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ドゥテルテ新大統領に期待できるか? [フィリピンの政治経済状況]

ドゥテルテ新大統領に期待できるか?

1)選出された理由

 フィリピンはアキノ政権下で年率6%前後の経済成長を継続してきた。その成長ぶりは、世界の成長地域である東アジアの中でも群を抜いている。しかし、経済成長はそのままフィリピンの人々の生活改善を意味しない。新自由主義の下での成長は、必ず格差を拡大する。フィリピンには取り残された多くの人々がいる。格差拡大に不満を持つフィリピン人は、アキノ政権の後継者である政治エリートの「お仲間たち」ではなく、「新味」のあるドゥテルテを新大統領に選出した。悪名高かった犯罪都市ダバオを強引な手段で「平和」な都市にしたという「実績」。あるいは、オランダに亡命中のフィリピン共産党(CPP)議長、ホセ・マリア・シソンを労働雇用担当閣僚に登用したいと提案。このようなパフォーマンスは、貧しい民衆をしてドゥテルテに期待を寄せさせたのは間違いない。もっとも「新味」があるのか、民衆の真の代表者なのかは、別問題である。

2)ドゥテルテ新大統領の基盤

 ドゥテルテ新大統領の政治的基盤はきわめて脆弱だ。彼は力強い政治運動、政治グループの支持で当選したわけではない。どこの国でも似たような現象が生まれているが、巧みなパフォーマンスで人気投票に近い選挙の勝利者になったと言える。特に効果的だったのが、既存のエリート政治家とは違うというパフォーマンスだ。
 パフォーマンスで勝利したことは、選出後、権益を享受している既存のフィリピン支配層、政府官僚からの介入とどのように折り合いをつけるかが問題である。どこの国でも同じだがフィリピンでも、フィリピン支配層は自身の利益のために政府を動かすいくつもの「手」を張り巡らせている。
 この点でドゥテルテは、フィリピン支配層や米政府との間に、特に対立を引き起こしてはいない。その調整はすでに完了しているのであろう。

3)「法人税を下げる」と公言

 ドゥテルテ新大統領は法人税を下げると公言している。新自由主義的な経済発展を構想しているし、フィリピンの支配層、とくに資本家層の代理人にほかならない。フィリピン資本家のみならず米日政府も支持する。
 また、選挙期間中、ドゥテルテは「反米発言」し、中国との関係改善を示唆したが、他方で米軍を再駐留をさせる米比新軍事協定を高く評価した。当選後、米比の安全保障体制を是認する態度を明確に示した。米政府はドゥテルテを批判せず静かに見守っている。すでに何らかの折り合いをつけているのであろう。
 また、フィリピン支配層や米国資本に、自分こそはミンダナオを開発できるとアピールし期待を集めている。ミンダナオは石油、鉱物資源が豊富であるが、過去の強引な侵略、開発は、住民の批判を浴び、MILFやNPAの勢力も根強い。ドゥテルテは、自分こそがミンダナオに和平をもたらし開発を進めることができるとアピールしている。この点もフィリピン支配層や米国政府に支持されるだろう。

 このように見れば、ドゥテルテ新政権はアキノ政権の下で達成した経済成長の上に、その路線を引き継ぎ大胆に発展させることを狙っているように見える。
 ミンダナオに和平をもたらそうとしているのは事実であろう、経済活動には和平が必要だからだ。CPPやNPA、またMILFとの和解、あるいは体制内への取り込みは、フィリピン経済のさらなる発展にとって必要になっている。治安を改善し警察・公務員の汚職をなくすことは、海外からのさらなる投資を呼び込む上で必要だ。
 ドゥテルテのパフォーマンスには、フィリピン支配層の要望が表現されていると見なければならない。
(6月24日記)

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