SSブログ

慰安婦問題 要請書を提出 [元「慰安婦」問題]

 8月5日、安倍首相、岸田外相宛てに、慰安婦問題解決を求める要請書を提出し、その後首相官邸前で1時間ほど訴えました。 暑くて汗が噴き出ました。
 
 安倍首相が8月15日に出す予定の「戦後70年談話」に対して、学者や市民など国内外の団体、各国政府高官から、内容を危惧する発言や声明が相次いでいます。どれも共通する危惧を表明しています。

 発表前にもかかわらずあまりに批判が多いためか、安倍首相は談話に対する興味を失ったかのような態度さえ見られます。
 首相周辺からは「談話は閣議決定しない」とか、「談話発表後、記者会見はしない」などという声が漏れ聞こえてきます。

 慰安婦問題は、歴史評価、歴史認識の問題の一つです。ぜひ安倍談話で解決に踏み出してもらいたいと期待しています。

ーーーーーーーーーーーーー
安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)三菱マテリアルが謝罪と補償の和解案を提示

 第2次大戦中日本国内の銅山や鉱山などで米国人捕虜らに強制労働をさせたとして、三菱マテリアルの木村光常務執行役員、岡本行夫社外取締役らが米ロサンゼルスで7月19日、元米兵捕虜でカリフォルニア州に住むジェームズ・マーフィー氏(94)と面会し、謝罪の言葉を伝えた(7月20日日経新聞)。生存しかつ連絡のとれた元捕虜は2名であり、マーフィ―氏だけが出席した。

 三菱マテリアルの前身である三菱鉱業が米英豪蘭の捕虜約900人を日本国内4カ所の鉱山に送り、過酷な労働を強いた。木村常務は「事業を継承する会社として道義的な責任を感じている」と述べ、謝罪の表明は自社単独で決断した」と説明した。
 米兵捕虜に対する強制労働について、日本政府はこれまでに謝罪しているが、企業による元捕虜への公式な謝罪は初めてである。

 また7月24日共同通信は、三菱側が、中国人元労働者が中国の裁判所に起こした損害賠償訴訟で中国人元労働者と遺族に謝罪し、補償金を支払う和解案を提示したと報じた。2014年3月、中国人強制労働者のうち生存者約40人は三菱マテリアルと日本コークス工業(旧三井鉱山)を相手に、1人あたり100万元の賠償金とともに日中両国の主要日刊紙に謝罪声明を掲載することを求める内容の訴訟を北京第一中級裁判所に起こしている。
 三菱側が提示した和解案は、
 △使用者として歴史的責任を認め、深甚なる謝罪と哀悼の意を示す
 △1人当たり10万元(約160万円)を支払う
 △記念碑の建設費1億円、行方不明者の調査費2億円を支払う
 △慰霊追悼行事に元労働者らを招く費用として一人当たり25万円を支払う――であると伝えている(共同通信)。

 中国新聞網によると、三菱側は日本政府が第2次世界大戦中に強制的に3万9000人の中国人を徴用し、うち3,765人が三菱鉱業で強制労働に従事させられたこと、労働者のうち720人が死亡したことを認め、人権侵害があったことも確認した。

 和解案は現時点ではまだ合意には至ってはいない。「第2次大戦強制労働に関連する対日本賠償事件弁護士団」は7月24日、三菱マテリアルとの謝罪と補償問題について合意してないと声明し、三菱マテリアル側も、この問題についての問い合わせに「決定された事実はない」と回答している。

 1972年の日中共同声明によって中国政府および中国人労働者個人の賠償請求権は放棄されたとする日本政府の主張に従い、これまで三菱は中国人被害者の要求に応じてこなかった。したがって三菱側からの和解案の提示は、最近になって三菱側が従来の態度を改め、謝罪し補償し解決をめざす姿勢に転じたことになる。(三菱側の和解案の最初の提示は2014年1月としている、8月3日朝日新聞)

 日本の企業が、中国人元労働者に謝罪し、補償金を支払う方針を示したのは初めてで、補償の対象者も最多になる。海外ビジネスの環境改善と中国市場の開拓を念頭に置いた措置であり、三菱マテリアルの謝罪と補償は今後も続くものと思われる。

 他方、韓国人徴用被害者について、三菱マテリアルは中国とは「法的状況が違う」という立場をとっている。その理由を「系列の三菱重工が現在、韓国人強制動員被害者と損害賠償責任において訴訟中であることを意識した対応」と説明している。
 岡本社外取締役は、「植民地時代の朝鮮人強制徴用は国際労働機構が禁止した強制労働に該当せず、韓国人個人の賠償請求権は65年の日韓請求権協定で終結した」と日本政府の立場をそのまま主張した

 三菱マテリアルの中国と韓国、米国被害者に対する一貫しない対応には多くの問題がある。韓国内ではすでに三菱側の対応が差別的であると批判が広まっている。三菱は、あたかも相手を選び対処しているようであり、事の重要性を真に理解しておらず、そもそも人権意識に欠けている。

 ただ重要なことは、三菱が「個人の賠償請求権は存在しない」とする従来の立場を転換したことだ。三菱は「個人の賠償請求権も含め解決済」と主張する日本政府に従って来たわけだが、その姿勢も転換したことになる。

 中国市場やグローバル市場に進出し生き抜くためには、「戦犯企業」というイメージを払拭しなければならないと判断したのであろう。日中共同声明、日韓条約などによって解決済と強弁してきた日本政府の姿勢では、世界市場では受け入れられない現実を認めざるを得なくなったからだろう。

 今回の動きは政府間交渉の結果ではない。むしろ逆に日本政府をあてにしないで独自に対処する姿勢を示した。安倍政権の頑なな態度に従っていたのでは中国や世界で生き抜けないと判断したのではないか。(あるいは、岡本行夫社外取締役は安倍政権とも近しい人物であるから、安倍政権も三菱側の対応を承知したうえで、当ケースを通じて相手の反応を測ろうとしているのかもしれない。)

 いずれにしても、日本政府、外務省の主張が国際社会で受け入れられず孤立している現状、さらには日本政府、外務省には問題を解決していく上での見識が欠如し、なおかつ外交力がきわめて低い、頼りにならない存在であるという現状を証明している。

 さて、慰安婦問題を取り囲む状況もまったく同じではないだろうか?
 今こそ日本政府はこれまでの主張(個人賠償も含めすべて解決済とする従来の主張)を転換し、みずから主導して慰安婦問題の解決を表明することが必要であり、そのような転換を私たちは要求する。今が残された機会である。

 8月3日、韓国・朴槿恵大統領は民主党・岡田代表と会談し、「(慰安婦問題を)よい方向で解決すれば、韓日の安定的な関係に寄与する、事実上今が解決の最後の機会だ」と述べた(8月4日、日経)。 朴大統領の言うとおり、今が解決の最後の機会であるのは間違いない。

2)日本の名誉と信頼を損ねる自民党の提言

 7月28日、自由民主党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(委員長・中曽根弘文元外相)が、慰安婦問題における事実に基づかない報道等により、日本の名誉と信頼が大きく損なわれていると、提言を取りまとめ、安倍総理に提出した。

 提言書は、「諸外国において、慰安婦問題をめぐり『性奴隷』といったセンセーショナルな表現を含む碑や像が設置され、客観的な事実関係に基づかない一方的な主張による報道や、諸外国の中央及び地方の議会における決議が行われ、著しく日本の名誉を毀損し、国益を損なうものとして看過できない。早急に日本人及び日本の名誉と信頼を回復する必要がある。そのためには、慰安婦問題に関する客観的事実に基づく日本の主張や取組に対し、国際社会の正しい理解を得ることが重要だ」としている。
 
 提言の内容があまりにもひどいことに愕然とする。真実を明らかにして、人権侵害を回復しようとする意志、姿勢はひとかけらも含まれていない。慰安婦問題を否認し抹殺することが国益であり名誉と考えている。

 ①請求棄却、グランデール市慰安婦像撤去請求裁判
 提言書は、諸外国で慰安婦像の撤去を求めていくべきとしながら、米グランデール市の慰安婦像撤去訴訟において、2015年3月すでに判決が下され、訴えが棄却された事実には触れていない。請求棄却ばかりではなく原告はSLAPP裁判(strategic lawsuit against public participation 「市民参加を妨害するための戦略的訴訟」)と認定され、原告のボロ敗けに終わった。そのような事実さえ書いていない。
 「都合の悪い事実には触れない」のが提言の特徴の一つになっている。

 ② 慰安婦制度は性奴隷制
 慰安婦制度が性奴隷制度であったと、国連人権委員会勧告、各国の議会決議で批判されている点について、提言書は、「客観的な事実関係に基づかない一方的な主張、センセーショナルな表現」と批判しているが、その根拠を何も示していない。
 2014年、日本政府は国連・自由権規約委員会審査中に「慰安婦制度は性奴隷制度ではない」と主張していたが、最終所見の「慰安婦」問題に関する項目の表題に「性奴隷」という言葉が記載され、日本政府の主張が否定された。提言書はそのような事実にも触れていない。
 慰安所では、移動の自由、廃業の自由などさまざまな自由が剥奪されていたが、何よりも重要な点は日本兵との性交を拒否する自由がなかった。このことが「慰安婦制度は性奴隷制度」とされる最も重要な点である。この点に対するまともな反論さえない。

 ③「海外に広まった吉田証言の誤解を解く」
 『朝日』の吉田証言報道が国際社会の「慰安婦」問題認識に誤解をもたらしたとしきりに指摘し、吉田証言の誤りを世界に向けて宣伝活動することを提言している。しかし、どのような影響があったかはまったく記していない。
 海外では吉田証言はそもそも重視されていないし、影響もない。(通常右派は、クマラスワミ報告が吉田証言に言及していることを指摘するが、クマラスワミ報告が直接吉田証言に言及しているのは一カ所だけで、さらに別の箇所では秦郁彦氏が吉田証言の信憑性に疑義を呈していることにもちゃんと記載している。クマラスワミ報告における吉田証言の重みは右派メディアによって驚くほど誇張されている。)

 このように指摘していけば提言は、キリがないほどのごまかし、誤り、嘘で固められている。提言の内容を読み、あらためて驚くほどがっかりする。都合の悪い事実を無視し、慰安婦問題を強制連行の問題にすり替え、河野談話の意義をねじまげている。

 真実を明らかにして、人権侵害を回復しようとする意志はひとかけらも含まれていない。こころざしは低く、論述もきわめていい加減である。これがネトウヨの掲示板に書かれているのではなく、自民党の安倍政権に対する提言であること、自民党の、政権中枢にいる政治家の見解であることに、さらに愕然とする。日本国内ばかりでなく、世界中の人々、政府が、自民党・安倍政権の見識のなさ、人権意識の欠如を再確認し呆れることだろう。

 実際には委員らが安倍首相の考えはこうだろうと忖度してまとめたものでもあろう。この先、安倍政権の政治家、政府官僚、マスメディアが、大切に奉って対処するのであろうか。

 「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」と称しながら、実際には委員会は「日本の名誉と信頼を損ねている」。提言を直ちに撤回することを要求する。

3) 国際政治学者74名の声明、「歴史認識の確実な踏襲を!」

 7月17日、戦後70年の節目に安倍晋三首相が出す「安倍談話」をめぐり、国際政治学者ら74人が17日、共同声明を発表した。1931~45年の戦争を「国際法上、違法な侵略戦争だった」と指摘し、侵略や植民地支配への反省を示した「戦後50年談話」や「60年談話」の継承を求めた。
 声明は「日本が台湾や朝鮮を植民地として統治したことはまぎれもない事実」「過ちを犯したことは潔く認めるべきだ」「違法な侵略戦争であったことは国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着している」と述べ、戦後70年談話で国際的信頼を失うことのないようにと、説得的な叙述で丁寧に要請している。大沼保昭(明治大特任教授)、三谷太一郎(東京大名誉教授)両氏ら10人が発起人となり、歴史学、国際法学、国際政治学の研究者ら計74人が署名した。
 私たちもこの声明に賛同する。

 安倍首相が「過去の首相談話を全体として継承する」としながら、他方で「侵略の定義は定まっていない」と発言し、日本の戦争は違法な侵略戦争だったという歴史認識を否認しようとしている。村山、小泉談話に盛り込まれた「反省」「おわび」「侵略」「植民地支配」といった文言について「同じことを入れるのであれば談話を出す必要がない」と発言している。

 安倍首相の一連の発言がどれほど矛盾しているか、国内外を問わず多くの人々、政府はすでに気づいており、このような矛盾した発言を繰り返す安倍首相の本心はどこにあるのかを疑いつつある。さらには「過去の首相談話を全体として継承する」真の意味を安倍首相は受け入れていないのではないかと、発表前から国内外の多くの人々は共通する危惧を抱き、戦後70年談話によって日本が国際的信頼を失わないように、声明や発言を繰り返しているのである。

 7月後半以降の声明や発言を下記に記す。
 ○7月17日、日本の国際政治学者74名の声明、
 ○7月21日、ラッセル米国務次官補の発言:「韓国や中国と歴史問題で和解を進めるため、歴代内閣の立場を引き継ぐのが望ましい」、
 ○7月29日、日米欧韓の知識人528人声明、「過去を覆して未来に向かえず」
 ○8月3日、朴槿恵大統領は、民主党・岡田代表との会談で、「歴代談話の歴史認識を確実に踏襲することを期待する」と表明

 7月28日の読売新聞は、記事「戦後70年談話 苦慮する首相」で、「安倍首相は、独自色を出すため、当初閣議決定しない予定だった」、「過去の問題ではなく、未来志向の談話にする」、「中国韓国を刺戟しないように、談話発表に合わせた首相記者会見は見送る方向だ」(7月28日読売)と報じた。

 安倍首相とって「未来志向」とは、過去の違法な侵略戦争、植民地支配に対する反省とお詫びに触れないで未来だけを語ることのようだ。やたらと「未来志向」の言葉で飾るならば、国内外からごまかしたと受け取られるだろう。
 また、総理大臣は国政の最高責任者として日本を代表する立場にあり、「戦後70年談話」の閣議決定有無は、一般国民にとって、ましてや海外の諸国民にとって、意識されない。肝心なのは談話の中身である。ましてや「談話発表に合わせた首相記者会見を見送る」ことで、少しでも批判をかわそうとするのはそれこそ姑息というものだ。

 「日本が台湾や朝鮮を植民地として統治したことはまぎれもない事実」、「違法な侵略戦争であったことは国際法上も歴史学上も国際的に評価が定着している」。このような歴史認識は、決して一部学者だけのものではなく、戦後国際社会が一貫して維持してきた。これを否定することは、中国・韓国のみならず、米国を含む圧倒的多数の国々に共通する認識を否定することになる。そればかりでなく、戦後70年にわたって日本国民が営々と築き上げた日本の高い国際的評価を、無にすることになりかねない。

 戦後70年談話で「過ちを犯したことは潔く認める」ことが重要だ。そうして初めて日本は国際社会のなかで信頼を勝ちとっていくのであり、そのことこそ本物の未来志向の基礎となる。戦後70年談話は残された機会であり、きちんと対応しなければならない。「過去の首相談話を全体として継承する」とは、いったいどういう意味であるのかを、安倍首相は「戦後70年談話」において、明確に表現しなくてはならない。そのことをあらためて要請する。

2015年8月5日
フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表: 大森 進


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。