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河野談話 検証報告書は何だ!? [元「慰安婦」問題]

 安倍政権は、河野談話 検証報告書を、6月20日公表しました。

 3月のオバマ来日前に、米国政府からきつく言われ、安部政権は「河野談話の見直しはしない」に転換しましたが、河野談話 検証報告書では、これまでの日本政府の主張をくどくどと言い訳めいて述べています。河野談話を貶めることになるのがわからないのでしょうか。

 河野談話作成過程とそのあとの「アジア女性基金」事業において、法的責任を認めないという日本政府の立場は変えないで、民間団体「アジア女性基金」から償い金を配り何とか納めてもらおうと「努力」したことを、縷々述べています。ほとんど官僚の作文、言い訳に見えます。

 今や、政治解決に踏み出さなければ解決しない事態に陥っているのに対し、過去の「努力」を説明してどうなるというのでしょうか?

 リチャード・アーミテージ元米国務省副長官から、「人権を尊重する日本であろうとするなら、日本政府はこの論争に決して勝つことはできない」(2014年3月4日発言)と批判されました。それはアメリカ政府の見解でもあります。
 過去の経緯云々ではなく、政治的解決に踏み出さなければならないと強く批判されたにもかかわらず、いまだに日本政府に責任はない、いろいろ努力したと、くどくどと言い訳を述べ続けています。

 「政治解決に踏み出さない、そんなつもりはない」という安倍政権の意思表示に他なりません。

 このような検証報告書を出せば、韓国側は反論せざるを得ず、対立を大きくすることになりますが、そんなことよりも、言い訳のほうを優先するというこの無責任体制、「国際感覚」のなさは、いったい何なのでしょうか!
 事態を解決する意思も力もないと、自分から表明しているに等しいのではないでしょうか!

 実際のところ解決できないので、いずれアメリカ政府に仲介してほしいと訴えることになるのでしょう。4月にアメリカ政府に仲介してもらい、やっと実現した日米韓首脳会談のように。

 だいじょうぶか! 安倍政権

 7月2日、ロラネット、フィリピンピースサイクルが、毎月第一水曜日、第三水曜日に首相、外相あてに要請書を提出しています。今回は、河野談話 検証報告書に対する批判、要請でした。以下に、転載します。

ーーーーーーーーーーーーーーーー
安倍 晋三 総理大臣 様
岸田 文雄 外務大臣 様

日本軍「慰安婦」問題の即時解決を求める要請書 
 第二次世界大戦中における日本軍による「慰安婦」制度の過ちを日本国政府として認め、日本軍による性暴力の犠牲となった女性たちの人権を回復し、その反省の上に立って諸政策を行うよう、日本政府に以下のことを要請する。

「人権を尊重する日本であろうとするなら、日本政府はこの論争に決して勝つことはできない」 (リチャード・アーミテージ元米国務省副長官、2014年3月4日発言)

 安倍政権は6月20日、河野談話作成過程に関する検証結果「慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯」を発表した。安倍政権の対応と検証報告書について要請する。

1)安倍政権による検証報告書の目的は何か!

 当初は、「河野談話を見直す」ための論拠として「検証」するつもりであったが、オバマ訪日前の準備過程でアメリカ政府に強く批判され、2014年3月に安倍政権は「河野談話の見直しはしない」と表明せざるを得なかった。そのため表向きは「検証結果の如何に関わらず見直しはしない」としながら、「作成過程のみを対象に」検証を行うという、矛盾した作業となった。2007年の第一次安倍内閣での誤った閣議決定のように、将来的に利用できる政治的論拠をつくっておくことにしたようである。

 このような検証を、一方の当事者である日本政府が単独で行うのでは検証にならない。日韓双方が検証目的を合意した上で協力しなければ意味はない。

 検証報告書は、河野談話の作成過程での日本・韓国間での「やりとり」を報告している。通常「やりとり」は伏せられるし、日本側から伏せるように提案もしている。しかし、今回の作成過程の検証で日本側が一方的に約束を破り、「やりとり」の一部を、日本政府の主張を補強するために公表した。

 信義則に反する行為であり、まとまるものもまとまらなくなるのは、誰でも予見できる。今回の日本側の行為は、混乱が生じたり、政治的な対立を激化させることになっても責任を負わない、という政治的態度である。
 当然のことながら、韓国政府は検証報告書が公表された6月20日に、早速遺憾の意を表明し、「検証結果の細部の内容に対するわれわれの評価と立場を別途明らかにし、国際社会と共に適切な措置をとる」と言明した。黙らせるどころか、逆に火を付けた格好である。

 これが検証報告書のもたらした一つの結果である。
 このような安倍政権、外務省を中心とする官僚の外交姿勢こそ問題であり、正さなければならない。

2)「作成過程のみを対象に」検証を行う目的

 「検証結果」は、まるで河野談話が、韓国政府からの日本政府に対する要望があったから作成されたかのように印象付けようとしている。検証報告書の目的の一つである。

 安倍政権は、これまで河野談話の意義を不当に貶めようとしてきたが、検証報告書もそのような内容、印象をつくりだすものになっている。この先、検証報告書の一部を切り取って、そのような宣伝の根拠として利用されることが出てくるだろう。

 ただし、この点は必ずしも「成功」していない。検証結果は、河野談話が当時の日本政府が自身の判断で作成したことを記さざるを得なかった。

3)「狭義の強制性」:「官憲による暴力・脅迫を用いた連行」のみを「強制連行」と位置づけていたこと

 「一連の調査を通じて得られた認識は、いわゆる「強制連行」は確認できないというものであった」と報告書は述べている。この点は日本政府の見解を繰り返しているだけである。
 河野談話の根拠となった公文書の中には、当時法務省が所蔵していた「バタビア臨時軍法会議の記録」があり、そこには「ジャワ島セマランほかの抑留所に収容中であったオランダ人女性らを慰安婦として使う計画の立案と実現に協力した」、「部下の軍人や民間人が上記女性らに対し、売春をさせる目的で上記慰安所に連行し、宿泊させ、脅すなどして売春を強要するなどした」等の記述がある。これは、安倍首相のいう「狭義の強制連行」があったことをも立証するものである。そのことを検証していない。

 朝鮮半島からの連行については「狭義の強制連行」を示す日本政府、日本軍の公文書が見当たらなかったという理由で、「強制連行は確認できない」という結論を導いているが、これは当時から日本政府が「官憲による暴力・脅迫を用いた連行」のみを「強制連行」と位置づけていたことを示していたからである。甘言を弄して、だまして連れて行くのも、或いは人身売買で連れて行くのも、本人たちの意に反した連行であり、強制連行以外の何ものでもない。この「ごまかし」も検証していない。

 さらに重要なことは、日本軍「慰安婦」制度の問題が、連行時の強制性よりも、慰安所での強制使役、すなわち女性たちから居住の自由、外出の自由、廃業の自由、拒否する自由を剥奪し、性行為を強要した人権侵害行為があった点である。
 このような認識はすでに国際的常識となっている。日本政府だけが「狭義の強制連行」だけに限って、或いはすり替えて論じている。検証チームは、このことをこそ検証しなくてはならないのに、見過ごしている。
 
4)ずさんだった日本政府が行った資料調査、収集

 河野談話の作成過程で、日本政府が行った資料調査、収集がきわめてずさんであったことが今では明らかになっている。資料調査と報告が漏れていたり、内閣府まで届いていなかったものもある。また、河野談話以後、国内外で幾人かの研究者、政府機関が多くの資料を発見し、指摘している。

 資料調査、収集がきわめてずさんであったことこそ検証されなければならなかった。河野談話作成過程の重大な落ち度であるし、のちに2007年の誤った閣議決定の根拠に使われた。検証報告書はこの問題に少しも触れていないし、なおかつ報告書によれば、「日本側の資料収集、調査に対して、韓国側は一切疑っていなかった」ことが読み取れる。信義に反する行為があったこともまた検証されてしかるべきであった。

5)アジア女性基金
                   --誠意を尽くしたと訴えたかったアジア女性基金ーーー

 検証報告書は、日本政府が自身の法的責任を認めないためにいかに努力したか、そのために民間団体・「アジア女性基金」を設立し「償い金」支給や医療・福祉事業を実施させたか、その経緯を報告書の半分の量を使って述べている。
 被害者から批判があがり、韓国では基金事業は頓挫してしまった。検証報告書は、この経過をも日本政府の立場から一方的に叙述している。
 むしろ、日本政府の法的責任を認めないで民間団体にやらせたことが、根本的に解決しない原因であった。20年という貴重な年月をかけて、そのことがあらためて明らかになったのである。
 「アジア女性基金」では解決しないその理由、原因を検証しなければならなかった。

6)人権国家として踏み出せ!

 日本政府にとって、重大な人権侵害であった日本軍「慰安婦」問題を解決することは、21世紀の日本が人権国家として踏み出す第一歩であり、なおかつ近隣諸国との関係を正常化する基礎を築くことである。
 「慰安婦」問題を解決するうえで重要なことは、隠そうとしてきた今までの態度をあらため、日本軍が行った加害行為を、犯罪として認め、歴史に対し被害者、被害国政府と共通の認識に立つこと、そのうえで日本政府は法的責任を認め公式に謝罪し賠償すること、曖昧さのない明確な表現で国内的にも国際的にも表明しなければならない、さらに二度とこのような被害が生じないための措置をとらなければならない。

以下要請する。

●日本政府は、検証報告書を含めた河野談話を貶める行為を即刻やめること

●検証作業を行うなら、少なくとも日韓両政府で合意し協力して実施すること、検証報告書を撤回すること

●「狭義の強制連行」に限定した、2007年の誤った答弁書(閣議決定)の即時撤回を要求する

●河野談話を発表する前もその後も、ずさんだった日本政府が行った資料調査、収集を検証し認めること、第12回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議」が6月2日に提示した数百点の証拠を認識し、責任を明確にすること

●「アジア女性基金」では決して解決しないと認めること

●国連諸機関の勧告遵守、特に、被害者の名誉を傷つける暴言と暴力的な行動に対し、公開的で公式的に反駁すること

2014年7月02日

フィリピン・ピースサイクル
フィリピン元「慰安婦」支援ネット・三多摩(ロラネット)代表 大森 進

事務局: 平田 一郎

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