SSブログ

クーデター騒ぎとは何だったのか? [フィリピンの政治経済状況]

歴史は繰り返す最初は悲劇として、二度目は喜劇として

 

 
(11月29日、記者会見するトリリャネス上院議員ら)

クーデター騒ぎは何だったのか?

 11月29日午前11時ごろ、国軍将兵反乱事件(2003年7月)に関するマカティ地裁公判に出廷していたトリリャネス上院議員(クーデター罪で未決拘置中)と証人として出廷したダニロ・リム准将(06年2月の現政権転覆計画に関与、軍法違反で未決拘置中)が突然退廷し、アロヨ大統領の辞任を要求して首都圏マカティ市のペニンシュラホテルに立てこもった。トリリャネス上院議員らとともにホテルに立てこもったギンゴナ前副大統領やトビアス司教らは29日午後1時すぎ、記者会見し、公金の選挙運動流用などを理由にアロヨ大統領の即時辞任を訴えた。支持者ら約500人が行動を共にした。アロヨ政府は虚を突かれたもののすぐに鎮圧した。29日夕方、軍がホテルに強行突入、同議員らは投降した。

  またしても「クーデター騒ぎ」である。しかもなんともお粗末なこと。軍隊内部の支持はないし、米政府・米軍の支持も取りつけていない。それどころか、フィリピン国軍への工作も米政府・米軍への働きかけも行った形跡さえない。何の準備もなく、クーデターとさえ呼べない。 トリリャネスは「クーデター騒ぎ」を起こしても、自身は殺されないことを知っている。ひょっとすればアロヨへの不満が自身への「人気」に転化するかもしれないという、子どもじみた夢想に従って政治的賭けを演じたのだ。うまくいくはずはない。「クーデター騒ぎ」は支配層内部の馴れ合いの争いに他ならない。
 トリリャネス上院議員は、03年7月に軍の急進派グループ「マグダロ」を率いて反乱事件を起こし逮捕、起訴されながらも獄中から上院選に出馬、当選した。アロヨ政権に対する人々の「不満」の「気まぐれな」受け皿として機能した。この偶然をトリリャネスは都合よく「カン違い」した。
 人権擁護活動や労働組合活動をすればアロヨ政権から弾圧されるが、トリリャネスを支持して騒いでもなんら罰せられることはないし、マスメディアもたくさん報じる。

  フィリピン国軍は、空軍も海軍も持たない、きわめて内向きの軍隊である。誰を「敵」として想定しているか。フィリピン人民にほかならない。したがって、フィリピン国軍はフィリピン支配層の持ち物であり、本性からして腐敗する存在。「飼い犬」として軍は、フィリピン政府内部での枢要な地位を占めてきたし、アロヨ政権を支えるための「政治的暗殺」など汚い仕事もやってきた。ただ、あまりに肥大化し腐敗しており、フィリピン支配層にとっても少々重荷となった。最近は軍事予算も減らされている。「軍と軍人の政府内での地位を向上させろ!」 これがクーデターの要求であり、背景である。
 アロヨ政権は、米政府・米軍の忠実なパートナーとして、また「反テロ」国際秩序形成のため、たいがいのことは言うことを聞く政権として実績を積んできた。また、日米政府の意向に従って新自由主義を導入したフィリピン経済は、人々は貧しくなっているものの、外資にとっては都合がいい。アロヨは日米政府に支持されている。現時点において、米政府にとって、またフィリピン支配層にとって、クーデターを起こしてこの関係を壊し、経済を停滞させたりする必要はまったくない。

 フィリピンでは最近は年中行事のように、クーデター騒ぎは繰り返される。しかし、すでに喜劇であるし、笑い話に転じてからも久しい。
 一週間たった今、もう人々からは忘れ去られようとしている。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。