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12月10日、英国高等法院、アサンジの米国移送許可の判決 [世界の動き]

12月10日、英国高等法院、アサンジの米国移送許可の判決

アサンジ被告の釈放を求める支持者(2021年12月10日撮影).jpg
<英ロンドンの裁判所前で、ジュリアン・アサンジ被告の釈放を求める支持者(2021年12月10日撮影)>

1)アサンジ、米への移送許可 

 12月11日の日本経済新聞(ロンドン=佐竹実記者)によれば、英高等法院(高裁の相当)は、12月10日、英国で収監されているジュリアン・アサンジ氏の米国への移送を認める判断を示した。

 21年1月、ロンドンの地方裁判所が「移送を認めない」と判決し、米側が上訴していた。アサンジ被告側はなお確定していないと主張している。

 アサンジ被告は、2010年ウィキリースで米国の機密文書を大量に公開した。性犯罪容疑により英国で逮捕された後、保釈中の2012年に在英エクアドル大使館に逃げ込み、約7年間保護された。そののち2019年、英警察の逮捕され、有罪判決を受けた。(以上、日本経済新聞記事)

2)何が起きているのか?

 米防諜法のもと、ジャーナリズム活動をした罪で、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジは起訴された。英国下級裁判所は身柄引き渡し要求拒絶の判決を出したが、米政府は英高等法院(高裁の相当)へ上訴し、今回「アサンジ氏の米国への移送を認める判断」を出させたのである。

 このあと「身柄引き渡し」の承認は、イギリスのプリティ・パテル内務大臣が行うが、米政府に対する英政府の長年の「卑屈さ」を考えるならば、安易に承認するのは確実だと思われる。

 英国高等法院の判決に対して、欧米中心に非難が沸き起こっている。しかし、アサンジ移送を押しとどめるには至っていない。

 米政府、支配層にとって、情報操作は新しい現代的な支配のやり方だ。決して真実を多くの民衆に知られないこと、情報を国家システムを通じて管理・統制すること、フェイクニュースの流布は、彼らの「現代的な新しい支配」にとって必要なのだ。これを「民主主義」「人権外交」と自称している。

 現代の支配者は、支配のやり方の「真実」を告発する者は決して許さないという姿勢をみせているのだ。アサンジの行ったまともなジャーナリズム活動を許せば、支配が崩れる、そのことを十分に理解しているからこその、厳しい対応なのである。現代の支配者による、ジャーナリズムへの脅しであり、支配が進行しているのである。
 
3)アサンジの罪とは何か?

 アサンジの「罪」とは何か? あらためて確認しておくことが必要だ。
 何が、誰にとって都合が悪いのか、あらためて確認しておかなくてはならない。そうすれば、今回の判決の重要性がより一層明確に判断できるだろう。

 アサンジとウィキリースの罪は下記の通りである。

① アサンジは、イラク戦争で15,000人以上のイラク民間人の報告されていない死を暴露した。

② アサンジは、キューバにあるグアンタナモ米刑務所での約800人の男性に対する(それは14歳の少年から89歳の老人であるが)拷問や虐待を暴露した。

③ 2009年、ヒラリー・クリントンが米外交官に、潘基文国連事務総長や中国、フランス、ロシアや英国の国連代表を秘密裏に捜査を指示し実行したことを暴露した、

④ そのやり口は、DNA、虹彩スキャン、指紋などから個人パスワードを入手するよう命じたというのだ。ただしこれは、

⑤ 2003年、米軍が率いるイラク侵略前の数週間に、コフィ・アナン国連事務総長の盗聴を含む非合法監視の長いパターンのスパイ行為から始まっており、その継続であることも暴露した。同盟国を含む各国首脳に対し長年にわたりスパイ行為をしてきたのだ。そして、今もやめていない。
 この時、日本の首相、閣僚も盗聴の対象であることが暴露されたが、日本政府は米政府に抗議さえしなかった。

バラク・オバマ大統領、ヒラリー・クリントン米国務長官及びCIAが、ホンジュラスで2009年6月に軍事クーデターを計画し実行したことを暴露した。その結果、不正な殺人軍事政権に変わって民主的に選出されたホンジュラス大統領マニュエル・セラヤは追放された。

ジョージ・W・ブッシュ大統領、バラク・オバマ大統領とデイビッド・ぺトレイアス米大将が、イラクでニュルンベルグ裁判後の国際法のもと「侵略戦争と定義される戦争」を行い、イエメンで何百人もの市民に対する標的暗殺実行を認可したことを暴露した。そこには米市民も一部含まれていた。

米軍が密かにイエメンに対する無人飛行機攻撃を行い、ミサイル、爆弾で多数の一般人を殺したことを暴露した。

ゴールドマン・サックス社が、ヒラリー・クリントン国務長官の講演に対し、賄賂としか思われないほど大金の657,000ドル(約7,000万円)を支払ったことを暴露した。ヒラリー・クリントンは公的な金融規制と改革を約束しておりながら、企業の命令を実行させると企業幹部に保証したことも暴露した。この暴露は、ヒラリー・クリントンが大統領選挙で敗れた要因の一つになった。

一部の英労働党メンバーによる労働党党首ジェレミー・コービンの信用を失墜させ破壊する国内キャンペーンの計画と実行を暴露した。

CIAや国家安全保障局に使われるハッキング・ツールが、世界中の市民のテレビやコンピュータ、スマートフォンのウィルス対策ソフトをすり抜け、政府が全面的な監視を可能にしていること、米政府は暗号化されたアプリケーションからさえ、人々の会話や画像や個人メールを記録し、保存することを可能にしている実態を暴露した。

 CIAや他の米諜報機関が、自動車やスマートTV、Webブラウザや、大半のスマートフォンのオペレーティング・システムやマイクロソフトWindows、macOSやLinuxのようなオペレーティング・システムを標的に定めて侵入できるVault 7を使用し、情報を得ていることを暴露した。ハッキングツールそのもののを暴露したことで、米当局は困り、したがって標的にされた。(以上、クリス・ヘッジズ「アサンジ裁判は現代の報道の自由にとって天王山の戦い」2021年10月29日RT、「マスコミに載らない海外記事21年11月8日」から引用)

 米当局だけではない。この諜報活動は、「ファイブ・アイズ」と呼ばれる米・英・カナダ・豪・ニュージーランド政府の諜報機関とそれに協力する巨大IT企業によって、共同して行われ、情報は共有され監理統制されている。

 アサンジは、世界の市民にとって、きわめて貴重な仕事をしたのである。私たちはアサンジとウィキリースの活動から大きな恩恵を受けている。

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<2020年1月、英国ベルマーシュ刑務所に囚われのジュリアン・アサンジ被告 REUTERS>

4)誰が、何の目的でアサンジを陥れているか?

 アサンジとウィキリースの活動は、現代の世界の支配者にとってきわめて都合が悪いのだ。情報を統制し支配しようとする者にとって、危険であり排除しなければならない。そして、アサンジの排除、抹殺がいま進行している。

 米国政府による国家を利用した監視、圧制的権力行使こそ、現代における新しい世界支配のやり方である。「法による支配」を支配者にとって都合のいい道具に変質させ、今回のようにアサンジを有罪にするなど意味を「逆転」させている。連中は法律を不正の道具に変える。人々が知るべき報道、権力の犯罪、彼らの罪を覆い隠す。米支配者は、法廷と裁判の作法を自分たち権力者の犯罪を覆い隠すために使う、フェイクニュースを溢れさせ混乱させる。

 こういった支配者の現代的な犯罪とその手法を、世界の人々に暴露するアサンジのような人物は、私たちにとってとても貴重だが、彼ら支配者にとってきわめて危険なのである。

 支配者によるアサンジとウィキリークスに対する長年の非難キャンペーンは、1%の支配者が監視国家を利用し世論を操って、これまで歴史的につくり上げてきた「法による統治」を崩壊させたことを暴露した。現代の支配者は、自身を「民主主義」「民主派」の擁護者を装い、「人権外交」を盾に、他方で傭兵部隊を送り、軍事的に破壊し荒廃した国や社会をつくりだした。監視国家の支配を通じてグローバル企業の命令を実行する新たな全体主義の実行者なのだ。

 オーストラリア国民であるアサンジを刑務所に入れる法的根拠はない。米防諜法の下で、オーストラリア国民を裁く法的根拠はない。にもかかわらず、米国は強引に英国政府を通じて、アサンジを陥れようとしているのである。

 CIAは、各国大使館への安全提供を請け負うスペイン企業UCグローバルを通して、エクアドル大使館でアサンジを秘密裏に捜査した。このスパイ行為には、アサンジと弁護士間の秘密会話記録を含む。この事実は、それだけで裁判を無効にするはずだが、アサンジにおいてはそのようにならない。

 帝国主義の設計者、戦争のご主人、大企業支配下にある立法、司法、行政府と、連中の従順なメディアは、これまで歴史的につくり上げてきた「民主主義」社会を、上記の通りの新たなやり方で変質させ破壊しつつある。既存メディアはこれに加担している。あるいは、黙って見過ごしているのである。それらはすべて、言語道断な犯罪行為である。

5)アサンジの米搬送は、ジャーナリズムへの殺人宣告だ

 アサンジとウィキリースの活動は、米国傍聴法に対する違反だと、米政府は主張している。

 この判決の一方で、アントニー・ブリンケン米国務長官は最近、「報道の自由」について、下記のように発言した。

 「報道の自由は、情報を社会に伝え、政府に責任を負わせ、それがなければ語られない物語を語る上で不可欠な役割を果たしている。アメリカは世界中のジャーナリストの勇敢で必要な仕事を擁護し続ける。」#SummitForDemocracy pic.twitter.com/ilitbdzSd1
       アントニー・ブリンケン国務長官 (@SecBlinken) 2021年12月8日

 ブリンケンのこの言葉は、ワシントンでの「民主主義サミット」の最終日である12月8日の発言であるが、文字通り「歯の浮くようなセリフ」であり、「大げさな芝居」だ。そもそもこれは「ウソ」だ。ブリンケンら米政府の主張する「民主主義」が、1%の支配者の利益を追求する意味に都合よく捻じ曲げられていることの「証し」でもある。この臭い「芝居」を見破らなければならないし、告発しなければならない。

 もしウィキリークス創設者が英国から米国に引き渡され、機密資料を公にした容疑で有罪と裁決されれば、それは実質的にジャーナリズムによる国家安全保障報道を終わらせる判例になる。ジャーナリズムそのものへの死刑宣告に他ならない。

 もしアサンジが米政府に引き渡され、機密資料を公にしたかどで有罪と裁決されれば、それは、事実上、機密文書を所有するどんな記者も、機密情報を漏らすどんな内部告発者も告訴するために政府が防諜法を使うことを可能にし、国家安全保障に関する報道を終わらせることになるだろう。

 日本のメディアは、アサンジ事件と今回の英高等法院判決を報道しない、触れもしない、批判的精神を失っている。彼らがすでにジャーナリズムとしての資格を失っていることの証明である。

 今回の英高等法院の判決は、上述のように、極めて重大な意味を持っている。













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