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ガザ報告 志葉玲氏 [世界の動き]

ガザ報告

 9月10日、ヒューマン・ライツ・ナウ主催の集会があり、7月のイスラエルによるガザ侵攻を取材したジャーナリスト・志葉玲氏が報告した。志葉氏は、取材写真などもまじえ7月のガザで起きたことを生々しく報告した。
 下記はその報告だが、筆者が理解した限りでまとめたので、必ずしも報告のとおりではない。文責はまとめた者にある。

○9月10日HRNで報告する志葉玲  (320x268).jpg
<9月10日HRNで報告する志葉玲氏>

 
志葉 玲さんの報告

 日本のメディアの扱い

 ガザで何が起こっているかに対し、日本のメディアの反応は極めて鈍い。7月8日からイスラエルのガザ砲撃がはじまったが、その時点で大手メディアの特派員は、社命により撤退した。そのため、戦闘中のガザにいた日本人ジャーナリストは私(志葉氏)をふくめ、わずか3名しかいなかった。
 帰国後、ガザで何が起きたか、報告しているが、とりあげるTV局はほとんどいない。停戦合意にとなったので、「もはや終わった」という扱いである。
 また、日本の大手メディアは「コンプライアンス」から、残虐な写真は決して載せない。しかし残虐な現実は存在する。多くの民間人、女性、子供、老人が殺されている。その事実さえ積極的に報道しようとしない傾向が強まっている。日本政府は米国、イスラエル側に立っているのであり、大手メディアもその現実を自主的に受け入れているようである。

 明白な戦争犯罪

 イスラエルによる7月のガザ侵攻で、多くの犠牲者が出た。ガザの死者2,143人、うち子ども579人。一方、イスラエル側の死者は68名(うちイスラエル軍兵士64名、民間人4名)。死者数の一方的な差が、戦争の性格を物語っている。

 ガザで行われたのは、明らかな戦争犯罪である。

 戦争だからといって何でもやっていいわけではない。ジュネーブ諸条約など国際的なルールがある。
 例えば、医療従事者は保護されなければならない。民間人も保護されなければならない。あるいは戦闘員であっても捕虜は虐待してはならない、など。
 写真に示すが、国際赤十字の救急車が破壊されている。徹底して破壊されており、誤射ではない。従事者も殺された。あるいは、病院が爆撃されている。国際赤十字は医療活動を行っている場所をイスラエルに通知しているが、無視されて攻撃された。

 ガザ中部の病院を取材した。大人も子供も女性も老人も多くが死んだ。パレスチナは大家族制である。(写真の少年は)家族17人のうち13人が殺されたと語った。子供二人だけが生き残った例もあった。家族は避難しても戸主である父や兄だけは住宅に残る習慣があった。しかし、今回の爆撃はこれまで以上に住宅の徹底した大規模の破壊を行ったため、戸主である父や兄が爆撃で死んだというケースも多かった。

 病院にはけが人が次々と運び込まれる。同時に、遺体になったらすぐに運び出され、その日のうちに埋められた。暑い季節なのですぐ腐敗してしまう。それでも病院の遺体安置所はいつも満杯だった。
 葬儀を行うのも命がけである。葬儀で人が集まったところを狙って、頭上にイスラエルの無人攻撃機が現れ、狙って撃ってくる。記者もその場面に遭遇した。

 このような戦争犯罪は今回だけではない。2008年12月から2009年1月、2012年のガザでも同様の戦争犯罪が行われた。イスラエルの戦争犯罪は何も追及されなかった。そのため、今回のガザ侵攻でも同じような戦争犯罪が繰り返された。
   2008年末から2009年1月:「鋳られた鉛作戦」(イスラエル軍の作戦名)、1400人以上が犠牲
   2012年:イスラエル軍による空爆「雲の柱作戦」:
   2014年7月(今回)は「境界防衛作戦」、死者2143人、うち子ども579人、
       イスラエル側の死者は68名(うちイスラエル軍兵士64名、民間人4名)

封鎖されたガザ、孤立したガザ

 ガザ地区の面積は、東京23区の半分。170万人が暮らす。イスラエルとエジプトに囲まれた飛び地であり、孤立した地域。
 今回の取材のため、北部のエレズ検問所から入った。南部のエジプトと境を接するラファ検問所はエジプトのシシ政権であれば難しかろうと判断した。海外プレスのための専用バスをチャーターしイスラエルに申請しイスラエル兵士も乗り込んで入って行った。
 検問所は5か所しかなく、物資の搬入も検問所を通らなければならない。ガザは封鎖されている。負傷者や病人が数多くいるがガザから出ることができない。そのため、通常では死ななくてすむ人が簡単に死んでいく。

 武器が流入している地下トンネルを破壊することを、イスラエルは侵攻、攻撃の口実としている。
 そもそもガザが封鎖されていることが大きな問題だ。検問所からだけでは十分な物資が入ってこない。食料品や日常生活物資も地下トンネルを通じて入ってきている。それでも十分ではない。

 イスラエルによる封鎖は集団的懲罰行為であって、そもそも違法である。封鎖を解除することが何よりも重要だ。しかし、イスラエルを通じてしか物資が入らない、しかも不十分にしか入らない。イスラエルは意図的にそのような状態をつくりあげている。

 今回の侵攻によってイスラエルはガザのインフラを徹底的に破壊した。住居やインフラはすぐにでも再建しなければならない。しかし、イスラエルを通じてしか物資が入ってこないから、イスラエル企業の建築資材を買え!ということになる。アラブ各国やそのほかの国々からの援助で再建するが、イスラエル企業をもうけさせることになる。

 ハマスは停戦条件に封鎖解除を入れている。人々の生活のためぜひとも必要な要求だ。住民はそのことをよく知っている。爆撃・破壊があった後も、ガザの住民の多くはハマスを支持している。封鎖解除は正当な要求である。集団的懲罰行為として封鎖しているイスラエルにこそ罪がある。ガザの人々はハマスが自分たちの要求を体現していることを知っている。
 

インフラを破壊した!

 今回の爆撃の特徴の一つは、インフラや工場を徹底して破壊したことにある。
 ガザ港の爆撃に遭遇した。徹底して破壊され瓦礫の山になっており、停戦しても港はまったく使えない。再建するのに少なくとも数か月はかかるだろう。
 ガザ最大の発電所も破壊された。もともと300万kWの需要に対して200万kW しか供給できていなかったが、発電所破壊で一挙に電力不足となり、一日に1時間電気が使えるだけだ。住民の生活も産業活動も成り立たない。アイスクリーム工場や肥料工場が爆撃により破壊されたのも取材した。戦闘には関係のない工場である。このような工場は今まで攻撃されなかった。街中のビルも徹底的に破壊され、瓦礫の山になっている。
 イスラエルの狙いは、生活基盤の破壊であり、雇用の破壊であろう。抵抗意欲を失わせるためではないか。

戦争犯罪

 フザの街を取材した。フザはイスラエル軍に包囲され破壊された。ガザの若者たちが後ろ手に縛られたまま、ナイフでめった突きにされ殺された現場を取材した。血の付いた棒があり遺体には拷問の跡があった。ハマスの兵士か民間人かは不明であるが、たとえハマスの兵士であったとしても無抵抗の捕虜を虐待死、或いは殺すことは、国際法違反である。写真を示すが、臭わない分だけ残虐さは伝わらないので、よりマシだと考えてもらいたい。現地は腐臭でいっぱいだった。男たちは布で口鼻を覆い、腐臭による涙と鼻水を垂らしながら、唾液をしきりに吐きながら、腐乱した死体を移動し埋葬していた。フザの街は腐臭に覆われていた。

 いろんなひどいことがあったが、7月末、断食月のイイドの日、一時停戦の日だった。断食月でお祭りの日であり、子供たちは小遣いをもらい菓子を買いに集まっていた。その場には子供しかいなかった。そこへ無人攻撃機が現れミサイルを打って、7人の子供を殺した。
 ラファの国連の学校が攻撃され10人の子供が命を落とした。これも停戦中の出来事だった。子供しかいないところに無人攻撃機が飛んできて殺した。イスラエルはハマスが子供を盾にしていると言い訳したが、そのような事実はない。仮にそうであっても民間人を殺すのは戦争犯罪である。

イスラエルの攻撃の目的

 2014年4月にハマスとファハタが和解したことが、今回の侵攻の理由だろう。ガザでもヨルダン川西岸でも選挙でハマスが勝利した。西岸では米国とイスラエルが介入し、いまだファハタが自治政府を構成している。イスラエル(と米国)の目的は、ハマスを攻撃しハマスとファハタを分断することにあるし、そしてオスロ合意を押しつけることにある。
 イスラエルと米国はイスラエルに唯諾々として従う自治政府を求めている。
 今回のガザ攻撃でインフラ破壊を徹底して行ったのは、ガザの人々の生活基盤を破壊し、イスラエルに依存してしか生きることができないように追い込むことにある。

停戦合意で解決したのか?

 停戦したが、決して終わりではない。何も解決していない。
 前回の停戦でも同じだった。イスラエルは何度も同じことを繰り返している。欧米はイスラエルの戦争犯罪を免責している。 仮に、イスラム勢力、「テロリスト集団」が同じことをやれば、欧米は大騒ぎし、大がかりな戦争・侵攻をはじめるだろう。
 イスラエルの犯罪を欧米が免責していることが、何度も悲劇が繰り返される一つの理由である。ガザの悲劇が繰り返さないためには、国際社会が声を上げ、止めさせなければならない。イスラエルと米国を免責してはならない。同時に、日本政府が、イスラエルと米国の側に立っている事実を忘れてはならない。


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