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連休明けのギリシャ・ショック [2008-9世界経済恐慌]

連休明けのギリシャ・ショック

 連休明けの5月6日、世界的に株価が急落し、「リーマンショック再来か」と世界を震撼させた。「ギリシャ危機」が一時的に煽られ、投資家の心理が不安に支配され、世界中からリスクマネーが一斉に引き上げたからである。リスクの少ない通貨である円、米ドルが買われた。

 もともとは、08年の経済危機で市場が急収縮し資本活動が一斉に危機に陥ったため、各国政府が財政出動して需要を創出し資本活動を支え利益を保証したその結果、債務が国家財政に移転した状態になっていた。実質は、世界各国が膨大な財政支出によって金融市場の損失を補てんしたのである。そのなかで南欧諸国、とくにギリシャの財政赤字の程度が目立ってきた。

 金融市場の損を国家財政で補てんしたあとの、その小さなアンバランス・ほころびをとらえて、ヘッジファンド・投資銀行が、空売りをかけて利益を得るチャンスにしているのである。

 この不安定な状態をヘッジファンドがとらえ、ギリシャ財政不安を煽り、ユーロやギリシャ国債の大量売りをしかけた。何度かしかけた結果、この動きに呼応する投資家が現れ、さらにそのことが雪崩的なすべての投資家の一斉の「売り」につながった。ヘッジファンドは大量の空売りから価格が落ちたところで買い戻して莫大な利益を得た。これが5月6日、7日にかけて起きたことである。

 米株価の5月6日急落を「コンピュータの発注ミス?が原因」などと報じているが、まったくの偽りである。いずれ、だれの責任でもないと曖昧にして終わらせるだろう。ヘッジファンドが仕掛けたことはだれもが知っている。そしてヘッジファンドには大手の金融機関が投資している。最新の金融工学による「合法的な」利益の獲得であり、今まで何度もやってきたことだ。今回は損をした者も多く、かつこれまで辛抱して行ってきた各国の財政政策が無になり、かつ景気回復過程を破壊しかねない事態となっており、損をした資本、投資家から不満が出ているのである。コンピュータの発注システム?という適当なスケープゴートが必要だったのだろう。事態は、そんなレベルを超えている。

 現代資本主義では、このようなことは「合法」なのである。特に90年代以降の金融資本主義のもとでは、金融投資にとって新しい世界基準となっていった。
 古くは97年のアジア経済危機の時もそうだった。当時過大評価気味だったタイ・バーツへの売りが仕掛けられ、その乱高下を通じて、米国金融機関、ヘッジファンドは莫大な利益を得た。この時IMFは、危機をもたらした原因は、アジアの前近代的な商習慣にあったと診断を下した。IMFも仕掛けた側にいたからである。

 2000年代の米国金融資本主義の発展は、このような金融の新しい基準、新しい活動に負うている。

 ギリシャの危機は極大化され、IMFによる融資と厳しい返済基準を押しつけられた。財政赤字の削減、実際には公務員給与の減額、年金の減額実施がすでに計画されている。

 これまで人々が永年にわたる人々の闘いによってかちとってきた生活の向上や権利が、「新しい金融基準」によって暴力的に破壊されるのを、わたしたちはいま目の当たりにしている。欧州の労働者は、新自由主義を先に導入した米国や日本に比べて、労働時間・年休・短時間労働などでは有利な条件を保持してきた。この成果が、グローバル化した巨大資本の論理によって、奪い取られる過程が始まるのではないか、という不安にとらわれる。

 08年の世界恐慌、経済危機は、100年に一度の危機と言われた。実際に世界中に投資していた資本家にとっては100年に一度の震撼であったろう。大きく損をした者もあれば新たに利益を得た者もいる。支配層の顔ぶれと序列に変化があった。その点では100年に一度の危機だった。

 しかし、財産をもたない大多数の人々にとっては、2008年秋の時点ではとりたてて大きな変化はなかった。しかし、世界恐慌、経済危機に際して被った民間資本の「損」を国家財政に付け替えさせた結果、じわじわとわたしたちの生活破壊へと影響が出てきはじめる局面がはじまったし、さらにこの先長い期間続くと予想される。

 さて、今後の展開にはなお予断を許さない。ユーロ安に賭けるファンドや投資銀行の食欲は底抜けだから、欧州金融機関に不良債権があるとみればなお攻撃を緩めないだろう。とすれば信用収縮、信用不安が一気に広がり、資本がいったん投資先から引き揚げ、世界経済も「調整」から「後退」に広がりかねない情勢だ。(文責:小林治郎吉)

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