コビド19の下での労働者の闘争 [フィリピン労働運動]
コビド19の下での労働者の闘争
アンバ・バーラ(AMBA-BALA:バタアン労働組合連合)のエミリーから、バタアン州におけるコロナ・パンデミック下の労働運動や街の生活について報告が来ました。
1)フィリピン・バタアン州での事例
フィリピン全土が「コミュニティ検疫の強化」(以下ECQ:Enhance Community Quarantine)に置かれてから6ヶ月が経ちました。仮に60日後であったとしても、多くの企業はフィリピン保健省の定める「健康のための議定書および基準」のため、従業員の100%を受け入れることができません。したがって多くの労働者は仕事に就くことができないのです。保健省も各自治体も三桁、または数百のコロナ感染事案を抱えており、対応できていません。
バタアン州では現在882人の患者(20年9月現在)が発生しており、そのうち595人が「自由貿易地区」のあるマリベレスの患者です。全体の67%をマリベレスで占めています。しかも595人のうち339人が、マリベレスのアンバ・バーラ事務所所在地であるポブラシオン(Poblacion)バランガイからでした。私たちの調査によっても、労働者のなかにはウイルスに感染している者がいます。マリベレス地区の会社は警戒しており、「健康基準」を適用していたにもかかわらず、例えばFCF社では26人の中国人スーパーバイザー(管理職)が会社の知らないところで感染し、フィリピン人労働者に容易にウイルスをうつしてしまったこともありました。
(※アンバ・バーラ(AMBA-BALA)とは、バタアン州労働組合連合、「バタアン自由貿易地区」を中心に組織している。)
9月18 日現在 Covit19 Update
フィリピン全体 バタアン州
累計感染者数 : 283,460人 2,002人
累計死者数 : 4,930人 30人
9月17日感染者数 : 3,962人 84人
9月17日死者数 : 100人 0人
本当のところは、ほとんどの企業と「バタアン自由貿易地区」(AFAB)当局に権限があるにもかかわらず、労働者に対する「強制検査」(covid 19のための無料のチェック)を実施していませんでした。一緒に働くのが安全ではない会社だと認定された場合、「バタアン自由貿易地区」当局は、会社を14日間閉鎖し、すべての労働者に強制休暇(無給、諸手当なし)を取らせ、その後、検査を実施します。コロナ陽性者は公開し感染経路を追跡します。陽性者は「バタアン自由貿易地区」当局の監督の下で検疫施設に入れらます。
2)無職と飢餓
COVID19のリスクはさておき、労働者は無職、無給のため収入が絶たれます。生活の破綻、飢餓の危険性が迫っています。
ディスクトップ社(Desktop)とDLX社は、9月1日から2021年2月までの間、労働者を強制休暇(無給、諸手当なし)にさせています。同社の製品(バッグなど)は現時点では必要不可欠なものではないため、買い手からの注文がないというのです。また、バーレーン・ファイバーグラス社も3月から一部の従業員を強制休暇を取らせています。他の企業もフル稼働しているわけではありません。
ミツミ電機やドンイン(Dong In)グループのような企業は、このパンデミックの中でも、多くの受注を得ています。ちなみに、ミツミ電機は厳格な健康管理を行っている企業の一つです。感染者が出たこともあり、14日間の日当付き検疫を実施しています。
マリベレスには9区画(バランガイ)ありますが、地域検疫の強化と「バタアン自由貿易地区」当局の下で、企業は厳しいスキーム検疫に従っています。しかし、ミツミ電機は生産のニーズが高いために(生産増大に邪魔になる)検疫に従っていないことが判明しましたが、結局のところ当局は操業を許可しました。「コミュニティ検疫の強化」ECQ は9月12日に始まり、9月26日に終了します。多くの企業がCOVID19 の現地・企業への感染を避けるために、検疫スキームに従い一時的に操業を停止しています。
現在、ここバタアン州では何千人もの労働者が失業しています。いくつかの会社では「強制休暇」(無給:Force Leave)が実施され、ほかの会社では、就業契約の終了や他の理由で労働契約を終了されました。解雇です。多くの人が新たな職探しをし、幸運にもみつけた人もいますが、ほとんどの者には幸運は訪れません。新たな職は、職を失った全ての労働者が新たに就職できるほどあるわけではありません。
デスクトップバッグ・フィリピン社(Desktop Bags Phils. Ltd.)、DLXバッグ・フィリピン社(DLX Bags Phils.)は、ファッションバッグや靴を製造しています。この2社とボースト社(Boast Ltd.)を含めた3社は、従業員への「通知」に、「2021年前半までの期間は、業務が正常に戻ることはない」と記しています。これは労働者にとっても労働組合にとっても悲惨な「知らせ」です。
3)労働者の権利は、パンデミックのもとで奪われてはならない!
危機が発生しても、労働者の権利を守り、主張しなければなりません。政府機関と裁判所は、職務を遂行しながらパンデミック下で採用できる独自の健康対策とプロトコルを持っています。労働雇用省(DOLE)は、厳格にウェブ会議と調停を実施しました。私たちは、労働雇用省とのウェブ会議、電子メール、携帯電話(ほとんどが非接触的)を通じて、DOLEと会議を持ち、会社の状況に関する労働者と組合の懸念を提起し、会社との仲介を求めることを学びました。
<労働雇用省とのWeb会議の様子>
現時点ではまだ実際に大量の人が集まったミーティング(マリベレスでは10人以上)は禁止されており、リーダーだけがミーティングを行うことができますが、この危機の下で労働者の問題に対処する手段はそれほど残されていないのです。
失業補助金のための私たちのキャンペーン
アンバ・バーラは、強制休暇や経済封鎖の影響を受けた人々のための失業補助金の取得キャンペーンを主導してきました。現時点では、すでに州知事と第2区のジョート・ガルシア州議員のオフィスに要請書を提出しています。特に今回、「バヤニハン・ヒール・アズ・ワン・アクトII」が可決されており州当局の前向きな反応を待っています。国から新たに数十億ペソ(約100億円)の予算が投入されることになっており、そのすみやかな実施を要請しています。
失業補助金だけでなく、COVID19パンデミックの下での労働者の安全のための予算もあります。
私たちはまだ、様々な企業の労働者やリーダーを集めて、多くの労働者がキャンペーンに参加できるようにしています。
エミリー・ファヤルド AMBA-BALA事務局長
アンバ・バーラ(AMBA-BALA:バタアン労働組合連合)のエミリーから、バタアン州におけるコロナ・パンデミック下の労働運動や街の生活について報告が来ました。
1)フィリピン・バタアン州での事例
フィリピン全土が「コミュニティ検疫の強化」(以下ECQ:Enhance Community Quarantine)に置かれてから6ヶ月が経ちました。仮に60日後であったとしても、多くの企業はフィリピン保健省の定める「健康のための議定書および基準」のため、従業員の100%を受け入れることができません。したがって多くの労働者は仕事に就くことができないのです。保健省も各自治体も三桁、または数百のコロナ感染事案を抱えており、対応できていません。
バタアン州では現在882人の患者(20年9月現在)が発生しており、そのうち595人が「自由貿易地区」のあるマリベレスの患者です。全体の67%をマリベレスで占めています。しかも595人のうち339人が、マリベレスのアンバ・バーラ事務所所在地であるポブラシオン(Poblacion)バランガイからでした。私たちの調査によっても、労働者のなかにはウイルスに感染している者がいます。マリベレス地区の会社は警戒しており、「健康基準」を適用していたにもかかわらず、例えばFCF社では26人の中国人スーパーバイザー(管理職)が会社の知らないところで感染し、フィリピン人労働者に容易にウイルスをうつしてしまったこともありました。
(※アンバ・バーラ(AMBA-BALA)とは、バタアン州労働組合連合、「バタアン自由貿易地区」を中心に組織している。)
9月18 日現在 Covit19 Update
フィリピン全体 バタアン州
累計感染者数 : 283,460人 2,002人
累計死者数 : 4,930人 30人
9月17日感染者数 : 3,962人 84人
9月17日死者数 : 100人 0人
本当のところは、ほとんどの企業と「バタアン自由貿易地区」(AFAB)当局に権限があるにもかかわらず、労働者に対する「強制検査」(covid 19のための無料のチェック)を実施していませんでした。一緒に働くのが安全ではない会社だと認定された場合、「バタアン自由貿易地区」当局は、会社を14日間閉鎖し、すべての労働者に強制休暇(無給、諸手当なし)を取らせ、その後、検査を実施します。コロナ陽性者は公開し感染経路を追跡します。陽性者は「バタアン自由貿易地区」当局の監督の下で検疫施設に入れらます。
2)無職と飢餓
COVID19のリスクはさておき、労働者は無職、無給のため収入が絶たれます。生活の破綻、飢餓の危険性が迫っています。
ディスクトップ社(Desktop)とDLX社は、9月1日から2021年2月までの間、労働者を強制休暇(無給、諸手当なし)にさせています。同社の製品(バッグなど)は現時点では必要不可欠なものではないため、買い手からの注文がないというのです。また、バーレーン・ファイバーグラス社も3月から一部の従業員を強制休暇を取らせています。他の企業もフル稼働しているわけではありません。
ミツミ電機やドンイン(Dong In)グループのような企業は、このパンデミックの中でも、多くの受注を得ています。ちなみに、ミツミ電機は厳格な健康管理を行っている企業の一つです。感染者が出たこともあり、14日間の日当付き検疫を実施しています。
マリベレスには9区画(バランガイ)ありますが、地域検疫の強化と「バタアン自由貿易地区」当局の下で、企業は厳しいスキーム検疫に従っています。しかし、ミツミ電機は生産のニーズが高いために(生産増大に邪魔になる)検疫に従っていないことが判明しましたが、結局のところ当局は操業を許可しました。「コミュニティ検疫の強化」ECQ は9月12日に始まり、9月26日に終了します。多くの企業がCOVID19 の現地・企業への感染を避けるために、検疫スキームに従い一時的に操業を停止しています。
現在、ここバタアン州では何千人もの労働者が失業しています。いくつかの会社では「強制休暇」(無給:Force Leave)が実施され、ほかの会社では、就業契約の終了や他の理由で労働契約を終了されました。解雇です。多くの人が新たな職探しをし、幸運にもみつけた人もいますが、ほとんどの者には幸運は訪れません。新たな職は、職を失った全ての労働者が新たに就職できるほどあるわけではありません。
デスクトップバッグ・フィリピン社(Desktop Bags Phils. Ltd.)、DLXバッグ・フィリピン社(DLX Bags Phils.)は、ファッションバッグや靴を製造しています。この2社とボースト社(Boast Ltd.)を含めた3社は、従業員への「通知」に、「2021年前半までの期間は、業務が正常に戻ることはない」と記しています。これは労働者にとっても労働組合にとっても悲惨な「知らせ」です。
3)労働者の権利は、パンデミックのもとで奪われてはならない!
危機が発生しても、労働者の権利を守り、主張しなければなりません。政府機関と裁判所は、職務を遂行しながらパンデミック下で採用できる独自の健康対策とプロトコルを持っています。労働雇用省(DOLE)は、厳格にウェブ会議と調停を実施しました。私たちは、労働雇用省とのウェブ会議、電子メール、携帯電話(ほとんどが非接触的)を通じて、DOLEと会議を持ち、会社の状況に関する労働者と組合の懸念を提起し、会社との仲介を求めることを学びました。
<労働雇用省とのWeb会議の様子>
現時点ではまだ実際に大量の人が集まったミーティング(マリベレスでは10人以上)は禁止されており、リーダーだけがミーティングを行うことができますが、この危機の下で労働者の問題に対処する手段はそれほど残されていないのです。
失業補助金のための私たちのキャンペーン
アンバ・バーラは、強制休暇や経済封鎖の影響を受けた人々のための失業補助金の取得キャンペーンを主導してきました。現時点では、すでに州知事と第2区のジョート・ガルシア州議員のオフィスに要請書を提出しています。特に今回、「バヤニハン・ヒール・アズ・ワン・アクトII」が可決されており州当局の前向きな反応を待っています。国から新たに数十億ペソ(約100億円)の予算が投入されることになっており、そのすみやかな実施を要請しています。
失業補助金だけでなく、COVID19パンデミックの下での労働者の安全のための予算もあります。
私たちはまだ、様々な企業の労働者やリーダーを集めて、多くの労働者がキャンペーンに参加できるようにしています。
バタアン原発再開案を、ドゥテルテが提案 [フィリピンの政治経済状況]
バタアン原発再開案を、ドゥテルテが提案
ドゥテルテ大統領がエネルギー相らとの会合でバタアン原発再開案を検討するよう提案
<フィリピン、バタアン州モロンにあるバタアン原発>
1)バタアン原発とは?
バタアン州モロン町ナポット・ポイントにある原発は、フィリピンで唯一の原発であり、故フェルディナンド・マルコス大統領の時代に建てられた(1984年完成、未稼働)が、反対運動の盛り上がりと安全上の問題のため稼働することはなく、プラントに燃料が供給されることもなかった。1984年に完成してからすでに36年が経過しており、再稼働させるには大きな問題がある。(バタアン州は、マニラ湾を挟んで首都圏マニラの対岸西側にある半島に位置しており、もし福島規模の原発事故が起きればマニラは壊滅する)
2)ドゥテルテが突然、原発再計画を提案
ロケ大統領報道官は10月1日、エネルギー省(DoE)に対する「バタアン原発の再開を調査せよ」というドゥテルテ大統領の執行命令を公表した。
建設を一時停止したまま放置された原発を復活させる計画について、「最近の会議で、大統領、エネルギー省長官アルフォンソ・クシと、核エネルギー推進者グループを率いる元パンガシナン代表マーク・コファンコによって議論された」と述べた。
大統領は「土地の調査から始めるべきだ。また原発を再開する決定は政府だけで行ってはならない、バタアンの住民に相談してほしい」と述べたという。
2020年7月にはすでに、ドゥテルテ大統領は国のエネルギー・ミックス計画の一部として原発を利用する可能性を研究するエネルギー省が率いる「原子力エネルギー・プログラム機関委員会」の創設を求める執行命令116に署名していた。(下記参照)
3)原発再計画の背景
経済成長著しい最近のフィリピンは、慢性的に電力不足に悩まされており、政府が原発計画を再提案した事情は容易に推測できる。
バタアン原発は建設にまつわる汚職により政権近くの有力者が利益を得てきたし、1980年代に原発を建設した米ウエスティング・ハウス社(当時)なども儲かった。核燃料は搬入されていないから汚染はされていないので、観光客が原発の内部まで見学できる「観光施設」になってきた。建設に関する費用、膨大な借金を返すのに2007年4月までの23年ものあいだフィリピン政府は税金から、すなわちフィリピン国民が原発債務を支払ってきた。フィリピン国民以外は、みんなにハッピーな結果をもたらしたバタアン原発だったのだ。
今回の再計画も、フィリピンの有力者が「柳の下の二匹目のどじょう」を狙うもので、同じパターンで利益を得ようとしているのは間違いない。ドゥテルテ政権にすり寄って建設=利益にあずかろうとしている。
4)バタアン原発反対運動
1980年代からバタアン州を中心に原発建設反対運動は続いてきた。「核廃絶バタアン運動」(Nuclear-Free Bataan Movement)が中心になって、さまざまな市民グループが協力して反対の声を上げてきた。以下にNFBMの声明を紹介する。
<バタアン原発の内部(未稼働であり、核燃料が供給されていないので、安全であるとして内部が観光客に公開されている世界で唯一の原発)>
大統領執行命令番号 116、p 2020
2020年7月24日に署名
マラカニアンパレス(大統領府)、 マニラ
フィリピンの大統領による 執行命令番号 116
「核エネルギー計画に関する国の見解の採択、核エネルギー計画機関間委員会の設置、およびその他の目的のための調査を指示する。」 アップロード日:2020年7月29日
「核技術は過去のもの、
2020年10月2日 声明を発表
核廃絶バタアン運動( Nuclear-Free Bataan Movement)
2011年の福島第一原子力発電所のメルトダウン以来、ほとんどの国が核技術に背を向け、再生可能エネルギーの解決策を採用しています。
日本の福島県にある福島第一原発から太平洋に漏れ出た放射性物質に対して、科学者たちはまだ適切な解決策を提供していないことを忘れてはなりません。福島第一原発から太平洋に流出した放射性物質や汚染水は、300万トン以上と推定されています。
脱原発バタアン運動は、フィリピン政府のクシ・エネルギー長官に、20万メガワットの再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオマス、地熱を組み合わせたもの)の可能性をフィリピンで実現させるよう強く求めています。私たちは、日本(福島)、ロシア(チェルノブイリ)、アメリカ(スリーマイル島)のような他国の経験から学ぶ必要があります。また、バタアン原発の休止を勝ち取った私たちの歴史的立場から学ぶ必要があります。
フィリピンで電力需要が増大しており、特に原発の必要性を訴える声が再び膨らんでいることを、私たちは知っています。開発を推進しているのはビジネスの利益であり、公共の利益ではありません。バタアン州石炭火力発電所拡張と同じです。バタアン石炭火力発電所の拡張は、健康や経済的に悪影響を及ぼすにもかかわらず推進され、地域社会の健康や経済的な維持に影響を与えています。
フィリピン政府の現在のエネルギー戦略は近視眼的です。気候変動に関する重要な目標を達成するまでの期間は、12年を切っていることを考慮に入れていません。
反対する声を黙らせるために、現政府が批判者への強硬で懲罰的な叱責・弾圧によって人々の目をくらませ、原発推進を早急に進めることに躍起になっている一つ一つの事実を、私たちは確認しています。
原発は安全ではないばかりか、経済性がありません。「世界のどこでも建設するにはあまりにも高価である」という菅直人元日本首相の言葉を支持します。
国際原子力・放射線事象評価基準(The International Nuclear and Radiological Event Scale)は、福島第一原発事故とチェルノブイリ(1986年)を主要な原子力事故として分類しています。これらの事故は、放射性物質の大規模な放出を伴う事故であり、健康と環境への影響が広範囲に及ぶため、計画的かつ長期的な対策を必要とします。日本はその被害のために未だ苦しんでいます。
フィリピンで同様の事態が発生した場合の被害の大きさは想像に難くありません。このような最悪の事態には、いくら技術的な専門知識を持っていても対応できません。
原発を受け入れるな!
後戻りしないようにしよう!
ドゥテルテ大統領がエネルギー相らとの会合でバタアン原発再開案を検討するよう提案
<フィリピン、バタアン州モロンにあるバタアン原発>
1)バタアン原発とは?
バタアン州モロン町ナポット・ポイントにある原発は、フィリピンで唯一の原発であり、故フェルディナンド・マルコス大統領の時代に建てられた(1984年完成、未稼働)が、反対運動の盛り上がりと安全上の問題のため稼働することはなく、プラントに燃料が供給されることもなかった。1984年に完成してからすでに36年が経過しており、再稼働させるには大きな問題がある。(バタアン州は、マニラ湾を挟んで首都圏マニラの対岸西側にある半島に位置しており、もし福島規模の原発事故が起きればマニラは壊滅する)
2)ドゥテルテが突然、原発再計画を提案
ロケ大統領報道官は10月1日、エネルギー省(DoE)に対する「バタアン原発の再開を調査せよ」というドゥテルテ大統領の執行命令を公表した。
建設を一時停止したまま放置された原発を復活させる計画について、「最近の会議で、大統領、エネルギー省長官アルフォンソ・クシと、核エネルギー推進者グループを率いる元パンガシナン代表マーク・コファンコによって議論された」と述べた。
大統領は「土地の調査から始めるべきだ。また原発を再開する決定は政府だけで行ってはならない、バタアンの住民に相談してほしい」と述べたという。
2020年7月にはすでに、ドゥテルテ大統領は国のエネルギー・ミックス計画の一部として原発を利用する可能性を研究するエネルギー省が率いる「原子力エネルギー・プログラム機関委員会」の創設を求める執行命令116に署名していた。(下記参照)
3)原発再計画の背景
経済成長著しい最近のフィリピンは、慢性的に電力不足に悩まされており、政府が原発計画を再提案した事情は容易に推測できる。
バタアン原発は建設にまつわる汚職により政権近くの有力者が利益を得てきたし、1980年代に原発を建設した米ウエスティング・ハウス社(当時)なども儲かった。核燃料は搬入されていないから汚染はされていないので、観光客が原発の内部まで見学できる「観光施設」になってきた。建設に関する費用、膨大な借金を返すのに2007年4月までの23年ものあいだフィリピン政府は税金から、すなわちフィリピン国民が原発債務を支払ってきた。フィリピン国民以外は、みんなにハッピーな結果をもたらしたバタアン原発だったのだ。
今回の再計画も、フィリピンの有力者が「柳の下の二匹目のどじょう」を狙うもので、同じパターンで利益を得ようとしているのは間違いない。ドゥテルテ政権にすり寄って建設=利益にあずかろうとしている。
4)バタアン原発反対運動
1980年代からバタアン州を中心に原発建設反対運動は続いてきた。「核廃絶バタアン運動」(Nuclear-Free Bataan Movement)が中心になって、さまざまな市民グループが協力して反対の声を上げてきた。以下にNFBMの声明を紹介する。
<バタアン原発の内部(未稼働であり、核燃料が供給されていないので、安全であるとして内部が観光客に公開されている世界で唯一の原発)>
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大統領執行命令番号 116、p 2020
2020年7月24日に署名
マラカニアンパレス(大統領府)、 マニラ
フィリピンの大統領による 執行命令番号 116
「核エネルギー計画に関する国の見解の採択、核エネルギー計画機関間委員会の設置、およびその他の目的のための調査を指示する。」 アップロード日:2020年7月29日
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「核技術は過去のもの、
再生可能エネルギーは未来のもの」
2020年10月2日 声明を発表
核廃絶バタアン運動( Nuclear-Free Bataan Movement)
フランシスコ・ホンラ事務局長
、NFBM2011年の福島第一原子力発電所のメルトダウン以来、ほとんどの国が核技術に背を向け、再生可能エネルギーの解決策を採用しています。
日本の福島県にある福島第一原発から太平洋に漏れ出た放射性物質に対して、科学者たちはまだ適切な解決策を提供していないことを忘れてはなりません。福島第一原発から太平洋に流出した放射性物質や汚染水は、300万トン以上と推定されています。
脱原発バタアン運動は、フィリピン政府のクシ・エネルギー長官に、20万メガワットの再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオマス、地熱を組み合わせたもの)の可能性をフィリピンで実現させるよう強く求めています。私たちは、日本(福島)、ロシア(チェルノブイリ)、アメリカ(スリーマイル島)のような他国の経験から学ぶ必要があります。また、バタアン原発の休止を勝ち取った私たちの歴史的立場から学ぶ必要があります。
フィリピンで電力需要が増大しており、特に原発の必要性を訴える声が再び膨らんでいることを、私たちは知っています。開発を推進しているのはビジネスの利益であり、公共の利益ではありません。バタアン州石炭火力発電所拡張と同じです。バタアン石炭火力発電所の拡張は、健康や経済的に悪影響を及ぼすにもかかわらず推進され、地域社会の健康や経済的な維持に影響を与えています。
フィリピン政府の現在のエネルギー戦略は近視眼的です。気候変動に関する重要な目標を達成するまでの期間は、12年を切っていることを考慮に入れていません。
反対する声を黙らせるために、現政府が批判者への強硬で懲罰的な叱責・弾圧によって人々の目をくらませ、原発推進を早急に進めることに躍起になっている一つ一つの事実を、私たちは確認しています。
原発は安全ではないばかりか、経済性がありません。「世界のどこでも建設するにはあまりにも高価である」という菅直人元日本首相の言葉を支持します。
国際原子力・放射線事象評価基準(The International Nuclear and Radiological Event Scale)は、福島第一原発事故とチェルノブイリ(1986年)を主要な原子力事故として分類しています。これらの事故は、放射性物質の大規模な放出を伴う事故であり、健康と環境への影響が広範囲に及ぶため、計画的かつ長期的な対策を必要とします。日本はその被害のために未だ苦しんでいます。
フィリピンで同様の事態が発生した場合の被害の大きさは想像に難くありません。このような最悪の事態には、いくら技術的な専門知識を持っていても対応できません。
原発を受け入れるな!
後戻りしないようにしよう!