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エジプトにおける反政府運動の高揚 [世界の動き]

エジプトにおける反政府運動の高揚

1)エジプトにおける反政府運動の高揚の衝撃 
 エジプトにおける反政府運動の高揚は、ムラバク大統領の大統領選不出馬宣言にみられる支配体制と支配層の一部の崩壊を確実にしたところまで進んだ。米国の世界支配に迎合して、すなわちイスラエル政府と平和条約を結び、自国民衆を抑圧してきたエジプト・ムバラク政権は、そのみずからの支配を終わらせなければならないところに追い詰められているのは確かである。これまでの支配体制の継続、米国戦略の受け入れは、変更を強いられており、もはや後戻りできないところまで事態は進んでいる。

 ただ、エジプトの反政府運動、人民運動がこの先どのように進むか、どのような変革を実現するかは、いまだ明確になってはいない。あらかじめ変革の内容・方向・特徴を限定することができない。いままだその変革の過程にある。

 世界の人民だけでなく、これまでの世界秩序を形成し保持してきた者たちも、固唾をのんで事態の推移をみつめている。とりわけて、アメリカ政府とイスラエル政府。米国政府は、ムラバク後の新政権に影響力をなんとか確保しようと、と必死に工作している。


 現段階で明確に言えることは、チュニジアのベンアリ前大統領の追放に続く、エジプトの反政府運動の急速な盛り上がりは、この地域における米国の力の明確な後退を表現しているだろう。

2)イスラエルの不安
 もっとも一夜にして不安定な状況に追い込まれたのは、イスラエル政府、イスラエル支配者であろう。イスラエル政府と、その戦争・占領政策がこの地で存続できた根拠の一つが崩れ去ろうとしている。

 イスラエルの対パレスチナ戦争政策・入植政策は、米国の継続した軍事援助・経済援助を必要とする。なぜならば、イスラエル戦争国家は、戦争政策遂行にコストがかかるだけでなく、通常の経済活動においても高コスト体質であり、国際的競争力がないからである。イスラエル政府の戦争政策・入植政策は、イスラエル経済が周りのアラブ経済からは切り離れ孤立して存在する関係の確立に、導いたのである。

 かつてイスラエルには、周辺アラブ諸国を「経済的後背地」にして利用し、例えば「経済特区」とし安い労働力を利用し搾取し一経済圏を形成し、周辺諸国に工業製品を輸出する、すなわちアラブ地域の経済圏の盟主となる構想と可能性は存在した(そうすべきだったと言っているのではない)。しかし、イスラエル政府はそのような方向を選択しなった。戦争政策・占領政策をとり、移民をふやし、約束の地=土地を支配・拡大することに執心した。逆に言うと、戦争政策・占領政策をとったことは、イスラエル経済が、例えば安価な衣料、電気製品や自動車を生産できはしない体質になってしまったことを意味する。

 したがって、米国の継続した軍事援助・経済援助を永遠に必要とすると同時に、イスラエルの戦争政策を容認し妥協するエジプト政府を必要としてきたのである。

 そこで問題なのが、米国の力の後退である。オバマ政権がイスラエルの入植政策の手直しを迫ってきた理由はそこにある。米国はすでにこれまでどおりイスラエル政府に対して、エジプト政府に対しても、援助を出すことが難しくなりつつある。すなわちこれまでの米国支配の枠組みが崩壊しようとしている。(文責:林 信治)

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