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安倍政権は、国内外の歴史家の声明にきちんと答えよ! [元「慰安婦」問題]

 6月3日、慰安婦問題の即時解決を求める要請書を提出しました。
 遅くなりましたが、下記に示します。

 米国や日本の多くの歴史学者が、慰安婦問題に対する安倍政権、外務種官僚、マスメディアの主張、考えが、誤りであることを指摘しているばかりか、誤りが大っぴらに語られている日本社会の現状を危惧し、さらに安倍政権、外務種官僚、マスメディアはその誤った主張を改めるように要求しています。
 
 安倍政権、日本の官僚、マスメディアの主張は、国際的に非難されており、孤立を深めています。その尋常でない事態を、多くの日本国民は知りません。


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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)海外の歴史家187名が「慰安婦」問題の解決を求め声明
 
 5月5日、米国をはじめとする海外の日本研究者ら187名が、連名で「日本の歴史家を支持する声明」を発表した(5月19日現在、456名が署名)。

 注目すべきは、『ジャパン・アズ・ナンバーワン』のエズラ・ヴォーゲル氏、『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワー氏、『歴史としての戦後日本』のアンドリュー・ゴードン氏、『歴史で考える』のキャロル・グラック氏、『国民の天皇』のケネス・ルオフ氏、『天皇の逝く国で』のノーマ・フィールド氏ら、日本研究で業績を成したトップクラスの研究者・歴史家ばかりか、米国のアジア政策にまで影響を与えるような名の知られた人物がほぼ全員名を連ねている。内容以前にこのような声明が発表されたこと自体、日本が国際社会のなかで信頼を失い孤立しかねない尋常ならぬ事態のうちにいることを指し示している。

 声明は、安倍首相が米国議会の両議院総会での演説を行った一週間後に発表された。表明されているのは、首相がこれまで「慰安婦」問題の解決を求める声を無視してきたばかりか、その史実を覆そうとする歴史修正主義的な動きを明白に後押してきた一連の行動への失望である。「慰安婦」被害者に対して「人身売買」被害にあったと同情を示してみせ、日本政府の責任への言及を巧妙に回避した4月29日の安倍首相の演説への失望と批判でもある。
 なかでも、日本政府が米国の世界史教科書の出版社や著者に「慰安婦」問題についての記述を書き換えるよう迫った件は、政治的立場を超えて米国の学界から反発を受けている。

 また、「日本の歴史家を支持する声明」というタイトルからうかがい知れるように、署名した研究者たちは日本における歴史研究が政治的な攻撃に晒されていることを危惧し、日本政府や歴史修正主義者たちによるまっとうな歴史学への攻撃を批判しているという性格も持つ。

 したがって、当声明が安倍政権、日本政府へ向けられた批判であることは明白だ。日本がこの先、人権を尊重しない、歴史の教訓を学ばない孤立した道へとすすむのか? と問うているのである。

2) 歴史学会・歴史教育者16団体が声明
 
 欧米の歴史学者の声明に続き、5月25日、日本国内の歴史研究者でつくる学会16団体約6,900人以上が、「慰安婦」問題の解決を求め声明を発表した。「『慰安婦』問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」)

 当声明は、歴史学研究会が2014年10月15日に発表した声明に続くものでもあり、今回は日本歴史学界における規模・知名度で上位5団体中4団体が参加し、参加団体数、人数が格段に広がった。4団体とは歴史学研究会、歴史科学協議会、日本史研究会、歴史教育者協議会。それぞれ会員1,200-2,200人を擁する全国規模の学術団体であり、会員たちの研究分野は日本史・世界史の古代史から近現代史にまでわたる。

 これまで安倍晋三首相は歴史歪曲について質問されるたびに、「歴史は歴史家に任せるべきだ」と答えて批判をかわしてきた。この声明には、「慰安婦」問題について、任せるべき日本の歴史家による歴史判断が示されている。この現実を安倍首相は厳粛に受け取らなければならない。

 声明は、日本軍による「慰安婦」に対する直接的な暴力だけではなく、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配、差別構造との連関を指摘している。例えば、性売買の契約に「合意」する場合があったとしても、「合意」の背後にある不平等で不公正な構造の問題こそが問われなければならない。日常的に階級差別や民族差別、ジェンダー不平等を再生産する政治的・社会的背景を抜きにして、直接的な暴力の有無のみに焦点を絞ることは、問題の全体像から目を背けることに他ならない。すなわち、日本帝国による侵略戦争、植民地支配の歴史的な評価のなかで「慰安婦」問題をとらえなければならないことを強調している。そのような歴史認識こそ近年の歴史研究の到達点である。

 2014年8月『朝日新聞』による吉田清治証言記事取り消し事件を契機として、「慰安婦」強制連行の事実が根拠を失ったかのような言動が、一部の政治家やメディアの不当な宣伝がなされた。その現実を批判する形で、歴史学会・歴史教育者団体は見解を表明している。
 
 「第一に、河野談話は、吉田清治による証言を根拠になされたものではない。したがって、記事の取り消しによって河野談話の根拠が崩れたことにはならない。」
 安倍政権が河野談話を継承すると言いながら、その実質を骨抜きにしようとする行為を続けていることは、もはや国内外で明白となっている。それは国内外の人々を愚弄するものであり、加害の事実に真摯に向き合うことを求める東アジア諸国との緊張を、さらに高めるものと言わなければならない。

 それに加えて募集の際の強制連行についても明確に述べている。「強制連行された「慰安婦」の存在は、これまでに多くの史料と研究によって実証されてきた。強制連行は、たんに強引に連れ去る事例(インドネシア・スマラン、中国・山西省で確認、朝鮮半島にも多くの証言が存在)に限定されるべきではなく、本人の意思に反した連行の事例(朝鮮半島をはじめ広域で確認)も含むものと理解されるべきである」とし、強制連行を「家に乗り込んでいって強引に連れて行った」(2006年10月6日、衆議院予算委員会)ことだけに勝手に限る安倍首相の発言が誤りであることを直接、指摘している。

 「第二に、「慰安婦」とされた女性は、性奴隷として筆舌に尽くしがたい暴力を受けた。近年の歴史研究は、動員過程の強制性のみならず、動員された女性たちが、人権を蹂躙された性奴隷の状態に置かれていたことを明らかにしている。さらに、「慰安婦」制度と日常的な植民地支配・差別構造との連関も指摘されている」とし、「慰安婦」問題は強制連行に限られた問題ではなく、「慰安婦」制度自体が日本軍による犯罪であることも明確に述べている。

 そして、慰安所に動員された後、居住・外出・廃業のいずれの自由も与えられず、性の相手を拒否する自由も与えられていない、そのことを「性奴隷の状態に置かれていた」と規定し、国際会議で「性奴隷」という表現を決して認めない安倍政権、外務省官僚の主張をこれまた明確に批判している。
 
 また、北星学園大学や帝塚山学院大学の事例に見られるように、大学教員個人への誹謗中傷はもとより、所属機関を脅迫して解雇させようとする暴挙が発生していることに対し、「第三に、一部マスメディアによる、「誤報」をことさらに強調した報道によって、「慰安婦」問題と関わる大学教員とその所属機関に、辞職や講義の中止を求める脅迫などの不当な攻撃が及んでいる。これは学問の自由に対する侵害であり、断じて認めるわけにはいかない」としている。

 「『慰安婦』問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」は、安倍政権、日本政府官僚の考えの誤りを適確に批判しており、私たちはこれを支持する。安倍政権、官僚は誤りを認め、態度を改めなければならない。

 でなければ、過酷な被害に遭った日本軍性奴隷制度の被害者の尊厳を、さらに蹂躙することになるばかりか、日本政府が人権を尊重しないことを国際的に発信するに等しい。
当該政治家、官僚、メディアに対し、過去の加害の事実、およびその被害者と真摯に向き合うことをあらためて求める。

3)安倍政権は、国内外の歴史家の声明にきちんと答えよ!

 戦後70年の今年は、日本政府にとって過去の植民地支配と侵略の問題に立ち向かい指導力を見せる絶好の、かつ残された数少ない機会だ。国内外の歴史家の指摘や批判にきちんと応えなければならない。
 今年8月に準備している「戦後70年談話」こそ、4月29日の米議会での安倍首相演説のように、レトリックによって歴史修正主義の歯に衣を着せ、巧妙に日本政府の責任を回避して済ませてしまい、被害者や国内外の歴史学者ばかりでなくアジア諸国を含む世界の人々に失望させることのないようにしなければならない。

 すでに安倍首相を含む日本の政治家、日本の官僚の人権意識の欠けた、反省のない歴史認識は、何度も世界の人々の前に明らかになっており、それ相応の評価がすでに定着している。
 安倍政権がこれまでの考えと態度をあらため、「戦後70年談話」で「慰安婦」問題を解決する決意を表明することを望む。

2015年6月3日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代表 大森 進

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