米軍こそ、ごまかしとゆすりの名人 [沖縄、基地反対]
米政府・米軍こそ、ごまかしとゆすりの名人
2010年12月3日 米国務省で行われたアメリカン大学学生への講義で、国務省前日本部長ケビン・メアの発言内容が最近(2011年3月)暴露され、問題になっている。地震と原発事故で、どこかへ飛んで行ってしまった感があるけれど、書いておきたい。
1)「ごまかしとゆすりの名人」
ケビン・メアはこう言った。
「日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。・・・・・・沖縄の主産業は観光だ。農業もあるが、主産業は観光だ。沖縄ではゴーヤー(ニガウリ)も栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。」
国務省前日本部長ケビン・メアの発言は、本音が出たと受け取っていいだろう。メア前部長の本音であるばかりでなく、米国務省・米政府の「本音」であろう。2009年まで沖縄総領事を務め国務省で対日政策、対アジア戦略を策定してきた当事者の「現実認識」である。当然のこと、この認識に基づいて、米政府の対日政策、対アジア戦略が実施・計画・構想されているのは間違いなかろう。
それがあまりに沖縄県民、日本国民と、さらには沖縄県知事・日本政府を見下した本音であるために、それゆえ都合が悪いゆえに、米国務省・米政府はケビン・メアを更迭した。
しかし、言うに事欠いて「ごまかしとゆすりの名人」とは、あいた口がふさがらないというもの。「ごまかしとゆすりの親玉」であるアメリカ政府・米国務省からこのように言われたら、どう対応していいのだろう。あんたらが言うか!
さて、ここで「名人」と「親玉」の違いを比べてみようか。
「大量破壊兵器がある」と宣伝してイラク戦争を開始し、歴史上最大というか、究極の「ごまかし」を実行した米政府は、この世に二つと存在しない「ごまかしの親玉」である。イラク・フセイン政権は米政府の都合で打倒され、その後のイラクは荒廃させられ、混乱と混迷のうちにある。そして現在に至るまで、この「ごまかし」で強引に押し切っている。
湾岸戦争のおり、米政府は“Show the flag”と迫って、戦費を1兆ドルもむしり取ったこの世に二つと存在しない「ゆすりの親玉」である。これ以上巨額のゆすりはかつてない。ギネスブックに載せるべきだ(ゆすられて金を出す日本政府も情けないが)。そんな親玉から、「ごまかしとゆすりの名人」と呼ばれるのは、自分たちと同類であると『褒めた言葉』なのだろうか、とつい戸惑ってしまうではないか。
日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担、おもいやり予算は、「ゆすりとたかり」そのものではないか。
「ごまかしとゆすりの大親玉」であるアメリカ政府は、どうやら自分自身のえげつない「ゆすり」と「ごまかし」にまったく気づいていないらしい。「厚顔無恥」とはこのことを言う。「ケビン・メア」という固有名詞は、現代における「厚顔無恥」米政府の代名詞となった。
「本音と建前を使い分けるのが日本文化」と言ったのは、文化の欠ける人物がやたら「文化」と絡めて語りたがる軽薄さを示しているだけであって、日本文化をバカにされたなどと意気がる必要は特にない。あるいは合意形成の特徴づけのみで意味づけられてしまう単一的な単色的な日本文化は存在しない。したがって、「日本文化をバカにされたから、日本人は日本文化を擁護し、怒らなければならない」そんな問題の設定の仕方は、間違いへ行きつく危うさが残る。アーサー・ビナードに言っておいて。
2)米政府は、沖縄と日本人をどう見ているか!
ケビン・メアは言った。
「3分の1の人は軍隊がない方が世界はもっと平和になると思っているが、そんな人たちと話し合うのは不可能だ。」
基地に反対する沖縄の人たち、日本人とは、話し合うのは不可能と断じている。
ケビン・メアと米国政府は、米国の軍事戦略に反対する者を人とみなしていない。このリアルな現実を、ケビン・メアは正直に告白した。なにせ、「本音と建前を使い分ける日本人と日本文化」を嫌悪しているケビン・メアだから、彼の言葉は本音である。
問題は、ケビン・メアと米国政府の考え方にある。米軍と米軍基地に反対する日本人など、相手にすべき対象ではないこと、その人たちの人権、生活する権利など検討するに当らない。「話し合いなど不可能であって、強引に米軍の軍事政策、米軍再編を押しつける以外にない」と冷徹な判断をしている。あらためて思い知る米政府・米軍の強烈な本音である。
「米軍がいない方が世界はもっと平和になると思っている」日本人を、相手にしない・敵視する米政府に対して、私たちは、どのように対処していったらいいのだろうか?と問題を立てなくてはならない。「アメリカかぶれ」の多い現代日本人に、よく言って聞かせなくてはならない。
では、米軍基地にとりたてて反対しない人たちについて、ケビン・メアと米政府はどう見ているか?
ケビン・メアは言う。「日本政府は沖縄の知事に対して「もしお金が欲しいならサインしろ」と言う必要がある。」
要するにケビン・メアは、「沖縄の知事は、金がほしい人間を代表している!だから日本政府は、沖縄知事に辺野古新基地建設に早くサインしろ!と強く言って、強引に押し切ってしまえ!」このように言っているのである。
これまで新基地建設を受け入れてきた沖縄知事や他の人たちを、米政府がどのようにみているか! というより、どのように見下しているか!明らかにした。こんなことまで暴露してしまった。
要するに、基地反対の沖縄の人たちも、新基地受け入れの人たちも、まとめて見下しているのである。これが、ケビン・メアと米政府の本音、現実認識であるということだ。
日本人にもいろんな奴がいるとちゃんと見極めたうえでの、ケビン・メアと米政府の本音ということだ。決して、日本人が一種類と判断していない。単一的な日本文化とは見ていないことに注意しよう。
ここまでコケにされて、基地を受け入れてきた日本政府も怒らないのだろうか!沖縄知事も怒らないのだろうか!
3)本音を言ったのに、どうして更迭されたのか?
沖縄と同じように、日本人にもいくつか種類があって、米軍基地に反対する者もいれば、米軍とともにいることが利益であるとする者もいる。日本政府、防衛省、外務省、防衛予算、米軍駐留費思いやり予算に群がる者たちである。彼らは米政府と仲良くやっていきたいと思っているし、米政府は彼らをうまく使おうと思っている。
米政府にとっては、見下してはいるものの、強引な押しつけが可能な、利用する対象である。
ケビン・メアが更迭されたのは、彼の発言が、これら米国寄りである日本の支配層たちの立場を悪くする危険性が考慮されたから。そのことで米国の利害が損なわれてはならないと判断されたから。
ケビン・メアはこのように言った。
「日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担(おもいやり予算)は米国に利益をもたらしている。米国は日本で非常に得な取り引きをしている。」
これもまた言葉通り、リアルな認識=「本音」であろう。米政府にとって損なわれてはならない現状の日米関係である。
4)米政府による「本音と建前を使い分け」
ケビン・メアの述べた「本音」は撤回されていない。ケビン・メアの首を切って「建前」で対処した。何ということか!アメリカ政府の「本音と建前」の見事な使い分けである。何とうまい使い分けであるか。
偽善がばれても居直って押し通す、というこの「本音と建前の使い分け」はアメリカ文化なのだろうか。何という腐敗した、ゆすりとごまかしこそがアメリカ文化の特徴であろう。ケビン・メアにならって言うならこういう表現になろうか。
こう言うと、アメリカ人の多くをバカにすることになろう。それは「厚顔無恥の米政府関係者、金持ちだけだ!」という反論が飛んで来そうである。飛んできたなら受け入れよう。
ケビン・メアは「日本に行ったら本音と建前について気をつけるように」とアメリカン大学学生にアドバイスした。アメリカ流のプラグマティズムで、率直に単刀直入に、すなわち「本音」でこのように言った。
まさしくこれは「米軍がいない方が世界はもっと平和になると思っている」わたしたち日本人に、米政府のとった振る舞いにどのように対処すべきか、その「本音と建前を見極めろ!」、米政府と米軍のふりまく美辞麗句を信用するな、本心を見極めろ! とアドバイスをくれているようでもある。(文責:小林 治郎吉)
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米国務省日本部長メア氏の発言全文
2010年12月3日 米国務省で、アメリカン大学学生への講義
国務省日本部長ケビン・メアの発言全文(沖縄タイムスに掲載)アメリカン大の学生らが作成したメア日本部長発言録全文は次の通り。
× ×
私は2009年まで駐沖縄総領事だった。在日米軍基地の半分が沖縄にあるといわれているが、この統計は米軍専用基地だけ勘定している。もし、米軍基地と米軍と自衛隊が共用している基地のすべてを考慮に入れれば、沖縄の基地の割合はもっと小さくなる。沖縄で問題になっている基地はもともと水田地帯にあったが、沖縄が米施設を囲むように都市化と人口増を許したために今は市街地の中にある。
沖縄の米軍基地は地域の安全保障のために存在する。基地のために土地を提供するのが日米安保条約に基づく日本の責務だ。日米安全保障条約に基づく日米関係は非対称で、日本は米国の犠牲によって利益を得る。米国が攻撃されても日本は米国を守る責務はないが、米国は日本を守らなければならず、日本の人々と財産を保護する。
集団的自衛権は憲法問題ではなく、政治問題だ。
1万8千人の米海兵隊と航空部隊が沖縄に駐留している。米国が沖縄に基地を必要とする理由は二つある。既にそこに基地があることと、沖縄は地理的に重要な位置にあることだ。(東アジアの地図を見せながら)、在日米軍の本部は東京にあり、そこは危機において、補給と部隊を調整する兵站上の中心に位置する。冷戦時に重要な基地だった三沢はロシアに最も近い米軍基地であり、岩国基地は朝鮮半島からわずか30分だ。さらに、沖縄の地理的位置は地域の安全保障にとって重要だ。沖縄は中国に朝貢していたが、独立した王国だった。中国の一部になったことはない。米国は1972年まで沖縄を占領した。
沖縄の人々の怒りや失望は米国でなく日本に向けられている。日本の民主党政権は沖縄を理解していない。日本政府は沖縄とのコミュニケーションのパイプを持っていない。私が沖縄の人と接触しようと提案すると、民主党の関係者は「はい!はい、お願いします」という。自民党の方が現在の民主党政権よりも、沖縄と通じ合い、沖縄の関心を理解している。
3分の1の人は軍隊がない方が世界はもっと平和になると思っているが、そんな人たちと話し合うのは不可能だ。
09年の選挙が民主党に政権をもたらした。これは日本では初の政権交代だ。鳩山首相は左派の政治家だ。民主党政権下で、しかも鳩山首相だったにもかかわらず、米国と日本は2+2(外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会)の声明を(昨年)5月に発表することができた。
〈メア氏は部屋を退出し、彼の2人の同僚が日米の経済関係について講義。メア氏が戻ってきて講義を再開すると、2人の同僚は部屋を出た〉
米国は普天間飛行場から海兵隊8千人をグアムに移し、米軍の存在感を減らすが、軍事的プレゼンス(存在)は維持し、地域の安全を保障、抑止力を提供する。
(米軍再編の)ロードマップのもとで日本政府は移転費を払う。これは日本政府による実体的な努力のしるしだ。日本の民主党政権は実施を遅らせているが、私は現行案が実施されると確信している。日本政府は沖縄の知事に対して「もしお金が欲しいならサインしろ」と言う必要がある。ほかに海兵隊を持っていく場所はない。日本の民主党は日本本土への施設移設も言ってきているが、日本本土には米軍のための場所はない。
日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。
しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。
沖縄の主産業は観光だ。農業もあるが、主産業は観光だ。沖縄ではゴーヤー(ニガウリ)も栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。
沖縄は離婚率、出生率、特に婚外子の出生率、飲酒運転率が最も高い。飲酒運転はアルコール度の高い酒を飲む文化に由来する。
日本に行ったら本音と建前について気を付けるように。言葉と本当の考えが違うということだ。私が沖縄にいたとき、「普天間飛行場は特別に危険ではない」と言ったところ、沖縄の人は私のオフィスの前で抗議をした。
沖縄の人はいつも、普天間飛行場は世界で最も危険な基地だと言うが、彼らは、それが本当でないと知っている。(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港だって同じように危険だ。
日本の政治家はいつも本音と建前を使う。沖縄の政治家は日本政府との交渉では合意しても沖縄に帰ると合意していないと言う。日本文化はあまりにも本音と建前を重視するので、駐日米国大使や担当者は真実を言うことによって批判され続けている。
米軍と日本の自衛隊は違った考え方を持っている。米軍はありうる実戦展開に備えて訓練しているが、自衛隊は実際の展開に備えることなく訓練をしている。
日本人は米軍による夜間訓練に反対しているが、現代の戦争はしばしば夜間に行われるので夜間訓練は必要だ。夜間訓練は抑止力維持に欠くことができない。
私は日本国憲法9条を変える必要はないと思っている。憲法9条が変わるとは思えない。日本の憲法が変わると日本は米軍を必要としなくなってしまうので、米国にとってはよくない。もし日本の憲法が変わると、米国は国益を増進するために日本の土地を使うことができなくなってしまう。
日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担(おもいやり予算)は米国に利益をもたらしている。米国は日本で非常に得な取り引きをしている。(共同)
以上
2010年12月3日 米国務省で行われたアメリカン大学学生への講義で、国務省前日本部長ケビン・メアの発言内容が最近(2011年3月)暴露され、問題になっている。地震と原発事故で、どこかへ飛んで行ってしまった感があるけれど、書いておきたい。
1)「ごまかしとゆすりの名人」
ケビン・メアはこう言った。
「日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。・・・・・・沖縄の主産業は観光だ。農業もあるが、主産業は観光だ。沖縄ではゴーヤー(ニガウリ)も栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。」
国務省前日本部長ケビン・メアの発言は、本音が出たと受け取っていいだろう。メア前部長の本音であるばかりでなく、米国務省・米政府の「本音」であろう。2009年まで沖縄総領事を務め国務省で対日政策、対アジア戦略を策定してきた当事者の「現実認識」である。当然のこと、この認識に基づいて、米政府の対日政策、対アジア戦略が実施・計画・構想されているのは間違いなかろう。
それがあまりに沖縄県民、日本国民と、さらには沖縄県知事・日本政府を見下した本音であるために、それゆえ都合が悪いゆえに、米国務省・米政府はケビン・メアを更迭した。
しかし、言うに事欠いて「ごまかしとゆすりの名人」とは、あいた口がふさがらないというもの。「ごまかしとゆすりの親玉」であるアメリカ政府・米国務省からこのように言われたら、どう対応していいのだろう。あんたらが言うか!
さて、ここで「名人」と「親玉」の違いを比べてみようか。
「大量破壊兵器がある」と宣伝してイラク戦争を開始し、歴史上最大というか、究極の「ごまかし」を実行した米政府は、この世に二つと存在しない「ごまかしの親玉」である。イラク・フセイン政権は米政府の都合で打倒され、その後のイラクは荒廃させられ、混乱と混迷のうちにある。そして現在に至るまで、この「ごまかし」で強引に押し切っている。
湾岸戦争のおり、米政府は“Show the flag”と迫って、戦費を1兆ドルもむしり取ったこの世に二つと存在しない「ゆすりの親玉」である。これ以上巨額のゆすりはかつてない。ギネスブックに載せるべきだ(ゆすられて金を出す日本政府も情けないが)。そんな親玉から、「ごまかしとゆすりの名人」と呼ばれるのは、自分たちと同類であると『褒めた言葉』なのだろうか、とつい戸惑ってしまうではないか。
日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担、おもいやり予算は、「ゆすりとたかり」そのものではないか。
「ごまかしとゆすりの大親玉」であるアメリカ政府は、どうやら自分自身のえげつない「ゆすり」と「ごまかし」にまったく気づいていないらしい。「厚顔無恥」とはこのことを言う。「ケビン・メア」という固有名詞は、現代における「厚顔無恥」米政府の代名詞となった。
「本音と建前を使い分けるのが日本文化」と言ったのは、文化の欠ける人物がやたら「文化」と絡めて語りたがる軽薄さを示しているだけであって、日本文化をバカにされたなどと意気がる必要は特にない。あるいは合意形成の特徴づけのみで意味づけられてしまう単一的な単色的な日本文化は存在しない。したがって、「日本文化をバカにされたから、日本人は日本文化を擁護し、怒らなければならない」そんな問題の設定の仕方は、間違いへ行きつく危うさが残る。アーサー・ビナードに言っておいて。
2)米政府は、沖縄と日本人をどう見ているか!
ケビン・メアは言った。
「3分の1の人は軍隊がない方が世界はもっと平和になると思っているが、そんな人たちと話し合うのは不可能だ。」
基地に反対する沖縄の人たち、日本人とは、話し合うのは不可能と断じている。
ケビン・メアと米国政府は、米国の軍事戦略に反対する者を人とみなしていない。このリアルな現実を、ケビン・メアは正直に告白した。なにせ、「本音と建前を使い分ける日本人と日本文化」を嫌悪しているケビン・メアだから、彼の言葉は本音である。
問題は、ケビン・メアと米国政府の考え方にある。米軍と米軍基地に反対する日本人など、相手にすべき対象ではないこと、その人たちの人権、生活する権利など検討するに当らない。「話し合いなど不可能であって、強引に米軍の軍事政策、米軍再編を押しつける以外にない」と冷徹な判断をしている。あらためて思い知る米政府・米軍の強烈な本音である。
「米軍がいない方が世界はもっと平和になると思っている」日本人を、相手にしない・敵視する米政府に対して、私たちは、どのように対処していったらいいのだろうか?と問題を立てなくてはならない。「アメリカかぶれ」の多い現代日本人に、よく言って聞かせなくてはならない。
では、米軍基地にとりたてて反対しない人たちについて、ケビン・メアと米政府はどう見ているか?
ケビン・メアは言う。「日本政府は沖縄の知事に対して「もしお金が欲しいならサインしろ」と言う必要がある。」
要するにケビン・メアは、「沖縄の知事は、金がほしい人間を代表している!だから日本政府は、沖縄知事に辺野古新基地建設に早くサインしろ!と強く言って、強引に押し切ってしまえ!」このように言っているのである。
これまで新基地建設を受け入れてきた沖縄知事や他の人たちを、米政府がどのようにみているか! というより、どのように見下しているか!明らかにした。こんなことまで暴露してしまった。
要するに、基地反対の沖縄の人たちも、新基地受け入れの人たちも、まとめて見下しているのである。これが、ケビン・メアと米政府の本音、現実認識であるということだ。
日本人にもいろんな奴がいるとちゃんと見極めたうえでの、ケビン・メアと米政府の本音ということだ。決して、日本人が一種類と判断していない。単一的な日本文化とは見ていないことに注意しよう。
ここまでコケにされて、基地を受け入れてきた日本政府も怒らないのだろうか!沖縄知事も怒らないのだろうか!
3)本音を言ったのに、どうして更迭されたのか?
沖縄と同じように、日本人にもいくつか種類があって、米軍基地に反対する者もいれば、米軍とともにいることが利益であるとする者もいる。日本政府、防衛省、外務省、防衛予算、米軍駐留費思いやり予算に群がる者たちである。彼らは米政府と仲良くやっていきたいと思っているし、米政府は彼らをうまく使おうと思っている。
米政府にとっては、見下してはいるものの、強引な押しつけが可能な、利用する対象である。
ケビン・メアが更迭されたのは、彼の発言が、これら米国寄りである日本の支配層たちの立場を悪くする危険性が考慮されたから。そのことで米国の利害が損なわれてはならないと判断されたから。
ケビン・メアはこのように言った。
「日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担(おもいやり予算)は米国に利益をもたらしている。米国は日本で非常に得な取り引きをしている。」
これもまた言葉通り、リアルな認識=「本音」であろう。米政府にとって損なわれてはならない現状の日米関係である。
4)米政府による「本音と建前を使い分け」
ケビン・メアの述べた「本音」は撤回されていない。ケビン・メアの首を切って「建前」で対処した。何ということか!アメリカ政府の「本音と建前」の見事な使い分けである。何とうまい使い分けであるか。
偽善がばれても居直って押し通す、というこの「本音と建前の使い分け」はアメリカ文化なのだろうか。何という腐敗した、ゆすりとごまかしこそがアメリカ文化の特徴であろう。ケビン・メアにならって言うならこういう表現になろうか。
こう言うと、アメリカ人の多くをバカにすることになろう。それは「厚顔無恥の米政府関係者、金持ちだけだ!」という反論が飛んで来そうである。飛んできたなら受け入れよう。
ケビン・メアは「日本に行ったら本音と建前について気をつけるように」とアメリカン大学学生にアドバイスした。アメリカ流のプラグマティズムで、率直に単刀直入に、すなわち「本音」でこのように言った。
まさしくこれは「米軍がいない方が世界はもっと平和になると思っている」わたしたち日本人に、米政府のとった振る舞いにどのように対処すべきか、その「本音と建前を見極めろ!」、米政府と米軍のふりまく美辞麗句を信用するな、本心を見極めろ! とアドバイスをくれているようでもある。(文責:小林 治郎吉)
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米国務省日本部長メア氏の発言全文
2010年12月3日 米国務省で、アメリカン大学学生への講義
国務省日本部長ケビン・メアの発言全文(沖縄タイムスに掲載)アメリカン大の学生らが作成したメア日本部長発言録全文は次の通り。
× ×
私は2009年まで駐沖縄総領事だった。在日米軍基地の半分が沖縄にあるといわれているが、この統計は米軍専用基地だけ勘定している。もし、米軍基地と米軍と自衛隊が共用している基地のすべてを考慮に入れれば、沖縄の基地の割合はもっと小さくなる。沖縄で問題になっている基地はもともと水田地帯にあったが、沖縄が米施設を囲むように都市化と人口増を許したために今は市街地の中にある。
沖縄の米軍基地は地域の安全保障のために存在する。基地のために土地を提供するのが日米安保条約に基づく日本の責務だ。日米安全保障条約に基づく日米関係は非対称で、日本は米国の犠牲によって利益を得る。米国が攻撃されても日本は米国を守る責務はないが、米国は日本を守らなければならず、日本の人々と財産を保護する。
集団的自衛権は憲法問題ではなく、政治問題だ。
1万8千人の米海兵隊と航空部隊が沖縄に駐留している。米国が沖縄に基地を必要とする理由は二つある。既にそこに基地があることと、沖縄は地理的に重要な位置にあることだ。(東アジアの地図を見せながら)、在日米軍の本部は東京にあり、そこは危機において、補給と部隊を調整する兵站上の中心に位置する。冷戦時に重要な基地だった三沢はロシアに最も近い米軍基地であり、岩国基地は朝鮮半島からわずか30分だ。さらに、沖縄の地理的位置は地域の安全保障にとって重要だ。沖縄は中国に朝貢していたが、独立した王国だった。中国の一部になったことはない。米国は1972年まで沖縄を占領した。
沖縄の人々の怒りや失望は米国でなく日本に向けられている。日本の民主党政権は沖縄を理解していない。日本政府は沖縄とのコミュニケーションのパイプを持っていない。私が沖縄の人と接触しようと提案すると、民主党の関係者は「はい!はい、お願いします」という。自民党の方が現在の民主党政権よりも、沖縄と通じ合い、沖縄の関心を理解している。
3分の1の人は軍隊がない方が世界はもっと平和になると思っているが、そんな人たちと話し合うのは不可能だ。
09年の選挙が民主党に政権をもたらした。これは日本では初の政権交代だ。鳩山首相は左派の政治家だ。民主党政権下で、しかも鳩山首相だったにもかかわらず、米国と日本は2+2(外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会)の声明を(昨年)5月に発表することができた。
〈メア氏は部屋を退出し、彼の2人の同僚が日米の経済関係について講義。メア氏が戻ってきて講義を再開すると、2人の同僚は部屋を出た〉
米国は普天間飛行場から海兵隊8千人をグアムに移し、米軍の存在感を減らすが、軍事的プレゼンス(存在)は維持し、地域の安全を保障、抑止力を提供する。
(米軍再編の)ロードマップのもとで日本政府は移転費を払う。これは日本政府による実体的な努力のしるしだ。日本の民主党政権は実施を遅らせているが、私は現行案が実施されると確信している。日本政府は沖縄の知事に対して「もしお金が欲しいならサインしろ」と言う必要がある。ほかに海兵隊を持っていく場所はない。日本の民主党は日本本土への施設移設も言ってきているが、日本本土には米軍のための場所はない。
日本の文化は合意に基づく和の文化だ。合意形成は日本文化において重要だ。
しかし、彼らは合意と言うが、ここで言う合意とはゆすりで、日本人は合意文化をゆすりの手段に使う。合意を追い求めるふりをし、できるだけ多くの金を得ようとする。沖縄の人は日本政府に対するごまかしとゆすりの名人だ。
沖縄の主産業は観光だ。農業もあるが、主産業は観光だ。沖縄ではゴーヤー(ニガウリ)も栽培しているが、他県の栽培量の方が多い。沖縄の人は怠惰で栽培できないからだ。
沖縄は離婚率、出生率、特に婚外子の出生率、飲酒運転率が最も高い。飲酒運転はアルコール度の高い酒を飲む文化に由来する。
日本に行ったら本音と建前について気を付けるように。言葉と本当の考えが違うということだ。私が沖縄にいたとき、「普天間飛行場は特別に危険ではない」と言ったところ、沖縄の人は私のオフィスの前で抗議をした。
沖縄の人はいつも、普天間飛行場は世界で最も危険な基地だと言うが、彼らは、それが本当でないと知っている。(住宅地に近い)福岡空港や伊丹空港だって同じように危険だ。
日本の政治家はいつも本音と建前を使う。沖縄の政治家は日本政府との交渉では合意しても沖縄に帰ると合意していないと言う。日本文化はあまりにも本音と建前を重視するので、駐日米国大使や担当者は真実を言うことによって批判され続けている。
米軍と日本の自衛隊は違った考え方を持っている。米軍はありうる実戦展開に備えて訓練しているが、自衛隊は実際の展開に備えることなく訓練をしている。
日本人は米軍による夜間訓練に反対しているが、現代の戦争はしばしば夜間に行われるので夜間訓練は必要だ。夜間訓練は抑止力維持に欠くことができない。
私は日本国憲法9条を変える必要はないと思っている。憲法9条が変わるとは思えない。日本の憲法が変わると日本は米軍を必要としなくなってしまうので、米国にとってはよくない。もし日本の憲法が変わると、米国は国益を増進するために日本の土地を使うことができなくなってしまう。
日本政府が現在払っている高額の米軍駐留経費負担(おもいやり予算)は米国に利益をもたらしている。米国は日本で非常に得な取り引きをしている。(共同)
以上
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