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指導者だけ変わってもだめだ! [世界の動き]

指導者だけ変わってもだめだ!

スー・チー氏に期待するだけの民主化運動では
この先何も解決しない


1)ミャンマーのロヒンギャ問題

 着の身着のままでミャンマーからバングラディッシュに避難するロヒンギャ難民の姿が、連日報道された。
 発端は、2016年10月、ロヒンギャのイスラム過激派がミャンマーのラカイン州警察署を襲撃したとされる事件だという。2017年8月末にも同様の事件が発生したと伝えられた。真偽のほどは定かではない。
 これに対してミャンマー軍と治安機関が一斉に「反撃」し、ロヒンギャの集落を焼き払う焦土作戦を展開した結果、昨年から今年にかけて40万人を超えるロヒンギャ難民がバングラディッシュに避難するという大規模な人道危機を引き起こした。40万人とはとてつもない人数だ。

 ミャンマー連邦共和国は諸民族の連合体であるが、ロヒンギャは含まれていないとされる。ミャンマー政府はロヒンギャを国民と認めておらず、法的には不法滞在者として扱われ、無国籍者の状態に置かれてきた。
 仮にバングラディッシュから帰還を希望する難民がいても、国籍がないことを理由にミャンマー政府は帰国を認めない方針だ。これは歴代政府の立場であり、アウン・サン・スーチー国家顧問が率いる現政府でも同じだ。

2) スー・チー氏が率いるミャンマー政府に期待できるのか?

 人権、民主化を掲げて政権に就いたスー・チー政権(スー・チー氏は大統領ではなく国家顧問であるが、実質的には政権の権限を持つのでスー・チー政権とした)であるが、この人権問題に対してどう対処するのか、その方針が一向に明らかになっていない。沈黙を続け、態度を明確にしていないのだ。

 避難する大量のロヒンギャ難民の姿は、世界中に報道され、国連もその解決をミャンマー政府に要請した。
 ところがスー・チー氏は、2017年8月のASEAN創設50周年のマニラ会議を欠席し、9月の国連総会にも姿を見せなかった。おそらく海外からの批判・非難を避けるためであろう。

 ロヒンギャの集落を大規模に焼き払いミャンマーに帰還できないように焦土作戦を展開した軍の責任は極めて重い、厳しく糾弾されなければならないし、その対応は即刻改められなければならない。
 スー・チー氏、そしてミャンマー政府は、この先どのようなロヒンギャ問題にどのように対処していくべきなのか? どのように解決していくべきなのか? きちんと指し示さなければならない立場だ。

 はたして、スー・チー氏が率いるミャンマー政府に期待できるのか?

3)「今はとにかくスー・チー氏を支持すべき」なのか?

 今はとにかく、スー・チー氏とスー・チー政権を支持すべきだ、という以下のような考えをよく聞く。

 国防、治安、国境管理は憲法の規定で軍の専権事項とされており、大統領やスー・チー国家顧問には指揮権はない、のだそうだ。(『世界』11月号 竹田いさみ「ロヒンギャ難民を政治的に利用するプレイヤーたち」)
 スー・チー氏には軍の移動、撤退を命じる権限はないのだから、したがって、ロヒンギャ難民問題の責任はないと論評する人もいる。

 逆に言うと、ロヒンギャ問題を解決するためには、軍や治安機関の支配権もスー・チー氏が握るべきで、そのようにしてやっとロヒンギャ問題解決へ踏み出すことができる。あくまで諸悪の根源は軍であるという論評だ。 

 あるいは、仮にスー・チー氏に責任があるとしても、彼女に代わる指導者はおらず、退陣すればまた軍事政権となる。ロヒンギャ問題を早急に解決してほしいが、よりましな人物がいないので、いまは彼女に期待する以外にないと評する人もいる。(根本敬上智大学教授、「NHKクローズアップ現代」)
 
 さらには、スー・チー氏はロヒンギャ問題に対する国際社会の批判をよく理解しているので、国際社会がスー・チー氏は支持しながら、彼女がロヒンギャ問題を解決できるように圧力をかけ、解決していける国際環境をつくっていくことが重要だ、という主張も見受けられる。

 とにかく今はスー・チー氏を支持して見守るべきだというのだ。
 
 ミャンマーの現状と歴史をよく知らないので、判断がつかないのだが、果たして本当なのだろうか? それしかないのか? 

4)ミャンマーの民主化の実態が明らかになった!!

 ロヒンギャ問題を通じて、「ミャンマー民主化」の実態・実力、あるいはその欠点が暴露されたのは確かだろうと思う。

 民主化は軍事政権への批判として実現したが、ミャンマー民衆は軍ではなくスー・チー氏を新たに指導者に迎えるという選択をした。そこには、これまで禁止・弾圧されてきたこともあって民主化運動の実態が十分に伴っていないことが明らかになった。民衆は選挙に際し新しい指導者を選択する役割を果たしただけだった。下からの広範な人々の民主化運動とそのエネルギーが欠けていることが、今の局面を迎え問題となっている。

 したがって、指導者だけ代えてもだめだ、そんなんでは決して民主化は実現しない、ということではないか。スー・チー氏が自分たちの政治運動を、少数の上意下達の組織から、広範な下からの民衆が自主的で自発的に参加し闘っていく組織に早急に切り替えていかない限り、民主化を、民社的なミャンマー社会を、この先決して建設していくことができないということではないか。スー・チー氏に期待するだけの民主化運動ではこの先何も解決しないということだ。その点は、われわれも同じだ。

 どの程度なのかよくわからないのだけれど、今年になってスー・チー氏への失望感が広がり、ともに民主化を闘ってきた人々の一部がスー・チー支持から離れつつあるという。

 いずれにせよ、ロヒンギャ問題への対処においてスー・チー政権の真価が問われる。(文責:林 信治)




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