SSブログ

亀井文夫監督「世界は恐怖する」 [映画・演劇の感想]

亀井文夫監督「世界は恐怖する」

 亀井文夫監督「世界は恐怖する」(1957年制作)を見ました。
 当時は、米ソ英仏の大気中海中の核実験が頻繁に行われており、その実験による放射能の影響が世界中に広がっていた時代です。
 核実験停止が世界中の人々から叫ばれ、日本でも原水爆禁止運動が広がり、1963年には地下実験を除く「部分核実験停止条約」が締結されました。

 映画は、目には見えない放射線の恐怖を丁寧に説明しようとしています。
 「戦ふ兵隊」から予想した亀井文夫の「叙情」はまったくといっていいほど現れません。とことん科学的に厳密につくろうと決意し、ドキュメンタリー形式としたのでしょう。亀井文夫の特徴の一つなのでしょうか、実直な印象を受けます。
 現代でもなお「新しさ」をもった作品です。

 「摂取したセシウム137の70数%はすぐに排出されるが、20数%は体内に残り、内部被ばくをもたらす」ことを、動物実験の過程を丁寧に写し、証明して見せています。
 他方、福島原発事故後でもなお、「セシウム137を摂取しても、大部分は排出されるから、内部被ばくは問題ない」と堂々と発言している大学教授がいるのです。
 
 映画「世界は恐怖する」の制作協力に、多くの大学教員が名を連ね、各大学の研究室で放射線を測定する姿が映されます。夏なのでしょうか、研究室ではみんな肌着のまま仕事をしています。素人なのでよくわかりませんが、測定設備、測定器なども、現代にくらべると、はるかに貧弱に見えます。その測定する姿に、ある熱意を感じます。

 もちろん当時ではあっても、物理学や原子力工学に関係する当時のすべての学者・研究者が、映画製作に協力したのではないでしょう、協力した人だけが映画に登場しているのだろうと、想像します。

 その姿に「いまだとり立てていうほど特権的でない」、「民衆の生活といまだ遠くはなれていない」当時の大学と研究者の姿を見た気がしました。当時は大学教員、教授といえども、核兵器、放射能被害を告発する人たちが多くいたのでしょう。「集団的な熱意」を感じます、核兵器、核実験に対する批判、怒りが共有されていたことを画面から感じます。

 現代とは大違いです。3・11以後、テレビに登場し原子力を語る大学教授は、誰もが「問題ありません」とくり返し、原発と東電を擁護しました。堂々と嘘をつき通しました。この違いにもあらためて驚きながら観たのです。(文責:玉)

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。