による圧力でイランを押し込めるという米政府のプランに各国が賛同していない現状を認めた。

5)周辺諸国 

 中東地域のアメリカとの同盟諸国間の反応にはいくらかの差異がある。

 サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は「イランへ徹底した懲罰」を提唱し、中東の支配者になりたがっている。イスラエルはアメリカがイランを攻撃することを望んでいる。イスラエルは、米国―サウジと一緒になった新しい中東支配を空想しており、その邪魔者であるシリア、イランをアメリカの戦争によって破滅させたい。イスラエル政府は、より冒険的で破滅的な、戦争による地域覇権を奪取する夢想的政策に、いっそう傾斜している。

 アメリカによるイラン戦争をはっきりと支持し歓迎しているのは、サウジアラビア、UAEとイスラエルの支配者だ。いずれもイランに対し、偏執的な敵意を持っている。

 サウジの「イラン懲罰」を、中東のアメリカ同盟諸国は受け入れていない。「中東諸国は、イランとの軍事衝突で、自らが前線となる可能性が高く、イランとの二国関係を追求しているクウェートとオマーンは、イランに一方的に圧力をかけようとするサウジアラビアの試みを、長い間、不快に思っている。」(ワシントンポスト)

 世界最大の天然ガス輸出国カタールは、サウジアラビアとUAEによる2年間にわたる貿易と政治的つながりの封鎖で、痛い目にあわされてきた。カタールはアメリカ同盟国であり、サウジアラビアと提携してきたスンニ派アラブの隣国だが、北のシーア派イランとも地域の親密な貿易と歴史的なつながりを何世紀も共有している。反イラン枢軸で地域を分極化しようとする、アメリカとサウジアラビア、UAEによるたくらみに賛同などできない。

 クウェートも同じ境遇にいる。戦争になれば最前線となるだろうし、アメリカから膨大な戦費をむしり取られかねない。

 シリアとトルコは、断固としてイラン戦争に反対している。トルコ・エルドアンは、アメリカの同盟国でありながらから、受けたひどい扱い(=米によるクーデターで倒されかねなかった)に腹を据えかねており、ロシア―イランとの関係を強くしている。アメリカからの恫喝や制裁にもかかわらず、ロシアから防衛ミサイルS-400を導入した。米国製の武器(パトリオット)を買っても、値段が高いばかりかその使用権は米軍・NATOが握っていることを思い知ったのだ。
 シリアも、ロシアーイラン―トルコとともに、シリア戦争を最終的に終わらせようとしており、イラン戦争など望んでいない。

 大惨事の戦争が勃発すれば、中東地域はワシントンによる石油業界のグローバル支配のもとに置かれかねず、いくら同盟国だからとはいえ、中東諸国はアメリカの戦争に賛同するわけにはいかない。

6)アメリカの言いなり、日本政府
 ・日本― 二匹目のアメリカの犬、従順なだけの犬。請求書が回ってくる。

 トランプ政権は日本政府へ、「有志連合」に加わり、イラン戦争のためにペルシャ湾への出動を要請している。

 安倍政権の外交政策は、「強いアメリカ政府に従う、そのほうが利益になる」という卑屈な方針で実績を重ねており、その論理からすれば、これを拒否する理屈は持っていない。

 安倍首相はトランプ大統領の言うことは何でも聞く。F35戦闘機を買え!イージスアショアを買え!と言われ買うことにした。7月21,22日、ボルトン安全保障補佐官が来日した際に、「米軍駐留費の日本負担を5倍にせよ!」と恫喝のような要請をした。これもまともに断ることなどできないだろう。

 F35もイージスアショアも、日本の防衛にどう貢献するか、怪しい。むしろ危険を招く。しかし、安倍政権にとって、そんなことはどうでもいい。

 ただ、トランプから、「自衛隊を海外に出して一緒に戦闘してくれ」と言われても、法整備において難しいところがまだまだあるし、憲法9条もある。安保法制をいじって自衛隊を海外に送ったとしても、実際に自衛隊を戦わせるには、まだ様々な準備が必要だ。だから憲法に戦闘を行える条項を入れる、例えば「世界の平和維持のため、国際貢献を行う武力を持つ」などの改憲が必要だ。「有志連合」への参加というこの機会をとらえ、改憲過程を早めかねない。

 国連憲章は本来相手が武力攻撃してきた時のみ、武力行使を認めている。今回の「有志連合」もあくまで有志であって、国連安保理決議に基づく、行動ではない。
 国連安保理を無視して、それでもアメリカに迎合し戦争をできる態勢、憲法や法整備をしようとするのだから、容易ではない。

7)ホルムズ海峡での緊張を低下させるのは極めて簡単だ

 現在の危機の原因はきわめて明確だ。トランプ政権が一方的に核合意を破棄したからだし、勝手に対イラン経済制裁を強めたからだ。

 したがって、解決策は簡単だし、明確だ。米国が、イランと6カ国(米・英・仏・独・ロ・中)が2015年7月に結び、国連の安全保障理事会でも決議された「包括的共同行動計画(JCPOA)」を順守すればいいだけだ。
 ロシア、中国、ドイツは、イラン核合意を尊重せよと強く主張している。英・仏もイラン核合意を維持する立場だ。

 ホルムズ海峡での緊張を鎮め、解決する方法は、トランプの「有志連合」へ参加せずトランプを孤立させ、トランプのイランに対する攻撃をあきらめさせることだ。トランプが18年に一方的に破棄した国際的核合意=イラン核合意を尊重し、制裁と地域の軍艦を撤去し、根本的変化のために、国際法と外交と平和的交渉を尊重することだ。
 
 この状態を、より確実なものにすることだ。(8月7日記)









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