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ブラフで売りつける、セールスマン・トランプ [世界の動き]

1)軍事産業のセールスマントランプ

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<トランプ米大統領は11日、NATO加盟国に防衛費支出をGDP比4%に引き上げるよう求めた>

 トランプは、7月11日のNATO会議で突然、EU各国首脳にGDP比4%の国防費支出を求めた。
 狙いは、露骨だ。
 NATO軍事費の米国負担を減らし、増やした予算で米国の兵器を買え!という要求だ。トランプは米軍産複合体の代理人になって、発言している。
 現状、EU各国の軍事費は2%に届いていない。これまでは2%まで増やせと言っていたのだが、11日にはいきなり4%まで増やせ!と要求した。
 一応、NATO/ストルテンベルグ事務総長は「まず、2%の目標達成を!」となだめるような態度をとった。
 

2)ガスを買え!

 そればかりか、トランプは、ドイツがロシアからガスを大量輸入するパイプライン計画を批判した。ドイツはバルト海の海底にパイプラインを建設して、ロシア産天然ガスを購入する「ノルトストリーム2」計画を進めている。ウクライナ経由のパイプラインだと、ウクライナが途中で抜き取などのトラブルがあった。安定的に供給を受けるため「ノルトストリーム2」計画を進めている。

 NATO本会議でトランプは「我々はロシアに対して防衛をするのに、ドイツはロシアに巨額の資金を支払っている」。そのうえで「ドイツはロシアの捕虜だ!」とまでこき下ろした。
 
 トランプの本音は、米国のシェールガスを欧州に売ることだ。取引のための「ブラフ」である。しかし、米国大統領が「安全保障」を天秤にかけて、自国エネルギーを強引に取引しているのである。そこのあるのは「損得勘定」だけで、ビジョンなどない。
 取引のために、戦後秩序を破壊しようとするトランプである。
 そうしたところ、ポーランド政府が、「ノルトストリーム2」計画には早速、反対を表明した。ポーランドは米政府の忠実なマリオネットであることを、今回も証明した。
 ヨーロッパにも日本政府、安倍政権のような政府は存在するのだ。

3)混乱するEU

 奇異なのはトランプが、頭からEU首脳を見下し、徹底してこき下ろしたことだ。
 トランプの発言を、ドイツのアンゲラ・メルケル首相は無視した。取り合わないほうがいいと判断したようだ。ただし、今週、トランプのブリュッセル到着直前に、メルケル首相と、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が、トランプの要求に沿って素早く行動し、両国軍事予算の膨大な増加を承認している。そもそもがアメリカの「ご機嫌をうかがう」対応なのだ。トランプが「役割を十分果たしていない」と、連中をいじめた結果として、ドイツとフランスは、それぞれ今後数年間、更に180億ドル、軍事予算を使うと報じられている。
 問題なのは、EU首脳のとった態度だ。
 
 米政府は、シリアやイラク、リビアなどテロ組織を使って戦争を起こした。ISを訓練したのはCIAであり、資金を出したのはサウジや湾岸諸国である。戦争になれば大量の難民が出て、アメリカには来ないが陸続きの欧州になだれ込む。
 難民が殺到するぞ!と、米政府はEUを脅しの材料にしている。中東の戦争もアメリカの商売の一つだ。
 EUでは、移民・難民増加を批判する右翼、排外主義政党が選挙で躍進し、既存の政権はその支持が揺らいでいる。
 EUは、トランプの脅しに、動揺し混乱し、統一して対処できていない。

4) ロシアは脅威か?

 トランプはNATO会議の後、ロシアのプーチンと会談する。7月16日、ヘルシンキでのサミットで、プーチンとの良好な関係を発展させたいと語っている。ヨーロッパの指導者たちに、彼らをロシアから防衛するために必要なNATOへの財政的貢献を増やせと厳しく叱りつけながら、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との友好的な関係を追求するという。

 ワシントンの軍産複合体、ロシア嫌いのイデオローグ連中、その配下にあるメディアの言い分は別にして、ヨーロッパにとって、ついでにいえば誰にとっても、ロシアは実際脅威ではないのは明らかだ。ロシアが“攻撃的”で“拡大主義”だという言説丸ごと、米軍産複合体が軍事予算を増やすためにまき散らした滑稽な、根拠のない見え透いたウソだ。トランプの「ロシアゲート疑惑」もその類だ。

 ロシアがそれほどの脅威でないのに、トランプは一体なぜ、ヨーロッパ諸国にNATOにもっと金を使うよう執拗にせき立てているのだろうか?
 彼が軍産複合体の代理人だからだ。

 米軍産複合体の利益のために、ヨーロッパ経済に、もっとNATO同盟に金を注ぎ込ませるように強いている。29ヵ国のNATO加盟国中、アメリカが総軍事予算の約70パーセントを占めている。米国は軍事予算を減らし、他の加盟諸国がより多く財政負担をさせ、その予算でアメリカ製の戦闘機や戦車やミサイル・システムや戦艦を購入させるのが、米政府にとってより望ましい。

5) NATOこそEUの安全保障を脅かしている
 
 実際のところ、ヨーロッパの安全保障を脅かしているのは、ロシア西部国境沿いでの無謀なNATO部隊強化である。あるいは米ネオコンにコントロールされたウクライナ政府による戦争挑発である。このまったく不当なエスカレーションは、ロシアと国際平和に対する挑発であるとともに、ヨーロッパを一層不安定にする。EUは自らの安全保障を脅かすために、NATOへの軍事費を増やしている!

 これは何か! 転倒したこの事態は何か?
 懲罰的関税と貿易戦争によって、あるいはロシアのガスを買うな!イランの原油を買うな!と命令し、ヨーロッパ経済を傷つけているのは、トランプ指揮下のワシントンだ。ヨーロッパの安全保障を脅かしているのもトランプ指揮下のワシントンだ。
 そのワシントンのためにEUは軍事費を増やすという。

 これはけっして、トランプの性格によるものなのではない。
 凋落する超大国アメリカの、退廃なのだ。「超大国なら、つけをほかの諸国につけ回してもいい」と考えるに至った没落する超大国アメリカの姿なのだ。

6)日本と日米安保

 賢明な読者であれば、同じ構図を思い浮かべるだろう。
 トランプの米政府とEUとの関係は、トランプと日本政府の関係と、相似形を成している。

 朝鮮半島の危機を煽るだけ煽って、イージスアショアを買わされた。一基2,500億円、2基で5,000億円。米朝会談で緊張緩和がおとずれても、そのまま購入し秋田県と山口県に配備するという。この先メンテや更新に引き続き費用がかかる。
 欠陥機オスプレイを17基3,500億円を購入し自衛隊に配備するという。

 こういった安倍政権の対応、さらには存在そのものが、日本の安全保障を脅かしているのだ。(文責:林 信治)





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