安倍政治とは何か? [現代日本の世相]
安倍政治とは何か?
1)安倍一強体制の確立
安倍一強体制はどうやって作り出されたのか。小選挙区制を利用した自公両党と安倍政権が大いに活用した結果が、自民一強、安倍一強をつくり出した。
選挙における公認権は官邸が握り、政党交付金は自民党総裁に権力が集中する。従来の派閥は力を失ってしまった。その結果官邸がすべて支配する政治となった。安倍首相周辺の少数政治家と官僚に権力が集中している。
安倍政権は、さらに大手マスメディアを政権運営の装置として支配下に入れて、国民を情報コントロールしている。
2)自民党は典型的な右派政党になった
安倍政権は典型的な右派政権になった。
対外的には、タカ派の主張を行い、ナショナリズムの強調し、過去の侵略戦争を正当化する歴史修正主義を掲げ、軍事力で相手を抑えつける=積極的平和主義を唱えている。第二次世界大戦の結果、決定した国境線の変更を、日本政府は主張している。海外からは、極めて危険な右派政権と見なされている。
国内的には、平等よりも、競争と自助努力を優先する。成長戦略は、労働法制の規制緩和と法人税減税である。
これまでの自民党、すなわち1955年体制時代から続いてきた自民党は、典型的な包括政党であって、イデオロギー的に言えば右から中道の考え方まで併存してきた。その「併存」は、経済成長の上での利害調整で可能となった。
1992年のバブル崩壊以降、日本経済は低迷しもはや高度成長は見込めない。そのため自民党政権は、新自由主義、格差拡大で利益を確保する路線に切り替え、イデオロギー的には右一色になった、ということである。
3)代議制民主主義の機能不全
今回の国会包囲デモが拡大・持続したことは、国民の政治意識の高まりを反映したと言える。しかも、国会や政党・議員への不信感を訴える主張が多かった。国民の多数が納得しないなかで与党は、立法作業を強行した。
一方、国会包囲デモの声を代表する政党・議員がいなかったし、国会の審議は国民の疑問に答えるものではなかったことも、明らかになった。現在の日本の代議制民主主義、政党と議員は、国民の声を反映しないシステムになってしまい、機能不全に陥っている。
デモとして表現された国民の声は、安保法案成立以降、どのように継続した運動を組織するかが課題になっている。対抗運動は継続して初めて政治運動となることができる。
4)形骸化した国会審議
国会審議、議員間討論がまったく低調であって、いかにもレベルが低いし、内容がない。どうでもいい形式へのこだわりがあり、審議は時間数だけで測られる。
実際のところ、本会議は機能せず、委員会でほぼ審議が決着する。与党議員は官僚の事前調査に頼り切り、本会議ではほとんど何もしない。野党は、政府与党を質疑で追い詰めようとする、揚げ足取りをしようとする。その結果、行われるべき法案の逐条審議が行われない。
結局、日程闘争と国対政治の裏交渉だけが大きな役割を果たして、形骸化した審議で終わる。
5)「新三本の矢」は、まやかし
安倍内閣は、新三本の矢を発表した。「強い経済で名目GDP600兆円」、「子育て支援で出生率1.8」、「安心につながる社会保障で介護離職ゼロ」。
一言で言えば、「新三本の矢」はまやかしである。実現するつもりもなければ、その根拠もない。口当たりのいい、ただの宣伝文句である。
安保法案を成立させたので、安保から経済、国民生活向上に政策転換したかの如く装い、支持率回復を狙っているのだろう。
第一に、これまでの三本の矢の評価がない。アベノミクスが掲げた、2%の物価上昇→賃金上昇→消費拡大というメカニズムは作用していない。特に賃金はほとんど上がっていない。金融緩和の出口戦略=財政赤字の処理は全く手つかずだ。企業は内部留保をため込むばかりで国内へ投資しない。新しい矢を放つなら、これまでの矢の行方を確かめてからにすべきだ。
第二に、GDP600兆円を掲げたが、いつ、どのように達成するのかもなければ、時期の目標もない。実現は相当困難だがそのための手段は明示されていない。「3%成長を続ければ2020年度には実現できる」と官僚は説明するが、この20年間3%成長したことはない。ここ数年の潜在成長率は0.3~0.4%でしかない。
第三に、出生率1.8は、結婚したい人がすべて結婚し、生みたい人がすべて生んだ場合の出生率なので、これまた実現はほとんど不可能である。支援制度なし目標だけ。
第四に、介護離職を防ぐには公的介護施策の充実が不可欠で、そのためにはより大きな財源が必要だが、そんな準備もない。これも掛け声だけ。
「新三本の矢」は、実現の裏付けがまったくないし、安倍政権自体がその約束・目標を守るつもりがない。目くらましである。国民をバカにしている。(文責:林 信治)
1)安倍一強体制の確立
安倍一強体制はどうやって作り出されたのか。小選挙区制を利用した自公両党と安倍政権が大いに活用した結果が、自民一強、安倍一強をつくり出した。
選挙における公認権は官邸が握り、政党交付金は自民党総裁に権力が集中する。従来の派閥は力を失ってしまった。その結果官邸がすべて支配する政治となった。安倍首相周辺の少数政治家と官僚に権力が集中している。
安倍政権は、さらに大手マスメディアを政権運営の装置として支配下に入れて、国民を情報コントロールしている。
2)自民党は典型的な右派政党になった
安倍政権は典型的な右派政権になった。
対外的には、タカ派の主張を行い、ナショナリズムの強調し、過去の侵略戦争を正当化する歴史修正主義を掲げ、軍事力で相手を抑えつける=積極的平和主義を唱えている。第二次世界大戦の結果、決定した国境線の変更を、日本政府は主張している。海外からは、極めて危険な右派政権と見なされている。
国内的には、平等よりも、競争と自助努力を優先する。成長戦略は、労働法制の規制緩和と法人税減税である。
これまでの自民党、すなわち1955年体制時代から続いてきた自民党は、典型的な包括政党であって、イデオロギー的に言えば右から中道の考え方まで併存してきた。その「併存」は、経済成長の上での利害調整で可能となった。
1992年のバブル崩壊以降、日本経済は低迷しもはや高度成長は見込めない。そのため自民党政権は、新自由主義、格差拡大で利益を確保する路線に切り替え、イデオロギー的には右一色になった、ということである。
3)代議制民主主義の機能不全
今回の国会包囲デモが拡大・持続したことは、国民の政治意識の高まりを反映したと言える。しかも、国会や政党・議員への不信感を訴える主張が多かった。国民の多数が納得しないなかで与党は、立法作業を強行した。
一方、国会包囲デモの声を代表する政党・議員がいなかったし、国会の審議は国民の疑問に答えるものではなかったことも、明らかになった。現在の日本の代議制民主主義、政党と議員は、国民の声を反映しないシステムになってしまい、機能不全に陥っている。
デモとして表現された国民の声は、安保法案成立以降、どのように継続した運動を組織するかが課題になっている。対抗運動は継続して初めて政治運動となることができる。
4)形骸化した国会審議
国会審議、議員間討論がまったく低調であって、いかにもレベルが低いし、内容がない。どうでもいい形式へのこだわりがあり、審議は時間数だけで測られる。
実際のところ、本会議は機能せず、委員会でほぼ審議が決着する。与党議員は官僚の事前調査に頼り切り、本会議ではほとんど何もしない。野党は、政府与党を質疑で追い詰めようとする、揚げ足取りをしようとする。その結果、行われるべき法案の逐条審議が行われない。
結局、日程闘争と国対政治の裏交渉だけが大きな役割を果たして、形骸化した審議で終わる。
5)「新三本の矢」は、まやかし
安倍内閣は、新三本の矢を発表した。「強い経済で名目GDP600兆円」、「子育て支援で出生率1.8」、「安心につながる社会保障で介護離職ゼロ」。
一言で言えば、「新三本の矢」はまやかしである。実現するつもりもなければ、その根拠もない。口当たりのいい、ただの宣伝文句である。
安保法案を成立させたので、安保から経済、国民生活向上に政策転換したかの如く装い、支持率回復を狙っているのだろう。
第一に、これまでの三本の矢の評価がない。アベノミクスが掲げた、2%の物価上昇→賃金上昇→消費拡大というメカニズムは作用していない。特に賃金はほとんど上がっていない。金融緩和の出口戦略=財政赤字の処理は全く手つかずだ。企業は内部留保をため込むばかりで国内へ投資しない。新しい矢を放つなら、これまでの矢の行方を確かめてからにすべきだ。
第二に、GDP600兆円を掲げたが、いつ、どのように達成するのかもなければ、時期の目標もない。実現は相当困難だがそのための手段は明示されていない。「3%成長を続ければ2020年度には実現できる」と官僚は説明するが、この20年間3%成長したことはない。ここ数年の潜在成長率は0.3~0.4%でしかない。
第三に、出生率1.8は、結婚したい人がすべて結婚し、生みたい人がすべて生んだ場合の出生率なので、これまた実現はほとんど不可能である。支援制度なし目標だけ。
第四に、介護離職を防ぐには公的介護施策の充実が不可欠で、そのためにはより大きな財源が必要だが、そんな準備もない。これも掛け声だけ。
「新三本の矢」は、実現の裏付けがまったくないし、安倍政権自体がその約束・目標を守るつもりがない。目くらましである。国民をバカにしている。(文責:林 信治)
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