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フェイスブックの屈服 [世界の動き]

フェイスブックの屈服

 8月2日、日本経済新聞は、「米中間選挙でロシア介入疑惑」という下記の記事を載せている。

米中間選挙でもロシア介入疑惑(8月2日、日本経済新聞)
シリコンバレー=中西豊紀、モスクワ=古川英治

 「2016年の米大統領選挙に介入したとされるロシアが、11月の米議会中間選挙に向けて再び動き出した。米フェイスブックは7月31日、ロシアの関与が疑われる多数の不正投稿を削除したと発表した。」

 このように書き出して、フェイスブックが削除した投稿を紹介している。

 「『ファシズムに対抗しよう、極右反対』。首都ワシントンで8月10~12日に開くイベントの告知がこのほどフェイスブックに投稿された。同じ時期には、昨夏南部バージニア州シャーロッツビルで極右のデモ行進を開いた白人至上主義者が集会を計画していた。告知されたイベントはこの集会に対抗されるものと見られていた。
 だが投稿は単に社会の分断を狙った政治的な不正コンテンツであることがフェイスブックの調査で発覚し、告知は削除された。
 フェイスブックは32の団体・個人によるページを削除したと発表したが、偽の(フェイスブックが偽だと判断した)反極右集会もその一つだった。
・・・・・・
 反植民地主義をうたった「アステカの戦士」や「黒人を高みに」といったリベラル色強い名称の団体ページも削除対象になった。
・・・・・・
 フェイスブックはここ数カ月、政治投稿の規制と強化しており、移民や銃問題、テロなどの内容を含む広告は軒並み削除してきた。6月には日本政府が出した20ヵ国・地域(G20 )の宣伝広告や米大手メディの政治記事も削除されるなど「過剰」(広告業界関係者)なほどに監視に力を割いていた。」


180802 日経 「フェイスブックの屈服」 001.jpg
<8月2日、日本経済新聞の記事>

1)記事の内容がひどい

 「不正コンテンツ」かどうかは、フェイスブックが判断している。フェイスブックが信用できないと批判されているのに、フェイスブックが勝手に判断し、削除するという。しかもその判断がいかにもいい加減である。そればかりか、米当局寄り、米権力者寄りなのである。

 ひどいのは、「社会の分断を煽る」投稿が、もはや「罪」とみなされており、フェイスブックでは削除する対象とされていることだ。「社会の分断を煽る」とフェイスブックがみなせば、投稿者の了解も得ずに削除するという、そして、実際に削除した。

 白人至上主義のデモ行進は「表現の自由」として投稿は認められており、白人至上主義者の投稿はそのまま載っている。したがって、「社会の分断を煽る」主張ではないということだ。

 しかし、白人至上主義者を批判したら、あるいは白人至上主義者や極右のデモ行進を批判し、対抗する集会を呼びかけたら、フェイスブックによれば「社会を分断を煽る」ことになり、告知は削除された。 
 また、「黒人を高みに」と主張した投稿は「黒人至上主義」であり、「社会の分断を煽る」と決めつけられ削除された。「白人至上主義」はいいが、「黒人至上主義」はだめなのだ。
 
 ほかにフェイスブックが削除した投稿の事例がいくつか挙げられている。

 (1)ジェンダー:「女性らしさ」の要求を批判した投稿は削除
 (2)人種問題:「黒人を高みに」と主張した投稿や「植民地主義に立ち向かった」と
   いうコメントと先住民の写真を投稿した「アステカの戦士」というリベラル色の
   強い名称団体のページは削除された。
 (3)政治対立: ファシズムへの反対イベント
          トランプ大統領の辞任を求める集会を招集
          
 これらの投稿は、至極当たり前の主張である。これらの主張が「社会の分断を煽る」から削除したという。
 「表現の自由」の侵害だということを、理解していない。米当局者の意向をひたすらうかがう、媚びへつらうフェイスブックであり、ザッカーバーグCEOである。

 それから、ここから論理が飛躍するのだが、上記の宣伝、告知は「ロシアによる11月の米議会中間選挙への介入、もしくはその疑惑がある」とされ、しかしそこには何ら明確な証拠は示されておらず、「疑惑」だけが煽られている。自分たちが煽って広がったとする「疑惑」に基づいて、上記の投稿を排除するというのだ、「マッチポンプ」は正当な行為だと、主張するのである。

 極右のデモに対するネット上での批判や反対集会の告知が、どうしてロシアによる米議会中間選挙への介入になるのか? さっぱりわからない。理解不能だ。

 (日本でもかつて同様のことがあった。「陸山会と小沢一郎は怪しい」とTVワイドショーなどで煽りまくった。小沢と自由党は政治的地位を失った。そのあと、陸山会も小沢一郎も無罪であるとの判決が出た。失った地位は回復されていない。)
 
 これは、何か!
 アメリカ社会のかつて唱えてきた「民主主義」は、どこかへ消えてなくなっている。アメリカ社会はすでに変質してしまっている。嘘をついてもとがめる者がいない。嘘の宣伝をあふれさせ、反対意見をうち消して、支配者に都合のいい「嘘」に基づいた政策が実行される。
 
2)証拠もなしに「ロシア疑惑」、2年間ワンパターンの宣伝

 「ロシアによる選挙介入」という報道は、これまでの2年間、何の証拠も示されず、繰り返されてきた。

 ちなみに各国の選挙に介入し政権を転覆させることができるのは、アメリカ政府だけである。これまで何度もやってきており手法を熟知しているから、危ないと騒いでいるのだろうか?

 内容をみれば、噂話の水準だ。この噂話は、フェイスブックだけでなく、ほかの報道機関も熱心に行っている。特に民主党系の報道機関が熱心である。

 2016年、ヒラリー・クリントンが大統領選挙でトランプに敗けた。ヒラリーは自分の政策が軍産複合体、ネオコン、ウォール街、ユダヤ資本寄りであり、ワシントンのエリート政治の象徴であるとアメリカの民衆に嫌悪されていたのだが、そのことを棚に上げて、「ロシアが選挙介入」したから、勝つはずだった大統領選挙に敗けた、ロシアが敗北の原因だと、騒ぎだした。あれから、この2年間続いている「バカ騒ぎ」なのだ。(もちろん、だからと言ってトランプを支持すべきなのではない。)

 「ロシア疑惑」を煽れば、効用がある。軍事費を増やすことができる。いともたやすく目的を達成できるので、軍産複合体は何度も同じ手を使っている。7月16日のプーチンとの首脳会談でトランプが「プーチンに甘いことを言った」として、マスメディアが責め立てている。責め立てれば責め立てるほど、軍産複合体にとって、権力闘争が有利になるのだ。

 アメリカでしきりに宣伝されている「ロシアによる選挙介入疑惑」がこんなレベルである。

 このような記事を、ニューヨークタイムズ紙、ワシントンポスト紙、フィナンシャルタイムズ、TV・・・・など民主党系の報道機関がせっせと載せている。スポンサーの意向に従い目先の利益のためやっているが、どれもみなどれだけ自分で自分の信用、信頼を破壊しているかがわかっていない。トランプを支持した民衆は、NT紙もWP紙も信用していないし、すでに読みもしない。

 アメリカ社会の中層、下層の人々、地方に住む人々は、東部のエスタブリッシュメントを「嫌悪」している。2000年以降だけみても、グローバリゼイションで少数の(0.01%の)富裕層に富が集中し、多くの中間層が没落していった。没落していった人々の不満が、トランプを大統領にした。そのことを米社会のエリート層(=軍産複合体、ウォール街、ネオコン、ユダヤ資本)は理解しなかった。大金を投入しTV広告で嘘でも何でもキャンペーンを行えば、息のかかったヒラリーを大統領にできると思っていたが、そうならなかったのである。

 いまもまた同じ手法で飽きもせずに、ワンパターンのキャンペーンを行っている。
 現在のキャンペーンは、トランプを責めたて、Deep Stateによるトランプ支配を完成するためだ。

3)アメリカ社会でのアンケートの紹介
 (孫崎享氏の7月25日のブログ記事から転載)

 以下引用
**********

 米ロ首脳会談でトランプの対プーチン対応を支持か不支持か?
 WP紙、支持する全体:33%、共和党支持層:66%、民主党支持層:8%。

米国社会激しい分断
現在中間選挙は上院下院双方共和党優位に推移
トランプ共和党支持層の支持固め、二期目大統領目指す

7月25日

 私達はトランプの支持率をみる際、国全体の数字を見るのではなく、共和党の支持者がどうなっているかをみる必要がある。今日、共和党、民主党の支持者の見方は多くの問題で対立する。
 その中、トランプは、民主党支持層がどう反応するかに全く関心がない。共和党員がどう反応するかだ。

 この点、現在、共和党支持者はトランプを強く支持している。
 トランプは、この支持層を固めれば二期目の大統領選で勝利しうるとみなしている。
 米国は伝統的に強い反ソ連、反ロシアであったので、米ソ首脳会談は、支持率アップには難しい案件である。この中トランプは、共和党支持者の高い支持を得ている。

問-1:先週(ヘルシンキ首脳会談で)トランプがプーチンに対応したのを支持するか支持しないか。(7月23日 ワシントン・ポスト)
         支持  不支持
 全体    : 33%  50%
 共和党支持層: 66%  18 %
 民主党支持層:  8%   83 %

問-2:トランプのプーチンとの共同記者会見を支持するか否か(7月19日)
         支持  不支持
 全体     : 40%  58 %
 共和党支持層: 79%  18%
 民主党支持層:  7%   91%

同種現象は貿易関税でも生じている。
 (CBS世論調査6月14~17日)

問-3:「鉄鋼・アルミにトランプの関税をかける決定の賛否(出典"Do you approve or disapprove of Donald Trump's decision to impose new tariffs on steel and aluminum imports?")
         賛成  反対:
 共和党支持層: 71%  17%
 民主党支持層: 10%  73%
 全体    : 36%  48%

**********


 孫崎享氏が紹介している米国紙、米国TVのアンケート調査から、何が言えるか?
 民主党支持者が「ロシア疑惑」を支持し、共和党支持者は「ロシア疑惑」を信用していない。それが如実に表現されているだけだ。
 事実かどうかではなく、もはや「トランプを嫌悪するか否か」のアンケート調査に他ならない。それ以上ではない。

 だれも「証拠」に興味を示していない。
 現代アメリカ社会では、嘘を広めても罪にならない。どちらの「声」が大きいか、の争いなのである。その争いを、民主党支持者と共和党支持者に分かれて行っているのだ。
 したがって、「ロシア疑惑」報道は、どれも信用できない。

 というか、「ロシア疑惑」とは、軍産複合体、ネオコン、CIA,NSAが、主導権をとるための政治宣伝で、これまでも「ロシア疑惑」を煽り、トランプに軍事費を2割も増やさせた。「ロシア疑惑」を煽ればもうかるのである。

 17年末には、トランプ政権に作成させた「基本軍事戦略」において、中国とロシアを既存秩序の変更する「修正主義者」と規定させている。この時も「ロシア疑惑」を煽った。 

4)もはや、民主主義が腐食している

 ますます多くの人々が既存の「アメリカ民主主義政治」が公正な政治や文化、経済発展を実現するための解答ではないと考えるようになっている、人々は幻滅している。アメリカ人ばかりではない、世界中の人々が、幻滅を深めている。

 真実であるかどうかは軽視され、嘘をつくことが罪でなくなった。お金をかけてうそを宣伝し、政治の主導権を握る。これが現代のアメリカ政治だ。

 どうしてこんなことになったのだろうか?
 「グローバリゼーション、新自由主義の帰結」ととらえるべきだろう。

 社会はグローバリゼーションでは一様に豊かになるわけではない。得するのは国民の5%か10%に限られる。大儲けするのは1%か0.1%だ。金持ちはより多くの富を手に入れ、貧しい者はより貧しくなった。中間層がいなくなった。
 グローバリゼーションの「発展」が、現代アメリカ政治の腐敗と混乱を生み出したのだ。これがアメリカ社会の現実だ。ちかぢか、日本社会にも普及するだろう。安倍政権のもとですでに普及しつつあるというのがより正確であるのかもしれない。

 これがわれわれの世界の現実でもある。もっと言えば、新自由主義がこのような世界を出来(しゅったい)させたのである。アメリカ社会に限らない。1991年に社会主義を解体させた後、世界の資本家は、これからは新自由主義の時代であると公言した。しかし、このざまだ。
 
 トマ・ピケティが『21世紀の資本』で、「資本は儲けようとする衝動を自分自身で制御できない、資本主義は国家が制御しなければ野蛮な資本主義に先祖返りする」と警告した。
 この警告にこたえようとする動きは、資本や資本主義の内部からは、少しも生まれてこない。
 新自由主義が、格差を拡大し、社会の腐食を深めるばかりで、何ら解決する力を持っていない、そのことがあらためて証明されたということだろう。

5)信用できないのは、日経の記者も同じ 

 ついでに言っておく。
 このような事件の起こる現代アメリカ社会の事情、病的ともいえる事情、うそが堂々とまかり通る社会にどうしてなったのか、明らかにするのがジャーナリズムであり、ジャーナリストである。調査も分析もしないで、米当局やNT紙、WP紙の報道をもとに「うそ」をそのまま転載し、記事を書いている日本経済新聞の記者。
 記事に署名がある。シリコンバレー=中西豊紀、モスクワ=古川英治の二名の記者。この二人もまた愚かだ。無批判であり、「上」の意向をだけで記事を書く「ひらめ記者」だ。こんな記事を書く記者は、まったく信用できない。中西豊紀、古川英治、あんたらのことだよ。2人の名前は、「信用できない」という言葉と直結している。

6)フェイスブックの屈服

 「フェイスブックの個人情報漏れ」に対する批判を利用し、米権力が攻勢に出て、その結果株価が急落し、時価総額のうち19兆円が消えてしまった。19兆円とは途方もない額だ。

 フェイスブックは「個人情報の洩れ」をひたすら弁明し、そのため監視などの措置をとっているというのだが、その対応は「米権力の意向にしたがって検閲する」行為となっている。目の前で行われているのは、米当局によるフェイスブックの抑え込みである。その結末はすでに見えていて、フェイスブックの屈服である。

 フェイスブックは、Deep State=軍産複合体、CIA、NSAに脅され、屈服した。それが、この記事の示すところだ。
 青年経営者にして大富豪、フェイスブック経営者であるザッカーバーグCEO。つくられたイメージ、伝えられる「颯爽としたその姿」にとは裏腹に、彼が権力にへつらう腰抜けであることが暴露された。

 この先、米権力者はフェイスブックから、世界中の個人情報を、米権力者の求めるがまま提供させることになるのだろう。「個人情報の保護」とは、「米権力者だけに全世界の個人情報を占有させる」という意味に変質した。

 スノーデンによれば、すでに提供しているらしいが、さらに積極的な「犬」になるということなのだろう。詳しいこと、実際のところは、なかなかよくわからないことが多い。

 この経過、米権力によるフェイスブックの抑え込みの経過を、ほかのグーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトが眺めている。そしておそらく同じように、屈服が進むだろう。この先「個人情報」は、米政府、権力者がより自由に利用できるようになるのだろう。

7)フェイスブックの活動を制限せよ!グーグルもアマゾンも
  ネットの巨人企業はCIA、NSAと手を切れ!

 したがって、情報を占有する「米ネット巨大企業」の自由な活動を、世界の人々は自国の権力、すなわち法制度を使って制限し、違反すれば罰し、最終的には追い出さなければならない。でなければ、好きなように支配されることになる。

 中国政府がフェイスブックを自由の活動させていない措置には、根拠があるし、中国人と中国政府にはその権利がある。ロシア政府にもその権利がある。民主主義を守るためには、フェイスブックの活動を制限しなければならない。他の国々も対処しなければならない。

 今回のフェイスブックの対応からは、そのような対処を我々がしなければならないことを教えている。日本社会は、果たして、今からできるのだろうか?   (文責: 林 信治)








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