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日米同盟の再強化とフィリピン [フィリピンの政治経済状況]

 日米同盟の再強化とフィリピン
     2015年5月3日、 ペリー・ディアス

1)日米首脳会談
4月29日、オバマ大統領と安倍首相.jpg
<4月29日、オバマ大統領と安倍首相>

 4月29日、日米首脳会談後の共同記者会見でオバマ大統領は、「私は、アジア太平洋地域で、大きく持続的な役割を果たしていることを確認するために、アメリカの外交政策のバランスを再調整するために働いてきた」とし、その言葉で、米国訪問中の安倍晋三首相とともに、アメリカが21世紀の太平洋戦力を維持すると述べた。日米共同ビジョン声明は、「日本との同盟を再強化と弾力的な運用は、アジアにおける米国の立場を持続可能にする」としている。この単純すぎる表現のうちに「アジアへの同盟」のすべてがある。それとも私は「日本への同盟」と言うべきだろうか?

 東シナ海と南シナ海における積極的な中国の軍拡が、隣人の間で緊張を引き起こしており、戦略的なパートナーとして勃興する中国と付き合うことがいかに重要であるか、そう考えた時に誰の海軍力が、この地域で米国の次に充実しているか? それは日本である。オバマ大統領は、「アジアへの同盟」のために、日本を引き入れ、利用しなければならないと考えたにちがいない。

 実際、南沙群島10島のうち、中国が実効支配する6つの島での干拓事業は、南シナ海での中国の支配を強化するだろう。米国の「既存の軍事的プレゼンス」に対するする侵害である。中国が南シナ海に南沙(スプラトリー)諸島周囲約200マイルに排他的経済水域(EEZ)と防空識別ゾーン(ADIZ)主張することを、ただ想像してみればいい。そうなった時、南シナ海における航行の自由を制限することになる。日本は中東からの石油輸入に大きく依存しており、南シナ海を通過する。日本にとっての最善の利益は、南シナ海の自由な航行を維持するために米国のパートナーを維持することにある。中国から切り離し米国に従順な日本に誘導することが米国の利益になる。

2)新防衛ガイドライン

 新防衛ガイドライン――1997年以来最初の改訂は日本が、弾道ミサイルに対する防衛、海上セキュリティ、サイバー、宇宙攻撃を含む「グローバル軍事協力」に参加することを可能にする。これらのことは、日本が第二次世界大戦後、制定した平和憲法の再解釈を、2014年内閣で閣議決定した後に、起こった。
 この閣議決定によって、日本に対しては武力攻撃がなかった場合でも、その他の国が攻撃を受けた時に、米軍とともに出動を意味する「集団的自衛権」を行使できる。これまで平和憲法の下では、アメリカが危険な状態に陥った時、軍事力を行使できなかったわけだから、これは大きな変化である。しかしそれは、周辺諸国にとっては脅威でもある。現在の日本は、米国に向かう弾道ミサイルを撃墜することができるとしている(日本政府は、技術的にではなく、政治的にそのように表現している)。
 新ガイドラインの当面の明確な目的は、中国を防ぐために第一列島ラインに沿って防衛力を強化することにある。

3)「オフショア防衛」

 アドミラル劉華清
 1986年には、中国が「沿岸防衛」から「オフショア(沖合)防衛」に海軍戦略をシフトした。提督・劉華清は、しばしば「現代の中国海軍の父」と呼ばれ、オフショア戦略を開発した。
 しかし、劉提督はその当時、中国人民解放軍海軍は「沿岸防衛」に限定される戦力しかないこと、米国に比してきわめて貧弱な海軍であることをもよく承知していた。効果的な「沖合防御」戦略を成し遂げるために、劉提督は、成し遂げられる4つの必要性を確認した。
 (1)一定時間の特定の領域内の海を掌握する能力、(2)効果的に中国のシーレーンを防衛する能力、(3)中国主張の海域の外で戦うために能力、(4)信頼にたる核抑止力を実現する機能。
第一、第二列島ライン First & Second Island Chaines.jpg
<第一、第二列島ライン>

 そして、これらの要件を満たすために、中国人民解放軍海軍は以下のタイムテーブルを提示した。
 第一期:2000年までに、黄海、東シナ海、南シナ海など第一列島ラインの内側で、対等な支配権を確立すること。
 第二期:2020年までに、中国は第二列島ラインまで対等な支配権を拡張すること。
 第三期:2050年までに、真のグローバル海軍への進化を達成すること。
 基本的には、第一期は計画に対し15年遅れており、概して中国は2075年、あるいはそれ以降も、拡大の目標を達成できない可能性がある。
 
 Chiguaリーフの構築

 中国の干拓事業が2016年までに完成する予定であり、第一列島ラインの支配確立のための途上にある。中国の目的は、第一列島ラインのうち、台湾と琉球間の宮古海峡または台湾と北フィリピン間のルソン島海峡の2つの隘路のうち、どちらか一つででも、を突破することにある。
Chigua環礁の埋め立てConstruction on Chigua Reef..jpg
<Chigua環礁の埋め立て>

4)海峡の防衛

 2年前、日本は宮古島で地対艦ミサイルのいくつかのユニットを配備した。それにより戦略的に重要な宮古海峡の航行を支配できた。宮古海峡を突破する中国海軍のいかなる試みも困難であり、中国軍に重い損害を与える可能性がある。
 2014年日本政府は、台湾から100マイル以下であり、係争中の尖閣諸島から93マイルしかない日本のもっとも西側の領土、与那国島にレーダー基地を建設し始めた。レーダー基地は尖閣諸島に、日本にとってよりよい防御と監視能力を提供する。尖閣は中国もその領有権を主張している。
 日本政府の対応は、中国を一つのターゲットとしている。と同時にそれは日本政府単独の動きというより、日米同盟の再強化、日米新ガイドラインのなかで捉えられなければならない。

 ルソン島海峡は、フィリピンに属している3つの島グループを含み、幅は160マイル。海峡における島の最北端がバタネス。フィリピンから台湾を分離するバシー海峡で、海峡内の海上交通を監視するために、天然の見晴らしのよい場所を提供している。
 仮に中国が機雷で台湾海峡を封鎖した場合、日本への貿易フローはルソン島海峡へ向け直される。それは隘路である南シナ海で最も重要な大洋航路の1つになる。この地域の「緊張」と、フィリピンは無縁ではない。

5)スービック湾
スービック湾.jpg
<スービック湾>
 最近米国政府は、2014年4月に署名された強化された米比防衛協力協定(以下:EDCA)に準拠して、伝えられている通り8ヵ所の軍事拠点へのアクセスをフィリピン政府に要求した ―― ルソン島4ヵ所、セブ島2ヵ所、パラワンで2ヵ所。ルソン島の4ヵ所の基地には、スービックとクラークの元米軍基地が含まれている。他の2ヵ所はラオアグ空港とバタネス島です。ラオアグ空港とバタネス島は、中国によるバシー海峡突破、またはルソン海峡の他の2つの海峡ブブヤン(Babuyan)とバリンタン(Balintang)のいずれの突破をも防止する機能を米国に提供すると推測できる。

 一方、米国は「日本との同盟」を間に合わせなければならない。米国のアジアへのリバランス戦略の中心内容だからである。新日米防御ガイドラインに署名することで、日本軍艦が東シナ海と南シナ海をパトロールする際に、アメリカ軍艦に直結していることが容易に予想される。その点において米国政府は、「日本との同盟」でよい取引を、いまだ日本側から十分に引き出してはいない。

 他方、フィリピンでは、EDCAの合憲性に疑問を呈しているフィリピン最高裁の未完了の申し立てがあり、高等裁判所が判決を出すまで、米国は待たなければならない。ちょうど1992年にフィリピン上院が米軍基地の保持を拒否した時のように、高等裁判所がEDCAを拒否した場合、フィリピンはアジア太平洋地域での米国軍事力の米国のリバランス戦略ループから抜け出ることになる。
 そのことが、フィリピン国内に置いて米軍、米国支配の傘の下により入るのか否かをめぐって政治闘争の課題になっている。
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