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自衛隊を中東への派遣するな! [現代日本の世相]

自衛隊を中東への派遣するな!

中東 地図 NHK (2).png

1)自衛隊中東派遣を閣議決定

 朝日新聞、NHKなどによれば、12月27日、政府は、中東地域へ自衛隊派遣を閣議決定した。派遣は、防衛省設置法に規定された「調査・研究」に基づき、護衛艦1隻(約200人)を新たに派遣するほか、アフリカ東部のジブチ基地のP3C哨戒機(約60人)を活用する。一方、不測の事態が発生した場合、「海上警備行動」を発令して対応(=戦闘行為で反撃)に当たるとしている。派遣される要員は合わせておよそ260人。

 日本政府によれば、活動範囲は、オマーン湾、アラビア海北部、バーブルマンデブ海峡東側のアデン湾の沿岸国の排他的経済水域を含む公海で、イランにより近いホルムズ海峡やペルシャ湾は含まれていないとしている。

 今回の自衛隊派遣は、政府によれば「アメリカが結成した有志連合には参加しないが、アメリカや周辺国などと情報を共有、連携する」という。

 自衛隊の護衛艦と哨戒機の中東地域への派遣について、「石油連盟」月岡隆会長、日本船主協会・小野芳清理事長はともに「歓迎する」と表明している。

2)自衛隊の中東派遣に反対する!

 今回の自衛隊の中東派遣には、さまざまな問題がある。極めて危険であり、間違った対応だ。

①そもそも自衛隊を派遣する必要はない、
逆に危険で愚かな行為だ


 そもそも中東に自衛隊を派遣する理由がない。日本はイランとの友好関係を維持しており、石油は問題なく輸入されている。問題は起きていない。

 6月にタンカーが攻撃されたが、いまだに誰が襲ったのか不明だ。米政府はイランの仕業と主張しているが、いまだにその証拠さえ示していない。米政府得意のフェイクニュースだ。なんでもかでもイラン政府を非難し戦争に持ち込みたい米政府の言うことだから、信用性はない。だから、これも自衛隊を派遣する理由にはならない。こんなことを理由に軍隊を派遣し、戦争を起こしてはならない。

 米政府は一方的に核合意を破棄し、イランに脅しをかけ、経済制裁を発動し、身勝手にも有志連合と称する軍を送っている。これらすべての行為は米国が一方的に間違っている。国連憲章にもある通り、「武力で威嚇してはならない、国家間の対立を戦争で解決してはならない」。米国が一方的に国連憲章、国際法に反して卑劣な行動をとっていることは明らかなのだ。ロシアと中国は堂々と国連憲章違反だと主張し、明確に反対の立場を表明している。「まともな」主張、批判をしている。米国が「まとも」でない。これを指摘しない日本、英国も「まとも」ではない。
 米国の主張は、安全保障理事会で賛成されない不法なことなので「有志連合」になっているのだ。

 このことを国連加盟国であり安全保障理事国になりたいと表明している日本政府が指摘さえしないし、批判しないのだ。そんな政府をだれが信頼するか!

 米トランプ政権のイラン核合意破棄には、英、仏、独、ロシア、中国は反対している。有志連合への参加国は、米、英、バーレーン、豪、サウジ、UAE、アルバニアのわずか7ヵ国しかいない。いつもは米国に従う欧州NATO諸国さえ参加していない、ドイツは「有志連合には参加しない、外交解決をすべきだ」と表明した。米国を孤立させることこそが、対イラン戦争を回避する正しい道なのだ。

 にもかかわらず、米国に言いなりの安倍政権は、有志連合への参加を断り切れず、米国への「忖度」で今回の自衛隊派遣を決めた。

 トランプのイラン核合意破棄をきちんととがめ、武力によって威嚇する有志連合に反対し、外交努力での解決をさぐることこそ、米・イラン双方と良好な関係を持つ日本政府に求められる役割である。米国にイラン核合意への復帰を求める外交努力こそ、日本政府がやるべきことなのだ。

 その努力をまったくせずに自衛隊に丸投げすれば、かえって状況を悪化させる。
 「自衛隊を中東に送り米国の有志連合には参加しないが、米軍と情報共有する」という、誰が考え出したか知らないが極めて姑息な「二股膏薬」のような態度を安倍政権はとるのだ。中東に自衛隊を送り、米軍と情報共有することはどう見てもイランとの戦争を前提としている、それ以外に意味はない。
 諸国は苦々しく、あるいは軽蔑・嘲笑の目で安倍政権を眺めているだろう。このことで世界における日本政府の信頼と地位はさらに失墜したろう。気づかないのは日本政府ばかりだ。

②閣議決定で自衛隊の中東派遣を決めるのは大間違いだ

 重大な自衛隊の中東派遣を、国会での論議もなしに閣議で決定した。この決め方も大きな間違いだ。

 自衛隊は紛れもなく世界有数の武力をもつ軍隊である。この軍隊が中東で自衛隊法に定める「情報収集」活動を行うとしているが、攻撃された場合は現場の自衛隊の判断で「武器の使用」(自衛隊法95条)、もしくは「海上警部行動」(自衛隊法82条)という名の戦闘を行うとしている。相手が海賊の場合、国連海洋法条約によって日本の警察権で追い払うことができるので、それ以上の問題にはなりにくい。しかし、仮にイランを含む国家からの攻撃を受けた場合、あるいは攻撃を受けたとするフェイクニュースが流された時、「武器の使用」「海上警部行動」という名で反撃したら戦闘となり、自動的に国家間の戦争に入ることになる。現場の自衛隊が戦争に入るかどうかを決めることになる可能性が高いのだ。あるいは、米国とイランが軍事衝突した場合、近くにいる自衛隊がなし崩しに参戦することにもなりかねない。

 そのような重大な危険極まりないことを、重大であり危険であることを隠して、国会で審議さえしないで閣議決定で派遣を決めたのだ。
 安倍政権におもねる大手メディアは、少し考えれば誰でもわかるこんな自明のことを指摘さえしない。閣議決定が重大な危険をはらむことを国民に知らせようとさえしない。

③改憲、9条変更の理由をつくる政治的意図がある

 なぜ、こんなことをするのか?
 安倍政権が中東で戦闘行為が起きることを期待してるからだ。戦闘が起き、自衛隊員が死ぬことを期待しているからだ。自衛隊員が死ねば、「憲法9条があるため、戦闘ができず自衛隊員が死んだ、今こそ改憲だ」という政治キャンペーンが行われるに違いない。容易に想像がつく。マスメディアを掌握している安倍政権である。大手メディアは安倍政権の改憲キャンペーンに抗することはできないだろう。  

 なぜここまで考えなければならないのか? 私たちはすでに2018年の自民党による改憲案たたき台素案を見ているからだ。
 9条2:戦争辞さず、自衛隊の行動は事後承認
 安倍首相は「緊急事態条項」を憲法に書き込む構想を公表した。「緊急事態条項」は、宣言すれば憲法も司法も無視できる。

④自衛隊員も犠牲を強いられる 

 自衛隊員は戦場に送られ、犠牲となることが前提とされている。もし戦闘で犠牲になれば、神風特攻隊員のように褒めそやされるだろう、そして改憲理由とされ戦争のできる国ニッポンになるための人柱とされるだろう。

 しかし、派遣される自衛隊員はきわめて粗末に扱われている。NHKも27日に保険について報じていたが、けがなどで死亡した場合、最高およそ4000万円が支払われる「防衛省職員団体生命保険」(幹部は防衛省から天下りの民間保険)や、感染症などで死亡した場合、最高およそ1億円が支払われる「PKO保険」に、それぞれ任意で加入できるようになっているというのだ。

 けがや感染症で死んだら団体障害保険は支払われるが、戦争で死んだ場合は支払われない。なぜなら民間保険だから確率の高い戦争死や自殺は対象外なのだ。自衛隊員の自殺は年間80人ほどだが、戦争になれば一挙に一桁以上増える。保険会社はそれくらい事前に計算している。
 しかも任意加入、自衛隊員個人が保険に加入し保険金を支払わなければならない。

 派遣される260名の自衛隊員はどのような気持ちでいるのだろうか? 海外派遣できる安保法制の危険性をあらためて思い知ったのではないだろうか? あるいはせめて戦争法以前の「専守防衛」にとどまってくれていたら、と思っているのではなかろうか? 

 元防衛省官僚、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)・柳沢協二さんも、しきりに自衛隊員を無用に危険にさらすことを指摘し批判している。

3)自衛隊派遣の「根拠」

 閣議決定で「調査研究」、情報収集のためにP3Cや護衛艦など自衛隊を出すとしたが、それは1954年の「防衛省設置法」第4条18を根拠にしている。この法が制定された時には、日本の領土、領空における「専守防衛」しか想定されておらず、安保法制=集団的自衛権に基づく海外派遣などそもそも誰も考えていない。1954年の「防衛省設置法」第4条18の「調査研究」、情報収集という「表現」も、当時においても言葉の言い換えで9条の制約を回避した条文なのだ。

 解釈改憲、拡大解釈を重ねて来ているので、法律の趣旨を大きく踏み外した適用となっている。今回の「閣議決定」による自衛隊の海外派遣も、解釈改憲、拡大解釈の延長のうえに、さらに拡大解釈が重ねられたものなのだ。

 安保法制によって、「調査研究」から「海上警備行動」に現場の判断で踏み出せるようになっている。「海上警備行動」という言葉も、9条と齟齬しないように日本政府がひねり出した言葉であるが、実際には「戦闘行動」を意味している。すなわち、派遣された自衛隊に戦闘行為を行う権限を与えている。戦争が始まる可能性をゆだねている。

 「駆け付け警護」「安全確保業務」などという言葉も9条があるから言い換えているのであって、これも実際には戦闘行為である。こういう言い換え、ごまかしの積み重ねの上に、今回の自衛隊を海外派遣するに至っている。

 戦後からこれまでは、「9条改憲」を表明すると反対が多いので、解釈拡大・解釈改憲を積み重ねてきた。解釈改憲、解釈拡大なら「どうせ国民は何もわかっていないから大丈夫だ」と政府は判断してやってきたのだ。そうやって、自衛隊をますます増強し海外派兵できるようにしておいて、「9条は現実にあっていない」などうそぶいているのだ。

 それから、メディアは少しも報じないし国民の多くは気にもとめていないが、自衛隊はすでにジブチに海外基地を持ち、常駐している。ジブチは紅海のインド洋側にあり、今回の派遣においても哨戒機P3Cはジブチの部隊から飛ばす。海賊対策を口実にジブチに基地をつくったが、今回のことで中東に近いジブチに基地を設置した意味がより明確になったというべきだろう。

 すでに日米新ガイドラインーー米軍の指揮下で、自衛隊が動くことが規定されており、米軍との一体化が進んでいる。遠く離れた中東においても一体的に動くための基地であり、今回の派遣である。

 ちなみに、日本政府は基地を設置するにあたりジブチとの地位協定を結んでいる。その内容は日米地位協定よりもさらにひどい内容であることを知っておかなくてはならない。例えば、裁判権はすべて日本側にあり、ジブチで自衛隊員がレイプや殺人などどのような犯罪を犯しても、ジブチ法では裁かれない。きわめて不平等な協定を締結している。 

 それから、自衛隊の護衛艦と哨戒機の中東地域への派遣に、「石油連盟」月岡隆会長日本船主協会・小野芳清理事長はともに「歓迎する」と表明したが、自衛隊の派遣がかえって危険なこと、例えばイランを含む中東からの石油・天然ガス輸入や輸送にとってかえって危険になることを、まったく理解していない。

 経済界も何も考えていない、安倍政権に従っているだけだ。危機意識がまったく欠如しているし、無責任体制が広がっているのだろう。政治も三流なら、経済界もみごとに三流だ。

4)安保法制破棄せよ! 9条はすでに底が抜けている

 上述のような危機的な事態にまで進んでいる。メディアが安倍政権に忖度して報じないのだが、国民の多くはこのような危機的状況にあることを知っていないように見える。

 これまでわれわれは9条を守れと言ってきた。すでにそれだけでは明らかにだめだ。9条はすでに一部、底が抜けている。同時に自衛隊の海外派遣を可能にした安保法制破棄を、しかも即刻の破棄を必ずセットで主張しなけばならない。そして、今回の中東への自衛隊派遣を阻止しなければならない。 (文責:林 信治)




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