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「生活苦で再犯、刑務所がセイフティネットに」 [現代日本の世相]

 日経新聞(8月26日朝刊)は、「出所した高齢者や障害者が生活苦から万引きや無銭飲食をして再び刑務所に戻るケースは後を絶たない」という「恐ろしい現実」を報じている。

「生活苦で再犯、刑務所がセイフティネットに」

 強制施設を出所した高齢者や障害者が必要な福祉を受けられず、生活苦から万引きや無銭飲食をして再び刑務所に戻るケースは後を絶たない。
 2006年の法務省の調査は身元引受先のない満期出所者約7200人のうち、高齢や障害を抱え自立が困難なのは約1000人と推計。65歳以上の満期出所者のうち5年以内に再び服役する割合は約7割で、64歳以下の6割を上回った。知的障害者とその可能性のある受刑者の約4割が「生活苦」を犯行動機に挙げている。

 元横浜刑務所主席矯正処遇官の浜井浩一・龍谷大学教授(犯罪学)は「出所者に対する福祉の不在が再犯を生み、刑務所がセーフティネットと化している」と指摘。(8月26日 日経朝刊)
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 現代日本社会を特徴づける「貧困と孤立化」

1)「自己責任」と「厳罰化」は有効ではない

 「犯罪」に対しては、「自己責任」でもって非難し、したがって「厳罰化」すれば犯罪はなくなるというキャンペーンが一方的になされている。法務省・警察庁はそう思い込んでいるフシがある。

 「自己責任」と非難さえしておれば何も対策しなくていい、したがって最も安くつくからそう主張している、と疑ってみたくなる。実際には「当たらずとも遠からず」というところがあるであろう。

 また「厳罰化」したところで、厳罰である刑務所の方が世間より住みやすい状況にある悲惨な人びとにとっては、「厳罰」にもならないから、犯罪は減ることはない。
 
 「孤立した貯えのない高齢者、障害者」は、現代日本社会では生きていくことはきわめて困難であって、無収入で厳しい世間に放り出されるよりは、刑務所のほうがまだ生き延びることができるという現実が目の前にひろがっている。
 指摘の通り、福祉行政の貧困は刑務所をセイフティネットにしている、ひどい現状が起きている。

 しかも、このような状況は、この先確実に増大する。
 というのは、現在、国民の20%が年金を支払っていない。ということは、将来国民年金を受け取ることのできない大量の高齢者を生みだすのは確実である。確実に、貧困化した高齢者は将来増大する。現状よりは悪くなる。

2)必要なのは厳罰化ではなく、福祉施設の充実

 高齢者や障害者らを福祉施設に入所できるようにすることが何よりも必要なことは言うまでもない。

 必要なのは厳罰化ではなく、福祉施設の充実なのだけれど、格差社会が拡大し、貧困層が増大すれば、福祉施設拡充と運営のための費用は、膨大な額にのぼってしまう。その負担は、国家に転嫁されて、さらにいっそう国家予算が膨らんでしまう。今でさえ財政赤字なのにさらに福祉充実のために赤字を拡大していくには限度がある。

 しかし、これらのことは考えてみれば、バブル崩壊の恐慌・不況下で、日本政府と日本企業がコスト削減努力を行い、正社員を減らして派遣社員を増やし、国内の雇用を減らして海外進出して、それなりに努力して、作りだした現実でもある。

 さて、「こんな日本に誰がした」ということか。(文責:林 信治)

9月6日追記

 (上記記述に関連して)「2009年度は、国民年金は支払対象者のうち40%が未納。」(日経 9月5日朝刊)と報じている。
 少なくとも国民年金はすでに、崩壊状態に入っているということ。

 

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