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バタアン原発再開案を、ドゥテルテが提案  [フィリピンの政治経済状況]

バタアン原発再開案を、ドゥテルテが提案 

ドゥテルテ大統領がエネルギー相らとの会合でバタアン原発再開案を検討するよう提案

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<フィリピン、バタアン州モロンにあるバタアン原発>

1)バタアン原発とは?

 バタアン州モロン町ナポット・ポイントにある原発は、フィリピンで唯一の原発であり、故フェルディナンド・マルコス大統領の時代に建てられた(1984年完成、未稼働)が、反対運動の盛り上がりと安全上の問題のため稼働することはなく、プラントに燃料が供給されることもなかった。1984年に完成してからすでに36年が経過しており、再稼働させるには大きな問題がある。(バタアン州は、マニラ湾を挟んで首都圏マニラの対岸西側にある半島に位置しており、もし福島規模の原発事故が起きればマニラは壊滅する)

2)ドゥテルテが突然、原発再計画を提案

 ロケ大統領報道官は10月1日、エネルギー省(DoE)に対する「バタアン原発の再開を調査せよ」というドゥテルテ大統領の執行命令を公表した。

 建設を一時停止したまま放置された原発を復活させる計画について、「最近の会議で、大統領、エネルギー省長官アルフォンソ・クシと、核エネルギー推進者グループを率いる元パンガシナン代表マーク・コファンコによって議論された」と述べた。

 大統領は「土地の調査から始めるべきだ。また原発を再開する決定は政府だけで行ってはならない、バタアンの住民に相談してほしい」と述べたという。

 2020年7月にはすでに、ドゥテルテ大統領は国のエネルギー・ミックス計画の一部として原発を利用する可能性を研究するエネルギー省が率いる「原子力エネルギー・プログラム機関委員会」の創設を求める執行命令116に署名していた。(下記参照)

3)原発再計画の背景

 経済成長著しい最近のフィリピンは、慢性的に電力不足に悩まされており、政府が原発計画を再提案した事情は容易に推測できる。

 バタアン原発は建設にまつわる汚職により政権近くの有力者が利益を得てきたし、1980年代に原発を建設した米ウエスティング・ハウス社(当時)なども儲かった。核燃料は搬入されていないから汚染はされていないので、観光客が原発の内部まで見学できる「観光施設」になってきた。建設に関する費用、膨大な借金を返すのに2007年4月までの23年ものあいだフィリピン政府は税金から、すなわちフィリピン国民が原発債務を支払ってきた。フィリピン国民以外は、みんなにハッピーな結果をもたらしたバタアン原発だったのだ。

 今回の再計画も、フィリピンの有力者が「柳の下の二匹目のどじょう」を狙うもので、同じパターンで利益を得ようとしているのは間違いない。ドゥテルテ政権にすり寄って建設=利益にあずかろうとしている。

4)バタアン原発反対運動

 1980年代からバタアン州を中心に原発建設反対運動は続いてきた。「核廃絶バタアン運動」(Nuclear-Free Bataan Movement)が中心になって、さまざまな市民グループが協力して反対の声を上げてきた。以下にNFBMの声明を紹介する。

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<バタアン原発の内部(未稼働であり、核燃料が供給されていないので、安全であるとして内部が観光客に公開されている世界で唯一の原発)>

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大統領執行命令番号 116、p 2020
2020年7月24日に署名
マラカニアンパレス(大統領府)、 マニラ
フィリピンの大統領による 執行命令番号 116
核エネルギー計画に関する国の見解の採択、核エネルギー計画機関間委員会の設置、およびその他の目的のための調査を指示する。」  アップロード日:2020年7月29日


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「核技術は過去のもの、
再生可能エネルギーは未来のもの」


2020年10月2日  声明を発表
核廃絶バタアン運動( Nuclear-Free Bataan Movement)
フランシスコ・ホンラ事務局長
、NFBM


 2011年の福島第一原子力発電所のメルトダウン以来、ほとんどの国が核技術に背を向け、再生可能エネルギーの解決策を採用しています。

 日本の福島県にある福島第一原発から太平洋に漏れ出た放射性物質に対して、科学者たちはまだ適切な解決策を提供していないことを忘れてはなりません。福島第一原発から太平洋に流出した放射性物質や汚染水は、300万トン以上と推定されています。

 脱原発バタアン運動は、フィリピン政府のクシ・エネルギー長官に、20万メガワットの再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオマス、地熱を組み合わせたもの)の可能性をフィリピンで実現させるよう強く求めています。私たちは、日本(福島)、ロシア(チェルノブイリ)、アメリカ(スリーマイル島)のような他国の経験から学ぶ必要があります。また、バタアン原発の休止を勝ち取った私たちの歴史的立場から学ぶ必要があります。

 フィリピンで電力需要が増大しており、特に原発の必要性を訴える声が再び膨らんでいることを、私たちは知っています。開発を推進しているのはビジネスの利益であり、公共の利益ではありません。バタアン州石炭火力発電所拡張と同じです。バタアン石炭火力発電所の拡張は、健康や経済的に悪影響を及ぼすにもかかわらず推進され、地域社会の健康や経済的な維持に影響を与えています。
 フィリピン政府の現在のエネルギー戦略は近視眼的です。気候変動に関する重要な目標を達成するまでの期間は、12年を切っていることを考慮に入れていません。

 反対する声を黙らせるために、現政府が批判者への強硬で懲罰的な叱責・弾圧によって人々の目をくらませ、原発推進を早急に進めることに躍起になっている一つ一つの事実を、私たちは確認しています。

 原発は安全ではないばかりか、経済性がありません。「世界のどこでも建設するにはあまりにも高価である」という菅直人元日本首相の言葉を支持します。

 国際原子力・放射線事象評価基準(The International Nuclear and Radiological Event Scale)は、福島第一原発事故とチェルノブイリ(1986年)を主要な原子力事故として分類しています。これらの事故は、放射性物質の大規模な放出を伴う事故であり、健康と環境への影響が広範囲に及ぶため、計画的かつ長期的な対策を必要とします。日本はその被害のために未だ苦しんでいます。

 フィリピンで同様の事態が発生した場合の被害の大きさは想像に難くありません。このような最悪の事態には、いくら技術的な専門知識を持っていても対応できません。

 原発を受け入れるな!
 後戻りしないようにしよう!

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