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女系天皇制論はどうして出てきたか? [女系天皇制を論ず]

女系天皇制論はどうして出てきたか?

日本政府および日本支配層にとって、天皇制を現実的に存続させようとすれば、現条件下であれば「女系天皇制」への移行しか現実的道はないからだ。

現行の天皇制では、長系の男子が途絶えてしまうのは、統計学的、生物学的な観点に立っても明白。
天皇制125代のうち皇后から生まれているのは53代のみであって、残りのほとんどはすべて庶系。すなわち皇后でない、妃、ヒン、女御、中宮、典侍、局などのいわば「側室」から生まれている。したがって、長系の男子が相続する現天皇制は、いまのまままであれば統計学的、生物学的にいってもはや存続できない事態に直面しているのだ。

天皇制のいう万世一系とは、先祖代々、女という女を使って男子が生まれるまでやってきたことで成り立ってきた。逆に言えば、「側室制度」なしに万世一系は成り立たなかった。したがって、万世一系はそれほど「誇るべき」歴史ではない。天皇制を存続するに当たり、さすがに現代においては「側室制度」復活を主張できないのだ。

現在は3宮家のみしか存在しない。昭和天皇の弟である秩父宮、高松宮はすでに絶えている。常陸宮も絶えるのは確実。残るは、秋篠宮、三笠宮と高円宮だけだが、男児はおらず女児ばかりである。

これ以外に天皇制を存続させる方法としては、敗戦後廃止した旧11宮家復活が言われているが、旧宮家は600年以上前に天皇家から分かれた「血筋」であり、35親等以上はなれていて、ほとんどまったく他人だ。しかも愛子の婿として考えると適切な男子が見当たらないし、さらにどのように選んでいいかも非常に難しい。歴史の教えるところによれば、天皇家内の殺し合いも含む権力争いで決着がついたろうが、現代においてそれを繰り返すわけにもいかない。

したがって、天皇制存続を前提にすれば、誰が考えても「女系天皇制」への移行しか現実的道はないのは、日本政府、日本支配層としては明白なのだが、事態は簡単に進まなかった。右翼的評論家は「女系天皇制」反対キャンペーンを張り、影響を確保しようとした。右翼の論理は、既存のある主張に対し激しい主張を対置し、だんだんエスカレートすることで自身の影響力を保持して行くというもの。そんな行動論理を歴史的に形成してきた。今回もそのスタイルを踏襲した。反対を強く言えば、それに引きずられる構造になっているのだ。右翼評論家の論評依頼も来るし、仕事も増える。
そして秋篠宮妃紀子の妊娠が明らかになったことで、政府は女系天皇制の法案提出を一旦おろすことになった。「女系天皇制への移行以外は今しかできないと判断し提案したのに、好き勝手批判しやがって、あほらしくてやってられない」と小泉が言ったかどうか知らないが、まあそんな心境だろう。

女系天皇制の議論は急速におさまってしまった。男系天皇制と女系天皇制の間には、そもそも本質的には深刻な対立はないのである。政治的にはどちらでもほとんど違いはない。「女系天皇制のほうがよりましなので支持する」などという主張は、実にこっけいなものだ。

女系天皇制への皇室典範改訂をめぐり騒いでいるが、憲法第一条を問題にもしない現在の風潮がこのような「牧歌的な」議論を許しているのだ。


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コメント 1

林じゅん

はじめまして。
 天皇制について側室制度で成り立ってきたもので「誇るべき」ものではない、ということになるほど、と思いました。
 女系に反対する人は男系・万世一系が世界唯一だから尊い、といっているのを聞きます。でもそんなものでは無いのですね。

 そもそも血筋で決まる制度を堂々と残しておいていいのか、という問題ですが。
by 林じゅん (2006-03-23 20:59) 

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