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先進国は日本化をたどる! 金融が歪む! [世界の動き]

低成長、低インフレ、低金利が世界に拡散する
先進国は日本化をたどる! 金融が歪む!
資本主義は、これを解決できない!

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<日銀>

1)コロナ経済危機 

 米国の6月の雇用統計(7月2日発表)では、失業率:11.1%、失業者は1,775万人
 米政府の「給与保護プログラム」(6,600億ドル、12月末が支給期限)は、「5,000万人の雇用を支えた」(ムニューシン財務長官)という。

 欧州の5月失業率は7.4%。企業に政府が給与の一部を支払う政策で支える雇用は、EU主要5ヵ国(独、仏、伊、英、スペイン)で4,500万人に達する。労働者全体の約3分の1に及び、EU各国は数兆円の財政負担を強いられている。

 日本の場合、国内の宿泊業や飲食業をはじめとした休業者数は5月に423万人に達した。補正予算で1.6兆円を計上した「雇用調整助成金」の利用者は延べ300万人程度であるが、9月末に支給期限を迎える。

 コロナ危機で需要が消失し、世界各国で生産が縮小し、落ち込みは2008-09年金融危機以上となっている。サービス業、製造業で倒産が相次ぎ、失業者が増大している。いずれ「コロナ恐慌‥‥」と誰かが名づけるだろう。

 先進各国を中心に、財政出動し、消失した需要の一部を支えている。そのことで各国の財政赤字は一挙に膨らんだし、今も膨らんでいる。 

 それとともに、先進各国の金融政策が大きな変貌を遂げている。2020年3月、コロナ禍への対応で先進各国の中央銀行は大量に国債を購入し、強引に流動性を確保し金融危機を回避した。社債やCPの購入等、一時的な企業の資金繰り支援にまで踏み込んで、金融崩壊を食い止めた。その額がとてつもない規模になっている。この金融政策は今も続いている。

 このような金融政策は、すでに信用配分の領域に踏み込んでおり、かつて非伝統的とみなされていた金融政策が「ニューノーマル(新常態)」となりつつある。金融崩壊を避ける為の「やむを得ない対応」だが、やめるにやめられなくなっている。抜け出せない深い穴に向かって螺旋的に回転しながら落ちていっているかのようだ。

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<FRB>


2)ジャパニフィケーション
 低成長、低インフレ、低金利が世界に拡散する

 日本の賃金はこの30年、ほとんど上昇していない。最低賃金(時給)900円さえ実現していない。女性や高齢者、技能実習生などの低賃金不安定雇用の単純労働者層を新たにつくりだし、労働市場に投入してきた。低賃金を利用した旧態依然の関係を温存してきたため、低生産性の企業は温存され企業の新陳代謝は遅れ、全体として日本企業の労働生産性は低いままだ。OECDで最低の部類に入る。

 賃金は上がらず、労働者数は減少し、高齢化が進むので、総需要が総供給を下回る状況が続く。需要低迷が長期化すると、人的資本投資や研究開発投資が阻害され、潜在成長率の低下が継続的に起こる。すでに実質金利(自然利子率)の低下は続いている。実質金利は自然利子率より下げられない。したがって、十分な景気刺激効果が得られない。日本経済は四半世紀にわたり低成長、低インフレ、低金利が続き、これが常態化した社会・経済となり、金融政策が「ニューノーマル」の時代を迎えた。

 そのようにして、日本経済は潜在成長率を一層低下させてきたのである。この30年間におよぶ「日本の停滞」が欧米の先を行く「日本化」と呼ばれたのだ。
 
 その背景には、新自由主義という現代資本主義が社会構造を変質させたことにある。大多数の人々のゆっくりとした、しかし確実な貧困化が進んだ。富は一握りの上層に集中した。

 低成長、低インフレ、低金利が世界に拡散し、政府債務が増大する、これを「日本化(ジャパニフィケーション)」と呼ぶ。先進各国の「日本化」はささやかれてはいたのだが、今回のコロナ危機で各国とも一挙に「日本化」に踏み出し、新たなグローバルスタンダードになったかのようだ。

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<欧州中央銀行>

3)歪む金融、各国の金融政策はどこに向かうのか?
 
 「日本化」は実体経済の長期低迷という側面にとどまらない。財政・金融政策の面での債務拡大をもう一つの特長としている。今回のコロナ危機で各国中央銀行とも国債を大量に購入し、債務を一挙に拡大させた。主要先進国における「日本化」は、グローバル金融危機以降の政策対応の帰結として「必然的なもの」となった。

 金融政策は一貫して名目金利の実効下限制約に直面し続けるから、低成長、低インフレが継続するなかで低金利環境の長期化はある意味で自然なことだ。だが金融政策運営では、危機に際し国債を購入して対処する緊急時の「非伝統的政策」が恒常的な政策手段となり、中銀のバランスシートの膨張が続くことになる。

 コロナ危機によって世界的な恐慌となった時、各国政府、特に先進国政府・中央銀行が、日本と同じ金融政策を採った。政府は国債を増発し、中銀が国債を大量に購入し、先進各国が一斉に日本が先に採用した金融政策を踏襲したのである。

 2020年3月以降、FRBのバランスシートが金融危機時以上に急拡大している。財政赤字拡大で米政府債務残高のGDP比は、第2次世界大戦直後の水準を超え、財政再建の重い荷物を背負う。
 日本は、コロナ対策で第一次、二次の補正予算も含め、20年度支出は160兆円を超え、新規赤字国債発行90兆円を含め20年度の赤字国債発行総額は253兆円と過去最大となる。基礎財政収支の赤字幅はマイナス60兆円に膨らんだ。財政事情は一段と悪化する。

 2020年末の日米欧の中央銀行の資産は、前年末比1.5倍の約2,400兆円と、世界GDPの約6割に膨張する見込みだ。金融危機が起きた08年末は、600兆円未満だった。中央銀行の担う金融政策への過度の負担が加速度的に増大しており、将来の正常化を困難にしかねない。

 その結果、中央銀行による緊急時の金融政策は、財政政策との境界が極めて曖昧となってしまった。特に金融資産の大量購入により様々なリスクへの対価に働きかけることで、価格・数量の両面から資源配分へ強力な介入をしたことになる。コロナ危機後もこうした金融政策が先進国で共通した対応となり定着するだろう。

 他方、財政政策面でも主要先進国はコロナ危機への対応として未曽有の財政拡張策を繰り出している。日本と同様、大規模な政府債務の下での政策運営を余儀なくされるようになる。財源は国債を増発して賄い、中銀が低金利環境を維持することで、実態として財政の持続可能性を支える構図が定着していく。定着すれば、何があっても低金利にしなければならなくなる。国債金利が上がれば、国債利払いだけで国家財政が破綻するからだ

 日本では2016年以降、短期・長期金利の双方に操作目標を設定する「イールドカーブ・コントロール政策(YCC)」がとられている。この枠組みは低金利環境を安定的に実現することで、金融政策の政府債務管理政策への統合を暗黙裡に可能としている。中銀は「政府からの独立性」を標榜してきたが、実質的に政府と一体の金融政策に近づきつつある。

 これは、目先の財政政策を実行したい政府にとって、中央銀行の金融政策が利用しやすくなるだけだ。ある意味「中銀の独立性」破壊であるが、そんなこと以上に、政府が将来にツケつけを回し、より大きな破綻を準備する上での「障害」を無くしているに他ならない。破綻への道を突き進んでいることこそ大問題なのだ。

 現代資本主義はこの債務拡大を押しとどめることができない、押しとどめる要因を内部に持っていない。そのことは、現代資本主義システムが、持続可能な社会システムではないと主張しているようなものなのだ。

4)中央銀行の金融政策に依存する政府
  中銀の資産膨張のリスクは解決できるのか? 
  それとも破綻するのか?

 「日本化」の下で恐ろしいのは、政府が中銀の資産膨張のリスクに関与しないこと、しようとしていないことだ。

 中央銀行は、金融・経済の安定を確保するため、財政の持続可能性に一層注意を払う必要があり、物価安定よりも、長期金利を低位安定をめざすことになるだろう。それは中銀による大規模な国債購入によって長期金利を低位安定させることになる。中銀による政府財政政策への配慮は、中銀への更なる依存と制御不可能な財政膨張を招くリスクを増大させる。金利の低位安定の金融政策運営は、実際的には政府の債務管理政策として機能し、財政政策と金融政策の境界を事実上取り払う。この場合、金融政策への更なる依存が、政治的により安易な選択肢となる。結果として、制御不能な財政膨張と一段の金融政策への依存へと進んでいく。

 今回のコロナ対策のように中銀ファイナンスによる財政拡大は、例えそれが必要であり暗黙裡なものであったとしても、無コストでないことを政府・日銀は公けに確認し、政府が責任を持つことが何よりも重要だ。

 これまで避けてきたし逃げてきた、そうやって繰り延べしてきた。その結果、膨大な債務が蓄積した。もはや避けることができない、逃げることができない局面に直面している。
 目の前の危機の回避に努めることで、より大きな危機を準備している。最終的な「破綻の道」へ進むように「収斂」しているかのようであり、避けられそうにないということだ。

 安倍政権の政策、振る舞いは、「いくら国債を発行しても、日本銀行がそれを際限なく購入すれば、誰も財政負担をしなくていい」というおとぎ話を信じているようにしか見えない。目の前の国民の支持を得るため借金を重ね、ツケは将来の世代に確実に回る。ツケが回るだけでなく、それ以上に、将来の日本経済が破綻するしかなくなる。
 もっとも、いつ、どのような道筋を通って、どのように「破綻」が訪れるかは、誰もわからない。

 しかし、破綻となれば、最終的には国民にツケが回る。
 国民にツケが回るとはどういうことか? 例えば、ギリシャ危機後に被ったギリシャ国民の困窮を思い起こさなければならない。
 あるいは、円が暴落し高インフレとなり、戦時国債が暴落し紙切れになり、大半の国民が生活困窮に陥ったあの敗戦直後からの数年のような事態が、われわれに降りかかることを思い起こさなければならない。

(文責:小林治郎吉)









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