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『NHKと政治権力』(永田浩三著)を、読む [映画・演劇の感想]

 『NHKと政治権力』(永田浩三著)を、読む  
 
岩波現代文庫  2014年8月19日発行


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<『NHKと政治権力』 永田浩三著 岩波現代文庫>


 2000年の女性国際戦犯法廷を取材したNHKドキュメント番組に対し、安倍晋三・中川昭一ら政治家による介入があり、NHK幹部がその意向をくみ取り番組改変を行いました。放送直前に政治家とNHK幹部が接触し、「慰安婦」問題を扱った番組を著しく改変したのです(「ETV2001 事件」)。

 番組「ETV2001」の総括プロデュ―サーであった永田浩三さんが、政治家の意向をNHK内部で忖度しどのように番組改変が行われたのか、その経過をまるでドキュメンタリーのように詳しく描出しているのがこの本です。自身がいったん作成した番組を、NHK幹部の指示で切刻むことを強要された当のプロデューサーですから、これ以上詳しい描写はありません。
 番組改変の経過だけでなく、どうしてNHKでこのような政治介入が起きるのか、その原因、背景である「NHKと政治権力の関係」も、詳しく描きだしています。

 事件後の経過は厳しいものでした。永田さんらは左遷されます。番組作成の協力会社、ドキュメンタリー・ジャパンの番組担当スタッフは退社を余儀なくされ、NHKエンタープライズの関係者が降格させられます。ただ、著者は事件後すぐに告発できたわけではなく、VAWW-NETジャパンがおこした裁判第一審でもNHK側の証人として出廷しています。

 このような経過が、著者の「悔い」も含めそのまま正直に書き記されており、信頼して読むことができように思いました。ただ、NHK内部にいた人の描出であり、VAWW-NETジャパンの立場、或いはドキュメンタリー・ジャパンの番組担当スタッフからすればまた少し違った描写になるのかもしれません。

 2005年1月になって、番組作成の長井暁デスクが記者会見し、当時何があったか告発します。勇気ある告発でした。そのあと著者ら何人かが集まり、当時何が起きたのか調査し記録します。そして2006年3月高裁では、著者は証言台に立ち、番組改変の事実経過を述べ告発します。その結果でしょうか、二審の高裁ではVAWW-NETジャパンの主張が認められ勝利判決を得ます。判決内容は、いろんな人々の努力で勝ちとられた成果であることがよくわかります。

 ただ、最高裁判決は、番組への政治介入を「NHKの編集権」として認める残念なものでした。また、永田さんらが告発した政権寄りのNHKの体質はいまだ克服されていません。「ETV2001 事件」以来、NHKでは「慰安婦」問題を扱った番組は作成されていません。安倍政権になった2014年には、籾井勝人会長就任や長谷川・百田経営委員の送り込みなど政権による介入もより露骨になっています。

 著者・永田浩三さんは、「NHK籾井勝人会長・辞任&罷免の勧告」退職者1,527人の署名による経営委員会への申し入れ書の呼びかけ人179名にも名前を連ね、今もなお告発し続けています。

 手にとって読まれたらいかがでしょうか?  (文責:児玉繁信)

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