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三度目の「緊急事態宣言」―この一年間、何をやっていたのか? [現代日本の世相]

三度目の「緊急事態宣言」発令
---この一年間、何をやっていたのか?


1)首相、自治体首長、医療界は、この一年何をしていたのか?

 政府は、4月25日~5月11日まで、3度目の「緊急事態宣言」を発令した。
 これは同じことの繰り返しだ。2度目の緊急事態宣言を解除したのは21年3月、わずか1ヵ月でまた「緊急事態宣言」。首相、日本政府、自治体首長は予測さえしていなかった。わずか1ヵ月先が見通せない姿を見せられるのは、腹立たしい。こういう為政者を、私たちが頭の上に抱いていることが、実に腹立たしい。

菅首相.jpg
<菅義偉首相>

 首相、自治体首長、そして医療界は、この一年何をしていたのか?
 政府は、この1年間のコロナとの戦いを経て、次に予想されるシナリオを想定し、対策案をA,B,Cと用意していなければならない。なのに3度目の「緊急事態宣言」発令によって、何も用意していなかったことが暴露された。毎日の患者数に一喜一憂し、その都度「あわてて」対応しているに過ぎない。

 第4波が来れば、かならず重症病床からあふれる患者が続出し、死者が増大する。21年1月~2月に私たちが経験した。その同じことが今、目の前で繰り返されており、大阪ではすでに医療が崩壊し死者が急増している。(大阪府:4月29日の死亡者が44人と過去最多、5月1日の死亡者も41人)。

 吉村知事が自慢していた「大阪方式」はどこへ行ったのか? 

2)3月18日、解除にあたり政府が掲げた「5つの柱」

 3月18日、政府は「緊急事態宣言」を解除するにあたり、「5つの柱」を掲げた。
 「5つの柱」を、現時点での成果を点検すると下記のようになる。

①「飲食を介する感染の予防」 ⇒ 何も効果を上げていない。
②「変異型の診断を40%以上に」 ⇒ 未だ30%程度しか診断できていない。
③「積極的モニタリング」 ⇒ これもできていない、失敗。
④「ワクチンの早期接種」 ⇒ そもそもワクチンを確保できていない。
⑤「医療体制の整備」 ⇒ 準備されていない。大阪などはすでに医療崩壊している。

 宣言が解除された後、「5つの柱」のどれもできていないうちに、大感染の第4波を迎えた。

3)日本の医療がコロナに敗れている!
 感染症用病床・病棟の絶対数が足りない!
―-コロナ治療では、早期検査・早期治療を実施し、
重症化させないことが重要――


 コロナは感染してしばらくすると免疫暴走して重症化し死亡者が出る。早期にステロイド、アクテムラ、アビガンなどを処方すると軽症化することがわかってきている。「37.5℃以上の熱が4日以上続いたら(重症化したら)、初めて病院に行くこと」という当初の厚生労働省の指示は、治療としては間違っていたことが、いまでは明らかになっている。

 早期発見、早期治療で重症化させない――これが最新の知見だ。これを実行できる検査、治療体制が必要であるが、いまだに十分に確立されていない。早期に発見しても、早期に治療できなければ(入院できなくなると)、死者が急増する。今大阪府で起きているように。

 政府も東京都・大阪府も医療界も、第4波による医療崩壊と死者増大を、感染力の高い英国型変異株N501Yのせいにしているが、そうではない。早期検査・早期治療の医療態勢を準備してこなかったことが、根本の原因である。もはや「人災」だ。

 政府は何よりも効果的で効率的な医療体制を早急に再構築しなくてはならない。診療報酬の特例と国費の拠出し病床確保をめざしたのに、期待しただけの効果をあげていない。現行の診療点数による経営をベースにした医療態勢・病床の拡充・要請では、すでに対応できないことが明らかだ。

 もはや緊急事態である。災害が起きた時の対応をしなければならない。感染症用の病棟の絶対数が足りないのだから、中国政府がやったように日本政府が、重症者を集中的に治療する病床、回復期療養を担う病床、宿泊できる医療病床をもつそれぞれの病棟を、プレハブで(終息したら分解し再利用する)、東京ならオリンピック会場、大阪なら万博予定地に建て、無料で(もしくは一部無料で)診察・治療すべきだ。政府が主導し、予算を投入し設置すべきだ。医師や看護婦は自衛隊などから派遣し常駐させることが必要だ。(自衛隊は災害救助隊に再編すべきだ!)
 どうしてやらないのか?

4)コロナ対策はすでに世界で確立しているのに、
日本政府は実施していない!


 様々な経験-ー失敗、多数の死者など――を経て今、世界的に確立され、また実施されているコロナ対策は、下記の6点。

緊急事態宣言、ロックダウンなどの人の移動・接触を減らす。
PCR検査の一斉大量実施: 「抗体検査・抗原検査」とPCR検査の組み合わせによる感染者の発見
コンタクトトレーシングのアプリ: 感染者追跡アプリと迅速検査の連携による感染者発見と個別隔離
海外からの入国者の防疫態勢の厳格化
ワクチンを全国民に接種
医療態勢の構築:見つけた患者を隔離治療する感染症用病床(重症病床、中等病床、宿泊隔離病床)を政府が準備し、早期発見・早期治療を実施し重症化させない。

 日本政府、自治体のとっているのコロナ対策は、上記①~⑥のなかでだけだ。「外出自粛、マスク着用、三密回避」を、国民に要請するだけ。

②PCR検査
 簡易な「抗体検査・抗原検査」を地域ごとに広範に実施し、感染者が多いと特定した感染地域では住民全員にPCR検査を実施し、感染者を見つけ出し、隔離・治療する、特に無症状のスプレッダーを発見し隔離する。
 コロナ発生から1年以上経つのにいまだに実施しない。各国と比較しても極端に少ない。こんなことをしているのは日本だけだ。厚生労働省がPCR検査の一斉大量実施を止めている元凶だ!

 国があてにならないので、ソフトバンク、プロ野球など民間企業では自衛のため独自にPCR検査を行っている。島津製作所製の優れたPCR自動検査機は海外で活躍している。日本政府は採用しておらず稼働していない。

 その一方で、「五輪の選手には毎日PCR検査を実施する」方針が政府から出されている。日本国民にはやってこなかったし、やるべきでないと主張してきたのに。

③スマホアプリによる感染者トレーシング:
 まったく機能していない。アプリ作成を指示する厚生労働省にITの専門家がいない。業者への丸投げで、不具合が指摘されても改善しなかった。厚生労働省は責任を取らない。責任を取らされそうなのでアプリは利用しない現在の事態になっている。日本は司令塔である厚生労働省のおかげでスマホアプリを利用できていない後進国となっているのだ。

④海外からの防疫体制:
 日本は「ザル」状態。すでに英国型N501Yが神戸・大阪から入って関西圏を席巻し、さらに国内に広がり大騒ぎしている。防疫体制で失敗したことに対する反省・対策はないし、誰も指摘しないし、責任をとらない。インド株変異種の危険性は以前から指摘されてきたが、4月28日になってやっとインドからの入国者を6日間施設待機にした。これでも不十分、2週間は施設で待機してもらわなければならない。それまでは経済を優先した3日間待機だけ、しかも入国時検査はPCRよりも精度が劣る「抗原検査」のみだった。すでにインド株が入ってきているのではないか。
 誰がこんなことをやっているのか! 

 さらにはブラジル株、南ア株などの侵入も危惧されている。

 台湾、ニュージーランド、ベトナムなどの感染者の絶対数が少ないのは、厳格な入国検査を実施してきたからだ。

⑤ワクチン接種:
 ワクチン確保が他の諸国に比べ大幅に遅れ、接種率は未だ全人口の1%を超えた程度。かつ接種態勢も整っているかどうか「あやしい」。政府によれば、65歳以上への接種は、5月から始め9月までかかるという。全国民への接種が終わるのは年を越えるのは確実だ。

 したがって、ワクチン接種が全国民になされるまでは、②~④⑥を早急に実施すべきなのだが、これが一向に実行されない。日本政府は無為・無策のママ、国民は指をくわえてワクチンを待つだけ。

⑥医療態勢の整備:
 一向に進まない。政府や自治体首長は、国立病院・民間病院にベッド確保を「要請する」だけ。第4波で5月以降は死者が増えるだろう。

 大阪では重症病床が4月13日から埋まっており、重症化しても重症病床に入院できない。また、1.6万人にも及ぶ軽症患者、無症状者を「自宅療養」させているが、これは「療養」ではない。正確には「放置」だ。入院したい患者が入院できない、病院にアクセスできない、あふれているから「自宅」に「放置」する。容態が急変し死亡するケースも出ているし(大阪では、4月以降5月5日まで17人)、高い確率で家族に感染するのは当たり前だ。

 これらは日本の医療がすでに崩壊している証の一つだ。日本国民にはすでに生存権が保障されていない事態が生まれている。

 もはや緊急事態だ。これまでの医療システムに任せ、その拡充では間に合わない。災害が起きた時の対応をしなければならない。前述の通り、政府が専用病院・専用病棟を突貫で建設しなければならない。

6)政府の無策こそ問題

 上記の通り、政府の無策が問題だ

 ところが、無策をごまかすために、「第4波の感染は国民の自粛が足らないのが原因だ」と言っている。「自粛を呼びかけてきたが、できていない」と指摘する。尾身会長は「心のゆるみ」、小池都知事心の隙」論を述べている。「感染したら、自粛していない感染した者のせい、感染した奴が悪い」という理屈に誘導している。

 さらに政府・自治体・専門家分科会は、自身の無策の言い訳のためか、感染力の高い英国株N501Yのせいにしている。N501Yの侵入や感染拡大を予想し対策していなかったという反省はない。誰も責任を負わない。

 TVに出てくる専門家が少しも専門的な知見を語らない、政府の無策・政策の誤りを指摘し批判しない。N501Yがなぜ侵入したのか、責任はだれにあるのか、追及した専門家を見たことがない。一年前と同じことを繰り返している。国民をバカにしているとしか思えない。原発事故の時の「原子力学者」と同じだ。
 
7)こんな状態でオリパラをやるのか? 
  ――責任をもって決めようとしない政府・東京都――

 菅首相も小池知事も、何としてもオリパラを開催したいという野心が先にある、そのための「緊急事態宣言」だと各方面から指摘されている。実際のところ、指摘の通りなのだろう。すでにオリパラのために国民生活が振り回されている。

 世論調査によれば、国民の7~8割がオリパラの中止・延期を求めている。しかし、これが政治に反映されない。
 TVのワイドショーに出演する専門家・芸人・アナウンサーは、オリパラ開催しか言わない、国民のこの7~8割の意見を少しも反映しない。政府やスポンサーの意向にしたがって、へらへらと無責任にしゃべり、世論を誘導している。国民をバカにしている。

 4月9日、東京五輪組織委員会が、日本看護協会に対して「約500人の看護師を大会スタッフとして動員を要請」していたと、4月25日に「しんぶん赤旗」がスクープした。「参加日数は原則5日以上、早朝、深夜も含め、1シフトあたり9時間程度、無報酬」という。

 4月9日といえば、「大阪コロナ重症センター」では30床を運用するのには120人の看護師が必要であるにもかかわらず、70人しか確保できていないことが問題になっていた。そもそも、東京五輪を開催するにあたっては、期間中に医師・看護師が約1万人必要だとされてきた。それでなくても感染拡大で医療従事者の手が足りていないし、加えてこの先ワクチン接種も重なる。大阪府の医療崩壊に医師や看護婦を派遣できない現状なのに、オリパラには集めるのか? 集められるのか? 到底無理だと思われるが、政府も五輪委員会も判断しないし、責任を取ろうとしない。

 一方、ニューヨーク・タイムズは4月12日付の記事で「東京オリパラは3週間のスーパースプレダー(超感染拡大者)・イベントとなり、日本中、いや世界中に死と病を引き起こす可能性がある」と警鐘を鳴らした。

 現時点ではすでに、政府・東京都に対して、生存権を無視・軽視してオリパラをやるつもりなのか? という国民的なかつ世界的な問いかけが、投げつけられているのだが、これにも何もこたえない。オリパラ強行によって感染拡大と医療崩壊を起こし死者が出ても、菅首相も小池知事も組織委も責任がとれないことは、明らかなのだが。

 こんな事態だ、国民の生存権を理由にオリパラを中止しても、誰も文句は言わない。キチンとコロナ危機の実態を説明すれば世界中の誰もが納得する。

 なぜ何もしないのか、実に腹立たしい。何もしない政府、責任を取らない政府に、私たちの怒りは蓄積するばかりだ。もはや現在の事態に至ってはオリパラは中止すべきだ。何よりも国民の生存権を重視した根本的なコロナ対策の実施を求める。(2021年5月5日記)








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