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ハンジン労働者と支援者の闘い [フィリピン労働運動]

 カサナグの会は、現地のハンジン・フィリピン労働組合を何度か訪問し、以前から交流してきました。19年初め、ハンジン・フィリピン社の経営破綻が伝えられ、労働者や交流した労働組合員たちはの生活や闘いはどうなているのか問い合わせていましたが、今回その報告の一部が送られてきました。19年4月時点の報告であり、現在はまた新たな進展や変化があろうとは思いますが、下記に紹介します。

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ハンジン労働者と支援者の闘い
April 6, 2019

1) ハンジン労働者キャンペーン

 現在の「負債から資本へ」の会社更生計画では、ハンジン・フィリピン社の進行中の事業を支援するために5社の外国企業の参入を歓迎し、そのことはハンジン社がいう経営破綻という表明が嘘であることを証明している。最近の進展の下で、ハンジン・フィリピン社の操業継続がより明確になるに従い、造船所の人材が必要になる。それにもかかわらず、何年も会社に勤めている労働者を確保するために、ハンジン経営陣、または労働雇用省のいずれによる動きも行われていない。
 
 過去の政権がハンジン・フィリピン社の劣悪な労働条件と労災事故を追及し改善できなかったが、そのことは現在の政権にとっての課題として残っているのでもあり、大企業の権利よりも先に国民の権利をどのように提言するかということなのだ。

 このような状況を考えると、400人のアクティブな労働者のメンバーを持つサマハン-WPL※①は、「ハンジン造船所が通常の操業再開のための努力を継続することを認める」という戦術的な要求を掲げて、労働者のキャンペーンを開始した。
  [※①サマハン・メンバーは、18年12月と19年2月の大幅な解雇により、5,000名から400名に劇的に減少した。サマハンは、労働組合準備組織。フィリピンでは組合代表選挙を経て労働者の過半数の支持を得なければ労働組合として資本、労働雇用省から認められない。 ]

 ハンジン・フィリピン社は「会社更生」の下に置かれ、債権者への負債を解決するために債務「受け手」による移行期間を経ることになった。したがって、造船所は閉鎖されない。

 そのため労働者は、「●適切な離職手当、●3%の雇用保証金の払い戻し、●失業補助金を支給、●新しい雇用を見つけるまでの間住宅費支払いの一時停止」を要求した。この危機的状況が終わるまで、ハンジン造船所に対する権利を所有するすべての者と労働雇用省との間の法的拘束力のある契約を通じて、造船所が通常の稼働ができるようになった場合に、融資と復元のために優先順位が付けられるようにすることも要求した。

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<ハンジン・フィリピン社スービック造船所>

2) 労働者の闘争 

 明確な政府の政策と計画がなければ、労働者は困難な状況に追い込まれ、会社を救うだけの話となる。

 サマハンは労働雇用省と対話を始めるため、19年1月13日付の手紙を送った。1月28日に、ハンジン・フィリピン社の会社更生申請に伴う労働者の困窮状態に対処するため、サマハン指導者、「ハンジン労働者の友(FoHW)」※②とシルベストル・ベロIII労働雇用省長官の間で話し合いが行われた。
[※②「ハンジン労働者の友(FoHW)」とは、2011年以降、主に異なる大学の学生で構成される支援ネットワーク。そのネットワークの一部は個人、機関、学生組織のグループ。]

 労働者は、「勤続年数ごとに1ヵ月分の給与相当の離職手当」、「3%の雇用保証金の払い戻し」などの補償を求めた。「3%の雇用補償金の払い戻し」とは、労働者とハンジン経営陣の間の法的拘束力のある契約を通じて、賃金、失業補助金、優先再雇用で差し引かれる3%雇用債の払い戻しのこと。 労働雇用省は労働者に支援を提供することを保証し、いつでも職場に戻ってくることができると労働者に伝えた。

 2019年2月8日に、ハンジン経営陣は「自主的退職※に関する覚書」を発行し、自主的退職プログラム(VRP)の申請書に署名した者のみが離職手当などの正当な利益を受け取ることができるとした。サマハンはすぐに抗議し、経営陣との正式な交渉を要求し、ハンジン社の管理事務所を訪問した。交渉の場は、人事担当役員のアナ・エスポソ氏によって与えられ、サマハン指導者を食堂に招いた。食堂で、人事担当役員アナ・エスポソはサマハン指導者たちに名前を書き、交渉の記録しないよう指示し、すべての労働者に仕事に戻るよう命じた。

 これに応えて、サマハンは2019年2月9日に三者間の交渉を要請する手紙を送った。

3)労働雇用省が、自主的退職プログラム(VRP)の狙いを暴露

 交渉の前に、DZMMでベロ長官との電話インタビューしたところ、ベロ長官は、「自主的退職プログラム(VRP)は違法であり、労働者を短期的に変更するための経営者の言い訳だ」と述べ、労働者にVRPに署名しないよう助言した。 2月19日、労働雇用省地域ディレクター、シェナイーダ・アンガラ・カンピータ(Zenaida Angara-Campita)が司会を務め3者の交渉が、ハンジン社の異なる下請業者とサマハン(SAMAHAN-WPL)リーダーが参加し、労働雇用省リージョン3で開催された。労働者の要求により、両当事者間の最終的な合意は得られなかった。

 19年3月1日、自主的退職プログラム(VRP)への署名を拒否した113人の労働者は、入口がブロックされた状態でロックアウトされていることに気付いた。これに対し、サマハンは仕事に戻せと要求しピケットラインを敷いた。人事部長ユージーン・デロス・サントス(Eugene delos Santos)は、労働者のピケットに応え、入口開閉装置が誤作動し、意図せずにロックアウトされたと「適当な」を説明した。人事部長はまた、労働者に状況を説明する回覧メモをリリースし、自主的退職プログラム(VRP)を利用しなかった人々が働き続けることができることも保証した。

 しかし、同日、ハンジン経営陣は資本家寄りの労働組合連合AMAPO-TUCPのリーダーと話し合い、労働者に自主的退職プログラム(VRP)への署名を説得し、ピケットラインを分断させた結果、53人の労働者のみが残った。ボビー・フローレスは、労働者にVRPに署名するよう説得したAMAPO-TUCPのリーダーである。ハンジン53名は、彼らの権利を主張し続ける。ハンジン経営者は覚書の回覧ではなく、労働者の下請業者から閉鎖通知を発表したとしている。

 すぐに、サマハン-WPLは3月4日付けの労働雇用省シルベストル・ベロIII長官宛てに、労働者に代わって直ちに経営陣に介入するよう促す手紙を送った。応答がなかったので1週間後に、支援団体「ハンジン労働者の友人(FOHW)」とともに、3月11日にイントラムロスの労働雇用省前でピケット抗議を開始し、長官宛てに請願書を手渡した。さまざまな学生会や組織に所属する500人以上の学生は、ベロ長官あてに労働者の窮状を直ちに是正するよう労働雇用省に要請する署名を提出した。同時に、アンジェリーク・ラゾのラジオ・ベリタス番組で、サマハン指導者はベロ長官に電話をした。ベロ長官は放送によって労働者に説明するのではなく、同日にサマハン指導者を招待するから対話しようと呼びかけた。

 残念ながら、ベロ長官は労働者の問題に直接対処する代わりに、政権の「ビルド、ビルド、ビルドプログラム」、および最近開催されたスービックジョブフェアを利用することを宣伝した。皮肉なことに、ジョブフェアに参加した6,000人の労働者志願者のうち、雇われたのは99人だけだった。さらに、ベロ長官は、「ハンジン社がすでに閉鎖を申請しており、労働雇用省の権限を超えているため、三者間交渉するよう管財人を強制することはできなかった」と述べた。ただ、会議中にサマハンの指導者によって提供された事実を立証するために視察訪問を行うことにはなった。破産により一時的に稼働が止まっているが、造船ヤードには実際に6隻の船とメンテナンス作業の仕事がある。ベロ長官は、視察訪問の一環として、サマハン指導者とともに、労働関係副大臣、特別懸念および地域活動クラスター、CESO IIIのアナC.ディオーネ(Ana C. Dione)に、その任務を割り当てた。

 2019年3月13日、副長官アナ・C・ディオーネ(Ana C. Dione)と労働雇用省第3地域ディレクターのシェナイーダ・アンガラ・カンピータ(Zenaida Angara-Campita)は、サマハンの参加なしにハンジン造船所の視察を行った。

  サマハンの継続的な努力にもかかわらず、また文書のフォローアップを行ったにもかかわらず、結果はまだ公表されていない。

 3月25日、労働雇用省を説得する最後の試みとして、「ハンジン労働者53名」は、その家族とともに、「ハンジン労働者の友の会」と労働団体KPDの支援を受けて、約250人のメンバーを動員し、マニラ、イントラムロスの労働雇用省前に結集した。デモは激化したが、ベロ長官は出てこなかった。労働者に対話のために二階に行くように呼びかけたのはベンジョー・ベナヴィダ (Benjo Benavida)副長官だった。サマハン代表、労働団体WPL、支援団体「ハンジン労働友の会(FOHW)」が、対話に参加した。この最後の対話では、労働雇用省は政治的意思(明らかに欠けている)を持たず、真の政治的使命を行使することなく、会社法と法的プロセスを持ち出して、ハンジン経営の方針を定めた、そのことで労働者に対する責任を放棄した。労働雇用省は、命令を下し行動できるように、労働者に単に訴訟を起こすよう促すことで、説得力のないアリバイを残す態度へと退いた。

 4) 支援活動の取り組み

 ハンジン闘争に対する支援活動キャンペーンは、国際的にも地域的にも行われた。国際的には、サマハンと労働団体WPLのさまざまなパートナー組合、組合連合により、国際連帯活動が強化された。控訴状が労働雇用省ベロ長官あてに送られた。 19年1月22日と3月5日にバンクーバーおよび地区労働評議会(VDLC)により、 19年1月29日にカナダの公共サービス同盟から、19年3月6日にブリティッシュコロンビア州政府とサービス従業員組合から、19年3月13日に労働組合世界連合会、バンクーバーおよび地区労働評議会(VDLC)代表と執行委員会、およびカナダ労働組合から連帯のメッセージが送られた。

 地方レベルでは、支援活動は、関心のある個人、学生組織、グループで構成される支援団体「ハンジン労働者の友(FOHW)」が先頭に立っている。 2011年から設立され、最近のハンジン労働者の支援キャンペーンのために再開した。

 「ソーシャルワークとコミュニティ開発」クラス221の大学支援(CSWCD)により、学生たちはスービック、サンバレスへの視察旅行に参加した。英語からフィリピン語への文書の翻訳を行い始め、彼らはすぐにハンジン労働者の現在の中心グループになった。

 支援団体「ハンジン労働者友の会(FOHW)」は、主にハンジン問題をフィリピン内外に広める活動を担当し、キャンペーンや情報グラフィックの作成を通じて事実を伝えた。これには、ハンジン労働者の要求や問題発生の概要、労働雇用省への要望と回答など、様々な団体、大学での議論やフォーラムの開催などをソーシャルメディアで伝えた。19年2月21日にはフィリピン大学カリプナン・マグマラルアール・ソソホロヒヤ(UP KMS)が主催する教育討論会などが行われた。フィリピン大学カソリック行動(UP Student Catholic Action:UPSCA)との教育的議論も行った。また、フィリピン大学ディリマン校学生委員会(USC)は、2月22日に公開討論会を主催した。また、「ハンジン労働者友の会(FOHW)」は、連帯のメッセージを通じて、下記のような個人、学生評議会と組織、労働者グループに支援を要請した。CSWCD SC 、UPD USC、UP KMS、フィリピン大学政治社会学部、フィリピン大学マニラ校(UP Manila)、芸術科学大学学生評議会、ブクロド(BUKLOD)社会科学哲学カレッジ、サンバレー労働者団体(UGNAYAN)、オルタ政治運動(AlterPol)、国民的経済運動、フィリピン大学医学部学生評議会、および多数の著名な個人。

 「ハンジン労働者友の会(FOHW)」はまた、首都圏のさまざまな大学、特にフィリピン大学とフィリピン工科大学にオンラインで請願書と署名キャンペーンを提出し、461のオンライン署名と約2,000の署名を獲得し、現在も集めている。

 また、彼らはピケット労働者への寄付を集めた。
 19年1月28日に約300人の学生が参加したベロ労働長官との対話を通じて労働雇用省との合意が成立した。労働者を支持連帯するエンジニアリング学生評議会、カレッジ評議会連盟、UPD USCとともに、支援団体「ハンジン労働友の会(FOHW)」は、この合意遵守を求め、2月28日にメルチョル・ホールのエンジニアリングステップの前での抗議行動を呼びかけた。

 また、「ハンジン労働者友の会」は、メディアへの連絡、オンエア、または電話を介した労働者とのインタビューを行った。ピケットの日常的な報告をメディアに連絡し報道してもらい、ラジオ・ベリタス、中央ルソンTVへのラジオインタビューなどの現場の状況報告を担当した。 CLTV、DWIZ 882、およびRappler、インクワイアラー紙、ビジネス・ミラー紙、ビジネス・ワールド紙、およびその他の国内の主要メディアによる報道に協力した。

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<ハンジン造船所>

5) 今後の闘い 

 ハンジン労働者の緊急の要求に対する闘争戦術はピークに達した。
 労働雇用省のポジションファームで、外資系資本による再建を計画しているのを確認したサマハン – WPLは、労働者の闘争を別の面、すなわち合法的な戦いと組み合わせた持続的な政治キャンペーンに中心を置くことに決めた。

 サマハン – WPLは、ハンジン53名の業務の連続性、正規労働者化を目ざした訴訟、およびすべてのハンジン労働者が会社から適切な利益を奪われたことに対し、法的訴訟をしている。造船所は閉鎖されない。実際、各地からの報告によると、タルラック州とスービックの元ハンジン労働者はすでに募集と訓練を受けるよう求められており、電力は国立電力公社の主電源に再接続され、保存済み重機は取り出され、テストされている。

 この新しい闘争では、法的闘争と集団行動の組み合わせが採用された。裁判闘争には規定の期間があるが、叫びをあげなければ、訴訟は「過ぎたる法の遵守」として処理されがちだ。そのため、労働者の訴訟に大衆的な支持運動があれば確かな圧力を及ぼし、判決に影響を及ぼし、迅速に対応することさえある。

 このような戦術では、議論の妥当性と重み、および採用される他の法的プロセスを評価するために協議を行う必要がある。造船所での長年の組織化を通じて収集され蓄積されたデータと情報は活用され、訴訟を闘うために必要なデータと研究の継続的な収集が必要だ。

 ハンジン労働者の闘争の新しい段階を展開すると、ちょうど終結した段階で蓄積された力が再配置されだろう。これは、サマハン-WPLの現在の強さを維持しながら、次の段階の力を構築するために拡張および統合することだ。

 そのため、ハンジン造船所内の組織化活動は継続的な解決を求め続ける。同様に、他の領域で闘いを組織することも、より包括的で動的な労働者運動を組織するために同じく力を注いでいかなくてはならない。

 支援と連帯活動は継続され、より活気に満ちて広範囲に行う。真実を暴露し、公共の利益を生かし続けるには、特にメディア批判の勢いを維持する必要がある。同様に、他の分野は、立法や管財人との対話など、別の戦いの場でもきちんと対応しなければならない。上院、議会、労働雇用省、およびハンジン造船所の新しい経営者に向けた請願と緊急の訴えは、様々な経緯をその都度宣伝し支持を得ながら、闘いを進めることが特に重要になる。

 正義のための闘争は続き、私たちの権利のための戦いが持続する。そして、勇気をもって主張し戦う方法を知っている人だけが、権利と正義と勝利の主張を持っている!

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