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日本社会の中国観、韓国観 [世界の動き]

現代日本社会の中国観、韓国観

 
 現代日本の常識は、世界の非常識である。最も代表的なものが「中国観・韓国観」だ。

 日本社会では、日本では70~80%の人が中国の浮上を日本の潜在的脅威として把握し、これに備えるために日米同盟を強化して、中国と東南アジア諸国に対処するのが当然だととらえている。可能ならば韓国、東南アジア諸国連合、オーストラリア、インドなどの周辺国を日米同盟の側に引き込み、中国と対峙し、東南アジアを影響下に治め、戦後の長い時期そうであったように、アメリカと一緒になって日本が特別な地位を占めるのが当然だと考えている。さらに安倍政権は、対米協調の枠内で海外での軍事的貢献も積極的に引き受けるところに踏み出すべきだと主張するに至っている。日本は西欧の一員で、中国、韓国、東南アジアは未熟な国々という認識だ。

 しかし、そのように考えているのは日本政府と日本社会だけだ。ASEAN諸国は、米中関係が改善し、東南アジアの安全保障がゆるがないことを願い、勃興する中国を認めたうえで平和的互恵的な国際関係を望んでいる。アメリカ政府の傀儡だったフィリピン政府は、中国との友好関係へと転換した。中国と領土問題を抱えているベトナムにしても、平和的互恵的な関係を主張する立場である。

 日本政府と日本社会だけが違う。
 安倍政権や外務省の振りまくの偏った誤った中国観を、日本の知識人やメディアが宣伝し、情報操作した結果、国民の間で何となく「嫌中論」がひろがり、政権に都合のいい薄っぺらな「中国観」を持つに至っている。
 そして日本政府は、アメリカの「アジアへのリバランス戦略」に忠実に従い、アメリカともに中国を敵視し対峙する政策をとっているのである。

 「韓国観」も「中国観」と同様で、韓国の台頭は日本にとって「生意気」であるし、日本とは違って未熟な国という認識だ。
 この中国観、韓国観を持った安倍政権は、中国に近づいた韓国を日米韓同盟にしっかりとつなぎとめようと腐心してきた。安倍晋三首相が2015年11月、朴槿恵大統領との首脳会談で「慰安婦問題が両国関係発展の障害物」になっていると言明したのは、アメリカ政府のリバランス戦略、対中国政策を、安倍政権なりに実行しようとしたからだ。

 朴槿恵政権はアメリカ政府、日本政府の圧力に負け、2015年12月28日には、日本軍「慰安婦」問題に対する日韓政府間合意を強引に締結した。2016年7月には中国政府の強い反対にもかかわらず韓国へのTHHAD(高高度防衛ミサイル)配備を決定し、2016年11月には日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)を締結した。中国に対抗し、日米韓軍事協力を強化する方向に、朴槿恵政権は舵を切ったのだ。

 韓国社会の立場は、朴槿恵政権のこの転換と微妙に食い違っている。韓国社会も中国の急速な浮上に「不安」を感じつつも、中国を「戦略的互恵関係」としてとらえている人々が多数を占める。実際に中国との経済貿易関係は韓国経済の大半を占めており、中国との友好関係なしに先行きはないことは、日本以上により確かなのだ。
 
 朴槿恵政権が、国民の大多数から支持を失い機能停止に陥っている要因の一つは、中国との「戦略的互恵関係」を揺るがし、日米の側にあまりに傾いたことによる。

 北朝鮮核問題の解決のために何が必要か、対話と協力を通じて南北関係を安定的に維持することが賢明だ。それ以外にはない。北朝鮮核問題に、「THAAD」配備しても何も解決しないし、より危険になる。誰でも冷静に考えればわかる。韓国社会でも多数の人々はそのように考えている。
 しかし「THAAD」配備は、アメリカ政府の強い意向であった。配備は、北朝鮮ばかりでなく中国も含めた東アジアの安全保障に重大な危険をもたらす。そんなことは明白なのに、朴政権は受け入れてしまった。

 日本の大多数の知識人は、アメリカに従って中国や東南アジアに対処する次元で、韓国や東南アジア諸国の政策を評価し、自分たちのフレームに合わない姿を「未熟な中国、韓国、東南アジア諸国」として描き出す。日本政府の政策に進んで「理解」を示し、日本はアメリカの背後にくっついてその脅威を使って、中国や韓国、アジア諸国に対処するのが当然ととらえている。

 その点では「アメリカには敗けたが、中国や朝鮮に敗けたわけではない」とする歴史観(元関東軍参謀・服部卓四郎が書いた『大東亜戦争戦史』)が、自民党政治家を通じて日本社会のなかに、現在に至ってもなお生き延び続けているとさえ言えるのである。

 このようにして日本政府と日本社会はアジアから孤立する道を歩んでいる。日本社会は孤立する道を選んでいることに無自覚なままだ。   (1月9日、記)
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