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「やりきれない」判決 ロード事件 [米兵によるレイプ事件、犯罪]

米比政府の意向を慮った判決

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<性にかかわる暴力の連鎖を止めよう>

1)「やりきれない」判決

 12月1日、ジェニファー・ロード殺人事件に対する判決が、オロンガポ地方裁判所であった。この裁判は全国的に注目されており、長い判決は3時間にわたって全国テレビで読みあげられた。
 フィリピンではこれまで米兵の犯した犯罪の多くは、闇に葬られてきた。米軍による脅し、買収など様々な妨害に屈せず、裁判にまで至ることは極めて稀である。

 米兵によるレイプは米軍、米政府の脅しや買収で、裁判にまで持ち込まれることは極めて少ない。
 2005年、「ニコル事件」は、被害者と家族、支援者が、米兵スミスをレイプでフィリピンの裁判所に訴え、第一審で有罪を勝ち取った。しかし、その語、米政府は被害者と家族に対する脅しを繰り返し、最終的には被害者ニコルさんが告訴を取り下げ、スミスは釈放された。被害者と家族は米国に用意された住居で暮らしているという。

 今回の犯罪は、殺人である。被害者はすでに死亡しており、告訴を取り下げることはできない。そのような意味においても、米兵が犯した犯罪が、果たしてフィリピン法に従いキチンと裁かれるのかと、すべてのフィリピン人、フィリピン社会はこの裁判の行方に注目したのである。 

 オロンガポ地方裁判所74支所裁判長ロリーン・ギネス・ヤバルデ(Roline Ginez-Jabalde)の判決は、長かったけれども大方の予想通り、「悪い」内容だった。

 一言でいえば「明確に殺人と認められる証拠は認められない」というのだ。すべてのフィリピン人が、判決を聞いてため息をついた。「裁判所に期待を抱いて裏切られた」、はたまた「米軍と米兵の犯罪はフィリピンでは裁かれない」という意味か、いずれにせよ「やりきれなさ」を皆が感じたのである。

2)殺人罪がどうして裁かれないのか?
 ジェニファー・ロードは確かに殺されていた。
 2014年10月11日に、オロンガポ市のホテルの洗面所で頭を便器に浸漬した死体で発見された。首には押し付けられた跡があり、法医学調査によれば便器の縁に押しつけられたものと証明された。

 手を下したのは、米海兵隊ジョセフ・スコット・ペンバートン伍長であるのは間違いない。しかし「殺人者に値する罰を受けない」という裁判所判決はあらかじめ決められており、その理屈を述べるために3時間かけたのである。

 判決は、「殺人であったとことを証明する十分な証拠がない」と決定した。刑罰は一段階減じられ、わずか6~12年の禁固に処されただけだ。殺人なら、刑期は少なくとも20年間であろう。

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<ペンバートン>

3) 言い訳の判決理由

 言い訳めいた判決理由を見てみよう。
 判決は、起訴側が殺人となる3つ状況を確立できなかったとする。

 A)裏切り:法廷は、ジェニファー・ロードの殺害が予定されていなかった、とっさの事件であり、裏切りはなかったとした。ジェニファー・ロードが彼女の本当の性についてペンバートンを「だました」ので、ペンバートンが怒って暴行した犯罪に、情状酌量を認めるとしたのである。

 B)優勢な強さ:法廷は、起訴側は、容疑者が犠牲者より本当に強かったと証明していないという。法廷は、ジェニファーの生まれた性を引用し、26歳のジェニファーよりも19歳の海兵隊員ペンバートンが強かったとは言えないというのだ。

 C)虐待の濫用:ペンバートンが犯罪を犯したとき酔っていて、正常な精神状態ではなく、ペンバートン側に「合法の感情から生じる情熱と混乱」があると、法廷は決定したというのである。
 このような理由で殺人罪が成立しないのなら、何でもやり放題ではないか!

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<LGBT Pride>

 判決は、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の人々に対する差別と偏見に満ちたものであり、LGBT団体から激しい怒りと抗議が集中している。
 ペンバートンを殺人で訴えた弁護士ハリー・ロケは、「私は、非常に頭に来ている。判決はLGBTコミュニティに対して憎悪による犯罪を促すものであり、極めて差別的だ」と声明した。

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<On the wing of love>

5)フィリピンの主権が犯された

 今一つの人々の怒りは、果たしてフィリピンに主権が存在するのだろうかという疑問だ。
 これまで「米軍と米兵の犯罪はフィリピンでは裁かれない」という事例をいくつもみてきた。米軍の存在がいかに大きいか、支配的かということを、いつも思い知らされてきた。

 それ以上に情けないのは、米軍に一方的に押し付けられたのならまだしも、そうばかりではなくフィリピン政府が米国政府の意向に従い、今回は裁判所までがアメリカ、フィリピン両政府の意向に従い、判決を書いた現実である。フィリピンの裁判所が自発的に自主的に米兵の犯罪を正当に裁かなかった、犯罪者が米兵なのでこれを見逃した、進んで主権を放棄したという、事実である。

 1月12日には、フィリピン最高裁が米比防衛力拡大強化協定(以下:EDCA)の違憲かどうかの判断を避け、実質的に容認した。この一連の判決には明らかに関連がある。そこにフィリピン支配層の意思が明確に読み取れるし、背後には米国のアジア戦略が存在する。

 フィリピンの人々の人権を擁護しない、安全保障と称して米軍の駐留を認め地域の軍事的対立を激化させる、現在のフィリピン政府の選択した路線は、フィリピン人の生活と安全を脅かしその利害に反するものだ。
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