SSブログ
フィリピンの政治経済状況 ブログトップ
- | 次の30件

4月のフィリピン政治経済状況 [フィリピンの政治経済状況]

3月8日マニラ、ガブリエラ

2月から3月にかけてアロヨによる強権弾圧によって、野党や軍内部での反政府の動きは鳴りを潜め、政治的には「安定」した様相を見せている。アロヨ政権は危機を脱した。

後日明らかになったのだが、2月24日「非常事態宣言」のちょうどこの時期は、比米共同軍事演習「バリカタン2006」の最中であり、6千人の米兵が演習のためフィリピンにいたが、非常事態宣言のさなか米軍はひそかに首都圏とクラーク基地に移動した。米軍のこの動きによって、国軍中枢と反政府野党は米政府の意志をはっきりと知り、クーデター騒ぎの帰趨に大きく影響した。要因としてはその大きさはどれくらいだったか、測られなければならない。

現時点の政治的焦点の一つは、1987年の「憲法改正」である。すなわちフィリピン国土に外国の基地を禁止する条項削除を、アロヨは企図しており、そのための「憲法改正」を公然と掲げている。アロヨは米政府の忠実な下僕であることをアピールしている。
「憲法改正」には国会議員の3分の2以上の支持が必要だが、その数は増えており、国会議員数にしてあと6名までになったと発表した。米政府によるアロヨ支持の謝礼かもしれない。クーデター騒ぎを脱した後で、アロヨの政治的スタンスはより明確になったようだ。

野党自由党(ドリロン党首、上院議長)は政府の攻撃によって、反アロヨのドロリン党首派とアロヨ支持のアチエンザ・マニラ市長派に分裂し抗争し、党存続があやぶまれる事態となっている。

反アロヨの動きと関連して、スービックでの米海兵隊員によるレイプ事件が取り上げられている。人権団体、憲法改正に反対する人たちがレイプ事件を追及しているとともに、反アロヨ派がレイプ事件を取り上げ、米政府を批判する形をとって、アロヨを牽制している。ゴンザレス司法長官はこのほど、裁判の遅れを懸念して米兵強姦事件をオロンガポ地裁からマニラ地裁へ移管することを命じるよう最高裁に求めた。 

他方、フィリピン経済は依然として好調である。
今年の対外債務は昨年の対GDP比72%から同68%まで低下することが期待されるとの見解を示した。7年連続で赤字を計上していた国営電力公社(ナポコールNapocor)は昨年度に1,600万ペソの純利益を計上したと発表した。また、電気料金引き下げの圧力にさらされているマニラ電力(メラルコMeralco)はこの3月、産業用電力における他の発電事業者参入に同意した。メラルコの独占が崩れることを意味している。電力会社の自由化、外国資本の投資が引き続き活発である。
外国からの投資と自由化によるフィリピン経済の産業化の基調は変わらない。それが大多数のフィリピン国民の貧困化を並行して進めていることに、大きな矛盾がある。
世界銀行でさえも3月30日、「今年のフィリピンは昨年に比べ急速に成長して財政状況が上向くと予想されるものの、貧困層は減少せず多くの国民が十分な食生活に恵まれない」との見通しを示した。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

非常事態宣言後のフィリピン政治情勢 [フィリピンの政治経済状況]

非常事態宣言後のフィリピン政治情勢

アンヘレス市で、3月4日

 2月のクーデター騒ぎ、アロヨの「非常事態宣言」の結果、アロヨ政府の権限が増す結果になった。クーデターに関与したとして野党や軍のメンバーへの追及が続いている。明らかにアロヨによるライバルつぶしであり、騒ぎの後でのいわば魔女狩りである。注目すべきはコファンコが政権転覆騒ぎに荷担したとされ、アロヨに狙われていることだ。支配層内での対立だが、どのような結末になるか予断を許さない。
 野党自由党(ドリロン党首、上院議長)は政府の攻撃によって、分裂状態になっている。軍は、アロヨ政権が権限を集中しつつあり転覆はないと判断し、政府への忠誠を宣言した。
 クーデターにはNPA、CPPが関与したとされ、支配層内の反対勢力や野党がCPP,NPAを「利用し騒動を煽る」ことは徹底してゆるさないアロヨの明確な姿勢を示した。だからありもしない軍とNPAの関係を追及しているのだ。
ついでにこの機会に左翼、人民勢力の弾圧をやっておこうとしている。とばっちりを受けて、ベルトラン議員やアナクパウィスの5人の議員はいまだ軟禁状態にあり、反乱容疑で逮捕される危険がまだある。アロヨと支配層は将来何かあったときのために、人民勢力を逮捕した「実績」をつくっておこうというところだろう。
 
 他方、フィリピン経済は依然として好調である。
 株価は7年ぶりの高水準を記録した。1月の海外フィリピン人労働者(OFW)からの送金額は、前年同月比16.5%増の9億1,700万ドル。石油最大手ペトロンは最高益を更新。自由化によって巨大企業が成長し、莫大な利益を出している。日本からの投資も盛んだ。日本のIT企業ロアシステム社がフィリピン郵便公社(Philpost)に33億ペソ投資を決定した。
 外国からの投資と自由化によるフィリピン経済の産業化は確実に進んでいる。それが同時に大多数のフィリピン国民の貧困化を進めていることに、大きな矛盾がある。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

マニラの様子 [フィリピンの政治経済状況]

3月初め、ピースサイクルでフィリピンを訪問しました。
わたしの印象ではマニラはまた大きくなったと感じました。車はエアコンカーがほとんどだし、特にトヨタの車が増えていました。以前はもっと少なかったのです。
SMストアーなど巨大モールがいくつもできています。いつ行っても客はたくさんいて、繁盛しています。決してウィンドウ・ショッピングだけのために来ているわけではありません。マニラでは確実に中間層が増えています。

時間が空いたのでケソン市のフィルコアでインターネットカフェに入りました。1時間20ペソ(約40円)でした。日本語をダウンロードできるパソコンが見つからず、自分のメールを開けませんでした。マニラにはいたるところにインターネットカフェがあります。半分くらいはゲームをしているようでした。

ガブリエラ像 マニラ マカティ

フィリピンでは3月8日の国際婦人デーを労働組合ばかりではなくいろんな団体が取り組みます。フィリピン政府も3月を婦人月間としていますし、3月7日にはマラカニアン宮殿に大臣夫人や有力者の夫人、娘が集まりアロヨ大統領を囲んでいる様が新聞で紹介されていました。衣裳はヨーロッパ社交会風?を目指しているらしく、異様なのです。3月8日に対抗しているのでしょうか。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

3月8日国際婦人デー [フィリピンの政治経済状況]

3月8日国際婦人デー
マニラのデモ、3月8日
フィリピンではどの団体も国際婦人デーを祝う。政府でさえも3月は婦人月間としてキャンペーンをおこなっている。新聞報道によれば、3月7日には政府要人の婦人たちが着飾ってマラカニアン宮殿に集まり、アロヨを囲んでにっこりとした記念写真を披露していた。
これらは3月8日国際婦人デーがフィリピン社会に定着していることの現れのようだ。

日本では国際婦人デーをどのように祝うのか?と聞かれた。いくつかの団体が集会などおこなっているが、大きなデモはないと答えると不思議そうにした。
もともと1910年にクララ・ツェトキンら共産主義者が呼びかけて始まったので、こういう経過を嫌う団体が多いからだろうか。「婦人」という呼び方がいやで「女性」に変えたいというようなことも確か十数年前にあったように覚えている。

フィリピンの国際婦人デーは、米兵によるレイプ告発がメインスローガンだった。ちょうど訪問していた3月6日、被害者が支援者との説得で名乗りあげたところだ。
そのようなこともありまた、非常事態宣言でマヤンムナ、アナクパイスの国会議員に「政府転覆罪」で逮捕状が請求され、国会が逮捕を拒否し、その結果国会内に軟禁状態にあることから、今年はガブリエラ、BMP、KPDなどの左翼諸団体の統一したデモと集会が実現した。いつもなら、ガブリエラ単独で別集会を開くのだが、今年は非常事態宣言による弾圧下で孤立しないように共同開催、共同行動を選択したのだろうと思う。悪いことではない。

参加者のほとんどは女性であったし、労働者がほとんどを占めていた。休暇をとってきたという人もあれば、会社に休日を要求し来たという人もいた。人数から言えば、ガブリエラの人数がもっとも多く、BMPも多かった。KPD はまだまだ少数派である。

集会・デモの場所はマニラのマカティ市、ビジネス街である。フィリピン証券取引所やアラヤ財閥ビルのある通り。平日なのでスーツ姿の男性女性ビジネスマンを多く見かけた。ここはフィリピンでもモダンなフィリピンだ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

エリスロマイシン [フィリピンの政治経済状況]

エリスロマイシン(Erythromycin)500mg Tablet 
マーキュリードラッグストアで購入

どうやら日本から持ち込んだインフルエンザが訪比中に悪化し、のどが痛くてドラッグストアに通う破目になった。
そこで購入したのが、抗生物質エリスロマイシン錠剤500mg。一錠14.063ペソ。10錠で140.63ペソ。しかし、付加価値税が12%かかるので、税金が16.88ペソ。合計157.5ペソ。1ペソ2円強なので、約350円。

われわれには安いが、日給が300ペソからからすれば風邪薬とて少々高い。
さて、付加価値税は2006.2月にアロヨ政府がそれまでの10%から12%に引き上げたとのことで、買い物のたびに皆文句を言う。アロヨはけしからん。確かにけしからん。

抗生物質とはAntibioticsだそうで、「アンティバイオティクス」と口で繰り返しながら、マーキュリードラッグストアに向かう。このドラッグストアはマニラの街ならそこらじゅうにあって、24時間営業。清涼飲料水やスナック菓子も売っている。薬屋付きコンビニだね。冷房も効いているから床に座って休んでいる者あり。
フィリピンでは抗生物質も薬局で簡単に売ってくれる。通常、日本の病院では250mgと500mgの2種類あるらしいが、「さすがに」フィリピン。500mgの錠剤のみ。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

マパニケ村 [フィリピンの政治経済状況]

マパニケ村で
マパニケ村で、3月2日
ピースサイクルでフィリピンパンパンガ州マパニケ村を訪ねる。村についたのは午後4時ごろで、まだ明るい。ブラカン州アニャタムの国道から舗装していない道に入りマパニケに進むが、あたりは米収穫の真っ最中で、田んぼの中に多くの人が出て脱穀機から籾殻を飛ばし、玄米をビニール袋に入れ積み上げる。籾殻はいがゆいか、皆タオル端を口に噛み、頬っかむり風にかぶる。バイヤーらしき人ありて、その場で農民に現金を渡す。すぐ引き取るのであろう。
300人が住むマパニケ村はそれほど大きくないが、村の中心あたりの広場には収穫の時期だけ出店が出ていて、少々やかましく音楽を鳴らす。
村の道路は舗装されていないけれど、玄米を積み出すトラックを何台も見かける。水牛も荷車を引き、米を運ぶ。収穫の季節はやはりうれしいらしい。

ここは、1944年11月23日、日本軍の襲撃を受けて、男たちは殺され女たちはレイプされた被害の歴史を持つ村。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

フィリピンの非常事態宣言の意味と結果 [フィリピンの政治経済状況]

フィリピン非常事態宣言の意味と結果

2006年2月は、1986年のピープルズパワーによるマルコス政権打倒20周年ということで毎年政府主催の式典が企画されたが、今年は支配層内部での対立が激化し、この式典をめぐってアロヨ政権追及が企図され、アキノ元大統領は不参加を表明した。
野党による反アロヨの動きは、アキノ、ラモス、エストラダらの元大統領さえも登場してきて、支配層内での争いを公然化させた。これにあわせて軍部のクーデター騒ぎがあり、軍は軍で反政府の動きを見せようとした。

この事態に対し、アロヨは機先を制して「非常事態宣言」を発し、野党や国軍一部を弾圧し、自身の地位を守ることに成功した。「クーデター騒ぎ」はいつものように単なる騒ぎで終わった。実際に軍も警察もほとんど動かなかった。マニラでも地方でも日常生活に特に支障はなかった。「大山鳴動してねずみ一匹」のごとくである。
どうしてフィリピンでは何度も「クーデター騒ぎ」が起きるのか?
また同じような政争が続き、似たような結果に終わるのか?
このことを明らかにしなくてはならない。

アロヨ政権に対する政争を根底から規定するのは、フィリピン支配体制が不安定であることにある。フィリピン支配層、それは資本家層であるが、外国政府と資本に依存し成長するといういびつな関係にあり、資本家層は十分成長しておらず層としては「薄く」、支配体制の主導権をめぐって支配層内での争いが絶えないことにある。フィリピン資本家は外国資本のパートナーとして自身の地位と利益を確保しようとしており、政権を担うことはこの「地位」に新しく参入する権利を得ることに等しい。支配体制全体の安定よりも、誰がこの地位と権益を得るかという個別利害をめぐる争いが勝るため、本質的に不安定なのだ。アロヨの選挙に不正があったことは追及されなければならないが、しかし不正があったから政権が不安定なのではない。

フィリピン国軍は国内の治安対策、すなわち人民を抑圧するためだけに存在しており、軍隊の本質をそのまま示しているような存在である。空軍も海軍も持たず、対外的にはまったく「張子の虎」でもっぱら米軍に依存しながら、対内的には人民に強権的な「内弁慶」的存在である。いわばフィリピン支配層の所有物で、支配体制が何かあったときのための保険である。したがって、国軍内部が腐敗するのは必然である。腐敗のための組織なのだ。
フィリピン経済の「資本主義的安定化」は、軍にとってはますます出番が少なくなることを意味している。国軍はマルコス時代の16万人から11万人まで減らされており、従来の勢力維持に危機感を持っている。これまで何回もクーデター騒ぎがあったが、あくまで「騒ぎ」であって、軍の存在意義をアピールし支配層内での有利な地位を得ようとしてきたものにすぎない。したがって、経済が「順調」ななかで米日政府や資本が本当のクーデター、すなわち「軍が政権を奪取した強権政治」を容認しないことは軍自身もよく知っているから、本当の意味でのクーデターをおこなうつもりは、端からない。あくまで一つのパフォーマンスであった。しかし今回のコンパフォーマンスは少し裏目側に出た。

ちょうどこの時期は、比米共同軍事演習「バリカタン2006」の最中であり、6千人の米兵が演習のためフィリピンにいたが、非常事態宣言のさなか米軍はひそかに首都圏とクラーク基地に移動したことが後日明らかになった。米軍の動きはクーデター騒ぎと非常事態宣言の帰趨に大きく影響した。国軍中枢は米政府の意志をはっきりと知らされたのである。
クーデター騒ぎが鎮圧された後、現在もなお、クーデターを企てた軍人、ホナサン中佐やリム准将らのグループへの追及は続いている。「クーデター騒ぎ」によって国軍の影響力は大きくならなかった。
今回の新しさは、軍の一部がNPAと共謀してクーデターを企図したと追及されていることだ。事実は確かでないが、支配層は明らかに警戒している。ベネズエラのチャベスように軍内部から左派政権が生まれることを極度に警戒している。また、アロヨにとってはもっとも大きなライバルの一人であるコファンコがクーデターに関与したと追及されている。アキノ元大統領にたいするアロヨの態度は、親族であるコファンコを意識したものだ。

この時期において、アロヨにとって幸運だったのは、フィリピン経済が比較的順調であることだ。
それは多大な投資を行い、すでに巨大な資産をフィリピンに持ち、かつ経済活動が順調な米日資本と政府にとっては、大きな政治的混乱を望まないという要因として働く。
フィリピンの貿易収支は黒字であるし、政府債務も減少傾向に転じている。外国資本の投資によって自動車産業、電子部品産業、繊維・雑貨産業などの産業化が確実に進行しているからであり、かつまた公営部門の民営化もまた外国資本の投資を呼び込んでいるからである。そのことは米日を初めとする外国政府、資本に利益を供給するシステムが順調に働いていることでもある。(なお、フィリピンへの最大の投資国は日本であることは忘れてはならない。)
経済は「順調」であるが、しかし決して安定を意味しない。貿易・投資の自由化によって資本主義化がいっそう進み、「経済成長」は国民の多数が貧困化することによって実現している。マニラはますます大きくなる一方だ。マニラは近代化し中間層も確かに一定増えたが、農村は貧困化が進み人々はマニラ圏に流れこんでいる。地方の伝統的社会関係はますます破壊され、都市と農村の格差は極限的に進んでいる。程度はもちろん異なるものの、「格差社会」、すなわち貧困が広がりながら景気回復しつつある現代日本とちょうど似た過程が進んでいる。
アロヨは、「非常事態宣言」によってフィリピン経済にはほとんど影響を受けさせないように配慮したし、実際に影響はほとんどなかった。経済に影響が出るようにしてしまったら、この政争は負けなのだ。米日やこれと密接な関係にあるフィリピン支配層の支持が容易に離れてしまう。とにかく短時間に結着をつけなければならなかった。そして成功した。

いまひとつの大きな条件は、ピープルズパワーが決定的に小さいことだ。政治的な影響力を発揮することはできなかった。人々の生活は決して楽ではないが、要求において組織されておらず進行する政治過程を規定する力を持っていない。1986年の「故事」に倣ってクーデターを起こせば、民衆が集まってくるわけではない。そのように考えるのは、政治を知らない者だけだ。人々は、現在の社会への批判・要求と変革のプランが明確でなければければ立ち上がることなどできないし、簡単に結集するものではない。
危険なことに支配層と軍内部のどのグループも競って人民を弾圧することに熱心で、この点ではどの支配層の分派もまったく一致している。むしろ誰がもっともよく弾圧するかをめぐって功名争いをしている。軍人にとっては名を上げるチャンスなのだ。ピープルズパワーが小さいことは、この弾圧をフリーハンドでおこなうことを可能にしているし、支配層内でのおおっぴらな争いをも可能にしている。
非常事態宣言のなかで数少ない人民側の国会議員、すなわちマヤンムナ、アナクパイスに属する国会議員に対して「政権転覆罪」で逮捕状が出ており、議会内への軟禁状態が今もなお続いている。今回は政権転覆のおそれはまったくないが、支配層は「政権転覆罪」で逮捕する実績をつくっておきたい、その意味では余裕を持って人民をおちょくっている状態が続いているといってよい。

このような政争の過程で、軍の中でもさまざまな利害が入り組んでおり、決して一枚岩ではないこと、またアロヨ大統領は国軍を完全に掌握していないことが明確にはなった。ただしアロヨはこの機会をとらえ、非常事態宣言を発し強権的に野党とライバルを押さえ込んだ。中部ルソンで人権活動家の暗殺を繰り返しているバルパライン准将はアロヨ支持の態度を早くから示し、自身が役に立つ番犬であることをアピールした。「次」の局面を考慮したからに違いない。米政府は大きな混乱なく押さえ込んだアロヨの対応を高く評価しているし、するだろう。軍の掌握はいまだ完全ではないしライバルたちを完全に打ち倒してはいないし、フィリピン支配層の不安定な基盤は相変わらずではあるが、アロヨは以前に比べてより安定した権力を保持するに至った。

これが2月から3月初めにかけてのフィリピン政争の意味であり結果である。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

現在のフィリピン政治経済状況 [フィリピンの政治経済状況]

 現在のフィリピン政治経済状況

バタアン州マリベレス漁港

フィリピンの「経済発展」の一つの道筋は、民営化だ。この一ヶ月だけでも国営テレビ局RPN-9とIBC-13、フィリピン郵便公社(Philpost)、クラークのミモサなどの民営化が公表された。
 二つ目は外国からの投資。日本からの直接投資がもっとも大きい。ドコモがPLDTに3億ドル投資した。三菱自動車フィリピン社(MMPC)は、100億ペソをかけて完成車(CBU)の生産・輸出拠点とする計画だが、第1段階として10億ペソの設備投資を行った。

フィリピン経済は、民営化、外国直接投資の急増など、経済の自由化、グローバリゼイション化によって、統計数字上はプラス成長となっている。しかしこの方向での発展は、外国資本や、政権と結びついた一部の資本家の利益を増大させていることと同じだ。

輸入自由化で米作が成立しなくなり、農地を失ったり都市に逃げてくる人たちの流れは依然としてとまらない。それがまた失業率を高め、賃金を引き下げている。マニラはどんどん大きくなり、地方の伝統的な社会関係は急速に破壊されている。海外への出稼ぎはまた一段と増えている。
それは一方での貧困の増大であり、国民の75%が「貧しいと感じている」事態をもたらしている。とともに、他方ではコファンコヤルシオ・タンなど少数の金持ちへの極端な富が蓄積し、マニラ近辺に中間層が増大している。このようないびつな形をとりながらも、フィリピン経済の産業化は確実に進行している。

フィリピン資本家は外国資本の投資に便乗したり、国家と民営化などの国家政策に寄生して利益を得ている。いわば「買弁資本家」。フィリピン資本家層は支配階級として十分には成長しておらず、互いに争っている。現在の政権不安の主な要因はこれだ。誰が有利な地位につくかをめぐって、支配層内部で争っている。いったん政権をとったなら、国家権力を利用して自らの富を蓄積することにヤッキになる。またどのように米国や日本の言うことを聞いて自分に利益を誘導するかヤッキになる。
アロヨ大統領退陣要求やこれをめぐっての野党や元大統領ラモス、エストラダ、アキノらを巻き込んだ争いは、このような要因によるものであり、どちらかを支持する、しないとにわかに決めることができない。

軍は軍で指導権を確保しようと動いている。左翼活動家の殺害などテロ政策をとることによって、支配層内部でのより有利な自らの地位を主張している。テロが起きる情勢を作り出せば、軍の出番は増え、政治的発言力が増す。2005年だけですでに40人以上の人たちが殺された。

アロヨ政権の危機は、今年も続くだろうが即政治革命にはならない。野党も与党も主張や政策はなんら変わらず、自身の利害のための権力獲得を要求しているだけである。この点では、アメリカ的、あるいは日本的スタイルでの民主主義はすでに定着している。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース
- | 次の30件 フィリピンの政治経済状況 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。