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ドゥテルテ政権は、誰の政権か? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ政権の転換

1)NPAをテロ組織に認定、戒厳令を延長

 フィリピン上下院は12月13日特別合同会議を開催し、ミンダナオに敷かれた2017年12月末が期限の戒厳令を延長するドゥテルテ大統領の提案を審議。賛成240票、反対27票で可決し、2018年12月31までの延長を承認した。
 ミンダナオ・マラウィ市を占拠した「マウテ・グループ」は、約1,000人の死者を出し、6月の発生から5カ月後の10月に掃討鎮圧しており、戒厳令を敷いた理由はなくなったはずだったのに、解除せず、2018年末まで延長した。この奇妙な延長提案は、ただドゥテルテ政権側の都合によるものだし、そこに政権の意図や性格が現れていると見なければならない。

2)ドゥテルテ政権の明確な政治転換

 ドゥテルテは就任前や就任当初から、フィリピン共産党(CPP)、新人民軍(NPA)、モロ・イスラム解放戦線と和平交渉に取り組み、当初は良好な関係を結んだかに見えた。しかし、フィリピン国軍と共産勢力との武力衝突はやまず、すでに和平交渉は打ち切っている。
 その上、ドゥテルテ政権は12月5日には、CPPと傘下の軍事組織NPA をテロ組織と認定し、対決姿勢を打ち出した。ドゥテルテは議会にあてた書簡で「NPAが暴力的な手段で政府転覆を狙っている」として戒厳令延長の理由の一つに挙げていた。

 ドゥテルテは新たに共産勢力の制圧に乗り出す可能性をあからさまに示しており、反政府勢力に一層強硬な姿勢で臨むとみられる。戒厳令下では、治安当局は逮捕令状なしで容疑者を拘束できる。フィリピン国軍にとって、CPPとNPAに武力攻撃する準備が整ったと見るべきだろう。

3)ドゥテルテ政権の性格

 ドゥテルテ政権は、確かにこれまでの政権と違い、米国支配に従わず、東南アジアで影響力を増す中国との関係改善に舵を切った。背景には、フィリピン資本家層、支配層の支持がある。経済界は中国との関係改善のうちに経済発展を構想しているからである。
 フィリピン経済の最近の成長によって、現状のインフラ未整備がさらなる発展のネックになっていることは、誰の目にも明らかになっている。政権についたドゥテルテは経済成長を持続させるためのインフラ整備計画を公表し、中国政府やアジアインフラ投資銀行(AIIB)、日本のODAなどから資金を調達し、他方、長期にわたりインフラ整備に必要な新たな税収を得るための税制改革も行い、これまでの政権とは異なり確実に計画を実行している。

 フィリピンの資本家層、支配層の利益に沿った経済政策を採用しており、この点でもフィリピン経済界はドゥテルテを支持しているのは明らかだ。
 麻薬撲滅運動は政治的パフォーマンスであるが、押収した麻薬を転売や汚職の黒幕である警察を摘発せず、撲滅運動は警察の意向に沿って進めている。また、戒厳令の延長はフィリピン国軍主導のもとに反政府勢力に一層強硬な姿勢で臨む方針の提示である。いずれも、既存の支配勢力、暴力装置である警察とフィリピン国軍とともに、その合意の上で、政権運営にあたることを一層明確にしたととらえるべきである。政権の性格がより明確になった。

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