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クラーク経済区の現状と労働組合運動 [フィリピン労働運動]

クラーク経済区の現状と労働組合運動

1)クラーク経済区の現状
 クラーク経済区はバターン経済区と違って未だ拡大している。主な業種は縫製業と電子部品産業であり、労働集約的産業が主であり、その多くは若い女性労働者である。クラークのコールセンターにも5000人もの女性が働いている。
 しかし、バタアンのような小資本ではなく、比較的大きな資本が経営していて、安定的に操業している会社も多い。というのは、クラーク経済区はアロヨ大統領の肝いりで重点的に開発されたからだ。クラーク空港はマパカガル・アロヨ国際空港と名づけられ国際空港となった。貸工場も新しく設備が比較的整っている。
 パンパンガ州には、クラーク以外にアンヘレスに二カ所、マガランに一カ所の計4つの経済区があり、その総労働者数は12万1千人である。クラーク経済区が最も大きく今も拡大している。
 クラーク経済区だけでなく、アンヘレス、サンフェルナンド、オロンガポなど急速に資本主義化がすすんでいる。このあたりはマニラ経済圏とも言うべき地域で、大マニラ圏の一部として発展している。いくつもの会社が操業を始め、毎年拡大している。そのため、多くの労働者が集まり、また労働問題も頻発している。

2)労働組合活動における問題
 クラーク経済区では、マカバヤンがスマートシーツ社などの労働組合を組織化してから、軍や政府による露骨な弾圧が目立ってきている。特に政治的殺害の影響は大きく、労働組合役員やその家族は個別に軍から脅しを受けている。事務所に兵士が来たこともあるし、アンヘレスエレクトリック労働組合の委員長が脅された。また、2006年2月の非常事態宣言時にスマートシーツ労働組合ルディ委員長が、何の根拠もなく拘束された。これなども一つの脅しだ。
 ジプニーやトライシクル運転者などの交通労働者は、2006年メーデーでのストライキの後、軍の嫌がらせにあい、これまでのリーダーの多くが他の地域へ去っていった。今はその組織を立て直さなければならない時期である。バタアン地域でも同じ傾向がある。キャシー・アルカンタラが2005年12月に軍人と思われる二人組に殺されてから、多くのリーダーがおそれて活動を停止している。この状態を立て直さなければならない。
 また、パンパンガ州は女性労働者が多いので、健康、母性保護、子育てなど女性の問題の解決が必要だ。そのため女性自身の組織を作って自主的に自覚的に活動する必要がある。労働組合の内部や他のセクターの女性団体と横断的に協力する関係を作って対処しようとしている。
 経済区内だけではなく、パンパンガ州の公営企業私有化の動きが新しい困難をもたらしつつある。パンパンガエレクトリックという電力供給会社がターゲットとされ、三社に分割され民営化される計画が動き出した。労働者の賃金切り下げ、一部解雇などが計画されている。そのマネージャーに、元CPP(フィリピン共産党)議長のルドルフォ・サラスや、ミンダナオNPA(新人民軍)リーダーだったトニー・ラカバが派遣されてきており、労働者側からしてみれば非常にタフか交渉が続いている。

 クラーク経済区では、閉鎖した会社もある。エベレスト社(台湾資本、ヨット製造)、パステル(縫製業)の二社は、せっかく労働組合を組織しCEに勝利し会社に労働組合を認めさせたのに、閉鎖されてしまった。長い期間にわたる努力で作り上げた労働組合が、会社閉鎖で解散に追い込まれた。貴重な経験をした労働者たちがいろんなところへ散っていって、新たに活動を始めている。
 地域の労働者を対象にしたセミナーに、兵士が労働者を装って参加することもある。我々は合法的な活動を行っているのであり、フィリピン憲法と労働法で保障された労働者の権利であることを、労働者の前で兵士にはっきりと主張し論戦する。そのこと自体が労働者の教育にもなるのだ。

 クラーク経済区には、縫製業と並んで電子部品産業が盛んだ。その多くは日系資本である。アイワ、SMK、ナオックス、フジプラスチック、横浜タイヤなどがある。日系企業は労働者への管理が細やかで、また賃金が少し高いことが労働者の意識に影響していて、労働組合が組織されたところはまだない。横浜タイヤにKMU系労働組合があったがつぶされた。

 フィリピンでは労働組合をもつ労働者は全労働者の8%、そのうち労働協約(CBA)を締結している労働者はわずか1%である。賃金や労働条件、休暇、福利厚生、退職金規定などすべて労働協約に書き込んで締結する。そこまでして初めて、労働者の権利が確保される。
 スマートシーツ社の労働協約は、労働組合、労働協約を持たない他の会社の労働者にとっては手本のようなものだ。労働協約を見せれば、労働者は労働組合組織化の必要性をたちどころに理解する。今では、他の会社の労働者が相談に来るくらいだ。いろんな会社で準備を進めている。


<クラーク経済区の前で>


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