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フィリピンは最近、どのようにかわりつつあるのか? [フィリピンの政治経済状況]

 フィリピンは最近、どのように変わりつつあるのか?

 1)フィピンのジョリビー : フィリピン経済の好調が続く

 フィリピンを訪れた人なら、誰でも知っているだろう。ファーストフード「ジョリビー」。ハンバーガーショップだけれど、マクドナルドと違い、味付けはあくまで甘く、そして量も多くてフィリピン的だ。フライドチキンとライスのセット(野菜がまったくついていない)でとりあえず満腹になるから、ファーストフードではなく立派なランチ。ジョリビーは、フィリピンのローカルなニーズをしっかりとつかんだ。(ただし、食べ続けると我々のような年配者は野菜不足で胸焼けする。)

 今ではチェーン店網を確立し、国内実績をテコに海外展開を加速している。中華ファーストフーズ「永和大王」を買収し傘下に収め、中国出店を増やし、香港、ベトナム、シンガポール、米国、中東にも進出した。今では世界で2,800店舗を擁する。
 「ジョリビー」のにぎやかさは、フィリピン経済の好調さを象徴しているように見える。

 2)急増する人口、若いフィリピン
140705 一人当たりGDP 好調なフィリピン経済 日経 (294x320).jpg
<1人当たりのGDP 日経 7月5日>

 フィリピンは人口が1億人(2014年)で、全国民の平均年齢が23歳、東南アジアの中でも目立って若く、労働人口の増加が成長を押し上げる「人口ボーナス」時期が当面続く。私たちが付き合い始めた1986年頃は、6,000万の人口だった。

 国内総生産(GDP)の伸び率は2013年に7.2%。アジアでは飛びぬけており、IMFによると、2015年には「一人当たりGDP」が中間層の消費が急拡大するとされる3,000ドルを超える。2019年には4,700ドルを超えてインドネシアを追い抜くと予想されている。

 経済成長率は不安定ながらも高い成長を維持している。フィリピンはすでに農業国ではない。主要輸出品は電子部品、衣料・靴製品、木材加工品、化学製品、雑貨であり、最近ではITサービス産業、コールセンターも増えている。どれもフィリピンの労働力を利用した労働集約的な産業。他方、新自由主義的な政策により海外からの投資も相次いでいる。通信電話事業水道事業、高速道路・都市交通事業などに海外資本が進出している。

 比経済の原動力の1つが、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)、業務の外部委託である。英語力と安い人件費に着目して、インターネット、通信事業を利用し、欧米企業が相次いで進出している。すでに世界一の規模となったコールセンターだけでなく、ウェブデザインや法律文書の作成など高付加価値化が進む。情報技術ITとBPOを合わせた業界の売上高は2013年に155億ドル(約1兆5700億円)と、5年前の2.5倍に膨らんだ。サービス輸出に絡む産業が拡大している。

 他方、相変わらずメイドや船員などとして海外で働く人が多く、国外在住のフィリピン人は1,000万人を突破し、海外からの送金は2013年には229億ドル(約2.3兆円)に達した。フィリピンの労働人口は4,100万人であり、四分の一が海外で働いていることになる。229億ドルは銀行を通じた正規の送金額であり、ローカルの金融業者を通じた送金や帰国時の持参などを含めればこの額の2倍、すなわち450億ドル程度(4.5兆円以上)に達すると言われており、その額は国家予算に相当する。

 このような経済の拡大による都市中間層の増大と海外からの送金によって、個人消費が着実に拡大してきた。個人消費はGDPの7割を占める。
 SMモールやジョリビーはこれを象徴している。
 
 3)格差が拡大するフィリピン社会

 ただし、この経済発展は格差の拡大でもある。
 経済成長が持続しているにもかかわらず、失業率は7%前後で高止まりしている。タイの0.7%、ベトナム2.0%、中国4.1%と比べて高い水準だ。加えて、フィリピンは全人口に占める0歳から14歳までの若年者人口の割合が35%と、中国19.1%、タイ20.2%などと比べても圧倒的に高く、今後も労働人口の増加に国内雇用の増加が追いつかない=失業率が高い状態が続く。

 都市部と地方の格差も拡大している。ルソン島中南部はマニラ経済圏としてますます拡大しつつあり、世界経済と直接結びついた近代的な経済活動が活発に行われている。他方、ミンダナオ、ルソン島北部、ビサヤの島嶼部などは伝統的経済関係が残存し、他方マニラ経済圏に労働力や原材料を供給する経済的後背地になりつつある。

 経済拡大に合わせフィリピン支配層は、その地位をよりは安定的なものにしているし、層も厚みを増した。もはやクーデターなどの政治的混乱を望まない関係が成立している。支配層が飼ってきた軍ではあるが、その役割も大きく変化しつつある。「軍人になることが出世の道」という時代は終わった。

 フィリピン国家はあくまでフィリピン支配階級の持ち物であり、福祉や教育、医療への支出はほとんどないと言っていい状態。経済成長に見合った「市民社会」はいまだ形成されておらず、フィリピン市民、労働者は無権利のままに置かれている。

 政府や軍の弾圧によって労働者や人民の利益を代表する全国的な組織や運動がなかなか成立しない状態が、20年以上続いてきた。新自由主義の導入によって、人々の無権利状態は進出してきた欧米日資本に都合よく利用され、再生産されている。その克服はなかなか容易ではない。もちろんそこに闘う人々もいる。(文責: 林 信治)

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