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バタアン自由貿易地域の現況と労働組合運動 [フィリピン労働運動]

 バタアン自由貿易地域の現況と労働組合運動

 
 アンバ・バーラ(バタアン労働組合連合:バタアン自由貿易地域の労働組合連合)から、最近の「バタアン自由貿易地域」(ルソン島バタアン半島、マリベレス周辺)の労働組合の実情について報告が届いた。

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<アンババーラの労働組合セミナー>

 「バタアン経済区」は2010年から、「バタアン自由貿易地域」の名称が変わった。名称だけでなく、従来はフィリピン政府経済区庁の管轄下にあったが、制度変更に当たり地方政府の管轄下に移行した。
 中央政府が、法人税・関税などの税金免除した経済区を設置し、外国企業を誘致する時代はすでに終わった。進出企業に税金免除する制度は経済区のみならずフィリピン全土ですでに実施されており、経済区を超えて多くの欧米日中などから企業が進出してきている。とくにマニラ周辺へは多くの外国企業が進出しフィリピン資本との高度なかつ近代的な協業関係がすでに確立している。
 他方、「バタアン経済区」は電力・港湾などのインフラが老朽化しており、実情に合ったメンテナンスが必要になっている。この地域に進出してくるのは、マニラ周辺とは異なり労働集約的な製造業が中心である。中央の経済区庁が管理運営するには適さなくなったのであろう。そのため、実情をよく把握した地方政府が、費用をあまりかけないで、進出企業の要望に応じた便宜をはかる態勢に変更したようである。自由貿易地域の運営の仕方によっては、地方政府にはいくらかの税収も入ってくることになる。「バタアン自由貿易地域」への制度変更にはそのような事情があるようだ。
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 バタアン自由貿易地域の現況と労働組合運動
 2014年9月
 アンバ・バーラ、 エミリー・ファヤルド

 4年前の2010年にバタアン地方政府によって「バタアン自由貿易地区」(Freeport Area of Bataan)はスタートした。かつては、「バタアン経済区」と称しており、政府・経済区庁の管轄下にあった。
 地方議会前議長によると制度変更の目的は、「より多くの投資家を受け入れることであり、地方政府に収入を集中すること」であるとしている。権限が中央政府から地方自治体へと移管したことになる。
 2010年には、「バタアン自由貿易地区」の労働者数は11,000人まで減少していたが、2014年には18,293名まで増加した。「バタアン自由貿易地区」によると2014年7月時点で44社が操業している。
 その内、労働組合があるのは9社だけである。とはいっても、9社の全労働者が労働組合に加盟しているわけではない。契約労働者は、労働組合に加入できない。9社の全労働者数は、8,735名であるが、そのうちの正社員2,585名だけが労働組合メンバー。残り6,150名の契約労働者は組合に入っていない。(※:契約労働者は5か月間の雇用契約、労働組合に入れば契約更新されないので、実際のところ加入できない)

 「バタアン自由貿易地区」の全労働者数は18,293名、労働組合員数2,585名であるから、組織率は14.1%になる。他方、「バタアン自由貿易地区」では契約労働者が約13,000名にまでが増加し、全労働者の71%を占めるに至った。3人のうち2人以上は契約労働者となってしまった。

 この数字を見ても、「契約労働者制度」が、いかにフィリピンの労働組合運動を弱体化させているかがよくわかるだろう。フィリピンでは、労働組合結成の手続きが煩雑で労働組合結成が困難であるうえ、多くの会社が契約労働者を導入することで正社員、労働組合員を減らしてきた。そのため、労働組合運動は以前に比べ弱体化している。
 なお「契約労働制度」は、先進国が発明した制度であり、新自由主義のもとでフィリピンに導入された。

 現在のところ、「バタアン自由貿易地域」ではミツミ電機が最も大きく、労働者数3,235名(日系資本は、ミツミ電機だけとなった)。次がファッション・バッグの2社で、2,238名。ドンイン社、デスクトップバッグ社、ミコ社(登山用具製造)の労働者数が1,000人以上である。

 なお、「バタアン自由貿易地域」外ではあるが、石炭火力発電所のGNパワー社に労働組合があり145名の組合員がいる。また近くのリマイにミレニアム・エネルギー社があり、65名の組合員がいる。両労働組合はともにアンバ・バーラに加盟している。

 A: バタアン自由貿易地域44社のうち、労働組合のある9社の組合員数内訳

  労働組合      労働組合員数 契約労働者数 全労働者数
1) ミツミ電機:      1,000  2,235   3,225
2) ダンロップ社:     142    547   689
3) エシラー社:     628    290    918
4) ドンイン社:      163    982   1,145
5) ミコ社:        150   1,225   1,375
6) エッジ・ソフト社:   150   133   283
7) ユニバーサル社:    154    234   388
8) バーレン・ファイバーグラス社:98  484   582
9) NPCアライアンス社:  100    20   120
       計
             2,585   6,150  8,735

B: バタアン自由貿易地域44社、18,293名のリスト
1)ドンイン・グループ:7社、労働者数5,267名
    バックパック、チャイルドキャリア、ベビーカーやハーネス製造
2)電子部品産業(ミツミ電機を含む)、2社、3,283名
3)ルエン・タイ・グループ:2社、労働者数2,379名、コンピュータ用バッグ、靴製造:
 そのうちの1社デスクトップ社は全労働者数1,609名、うち正社員928名の労働組合がアンバ・バーラに加盟
4)ファッション・バッグ社グループ、2社、労働者数2,238名、コーチなどブランドバッグの製造、
5)衣服縫製会社、6社、労働者数1,578名
6)人造光学レンズ製造、1社、918名
7)テニスボール製造、689名、ダンロップに納入
8)BFGインターナショナル・グループ:4社、労働者数582名
9)メドテクス・グループ:4社、労働者数388名
10)靴製造会社、2社、285名(20名が正社員、265名が契約社員)
11)マリーン・サービス、1社、172名
12)プラスチック成型、3社、120名
13)プラスチック・パレット製造、1社、120名
14)衣服・古着リサイクル業、1社、99名
15)ヴァイオリンケース製造、54名
16)ファッション・バッグ・アクセサリー社、労働者数26名
17)段ボール箱製造、1社、25名
18)ファイバーグラスボート製造、1社、20名、
19)はんだ製造、1社、22名
20)硫黄粉末製造、1社、17名
21)コンピュータ分解部品リサイクル業、14名
22)税金包装製造、1社、8名
23)スポーツ車修理、1社、5名
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