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9月17日提出、「慰安婦」問題の解決を求める要請書 [元「慰安婦」問題]

 少し遅くなりましたが、「慰安婦」問題の解決を求める9月17日提出の要請書です。

 「慰安婦」報道をめぐる朝日新聞叩きとそれに便乗した報道は、人権意識の欠けたきわめてデタラメなものです。
 誤った報道に対し、「河野談話」を堅持すると表明した日本政府はそのような報道は間違いである、と批判し、政府の立場を明確にしなければなりません。国連の人権委員会から、そのように勧告されています。
 しかし、安倍政権は放置しているだけでなく、むしろデタラメな「慰安婦」報道を準備し組織しています。

――――――――


安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書


 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

1)「河野談話」は「吉田証言」を根拠にして作成していない。事実に反したマスコミ報道に反論し、これをやめさせること

 
 8月5・6日の朝日新聞の「慰安婦」問題特集から端を発した「慰安婦」バッシング報道は目に余るものがあります。朝日新聞は2つの点を修正・取り消したのみで「慰安婦」問題の事実を取り消したわけではありません。

 しかし、このことに政府内外の右翼的な人々は抑えていた自論を展開するチャンスとばかりに朝日報道にかこつけて<強制連行はなく、民間が勝手にやり、政府に責任はなく慰安婦は金目当てで、「慰安婦」証言も裏付けがない等>というキャンペーンをこのときとばかりに繰り拡げています。自論の展開には、朝日の「過ちを認めたもの」が何であれ、関係がないようです。

 というのも、吉田清治氏の発言・著書は1982年~のことであり、「慰安婦」問題は、このことを根拠にしたわけではありません。「慰安婦」問題が大きく取り上げられるようになったのは、1991年の韓国の金学順さんが実名で名乗ったことがきっかけです

 1990年1月に韓国では尹貞玉・梨花女子大教授(当時)が日本や東南アジアを訪ね、韓国紙ハンギョレ新聞に「挺身隊『怨念の足跡』取材記」を連載しました。そして日本ではこの年6月に参院予算委員会で当時の社会党議員が「慰安婦」問題を調査するよう政府に質問したのに対して、旧労働省の局長が「民間業者が軍とともに連れ歩いている状況のようで実態を調査することはできかねる」と答弁

 これが韓国内で報じられ、強い反発が起きました。金学順さんは翌年91年8月に意を決して、「事実は違う、私が生き証人だ」と名乗り出たのです。

 いわば日本政府の不誠実な対応が引き起こしたのが今日の「慰安婦」問題の発端なのです。内外の強い批判の高まりから政府はその後調査を約束し、軍や朝鮮総督府、慰安所経営の関係者の証言、日本の関係省庁、米公文書館など大量の資料を集めたのです。

 吉田証言については当時の内閣外政審議室が「つじつまが合わないので、談話には採用しなかった」と述べているのです。

 「慰安婦」問題を吉田証言が発端という、事実に反する論拠で、またこれを朝日新聞が否定したのだから、全て「慰安婦」問題はなかったかのような、自民党内外・右翼マスコミのミスリードを許してはなりません。

2)吉田清治氏の「強制連行」と河野談話の「強制性」

 河野談話発表の4か月前に当時の谷野作太郎外政審議室長は参院予算委員会で「強制は単に物理的に強制を加えることのみならず、脅かし・畏怖させ本人の自由な意思に反した場合も広く含む」と答弁しています。

 また、河野談話でも「募集・移送・管理等も甘言、強圧による等、総じて本人達の意志に反して行われた」と結論づけています

 吉田氏の証言を参考にしていないばかりか、吉田氏のいう「強制連行」をも、そもそも問題としていなかったのです。つまり、この時は女性たちが自由意志を奪われた「強制性」を問題として発表されたのが「河野談話」なのです。河野談話の根拠が崩れた、とばかりに自民党内から高市早苗政務調査会長(8月26日当時)が、河野談話に代わる新しい官房長官談話を、戦後70年にあたる来年に提出したいという申し入れ書に対して、政府は「見直すことはない」と、歴代政権と同じく継承していく姿勢を示しています。この姿勢を堅持するなら、当然、今起きている、被害者を置き去りにし、冒涜する反「慰安婦」キャンペーンにきちんと批判、反論するのが当然ではないでしょうか。

3)9月6日、夕刊フジでの安倍首相の発言を批判し、撤回を求める

 9月6日(土)、安倍首相は夕刊フジで「慰安婦」朝日報道に対し、「報道機関は信頼・信用・正確さ・事実に即しているかが常に問われていると思う。(誤報で)多くの人が悲しみ、苦しみ、国際社会において日本の名誉が傷つけられている、そうした結果を招いたことへの自覚と責任のもとに常に検証を行うことが大切だ」と発言しました。

 「河野談話」を見直さないと言いながら、反「慰安婦」キャンペーンに明確に反論しない姿勢がここによく現れているのではないか、すきあらば、周囲の状況から、また少しでも報道に瑕疵があるなら、それを援用して事実を薄めようとする態度。

 すでに国際社会の中で日本の名誉はこの「慰安婦」問題では地に堕ちているのです。「事実」に即しているのか、きちんと調査していれば吉田証言の有無で「慰安婦」問題が左右されるわけがありません。事実に目を向けず故意にねじまげているこの姿勢を国際社会はむしろ悲しみ、苦しみ、日本の名誉を回復するためにも、事実に向き合い、被害者の納得する解決をせよと、促しているのです。安倍首相の発言はそっくり自らに向けるべき内容です。

4)国際社会から遊離した日本の「慰安婦」問題の否定発言

 「慰安婦」問題の解決を促している米国の識者の1人、米コロンビア大教授(日本近現代史)キャロル・グラックさんは8月6日、朝日新聞のインタビューに明確に応えています。

 「慰安婦」問題が世界的な注目を集めているのは3点の理由からとして

 ① 「慰安婦」は国際法の分野で女性の権利侵害の歴史的な実例として1990年代から広く言及されている。ボスニア紛争などでの大量虐殺と集団レイプから、国際刑事裁判所の設立(98年)に影響し、国際法の文献で「慰安婦」が第二次大戦中の性的犯罪として取り上げられることは通常のことだ。「慰安婦」問題は女性の権利に関わる国際的な問題となっている。

 ② NGOや女性団体の活動が拡大、国際的な協力も飛躍的に発展。韓国での活動に日本の女性活動家が加わり、90年代に他のアジア諸国と韓国系米国人、カナダ人が声をあげるようになり、米国の議会では日本政府に賠償と謝罪を求める決議が繰り返されてきた。また、政府レベルでも、2011年の韓国憲法裁判所の決定は、「元慰安婦らへの個人補償が日韓請求権協定の例外にあたるのか、韓国政府が日本政府と交渉しないのは違憲」とした。このことを機に韓国政府は日本に対してだけでなく、ニューヨークやジュネーブの国連機関を通じて国際社会に「慰安婦」問題をアピールしている。そして、国連の諸機関は、自由権規約委員会、社会権規約委員会、女性差別撤廃委員会、近くは人種差別撤廃委員会等で、日本政府に謝罪と賠償、戦中の「慰安婦」制度の調査を繰り返し勧告してきている。

 ③ この25年で「慰安婦」と女性の権利に関する世界の考え方が変わった。日本の政治家が「強制連行を裏付ける公文書は見つかっていない」といった発言を繰り返すたびに、世界中の反感を引き起こしている。米国で「慰安婦」の碑や像が増えつつあることは
その一例だ。

 また同じくジョージ・ワシントン大教授(国際政治学)のマイク・モチヅキ氏の同紙のインタビューに次のように応えています。

 ① 「慰安婦」問題は日韓問題を超えて国際社会の関心事。「河野談話」を見直す動きが出るたびに日本のお詫びや反省の言葉は偽物だったと映り、韓国系の活動をさらに活発化させている。 

 ② 米国にも歴史問題がある。父も祖父も太平洋戦争中に強制収容された日系人だが、80年代に連邦議会が謝罪。日系人リーダーは感激して「こんな日が訪れるとは想像もしていなかった。過去の失敗に向き合える米国を誇りに思う」と涙したのです。
その後、収容所を保存し、強制収容の歴史を学べるよう、記憶を風化させず、2度と同じ過ちを繰り返さない取り組みもしている。

 ③ 多くの日本人が「もう十分、未来志向で行こう」というが、それを言うのは被害者の側、日本人はまず「私たちは忘れない、過ちを繰り返さない」と言い続けるべき、と述べています。

5) 日本政府の態度が「慰安婦」問題をこじれさせている原因

 日本国内では、同じく朝日のインタビューに応えて、中央大教授の吉見義明氏が述べています。

 ① 被害者に寄り添う報道が必要で、報道する側はその解決策を示す必要がある。日韓関係の両政府の応酬の末にここまでこじれたかの印象を与えるが、こじれの根本の原因は、被害者の声にきちんと向き合おうとしない日本政府の姿勢にこそある

 ② 河野談話は「多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた」としながら、その主体が誰なのか、明記していない。その責任が曖昧なまま、アジア女性基金では本来政府が担うべき「償い金」を民間が支払うという根本の「逆転」を許してしまった。これでは被害者が納得できるはずがない。(筆者注:このいわゆる「アジア女性国民基金」の支給範囲もごく一部の国に限定されてそれ以上調査しようとしなかった)

 ③ 解決のための根本は、女性の人権侵害をした主体は軍であることを政府が明確にみとめること。
 国外では「慰安婦」問題が浮上したあと、旧ユーゴやルワンダで起きた女性への集団レイプと「慰安婦」問題が戦時下での女性への性暴力として繋がっているという認識が広がってきている。が、国内ではこの問題が私たちの未来のためにも克服すべき課題だという理解がなかなか進んでいない。

 また、慶応大教授の小能英二氏は同じくインタビューに応え、

 「日本の保守派には軍人や役人が直接に女性を連行したか否かだけを論点にしてそれがなければ日本には責任がないと主張する人がいる。そんな論点は日本以外では問題にされていない。見苦しい言い訳にしか映らない。「原発事故は電力会社が起こしたことだから政府は責任がない」とか「(政治家の事件で)秘書がやったことだから私は知らない」と言う弁明と同じ、通用しない言い訳だ。

 以上、少々長くなったが「日本一国しか視野にない」「できるなら政府はこれ以上の責任を取りたくない」という保守的姿勢を取り続ける限り、国際社会での孤立は更に進む。アジアで生存している余命わずかな被害者たちは、日本の言い訳にさらに傷ついている。

 一刻も早い解決を促すよう要望する。

2014年9月17日

フィリピン・ピースサイクル

フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)

代 表  大森  進

事務局:  平田 一郎


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