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バイデン政権の大規模財政政策の意味 [世界の動き]

バイデン政権の大規模財政政策の意味

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<5.8兆㌦の財政政策への賛成を求めるバイデン>

1)バイデンはトランプを追い落とし、主導権を握らなければならない

 バイデン政権は発足したものの、米社会は格差は拡大しており、荒廃・分断されたままである。大統領選ではトランプは7,400万票も獲得し、米政治はまさに二分された様相を見せた。米共和党は現在もなおトランプ支持勢力が主流を占めていて、21年1月のトランプ支持者による連邦議会乱入事件を擁護しており、「大統領選挙に不正があった」といまだに主張している。これを批判した共和党№.3の要職にあった保守派のリズ・チェイニー(チェイニー元副大統領の娘)は党指導部から放逐された。共和党は、プアホワイトのプライドをくすぐる白人至上主義のカルト集団に変質しつつある。

 バイデン政権は、トランプに奪われた白人貧民層、白人の非大卒の支持をどっさり民主党に引き込む必要がある。そうやって民主党の支持基盤を大きく変えなければならない。そのためには、貧困層を救済する効果ある施策を実行することが必要だ。コロナ対策のワクチン接種では成果をあげた。巨額の財政出動もこれを狙っている。

 すぐさま成果を上げて、2022年の中間選挙で、まずはトランプとトランプ支持勢力を米政治から追い払わなければならない。でなければバイデン政権は安定しない。その上で2024年の大統領選挙に臨まなければならない。

2)バイデンの大規模財政政策

 米財政出動は下記の通り、極めて大型であり、米経済の急回復と債務急増をもたらしている。
①「米国救済計画」 1.9兆㌦: 21年3月中旬、民主党単独で成立し、施行
 ○内容: 1人1400㌦給付、ワクチン接種強化
 ○財源: 緊急対策なので、全額を債務で

②「米国雇用計画」 8年で2兆㌦: 21年3月末に公表。共和党は大幅縮小の対案
 ○内容:インフラや環境、研究開発に巨額投資
 ○財源: 法人税率上げなどの企業増税、15年で財源を予定する

③「米国家族計画」10年で1.8兆㌦: 4月末に公表、共和党は反発姿勢
 ○内容:格差是正や子育て支援、教育の負担軽減に投資
 ○財源: 富裕層への所得増税やキャピタルゲイン課税で財源を予定する

 出動した巨額の財政出動は、早くも米経済を急回復させ効果をあげている。IMFの元首席エコノミスト、オリビエ・ブランシャール「財政出動によって、20年の米GDPは12.6%、21年は12,8%に達する」としている。

 しかし同時に財源が国債などであり米政府が債務を急拡大したことも事実だ。「米国雇用計画」、「米国国家計画」の財源は、法人税増税、富裕層への所得増税で賄うとしているが、実現するかどうかは不明だ。バイデン政権の支持基盤の一つの金融資本が、増税には抵抗するだろう。そもそも米国は税務署員をリストラしてきており、これまでも巨大資本、富裕層の徴税逃れが多いのだ。バイデン政権の計画通り、財源を確保できるかは、不明だ。

 上記の米財政政策の対策規模総額は5.8兆㌦に達する、名目GDPの28%であり、規模で突出している。ちなみに、日本はGDPの15.6%、ドイツは11.9%(OECD調べ)

 現時点の、米連邦政府(債務)は▲27兆㌦であり、過去最大最悪のレベルだ。
 企業債務(非金融部門)(債務)は、▲11兆㌦であり、リーマン・ショック前を上回る。
 家計部門 (貯蓄)は、1~2兆㌦である。

 財源が確保できなければ、政府債務はさらに増大する。高い成長を達成しない場合も、債務は増大する。

 いまは「成長期待」なのであるが、「景気過熱リスク」はすぐ先に見えている
 財政支出は、短期的には確実に好景気をもたらすだろう。インフレ率は今のところ2%以下と適度に上昇しているし、10年物米国債の金利も1.6%程度に収まっており、現段階までは良好である。

 ただし、財政政策と金融緩和が主導する景気回復であり、いずれ金融引締めの時期が来る。FRBでは金融緩和終了=「テーパリング」の議論がすでに出ている。インフレ率が急上昇し引き締めが後手に回れば、24年を待たずして金融危機と深刻な景気後退に陥る可能性はある。近いうちにその危険性が増した時期を迎えるだろう。






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