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石炭火力発電所の環境と健康への影響 [フィリピンの政治経済状況]

 マリベレス周辺のコミュニティについての最近のニュース

 GNパワーマリベレス発電所石炭火力について

 反核バターン運動/石炭拒否マリベレス運動

 1)背景

 マリベレスは、かつてフィリピン初の経済特区であり、現在はバタアン自由貿易地域(以下FAB:the Freeport Area of Bataan)となっています。約47社の製造業企業が現在、FAB内で稼働しています。この事情から、マリベレスの町は、生計の機会をもとめて国内外からあるいは地元から移住者が集まり住む町となり、異なる文化が集う場になっています。

 バタアン自由貿易地域内に投資した投資家利益を確保する一つの条件は、電気の安定的かつ安価な供給です。電気の安定供給は地方政府の優先課題です。地方政府は、バタアン州の堅調な経済成長にとって必要なのは、安定供給と必要なだけ十分に消費できる電気であると、信じています。

 その結果、2010年にこの小さな町は、巨大な石炭火力発電所プロジェクトの拠点になりました。石炭火力発電所は、サイス・グローバル(Sithe Global)社という米系資本が所有者であり、当初は中国系デナム(Denham capital)資本も投資していましたが、後にアラヤ財閥がデナム資本の株式を買い取りました。また、発電所は、中国国家電気機器会社が設計・建設しました。

 600メガワットの石炭火力発電所プロジェクトは、ルソン地域内のどの石炭火力発電所の運転コストよりも低いコストで運転できるように計画されました。建設地域のコミュニティには、安い電気料金による電気の供給だけでなく、雇用も約束されました。

 2012年5月に稼働し、それから2年以上が経ちましたが、発電所周辺地域のコミュニティの生活はより困難になりました。健康、公害、環境破壊、また特に海の汚染により漁師や農民の所得と生計機会の損失が増大し、石炭プラントの運転に関連して重大な懸念が表面化しています。地域の家庭には安い電気は供給されていませんし、雇用も拡大していません。

 これは、驚くべきことではありません。石炭発電所の運転は、すでにフライアッシュ、ボトムアッシュを含む数百万トンもの固体廃棄物、水銀、ウラン、カドミウム、トリウム、ヒ素などが含まれる排煙脱硫スラッジ、および他の多くの重金属を排出することを証明しました。

 そして、この効果はGNパワー社石炭火力発電所の近くの地域社会によってすでに経験されていると考えられています

 影響を受けた地域社会を下記に記します。バランガイ・バセコ(Baseco)、バランガイ・シシマン(Sisiman)、バランガイ・トップサイド(Topside)、バランガイ・アラスアシン(Alas-asin)、バランガイ・ポブラシオン(Poblacion):

マリベレス石炭火力発電所 海側から見た全景 (320x137).jpg
<海側から見たm理べレス石炭火力発電所 全景>

 2)健康問題

 2014年8月に、マリベレス保健サービス協同組合(MAHESECO)、この町のパブラシオン(Poblacion)地区中心に位置する小さなコミュニティベースの医療施設は、発熱、咳と風邪を伴い下痢の治療を必要とする患者の増大に気づきました。患者のほとんどは子供でした。この事件は、下痢やインフルエンザ大流行を宣言するようにマリベレス市政府を促しました。確かな原因はいまだわかっていません。

 同様に、バランガイ・バセコ(Baseco)で、地域社会の人々は、皮膚の発疹/傷と一緒に喘息、咳、風邪や肺炎などの呼吸器疾患に悩まされました。

 バタアン自由貿易地域(以下FAB、the Freeport Area of Bataan)の労働者のコミュニティであるサチオ・パラオ(Sitio Palao)の、おそらく420以上の世帯1,900人は、もっとも影響を受けた地域社会の一つでしょう。 サチオ・パラオは、石炭火力発電所からちょうど1キロメートル離れた地域で、家々はフライアッシュと煙が出ている大煙突に対し、50メートル平行に配置されています。

 同様に、約200人いる子どもたちのうち115人は、喘息を持っています。喘息発作は汚染によって引き起こされます。子供たちは、発電所が稼働して引き起こされた重度で慢性の喘息発作に苦しんでいます。

 2014年9月5日、厚い「霧」が、午後の早い時間にサチオ・パラオの家々に降りてきました。地元の人たちは、事件に驚き、何が起こっているか目撃するため家から出ました。その地域では視界ゼロだったからです。「霧」は厚く、皮膚に粘着性を感じさせ、不快な臭いを持っていました。

 一日が過ぎ、コミュニティの住民は下痢、喘息発作と皮膚の発疹に襲われました。その結果、バセコ(Baseco)の地域保健センターは、この期間の治療が必要となった膨大な数の患者にたいし、下痢やアメーバ症や脱水のための薬不足に陥りました。この不自然な健康状態の異変は、近隣すべての自治体が、下痢やインフルエンザの流行を宣言するよう市政府に促すことになりました。

 下痢、アメーバ赤痢、嘔吐、胃の痛みは、子供と大人にとって慢性的な問題となっているのです。サチオ・パラオの人口のおよそ半分は、石炭火力発電所の運転以来、これらの疾患に悩まされ続けてきました。
 幼い子どもたちは、空気中のウィルスや細菌に弱い免疫システムと低い抵抗力のまま成長しています。
 地元の人々は、自治体のすべての水、土地や空気が汚染物質で汚染されており、病気は大気中の飛んでくる灰と炭塵/スラッジによって引き起こされると考えています。雨が降ることで空気中の炭塵粒子で酸性雨となり、雨のあと地上から立ち昇ってくる暖かい蒸気、または“alimuom”となり、地元のコミュニティの人たちにみられる胃痛と下痢を引き起こすのです。また、乾季でさえ、炭塵は皮膚アレルギーやヘイズ周囲の黒ずみを引き起こすと信じられています。

 これらの健康上の問題は、人間だけではなく、ペットから、とりわけ牛、雄鶏、鶏、豚、ヤギなどの家畜や、地域社会にいるすべての動物に現れています。2014年になって10月の時点で、10頭以上の牛が死にました。20頭以上の飼育しているヤギが、口内炎もしくは発疹を引き起こしており、食べることが難しくなった動物は弱ってしまっています。そのうちいくつかのケースは、食糧(草)によって引き起こされたと疑われています。雄鶏も影響を免れませんでした。バランガイで競合する雄鶏の幾人かのブリーダーは、彼らの雄鶏が襲われた病気の流行に文句を言われています。風邪や動物が最終的に弱体化する病気は、現在では主要な関心事となっています。時間とともにビタミンや抵抗構築薬を投与していますが、彼らも気づいているように、今日では不十分であるようです。

 3)環境問題(公害)

 発電所が運転を開始してから、発電所の近くに住む地域の人たちは、異変を感じてきたことが確認されています。雨の降る兆候が少しもないのにヘイズやスモッグで囲まれ、一日じゅう暗くなっているのです。
 雨が降ると、雨水は黒い色となり、いやな臭いがします。石炭火力発電所ができるずっと以前は、雨水をため大切に利用していました。とりわけサチオ・パラオは水が乏しく、住民は水を確保するのに苦労していました。そのため、雨水は、清掃、洗濯、入浴やさらには料理など、コミュニティの人々は自分たちの生活に利用してきました。今では、雨水はすでに汚染されており、石炭火力発電所開発者は給水システムを建設せず、放置したため、コミュニティでの生活は、悲惨なものになっています。

 住民うち幾人かは、殺虫剤の匂いを嗅ぐと片頭痛をひき起こします。住民にとって、建設に伴う爆破による大地が揺れや騒音公害(爆破音)は、日常茶飯事のことと考えられています。

 4)経済/生活への影響

 マリベレス住民にとって主要な収入源の一つは漁業です。バランガイ・バセコ(Baseco)、シシマン(Sisiman)、トップサイド(Topside)、そしてポブラシオン(poblacion)の住民は、日々の収入源を漁業に依存しています。したがって、気候変動と海の温暖化は、漁業とマリベレス町の人々に、大きな影響をもたらしています。

 石炭火力発電所の稼働は、発電所が温排水を直接海へ流すため、海水温を上昇させます。「赤潮」とその他の有毒汚染は長年にわたって、石炭発電所の運転の主要な影響の一つであると考えられています。これとは別に、漁師の日常の漁獲量は減少しています。

 もう一つの重要な異変は、マンゴー、kasuy、ココナッツ、バナナとsantolなどの果物農産物の収穫が減少していることです。アラスアシン(Alas-asin)地域のある住民によると、以前であればマンゴーの木からマンゴー果実を(竹の織りバスケット)3 杯収穫していたのに、今年初めからは、わずかマンゴー14個しか収穫できなかったと言います。

 これらのことに加えて、石炭港から150メートルを禁漁区域としたため、沿岸を中心に地方自治体の指定する漁業水域が減少してしまいました。ほんの数人の漁師しか、漁業用電動漁船を持っていません。小漁民のほとんどは、小さな漁船(bancasin)しか持っておらず、地方自治体の漁業水域まで行けません。石炭発電所の港近くの水域が禁漁水域と宣言されて以来、漁師たちはより遠く離れた、より危険な水域に出て、漁をしなければならなくなりました。

 5)科学研究/調査の必要性

 600MW GNパワー社マリベレス石炭火力発電所の運転による環境と健康への影響は、現時点では地域社会の最大の問題です。発電所近くに暮らしている地元の人々の直接の経験を考慮すると、石炭火力発電技術の進歩のにもかかわらず、そして政府とその弁護者からの口頭での保証にもかかわらず、この種の発電所は、いまだ石炭燃焼によって生成された大気汚染を防ぐことはできません。

 環境(大気、水、土壌)や、特に石炭発電所周辺の地元の人々対する石炭発電所の健康への影響を、測定し、文書化することを目的とした調査研究の実施が必要です。地元とはすなわち、バランガイ・アラスアシン(Alas-asin)、バセコ(Baseco)、パラオ(Palao)、シシマン(Sisiman)、トップサイド(Topside)、そしてパブラシオン(Poblacion)です。

 環境への具体的な関連、地元の人たちの健康への影響の総合的な理解を、研究調査によって文書化されなければなりません。

 反核バタアン運動(NFBM)と反石炭火力マリベレス運動(CFMM)は、政府によって検討されるエネルギー源が人々と環境に優しいものに変更すべきと考えていますし、再生可能エネルギー法の実現要求をさらに強化しなければなりません。そして石炭発電所の影響にかかわる政策立案者へ継続的に関与していかなくてはなりません。文書化された環境と健康の調査は、そのような活動の基盤となるでしょう。

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