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アフガン政府崩壊、タリバン政権成立か?  [世界の動き]

アフガン政府崩壊、タリバン政権成立か? 

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<8月15日、カブールの大統領府を掌握したタリバン戦闘員>

1)タリバンが全土平定、首都カブールへ無血入城

 タリバンによるアフガン全土制圧は、予想以上の早さですすんだ。8月6日にタリバンが攻勢に出てからわずか10日で、カブールに15日に無血入城、全土を平定した。アフガン政府軍との戦闘はほとんどなく、地方の知事たちはタリバンに抵抗しなかった。アフガン国民の多くは、むしろ平和的に、タリバンを受け入れた。

 現時点でタリバンは、外国人の脱出を認め、輸送機が離着陸することは許し、対米協力者だったアフガン人が空港に殺到するのもほとんど見逃している。タリバンは元政府軍人や対米協力者に対する「恩赦」を宣言している。現状では国内の統治にある程度の自信を持っているのではないか。(https://diamond.jp/articles/-/280338 2021年8月26日 タリバン「最速の無血入城」は米軍植民地統治の当然の帰結 田岡俊次)

 米国が20年かけて育て上げたアフガン政府軍は、戦闘をすることなしに武器を捨て、我先に逃亡した。ガニ大統領は、政権を放り出して外国へ逃亡した。

 アフガニスタン政府は、多くのアフガン国民の支持を得ていなかったことが、あらためて判明した。欧米諸諸国が「民主主義政権」として成立させたカルザイ、ガニ政権は、けっして「民主主義義政権」ではなかったし、国民の信頼を得ていなかった。それと同時に米政府、米軍が、アフガン国民からまったく支持されていないことも、あらためて判明した。米国と一緒になって軍を派遣した欧州各国政府、日本政府なども、同じく支持されてはいない。

 アフガン国民の多くは、タリバンによる戦争の終結、平和を強く望んだということだろう。欧米政府、軍が、20年かけても「民主主義政権」をつくりあげることはできなかったし、平和をもたらすこともできなかった。その意志も能力もなかったことが示された。アフガン国民の多くは、自身の政府の樹立することで、外国の支配を拒否し、独立を求めたともいえる。(www.youtube.com/watch?v=bcT5Bwz5oWo (4) アフガン全土陥落、米軍撤退~911から20年、日本もかかわった報復戦争【半田滋の眼 NO.39】20210818 - YouTube/)

2)タリバン政権が成立した理由 

 かつて、96年から5年間、タリバン政権があった。ソ連が撤退した後、ナジブラ政権が続いていたが、北部同盟やマスード集団などの軍閥がナジブラ政権を倒し、乱暴狼藉をはたらく暴力支配の政府に代わった。無秩序の部族兵は各地で物資懲発や略奪を続け、国民は悲惨な状態に置かれた。軍閥の各集団は、共産党政権を倒すために米国やサウジから兵器や戦闘指導員等様々な支援を受けてきた。ソ連軍と戦ったアフガンゲリラは8派に分かれて勢力争いの内戦を始めた。生まれたのは軍閥による賄賂、汚職の無法者、乱暴者集団の政府であった。

 腐敗した軍閥政府を倒すために、1994年、パキスタンにあった神学校でタリバンは設立された。(神学生をターリブと呼ぶことからタリバン)。タリバンはイスラム神学校の学生を中心に組織され、賄賂をとらず公平だったので、支持を広げていった。タリバンはイスラム法に基づいた公正な社会の建設をかかげ、戦争・戦闘の終結を実現した。アフガン国民の多くは、戦争を終結させたタリバンを支持し、96年にタリバン政権が生まれた。

 しかし、欧米諸国は自身の思う通り操ることのできないタリバン政権を敵視し、自由に操れる政府に置き換えようとした。2001年の同時多発テロを契機に、米国はビン・ラディンをかくまっているという理由でアフガンに侵攻しタリバン政権を潰し、米国に従う政権=傀儡政権に変えた。この過程で、欧米諸国は、タリバン政権は「無法者集団」というイメージを広めた。実際には、どうもそうばかりはないようだ。タリバンの「悪いイメージ」は、欧米日の報道機関のアフガン戦争を正当化する作為的な宣伝の部分を、差し引いて受け取らなければならない。

3)タリバンが非難されたいくつかの点について

 「無法者集団である」という批判について、中村哲医師は、「タリバンの連中が地元から信頼されている。アフガンの旧来の農村共同体を基盤にしている。・・・・タリバン支配地域では食糧支援は末端まで行き渡った。軍閥支配地域ではそうではなかった。・・・・」と語っている。「無法者集団」という批判は、欧米がつくりだした宣伝の面がある。欧米諸国の思う通りに操れないことをもって「無法集団」と呼んでいる。

 表むき「女子教育」を否定するタリバンだが、建て前と現実では違うところがあるようだ。実際にはタリバン政権下でも、女子教育は従来通り行われていた。男女別の学校だったが、産婦人科の医師、看護婦、助産婦、教師、保育士などの女性への学校教育は行われていた。中村哲氏は、「タリバン政権下で看護教育を受けた看護婦を、自身の病院で雇った」と語っている。女子教育の分野が限られていることや、男女別の学校であって異性と接触できないことなどの問題はあるものの、全面的に女子教育を廃止したわけではない。その点は、軍閥支配のころ、あるいはタリバン政権後のカルザイ、ガニ政府の頃と、ほとんど変わりはない。(中村哲が14年にわたり雑誌『Sight』に語った6万字 2002年
https://www.rockinon.co.jp/sight/nakamura-tetsu/article_01.html?fbclid=IwAR1byGKpsfbAwHAVQ3-jwFYzvVBv8efEi21KLLkBZGBTyxkgil7_FqxFT1c

 偶像崇拝禁止からタリバン政権下でバーミアン遺跡を爆破したのは非難されるべきことだ。タリバンの犯罪行為の一つだ。

 タリバンがよって立つのは、むしろ古い伝統的な、すなわち地主と小作が残存する農村共同体であり、そこでは「個人の権利」や「人権」は尊重されない社会である。それゆえ、さまざまな問題点を抱えているだろうことは、想像される。

 ただ、問題点を抱えてるだろうが、少なくとも欧米やサウジが共産党政権を倒すために支援した軍閥よりも、あるいは欧米が支援して来たカルザイ、ガニ政権よりも、「腐敗・汚職」の点ではずっとマシな政権だった。軍閥は腐敗していたし、無法集団の暴力支配だった。カルザイ、ガニ政権は、欧米の言うなりの政権で腐敗、賄賂が横行しており、ほとんどの国民は支持してこなかった。

4)米国がタリバン政権を打倒した

 2001年9月11日の米同時多発テロの後、ブッシュ大統領はテロに対する戦いを宣言した。アフガンへの侵攻は、米国が黒幕とみなすアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンの引き渡し要求に、当時のタリバン政権が「ビンラディンが首謀者だった証拠は示されていない」ことなどを理由に拒否したことを名目にして始められた。米国が主導する形で国連安全保障理事会では国連安保理決議(1368号)が採択され、NATO(北大西洋条約機構)は集団的自衛権を発動し、米英をはじめとする連合軍が10月7日から攻撃を開始し侵攻した。

 約2カ月でタリバン政権は崩壊し、2001年11月には有志国連合とアフガニスタンの諸勢力の代表らが暫定政府の樹立や国民大会議の招集に合意した。12月には暫定行政機構が発足、2004年12月にはカルザイ大統領が就任した。

 一国が他国へ犯罪人の引き渡しを要求する場合、証拠を示し、どういう罪状であるか、という事実関係の書類、裁判の判決を示して、引き渡しを要求する。当時、米国とアフガン政府(タリバン政権)との間には、「犯罪人引き渡し条約」は締結をしていないが、これに準じた運用をするのが常識だ。

 (※日産のゴーン会長の極秘裏の出国を助けた米国人の引き渡しを、日本政府は「犯罪人引き渡し条約」に基づき米国政府に求めたが、その時、どのどのような手続きを踏んだか、思い起こさなければならない。証拠などの書類、罪状、判決を示したはずだ。「犯人引き渡し」要求には、これに準じた手続きが必要だ。)

 しかし、そういう手続きもなしに米政府は「引き渡し」を要求した。タリバン政権は、裁判が公正に行われるか、など「引き渡し」の条件を確認し、場合によっては引き渡しを検討する立場をとった。

 米国政府はこれらを一切無視して、アフガン政府が「オサマ・ビン・ラディンをかくまっている」という理由で、アフガンへ侵攻し戦争を始め、2ヵ月でタリバン政権を崩壊させた。国家間で対立が生じた場合、武力や戦争で解決してはならないという国連憲章に対する明確な違反である。(www.youtube.com/watch?v=3A4ndNxeX90 2021年7月28日、田岡俊次、デモクラシータイムズ)

 ついでに言えば、2011年5月、パキスタンに隠れていたオサマ・ビン・ラディンを、米軍が秘密裏に(パキスタン政府の了解なしに)、特殊部隊を送り暗殺した。これも明確な国際法違反だ。ビン・ラディンが犯罪人というなら、証拠を示して裁判にかけるべきである。暗殺すること自体が犯罪である。そればかりか、パキスタンの主権を侵害している。パキスタン政府の了解もなしに勝手に米軍を送り、暗殺させている。

 こういう野蛮なこと、不法なこと、犯罪を、米国政府が公然と行い、日本も含む西側諸国政府は、批判・告発せずに支持してきた。これまでも米国はこういうやり方を続けてきた。イラクのフセインもそうだし、リビアのカダフィも同じ。米国は中南米の気に入らない政権は倒し、言うなりの独裁政権に置き換え、力ずくで抑えてきた。戦争後のアフガンの国づくりなどまったくやる積りなどない、米国の利益第一、「アメリカン・ファースト」であって、アフガンの市民のことなど何も考えていない。そのようなことを、アフガン国民は、30年間にも及ぶ戦争状態と支払わされた犠牲を通じて、身に染みて理解している。それゆえアフガン国民は上から下まで反米感情を抱くに至っている。

5)米国がつくったカルザイ政権、ガニ政権はどんな政府だったか?

 ガニ政権は、あっという間に崩壊した。アフガニスタン政府に対する国民の信頼は全くなかったことが判明した。米や欧州諸国は、「アフガンに民主主義国家をつくる」と言ってきたが、つくったのは腐敗と賄賂の傀儡政権だった。

 アフガン政府の財政は、ほぼ全額が外国からの援助で賄われていた。有志国連合側はアフガン政府軍約30万人、警官約10万人を育成しようとしたが脱走者が多く、その給料を幹部が着服することが横行した。30万人の政府正規軍とされてきたが、実際には6分の1しかいなかった。兵士の人数分の援助を外国から得ながら、浮いた人数分は賄賂として政府中枢の要人に分配された。日本も68億ドル(約7,400億円)を支出してきた。額としては米国に次ぐ。主にアフガン政府の警察官9万人の給与の大部分を日本政府が担ってきた。ここでも実際には9万人もおらず、幹部が着服した。

 アフガン政府とは、外国から資金を得る機能をもった「道具」であって、米軍が撤退し資金が入ってなくなり、資金の「吸い口」機能が消えれば役割を終えるのである。群がってきた政権に近い人々はすぐさま離れ、政府が崩壊したのは、アフガン政府のこの性質から来る面が大きい。

 米国は、どうしてしっかりした政治制度をつくらなかったのか? そもそも米国政府にはそのような意図はないからだ。米国がつくる傀儡政権とはそういうものだ。米国は、従わなければ戦争で叩き潰し、自分に従わせる政府をつくる。米国の利害のためにやっているのであって、アフガン国民のためにやっているわけではない。誤爆して多くの民間人が多数死んでも意に介さない。アフガン国民のあいだには、この20年かけて隅々まで、反米感情が広がった。

 米国の対テロ戦争は20年も続いた。米軍の直接戦費は7,700億ドル(約88兆円)と公表された。対テロ戦争の総額は4~6兆㌦(約450兆円~700兆円)に及ぶと、スティグリッツらが試算している。一方で、20年も続けた対テロ戦争によって、米軍産複合体に安定した収入を保障した。

 米軍はこの戦争にピーク時に9万人を派遣、他の国も最大時に約4,000人を出した。米軍の死者は約2,430人、負傷者は2万2,000人余りとされる。他の派遣国軍の死者は約1,150人だった。

 一方タリバン兵は人員約6万人と推定されたが、多くの民衆の協力を得ていた。アフガニスタンの民間人の死者は14万人以上とみられる。(田岡俊次の戦略目からウロコ 2021.7.15)
 
6)米国の威信は失墜した

 度重なる介入失敗の歴史は、米国の国際的威信や信用を傷つけてきた。今回もそうだ。そればかりでなく、経済や社会を破壊し疲弊させてしまった。米軍のアフガンからの敗走は、更なる威信低下を上塗りする。

 イラク戦争でも、米国は「イラクが大量破壊兵器を保有している」と主張し、2003年3月国連調査団の「なかった」との報告を無視してイラクを攻撃し、占領した。大量破壊兵器を探したが、結局は出なかった。そして7年半、イラクを大混乱させて2010年9月に撤退した。米軍人4,419人、イラク民間人約11万人が死んだ。米国にとって、直接戦費は7,700億ドル(約85兆円)に達したが、重傷を負った米兵の生涯の補償や国債の利息など将来の経費を含むと3兆ドル(330兆円)との推定されている。イラクの人々が負った被害は金額にすればそれ以上だ。

 アフガンでもほとんど同じ結果を繰り返したのだ。米国による戦争、武力による支配は、アフガニスタンの破壊と荒廃をもたらした。経済や社会を疲弊させて、撤退に至っている。同じ失敗を繰り返している。

 アフガンから米軍が撤退した背景には、米国の都合がある。米国にとってアフガン、中東の重要性はすでに低下している。エネルギー転換から、世界は太陽光、風力への投資競争に入っており、石油・ガスの重要性は急速に薄れつつある。これまで米国にとって、中東を支配することは石油を通じて世界を支配することだった。しかし、いまや米国のシェール石油生産が急増し世界一の石油輸出国になった。これらの情勢の変化により、中東は米国にとって以前ほど重要な地域ではなくなった。

 さらには、米国が20年間、アフガン戦争を続けてきたあいだに世界的な情勢は大きく変化した。米国の力は低下し、中国が台頭してきた。覇権交代が迫っている。アフガンからの米軍の敗走は、米国の威信を失墜させたばかりではない、米国の力が後退したことを表している。米国にとって、いまや年間4兆円の軍事費を投じてアフガンで戦争を継続しているような場合ではない。台頭する中国に対抗するために軍事的にも、その資源を対中国に、インド・太平洋戦略に、集中しなければならない。そのような米国戦略の変更の必要性も背景にある。

7)難民を恐れる欧米 

 2001年9月11日に米同時多発テロが起きると、実行犯が詳細には明かにならないなかで、米国が主導し、国連安全保障理事会で国連安保理決議(1368号)を採択し、NATO(北大西洋条約機構)は集団的自衛権を発動し、アフガンへ侵攻した。1949年に創設されたNATOの歴史で、集団的自衛権を唯一発動し、軍隊を送ったのがアフガン戦争だった。

 そのNATO諸国が、アフガン難民の流入を恐れ、受入拒否の姿勢を見せている。自分たちの行為の結果であること、したがって難民発生の責任があることを、NATO諸国はまず認めなければならない。2001年11月にタリバン政権を武力で潰し、NATO諸国を含む「有志国連合」がつくったアフガン政権は、腐敗と汚職の政権で、アフガン国民の支持を得ることができず、20年後に崩壊した。政権関係者、家族らが難民となって国外に流出するというのだから、自らの行為の結果であるその責任を負わなくてはならない。

 シリアのアサド政権打倒を企て、反政府テロ勢力を支援した米国を、欧州諸国は支持した。シリア戦争の結果、シリア難民の欧州諸国への流入という事態にあらためて驚き、難民をトルコなどに押しとどめ欧州は受け入れない態度をとっている。やっていることが滑稽にしか見えない。これが「先進国」と自称する政府のやることなのだ。自分たちが振りかざす「民主主義」とか「人権」の意味が分かっていないのではないか?と思われるが、これをアフガンでも再び繰り返していることになる。

 世界の難民は、2015年あたりから急増し、現在は8,240万人に達している。米国の軍事介入が難民を増やしたのは明らかだ。その米国の世界戦略は失敗し続けている。戦争で占領しても、米方式の支配は維持継続できない。

 難民8,240万人の内訳は、下記の通りだ。アフガン難民は260万人だが、これにアフガン旧政府関係者と家族が、今後新たに、難民に加わることになる。
 1)シリア:600万人
 2)ベネズエラ:400万人
 3)アフガン:260万人
 4)南スーダン:220万人
 5)ミャンマー:110万人

8)アフガン新政権はどうなるか?
 
 リビアやシリア戦争で生まれてきたISやヌスラ戦線などのイスラムテロ組織は、イスラムではない。米国やサウジが資金を出し雇った傭兵集団である。その証拠は、パレスチナ解放を掲げていないところにある。シリア戦争ではイスラエルと共同してシリア政府と戦ったところにある。ゴラン高原に追いつめられたヌスラ戦線の負傷者はイスラエル軍病院で治療を受けた。タリバンは、米国やサウジに雇われた傭兵集団ではない。ISやヌスラ戦線と混同してはいけない。

 タリバンは、旧支配機構にいたカルザイ前大統領、アブドラ首相などとも新生アフガン政府の構想について話し合いをしているようだ。各地域の州知事はタリバンを受け入れている。各地域の伝統的な自治組織である長老会(ジルカ)なども、受け入れているようである。タリバンはまず戦争の停止を実現するだろう、同時に、新政権が国際的に承認されることを求めるだろう。そのために、タリバンが主導しながらも、国民の各勢力をまとめ上げた新政権、旧アフガン政府の州知事や閣僚も入れた新生アフガン政府を構想しているようだ。今後の動向を見極めなければならない。

 アフガン国民が期待しているのは戦争の停止、平和であるから、タリバンがこれを実現すれば、タリバン政権を受け入れるだろう。

 また、国民の願いは、米国などの外国による支配ではなく、民族独立であるから、この面でも支持を得た。タリバンは、ある種「独立戦争」を戦い、アフガン人は支持した。各地域の伝統的な自治組織である長老会(ジルカ)などを基盤に、州知事や旧アフガン政府の州知事や閣僚も入れた新生アフガン政府を構想する姿勢を見せているのは、タリバンが多くの国民の要求に沿った対応を探っているからであろう。この先の動向を見極めなければならない。

 アフガニスタンは伝統的な農業国であり、地方の各地域は農村共同体である。新政権には、水利灌漑などして安定した農業生産の復興がまず求められるだろう。これが次の段階での政権の安定にとって必要となる。食糧増産と供給ができなければ、タリバン新政権は国民から安定的な支持を得続けることができない。
 ケシ栽培がアフガン政府、タリバンの一つの資金源と言われてきた。その実態、規模をキチンと把握してはいないが、これをやめるには各地域で安定した農業生産の実現が必要となる。農民がケシ栽培に手を出さなくても済むようにしなければならない。

 農業以外の産業の振興には、外国の経済協力が必要になるだろう。アフガニスタンはもともと鉱物資源は豊富であり、その開発も期待される。新政権の経済的な復興、発展に貢献できるのは、米国ではなくて中国である。 タリバン新政権と合意すれば、中国は「一帯一路」構想の一環として、アフガンとの経済協力、投資などに協力するだろう。アフガニスタンには天然ガスや原油、銅鉱山など未開発の鉱物資源があり、中国はすでにアフガニスタン北部の油田開発で協力を始めている。

 戦争がなくなり、安定した農業生産ができるようになれば、アフガン難民の帰国が徐々に始まるだろう。

中国とロシアは?

 中国は、21年7月、上海にタリバンを呼び王毅外相と会談した。ロシア・ラブロフ外相はすでに18年頃からタリバンと連絡を取っていたという。ロシアとタリバンの間で話し合い、タリバン新政権は「強権を振るわない」、「他国を襲撃する勢力の巣窟にはしない」と約束したという。

 8月上旬にロシアと中国で、中国の内陸部で対テロ対策を前提にした共同作戦・演習を行った。(https://jp.sputniknews.com/asia/202107298582069/ SPUTNIK2021年07月29日 21:51)
このことは、タリバン新政府に「テロ勢力の送り出しは許さない」という警告でもある。ロシアと中国、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなどの周辺諸国が何を警戒しているか、よくわかる。「テロ勢力の巣窟」にならないようにせよ、というのが当面の共通した国際的な要望であろう。
 
 中国もロシアも、米国がやってきたようなアフガンに対する軍事的支配に乗り出そうとはしていない。

 タリバンによるアフガン新政権はどうなるか、今後の動向を見きわめなければならない。
 
 
(2021年8月26日記)











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