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中国の世紀 [世界の動き]

中国の世紀

1) 中国の世紀 

 世界は、アメリカ―中国貿易戦争、対ロシア経済制裁、米によるベネズエラのクーデター失敗、米によるイラン戦争の危機など、おもにアメリカが引き起こす危機的な状況がある一方で、中国経済の一層の質的な発展拡大は、新たな様相を見せ始めている。

 19年4月末、北京で第2回「一帯一路フォーラム」(The Belt and Road Initiative: BRI)が開催された。40人の政府首脳と90の国際組織代表者を含め、150の国から代表者5,000人が参加した。中欧と東欧の16ヵ国に加わえ、G7の一国イタリアが覚書に署名した。スイスとルクセンブルグも同様に、「一帯一路」に参加する意志を示した。

 6月5日、モスクワでプーチン-習近平が会談し、二国間関係から、ユーラシア統合プロセスを、もう一つ上のレベルに格上げした。一帯一路構想(=新シルクロード)とユーラシア経済連合、特に中央アジアの内部や周囲との革新的相互連絡から、朝鮮半島の共同戦略に至るまで、全てを論じた。

 アメリカ抜きのこのような議題を論じる場が生まれていることに、世界の大きな変化を見い出すことができる。世界覇権の構造転換が進んでいる。

 「一帯一路構想」は、2013年にアスタナとジャカルタで習近平が初めて演説で触れ、14年11月10日に北京で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、中国政府が経済圏構想として提唱した。その時以来わずか5年で、150以上の国の注目と支持を獲得した。中国西部から中央アジアを経由してヨーロッパにつながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、史上最大規模のインフラ投資計画、そのうえでの貿易促進、資金の往来を促進する一大経済圏構想である。

 大阪でのG-20サミットでも、主役は中国―ロシア―インドだった。
 増大した中国生産力の水準は、すでに中国国内市場の需要をはるかに上回る規模に達しており、さらなる中国経済の発展にとって、国境を越えた一大経済圏の形成は必要であり、必然でもある。東南アジアからシルクロード圏に至る新たな中国経済圏、緩やかな多国的な協力関係の形成を志向している。

 中国は、2017年、一帯一路構想の基本原則として平和と協力、開放性と包括性、受容と理解、そして相互利益を提起しており、アメリカやIMFによる略奪的なグローバル経済秩序に対するありうべき対案として、各国に受け入れられつつある。

2) 日本の没落 

 そこには、世界第2位の経済力を獲得しながら、次の発展段階=「東アジア経済圏構想」を構想も実現もできず、その結果、土地価格高騰とバブル経済、そしてその破綻という結末に至り、以来30年間、経済停滞が続く日本経済の姿に対する綿密な研究、批判と反省があり、その反省と批判から出てきた構想であるということもできる。

 遅きに失した感があったが、2009年9月、鳩山政権が発足し「東アジア共同体」を提唱した。日本・中国・韓国を中心とした東アジア経済圏を形成し、集団安全保障体制を構築し、通貨の統一も構想した。日本の資本家層、支配層にとって、確かにこの方向にしか日本の次の発展はなかった。しかし、日本政府や日本の支配的政治勢力は、外交方針として対米・対欧関係を重視することしか頭になく、アジアに軸足を置く事はなかった。東アジア地域経済構想の必要性を理解しなかったし、このために必要な歴史問題に解決にも熱心でなかった。鳩山政権の「東アジア地域経済構想」を、米国の影響力を徐々に減らしていくだと受け止めた米国支配層やこれに呼応する日本の政治勢力は、つぶすことに躍起になった。実際のところ、日本経済の次の発展にとって必要なものだった構想は、既存の利害に拘泥する政治勢力によってつぶされた。今振り返ってみれば、あれが転換する最後の機会だった。安倍政権は、いまだに日米にインドを巻き込んだ中国包囲網刑死絵に躍起になっている。

 その結果、日本のGDPはこの30年間、500兆円のままであるにもかかわらず、中国のGDPは1500兆円近くとなり日本の3倍となっている。2~3年以内にはインドのGDPは日本を越える。

3) 「一帯一路」はIMFと同じか?

 欧米日政府とメディアによる「一帯一路構想」に対して浴びせられる主な批判の一つが、「知的財産の窃盗」だが、この幾分か誇張された主張を中国は認め、習主席は中国は知的財産を共有すると誓約した。中国は、すでにジュネーブの世界知的所有権機関に登録される新特許で、大差で世界のトップの地位にある。

 欧米日による「一帯一路構想」に対するもう一つの批判は、参加している比較的貧しい低開発国にとって「負債の罠」を作りだすということだ。この批判を煽りながらも、IMFと世界銀行や、特に主要大国アメリカが、債務国を貧しくするため金融操作を行ってきた、遥かに酷い実績があることを認めていない。「鏡に映る自分の姿」から中国を批判している。

 IMFと世界銀行救済措置の「代償」は、債務国経済の「構造調整」と呼ぶ。最近では、ギリシャを見ればいい。IMFがつける注文は、貧しい国が医療や教育やインフラに対する支出を減らし、国家の役割を最小にし、国内産業を外資も含め民間に売却、民営化し、労働者保護の法規制を取り払って賃金と労働条件を低下させ(実際には、「労働市場」を柔軟にするという言葉が使われる)、国家資源に対するの海外からの投資や所有に対する規制を撤廃したり減らすことである。そうした国々は、このような政策によって貧しくされるだけではなく、国民は国家主権と自身の経済政策を策定し実行する権限を失う。IMFと世界銀行の主要受益者は、巨大多国籍企業・金融資本となる。

 だから、様々な国々が「一帯一路構想」に殺到したのも、ほとんど驚くことではない。アメリカなどの多国籍企業・金融資本によるグローバル経済支配がいかに苛烈であるかを、裏側から証明している。IMFと世界銀行と付き合い支配された悲惨な経験が、今、152もの国が「一帯一路構想」に参加している主な理由なのだ。IMFや世界銀行が提示するプラン、金融秩序より、「はるかにマシ」なのだ。
 
 実際のところ、ロジウム・グループが「負債の罠という疑問」と呼ぶ分析を発表した。中国が対外債務再交渉に携わっていた24カ国40件の調査である。
 その調査結果によれば、「財産差し押さえ」はまれで、再交渉後、大部分のケースで借り手に好都合な結果だった。40件中18件で「負債は帳消し」とされ、11件で「債務は延期」された。4件が「借り換え」られ、4件で「条件が再交渉」された。

 一例がマレーシアである。2018年の首相選挙前に、当時候補者だったマハティールは、マレーシア東海岸鉄道建設プロジェクトはマレーシア政府の負債が大きすぎると批判した。マハティールが当選後、プロジェクトは保留にされたが、中国は条件再交渉に同意した。わずか8カ月後の2019年4月に新合意がまとまり、建設が再開された。
 マハティールは「一帯一路構想」フォーラムに出席し、構想に対する支持を誓った。「私は完全に一帯一路を支持している。私の国マレーシアがプロジェクトから利益を得るだろうと私は確信している」と述べている。

 
4) 「一帯一路構想」へ152ヵ国が参加した理由

 「一帯一路構想」フォーラムでプーチンは、「断片化された世界の政治的、経済的、技術的な状態や、国連安全保障理事会を回避して、違法な一方的制裁や、より酷い場合には貿易戦争を押しつける保護貿易主義のリスクに対処する効果的な方法を我々が見出すことは重要だ。」と述べ、アメリカによる世界支配の現状を批判した。

 世界の全ての地域から、152の国が「一帯一路構想」に参加したという事実は、大多数の世界の国が、アメリカが自身の覇権を維持するため駆使する、「いじめ、金融破壊、侵略と占領」よりも、「一帯一路構想」を、より良い選択、よりマシな選択肢として見ている証拠だ。

 アメリカが画策したクーデター未遂後にベネズエラに対し更に軍事的恫喝をし、ペルシャ湾への空母機動艦隊を派遣してイランに追加制裁を課し、イラン政府に「メッセージを送り」恫喝した。貿易赤字を理由に、中国からの輸入に何千億ドルもの追加関税から、いつの間にか5G などの最先端技術での中国メーカー潰しに転じている。唯一の超大国という地位を利用し、好き勝手なことを行っている。

 これら全ての行動は、国際法、国連憲章と既存の多国間貿易協定に違反している。超大国なので誰からも罰せられない。「一帯一路」への参加国が広がっている要因は、アメリカによる自分勝手な世界支配への批判であり、アメリカ支配秩序から脱却したいという志向があるからだ。





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