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コロナ禍の人権侵害を許さない ― フィリピンのバナナ労働者の支援を!- [フィリピンの政治経済状況]

コロナ禍の人権侵害を許さない
― フィリピンのバナナ労働者の支援を!-


 フィリピン・ミンダナオ島の「スミフル(旧:住商フルーツ)」バナナ農園と集荷施設の労働組合と組合員に対する暴力行為や不当解雇が起きて2年を経過しているが、未だに解決していない。会社側からだけでなく、コロナ禍を「理由」に警察や軍から、さらに過酷な弾圧、組合潰しが続いていて、現地の労働者たちは困難な闘いを強いられている。

 PARC、エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会、FoE(国際環境NGO)が支援活動を呼びかけている。

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<道の両脇に広がるバナナプランテーション(2018年12月撮影、FoE Japan)>

1)労働組合結成と弾圧のこれまでの経緯
 2018年10月1日、日本仕向けの輸出を行なうバナナブランド「スミフル(旧:住商フルーツ)」を取り扱うミンダナオ島コンポステラ・バレー州にある農園と集荷施設の労働者は、労働組合「ナマスファ」を結成し不当な労働環境の改善を訴えて、組合員749名がストライキに入った。ストライキ開始後に、会社だけでなく軍や警察も加わった暴力的なスト破りにあい、29名の組合員が負傷したばかりではなく、組合員は会社側から10月中に一斉に解雇された。

 18年10月31日には、組合員ダニー・ボーイ・バウティスタさんが何者かに射殺される事件が起きた。また、同じ頃、ストライキに参加した労働者3名が、銃を構えた正体不明の男らに追いかけられ、発砲される事件が発生した。

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<ダニー・ボーイさんの射殺に対する正義を求める組合員(2018年12月、FoE Japan撮影)>

 11月には組合代表の自宅が放火され、現場付近からは銃弾の薬きょうも発見されている。住民らの消火活動によって消し止められたものの、翌12月再び、組合事務所と組合代表宅が合わせて放火され、全焼した。
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<労働組合ナマスファの代表宅焼け跡(2018年12月、FoE Japan撮影>

 この一連の事件が労働運動に対する悪質な弾圧行為であることは明らかだ。日本に輸出されるバナナのために、不当な労働環境にさらされた労働者たちは、労働組合を組織し労働環境の改善を会社に求めたのだが、解雇され、なおかつ暴力で脅される事態となり、その弾圧はいまも続いている。

 この事件に対し、18年10月から、日本でPARC、エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会、国際環境NGOであるFoEが、「スミフル」の親会社である住友商事に抗議と事態の改善を求め申入れ行動を行った。すると住友商事は「スミフル」社をシンガポールの会社に売却してしまい、自身には何も責任はないという態度に出たのである。しかし、現在もなお、「スミフル」社からバナナを輸入し全国のスーパーに納入している。

 日本で売られているバナナのうち、フィリピン・バナナが8割以上を占め、そのなかでもスミフルからの輸入がもっとも多いのだ。ぜひ、スーパーで手に取って、確認してほしい。

 現地の労働者たちからの労働組合弾圧や労働環境の改善要求は、現地の労働当局がすでに労働者側の要求の正当性を認め、会社側の対応を不当行為と認定し、2019年7月には不当解雇された組合員の復職と団体交渉を再開せよと、行政指導も出している。しかし、会社側は従っていない。それどころか、行政指導が不当だ裁判に訴え、20年12月現在、裁判係争中である。会社は「時間稼ぎ」をし、その間に軍と警察の協力を得て労働組合を潰そうとしている。

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<スミフル本社(マニラ)までデモ行進する労働組合ナマスファ(19年1月、FoE Japan撮影)>

2)コロナ禍で弾圧が続き、労働組合は危機に瀕している

 20年春からのコロナ禍は、アルバイトをしながら闘ってきたスミフル労働者から、日雇業などの仕事を奪いとった。追い詰められた組合員に、会社側は「組合を辞め、復職願いを取り下げるのであれば、現金給付する」という条件を提示してきた。生活に困っている組合員のうち、約40名(20年6月)が和解に応じ、組合を去っていった。

 20年夏、労働組合と現地人権団体「ノノイ・リブラド開発ファウンデーション」は共同で、組合員への人権侵害の実態調査を行なった。その結果、複数の組合員がフィリピン国軍第66歩兵大隊から「組合活動は共産党の武装組織、新人民軍(NPA)のゲリラ活動である」と、恫喝を受け、組合活動をやめるよう圧力を受けたことが判明した。

3) コロナ規制を理由に弾圧

 軍や警察は、「労働組合を組織し労働環境改善を要求することが、新人民軍の活動だ」とみなし弾圧しているのが、現地の実態だ。フィリピンの地方では、特に軍や警察による露骨な弾圧が横行している。

 20年6月11日、労働組合「ナマスファ」の女性組合員8名が町長に呼ばれ町庁舎へ行ったところ、会議室には町長だけでなく武装したフィリピン国軍兵士2名、軍属と思われる私服の男性、バランガイ(最小行政単位)長、警察署長が待ち構えていた。組合員の生活支援、食糧配給のために組合員ら数名が集まったことが、コロナの「コミュニティ隔離要綱」に反するので書類送検すると警察署長から通告された。厳しい移動制限や、何人以上集まってはいけないという「コロナ規制」が、労働組合弾圧に利用されている。

 ミンダナオでは、軍、警察、町長、バランガイ長など村の有力者たちが一体となって、労働組合を敵視し、新人民軍の活動だと非難するのである。(18年にフィリピン政府は新人民軍をテロ組織だと指定している)。

 前述の通り、現地の労働当局はすでに会社側の不当行為を認め、19年7月には不当解雇された組合員の復職と団体交渉を再開せよと、行政指導も出しているのであって、不当なのは「スミフル」社であるにもかかわらず、軍・警察・町の有力者はスミフルを擁護し、労働者を弾圧するのだ。

4)軍が労働組合員を脅し、弾圧する!

 20年7月3日、女性組合員は国軍第66歩兵大隊の要求で、今度はバランガイ長に呼び出された。面談の場で歩兵大隊員から、「組合活動と新人民軍ゲリラ活動が同一視」し、「投降するように」圧力をかけられた。もちろん、組合活動には何の違法性もない。しかも、「投降」すれば「生活費を支援をする」と言われたほか、「投降しなければ毎日組合員の監視を続ける」、「外からの訪問者を受け入れるな!」と警告したという。軍が「生活費を支援する」はずはないので、スミフル社とつながっていることは明らかだ。

 それとは別に、3名の組合員が、国軍の兵とおぼしき男たちから、脅迫・監視・ハラスメント・威嚇行動を受けてきたと証言している。
 また、軍人による組合員の住居の捜索と脅迫があった。兵士らは、留守中の組合員の家に家人の許可なしに侵入し、捜索した。その時、スミフル社に対する訴えを取り下げることを住民に求めた。そのような出来事があってから、家族と音信不通になってしまった組合員もいる。
(以上、FoB Japanのホームページより転載)


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 このような命の危険のある弾圧のなかで労働組合員たちは、闘いを何とか継続している。ミンダナオの労働者たちが、自分たちの生活と権利のために上述のような困難のなかで闘っていることを、私たち日本人のほとんどは知らない。知らないで毎日バナナを食べている。

 やはり、少しでも知らなくてはならない。知ったうえで、ミンダナオのスミフル労働者たちとつながり、支援しなくてはならない。スミフル労働者への支援を!

 FoB Japanは、スミフル労働者への支援カンパを呼びかけている。ご協力を!
 連絡先・お問合せ:国際環境NGO FoE Japan 担当:波多江   Email: hatae@foejapan.org 







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