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バリカタン軍事演習の意味? [フィリピンの政治経済状況]

バリカタン軍事演習の意味?


 米比の合同軍事演習「バリカタン」は4月13日から23日まで約2週間の日程で、実施された。米軍とフィリピン軍から合わせて約1,000人が参加した。1991年から行われてきた米比合同軍事演習だが、2020年はコロナで中止されていた。19年の演習では7,500人が参加しており、今回は大幅に規模を縮小した。コロナとは関係なしに、米比合同軍事演習の意義が大きく変化しつつあるようだ。
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<南シナ海>

 米政府・米軍にとっては、「対中国強硬政策」、「対中国軍事政策」の一部として、対フィリピン政策がある。「合同軍事演習バリカタン」の目的も対中国軍事政策に変わっている。

 海南島に中国の潜水艦基地があることなどから、米国は南シナ海は米中対立の最前線であると勝手に設定し、「航行の自由」作戦と称して空母群を航行させ、軍事的圧力をかけてきた。米国の最新の対中国軍事政策にとって、南シナ海のフィリピンは重要な軍事的要衝である。

 3月、米海軍は南シナ海で空母「セオドア・ルーズベルト」などによる軍事演習を行っており、立て続けに「バリカタン」も実施し、中国を牽制した。ただ、以前の「バリカタン」とは少し異なり、が少々「ぎくしゃく」している。

 フィリピンにとっては、中国との政治的経済的関係は近年ますます密接になり、これまでのように一方的に米国の同盟国であり続けるわけではなくなった。ドゥテルテ政権は20年に同国内での米軍の活動を認める「訪問軍地位協定(VFA)」を破棄すると一方的に米側へ通告し、現在は破棄を保留している状況だ。VFA破棄すれば米軍がフィリピンに駐留する根拠がなくなる。

 ただ、3月上旬から、フィリピンが排他的経済水域(EEZ)と主張する南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島に、中国船が停泊を続けている。フィリピン政府は「即時退去」を繰り返し要求するが、解決の糸口は見えていない。そのためか、急遽、2021バリカタン演習を実施することにしたようだ。ただ、上述のように小規模だ。

 4月11日の米比電話会談ではオースティン米国防長官がVFAの継続を求める一方、ロレンザーナ比国防相はフィリピンが発注した米モデルナの新型コロナワクチンが早期に届くよう、協力を要請した。フィリピン政府はVFAや軍事演習の再開を米国との「交渉材料」にしている格好だ。
 軍事演習が、取引の材料に転化している。

 フィリピンにとっては、軍事面での米国との部分的な協力を通じて中国を牽制するとともに、一方で、米国から幅広い支援を引き出したい思惑がある。

 フィリピン政府は、「米中等距離外交」で臨むという方針を明確に示しており、より独立的な地位を確保しようとしているように見える。「米中等距離外交」というより、「米中天秤外交」という方がより適切かもしれない。

 その背景には、フィリピンを含む東南アジアが世界でも最も経済成長の著しい地域の一つであり、中国も米国も、さらには欧州・日本なども無視できないだろうという「自負」のようなものがある。










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