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朝日非難キャンペーンは、計画通り [元「慰安婦」問題]

 遅くなりましたが、11月5日提出した「慰安婦問題の解決を求める要請書」を下記に添付します。

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安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

 日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書

 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)言論の圧殺だ!――安倍内閣・自民党に責任がある

 「慰安婦」報道にかかわった元朝日新聞記者が非常勤講師を務める北星学園大(札幌市)に、3月から爆破予告など不当な脅迫や抗議が続いてきたが、10月31日北星学園大・田村信一学長は、元記者の非常勤講師と来年度契約を更新しないことを明らかにした。脅迫によって犯人の要求に応じたことになる。

 また10月13日、帝塚山学院大(大阪府)に元朝日記者の教授(67)を「辞めさせないと爆破する」と脅迫文が届いていた(10月30日明らかになった)。脅迫文には、元記者が「慰安婦」問題に関する記事を書いたことに対する批判があり、「辞めさせなければ、学生に痛い目に遭ってもらう。くぎを入れたガス爆弾を爆発させる」などと書かれていた。元記者は10月30日退職した(大学は「脅迫文とは関係ない」としている)。

 言論の自由の圧殺が堂々と行われている。戦前と同じような事態が進行している。「美濃部達吉の天皇機関説」に対する批判・弾圧などとそっくりではないか。

 自民党の国際情報検討委員会(原田義昭委員長)は10月2日、「決議」をあげ、「朝日新聞が慰安婦問題などにつき虚偽の報道であったことを認めた」ことを口実に、「いわゆる慰安婦の『強制連行』の事実は否定され、性的虐待も否定されたので、世界各地で建設の続く慰安婦像の根拠も全く失われた」などと指摘している。

 また、10月30日には、「慰安婦」問題に関する自民党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(中曽根弘文委員長)が初会合を持ち、稲田朋美政調会長は「客観的事実に基づいた政府の立場を内外に発信し、日本の名誉を回復すべく行動をとるべきだ」と強調。海外への情報発信強化策などを年内にまとめ、政府に申し入れる方針を表明している。

 外務省は10月10日、アジア女性基金の「拠金呼びかけ文」文中に「多くの女性を強制的に『慰安婦』として軍に従わせた」との記述が含まれていたことを理由に、「呼びかけ文」をホームページから削除した。次世代の党・山田宏幹事長が6日の衆院予算委員会で「問題がある」と指摘し、岸田文雄外相が削除を検討する考えを示していた。削除したのは「歴史認識」の項目に掲載されていた「『女性のためのアジア平和国民基金』への拠金呼びかけ文」(平成7年7月18日)

 さらに外務省(佐藤地・人権人道担当大使)は10月14日、日本軍「慰安婦」を「性奴隷」と位置づけた1996年の国連人権委員会「クマラスワミ報告」に対し、強制連行について語った「吉田証言」関連部分の撤回を、クマラスワミ氏に求めた(クマラスワミ氏は「証拠のひとつに過ぎない」として拒否した)。
 
 外務省の行為は、強制性を認めている「河野談話」の否認である。このようなみっともない真似をしてはならない。

 こうした一連の動きは、「日本が国ぐるみで性奴隷にしたと、いわれなき中傷が世界で行われている」(安倍晋三首相、10月3日の衆院予算委)と、まるで日本が被害者であるかのような宣伝のもとで、矢継ぎ早に行われている。
 言論の自由の圧殺が堂々と行われ、しかもそれを準備し煽っているのは、外務省であり、政府・自民党である。即刻、やめなければならない。
 

2)「吉田証言」は「河野・村山談話」に反映されずと、政府答弁

 他方、10月24日、安倍内閣は河野・村山談話に『吉田証言は反映されていない』とする答弁書を決定した。

 「安倍内閣は〔2014年10月〕24日の閣議で,慰安婦問題で謝罪と反省を表明した1993年の河野洋平官房長官談話と,アジア諸国に対する植民地支配と侵略への反省とおわびを表明した1995年の村山富市首相談話について、慰安婦を強制連行したとする吉田清治氏(故人)の証言は文言に反映されていない、とする答弁書を決定した。社民党の吉田忠智党首の質問主意書に答えたものである。」(10月25日、朝日新聞)
 
 安倍内閣が、「吉田証言」は「河野、村山談話」と関係がないと認めたわけである。

 「吉田証言」報道を朝日新聞が撤回したことを「利用」し、あたかも「慰安婦」問題そのものがなかったかのように騒いで非難・批判し、ましてやこの問題にまとわりついていた「強制性」の論点もまったく存在しなかったかのように、すさまじい攻撃・罵倒をくわえてきた安倍内閣は、いったいどういうつもりでこの「答弁書」を作成し決定したのか。

 安倍内閣は事実経過をよく知ったうえで、平気で嘘で塗り固めた政治的キャンペーンを繰り広げてきたのである。安倍内閣の二枚舌政治スタイルがここにある。

 上述の自民党「国際情報検討委員会」(原田義昭委員長)の決議、自民党「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(中曽根弘文委員長)の主張のいずれにも根拠がないことになる。
 自民党は各委員会を立ち上げ、「慰安婦」問題でのキャンペーンを組織している。それは安倍政権の意向に沿った動きであり、政権にすり寄り閣僚に加えてもらいたい各議員の心持ちが透けて見える。

 「慰安婦」問題キャンペーン、朝日非難キャンペーンは、安倍内閣に責任がある。
 即刻あらためること。

3)復古主義政治路線をやめよ!
―――「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」

 朝日新聞批判キャンペーンは、決して偶発的なものではなく、しっかりと準備され計画されたものである。
 
 自民党の「明るい日本国会議員連盟」は、96年9月「教科書問題に関する決議」をあげ、南京大虐殺や日本軍「慰安婦」に関する記述を削除するよう要求した。96年12月には民間団体「新しい歴史教科書をつくる会」が発足し、それと連動するかのように、97年2月に「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(2004年2月に「若手」を削除する名称変更)を結成した。代表:故中川昭一、事務局長:安部晋三、幹事長:平沼赳夫で発足した同会には、菅義偉、高市早苗、下村博文の各氏ら、現安倍内閣の中心閣僚の多くが顔を並べている。
 
 「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」の主張は、南京大虐殺はなかった、「慰安婦」は強制連行ではないから軍・政府に責任はない、沖縄集団自決は強制されたのではない、このように歴史を書き替えることを要求しており、それを実現する行動方針として、文部省に働きかけ教科書から削除する、NHKへ介入する、朝日新聞非難キャンペーンの実行を、明確に述べている。(『歴史教科書への疑問―若手国会議員による歴史教科書問題の総括』1997年12月1日発行、「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会 」編集)
 
 実際に、約十数年かけて、その計画通り実行してきていると言える。この過程で、「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」に国会議員を集め、官僚も歴史修正主義の人物に徐々に入れ替え、大手メディアも自発的に政府にすり寄る体質に変えてきた。
 その結果、安倍内閣の閣僚、自民党に中心議員は復古主義路線の政治家が占めることになった。NHKには2000年の女性国際戦犯法廷を扱ったETV2001に介入・恫喝し番組を改変させ、安倍内閣となった2013年には籾井会長、百田・長谷川経営委員を送り込んだ。そして、現在の朝日新聞非難キャンペーンである。

 私たちは、人権問題として「慰安婦」問題の解決を要求してきた。しかし、安倍内閣の復古主義政治路線は、あらゆる場や人に対し、マスメディアや政治家、官僚に対し「慰安婦」問題を捩じ曲げることをまるで「踏み絵」のように強要しており、私たちが「慰安婦」問題の解決を訴えることは、復古主義政治路線の動き一つ一つに対抗しやめさせることに他ならない状況になっている。

4)国際社会に受け入れられない――孤立し衰退する日本

 国際社会が日本軍「慰安婦」で問題にしているのは、「強制連行」があったかなかったか以上に、女性の人権を蹂躙した「慰安所」での強制使役=性奴隷制度である。

 東郷和彦元オランダ大使は『週刊金曜日』10月10日号で、「国際社会では、『強制連行』でなくても、騙された結果連れて行かれ、意思に反して『慰安婦』として働かざるをえなくなったら、十分にひどい話だと思われています」と語っている。そして、「日本は世界で『歴史問題』ではどうにもならない国、相手にもしたくない国へと自らを追い込みかねません」と警告している。

 安倍政権は、国際社会のなかで自身の主張が批判され受け入れられていないことを十分に理解した上でなおかつ、復古主義、歴史修正主義の政治的キャンペーンを行い、国内世論を主導し、国際的にもその主張で押し通そうとしている。

 ますます世界から孤立し、国連の各人権委員会からたびたび批判勧告がなされ、中国、韓国と首脳会談さえ開くことができない。
 戦前の戦争指導体制、戦犯となった軍人と政治家(祖父岸信介)を復権させたいとする復古主義路線の政治家(実際に復古主義路線が実行できると思っているのか、ただ閣僚になりたいからなのか不明だが)たち、安倍晋三や安倍内閣の閣僚たちが政権の座についているものの、その主張・路線は国際社会のなかで到底受け入れられるものではない。日本は国際社会と対立と矛盾を深め、近い将来いっそう孤立し、そのことで米国により依存、従属せざるを得なくなる道を歩んでいる。

 安倍政権の復古主義は奇妙なことに対米従属と一体となっている。米国政府の要求にこたえ集団的自衛権の行使を決定し、秘密保護法を制定し、沖縄・辺野古新基地建設に邁進する安倍政権ではあるけれども、ワシントンは次の時代の世界共同支配に協力しかつ対抗する中国にはきわめて気を使っているものの、日本政府にはたいして気にかけてもおらず、重視もしていない。米国にとっては、経済的にはTPPによるブロックで利用し、軍事的には中国に前線で対応する一つのコマとして、現在の日本はある。

 元米国務副長官のリチャード・アーミテージ氏と元国防次官補のジョセフ・ナイ氏は10月29日、都内で開かれたシンポジウムに出席し、戦時中の日本軍「慰安婦」問題をめぐり強制性と日本軍の関与を認めた河野官房長官談話「見直し」を安倍晋三首相がもくろんでいることや、日本の首相による靖国神社参拝に対し、懸念の声をあげた。

 ナイ氏は「河野談話のいいことは、歴史問題について明確に処理したことだ」と指摘し、「これを否定すれば日本に大きなダメージとなる。米国との関係を傷つける波及効果も与える」と強調。首相の靖国参拝については、「歴史問題のシンボルのようにとらえられている。靖国神社に参拝すると大きな打撃を近隣諸国に与え、米国との関係でもマイナスの波及効果になる」と述べ、戦没者追悼は別の方法を追求すべきだと求めた。
 「ジャパン・ハンドラー」であるナイ氏やアーミテージ氏は、対峙する中国の意向を考慮するという米国の戦略的利害から発言していることは了解しておかなければならないが、安倍政権の復古主義は、国際社会のみならず、つくしてやまない米国にも受け入れられないのは明らかである。

 安倍政権の復古主義は、21世紀において「孤立し衰退する日本」へと導くだけだ
 「河野談話」を堅持し、「慰安婦」問題の解決を表明すること。
 国際社会に認められる日本に転換せよ!

2014年11月5日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進


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