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尖閣諸島をめぐる日中対立を煽るな! [世界の動き]

米中対立に巻き込まれたら、日本に未来はない!
尖閣諸島をめぐる日中対立を煽るな!

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<尖閣諸島>

1)バイデン政権の外交の柱は対中強硬路線

 バイデン政権の対外政策は対中強硬路線であり、「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれている。米政府にとって 「中国が最重要課題なのは疑う余地がない」(ブリンケン国務長官)のであり、米国にとって日本の存在価値と対日政策は、対中政策の一部にすぎないことを私たちはよく知っていなければならない。(猿田佐世世界』4月号、「対等な日米関係?」)

 バイデン政権は、対中強硬路線を実行するために、トランプ政権のように「アメリカ第一主義」ではやらない、日本を含めた同盟国との「国際協調」の再編で対処する、と表明している。日本を含む同盟国の軍事能力の整備、財政的負担を求めてくるだろう。

 対中強硬路線を実行するための一環として「日米豪印戦略対話(クワッド)」呼ばれる枠組みを提唱したが、インドがあまり乗り気ではない。韓国、ASEAN、ニュージーランドも参加しない立場を明確にしている。米国にはすでに以前の「権威、力」はない。

 バイデン政権の高官に、カート・キャンベル/アジア・太平洋調整官などが就き、いわゆる「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる人たちが復活した。他の同盟国はいざ知らず、米政府にとって日本政府を操るのは思惑通り行きそうだ。

2)尖閣での対立を煽るな!

 米支配層は「尖閣問題」を煽る日本政府を利用することで対中戦略、米中対立と世界の分断を推し進めようとしている。その戦略を自ら進んで推し進め対米依存を深める政治家や官僚が日本政府の中枢にいる。

2)ー1:日本政府の立場

「日米、尖閣に安保適用明記へ 首脳会談で共同文書作成

 共同通信(3月26日)によれば、4月上旬菅首相が訪米する日米首脳会談で日米両政府は共同文書を作成する方針だ。政府関係者によると、東・南シナ海で影響力を強める中国を念頭に、「尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象」だと明記する方向で最終調整している。日本政府は、米政権や国務長官が代わるたびに「尖閣が日米安保の適用範囲」であることを確認してきた。

 日本政府は、米軍の存在を背景に、歴史問題、慰安婦問題などを解決することなく中国に対する強硬な姿勢、要求を実現しようとする立場を追求している。問題は、大きく変化しつつある2021年現在の国際情勢、東アジア情勢において、この外交・軍事政策に果たして「現実性」があるのかということだ。隣人への要求を実現するために暴力団に仲介を頼むようなものだからだ。日本がより一層米国に従属していかざるを得なくなる。

 尖閣問題では、日本政府は日本国民が誤解するように宣伝している。メディアを含む多くの日本人は、尖閣諸島の主権に関する国際的状況を把握していない。日本政府が尖閣諸島を「我が国固有の島」としているので、米国も支持していると勝手に思い込んでいる。

 日本政府、政治家は、国際政治の現状とその変化少しも認識しないで、米国に頼ればいいという無頓着で無責任な態度をとり続けている。

2)-2:米国政府の立場

 米国にとって、日中間の領土問題での対立を「適度に煽る」のは、これを利用し日本を米国の影響下に引き容れるのに有効であるからだし、操ることも容易になるからだ。「ジャパン・ハンドラー」が復活しバイデン政権高官に入っている事から、尖閣での対立を米国の対中政策に利用するであろうことは容易に想像できる。

 しかし、尖閣での対立を煽るのは「利用する為」であり、米国が尖閣の領有をめぐって日本のために戦争をするつもりなどない。

 バイデン新政権も「日米安全保障条約第5条に基づく、尖閣諸島を含む日本の防衛に対する米国の関与は揺るぎない」ことを確認した。その一方で、2月28日米国防総省カービー報道官は、①尖閣諸島の管轄権は日本であるが、②領有権に関してはいずれの国の立場も取らない」(日本政府が尖閣を自国領土と主張していることを支持しない)ことも明言した。(こんな重要なことを、日本政府は触れないし、メディアも報じない。)

 そのことは米政府・米軍は尖閣のために中国と闘わないことを明言したことに他ならない。米軍の参戦は「戦争権限は米議会にある」とする米憲法に従う、米議会が他国の領土の為の参戦を支持することはない、ゆえに、日米安保条約5条にしたがって自動的に参戦することはない、という従来の立場を確認したにすぎない。米国が「尖閣諸島の領有権は日・中・台のいずれの立場も取らない」としていることは、対立を煽るが武力紛争に介入しないことを意味している。

3)尖閣の領有 

 尖閣諸島の領有権は、日本、中国、台湾が各々主張しているが、国際的にはどの国の領土かは認められていない。日本政府は「尖閣諸島は日本固有の領土」と主張しているが、米国も含め国際的には認められていない。日本政府は「尖閣諸島は日本の固有の領土である」と閣議決定し、中高教科書に「固有の領土」と書かせているし、メディアには「尖閣諸島は固有の領土」だと必ず報じさせている。しかし、それは世界的に認められた真実ではない。日本政府は日本国民が誤解するように宣伝している。

3)-1:日本政府の主張

 尖閣諸島が日本の領土であるという日本政府の主張は、下記の通り「固有の領土論」、「先占の法理」を根拠としている。

① 1885年:沖縄県を通じて尖閣諸島の現地調査を幾度も実施。無人島であることだけでなく、清国を含むいずれの国にも属していない土地であることを慎重に確認した。
② 日清戦争、1894年(明治27年)7月25日から1895年(明治28年)4月17日にかけて日本と清国の間で行われた戦争で編入した。
③ 1995年1月14日閣議決定で日本の領土(沖縄県)に編入(先占の法理)した。

 ※「先占の法理」とは:どこの国にも属していない場所を先に実効支配した国がその領土を主張できるという、国際法で認められる領有権取得の方法

 この日本政府の主張で、一番弱いのは国際法上の「先占の法理」である。
 「先占の法理」は植民地争奪合戦で出遅れたドイツの学者が主張した法理である。例えばアフリカとかアラビア半島とか住人はいるが、明確な国家はない。だから「国家」である西側諸国が出かけて、これは自分のものと言えば認められるというものだが、現地住民の権利を認めない考え方でもある。国際司法裁判所等が第2次大戦以降現地住民の考えを重視するようになり、植民地主義的「先占の法理」は国際司法裁判所の裁判でも使用されていない。かつ、「清国を含むいずれの国にも属していない土地であることを慎重に確認した」とする日本政府の主張は、どの様な手段で確認したのかはほとんど明確でない。(以上、孫崎享氏ブログより引用)

 日本政府は上記の歴史的経緯から尖閣諸島が「固有の領土」であると主張している。

3)ー2:ポツダム宣言受諾

 日本は第2次大戦終了時においてポツダム宣言を受諾した。ここでは、日本の領土は「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」とされている。過去の経緯がどうあれ、日本は本州、北海道、九州、四国以外は「吾等(連合国)ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」とされている。カイロ宣言は次の決定を行っている。「並に満洲、台湾及澎湖島の如き日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還すること」と記している。「盗取」という言葉に注目しておくべきだ。

 ポツダム宣言をないがしろにすることは、第2次世界大戦で決まった国境線を変えることであり、現在と将来の対立と戦争の原因をつくることだと、私たちはキチンと知っておかなくてはならない。「固有の領土論」は、ポツダム宣言をはじめとする後に締結した条約とその意味を、無視したりないがしろにする危険な志向、意味を含んでいることを知っておかなくてはならない。日本政府はそのような態度をとっているのである。

 多くの日本人はそのことを知らない。
 国際的には「固有の領土論」は認められていない。そんなことも知らない。

3)ー3:沖縄返還時は?

 1972年、米国は沖縄を返還したが、この時米国務省報道官は①尖閣諸島の管轄権は日本、②領有権に関してはいずれの国の立場も取らない」とした。この時も米国は尖閣諸島の日本の領有権を認めていない。

3)ー4:日中国交回復時にどうしたか?

 日中国交回復時の難問は尖閣諸島の帰属であった、「これに触れない、現状維持、棚上げ」方式がとられた。1972年日中共同宣言の際に田中角栄首相と周恩来首相が、1978年日中平和条約では鄧小平と園田直外相が、「棚上げ」して締結した。つまり「領有権は未決、管轄は日本」としてきたのである。80年代初頭まで日本政府、中国政府とも「棚上げ」を尊重する対応をとった。

 しかし、外務省、日本政府は対応を変え、「棚上げ合意はない」という主張をこっそりと始めたのである。

 2000年代になって、当時の石原慎太郎東京都知事が、訪米時に米ハドソン研究所で「尖閣諸島を東京都が購入する」と宣言した。そのことに「対応」するため、当時の民主党の野田政権は最終的に「尖閣諸島を国有化」してしまった。1972年日中共同宣言、1978年日中平和条約の前提となっていた尖閣諸島帰属の「棚上げ」を日本政府が一方的に破棄したのである。

 併せて、日中両国は尖閣諸島での軍事紛争をさけるため、「日中漁業協定」を結んでいた。協定は、「中国船が入った場合、日本は撤退を求める、問題があれば外交で処理する」と規定している。併せて日中双方で、「尖閣に関し、国内法を使わない」覚書を双方で交換した。

 しかし、これを破ったのが民主党の菅直人政権であり、国内法を使用し中国漁船を拿捕するという行為に出た。さらに野田政権は尖閣を国有化した。

 問題は日本政府が一方的に「棚上げ合意」を破棄したことにある。そのことによって日本政府、中国政府共に、自分たちの領有権を主張する状態に戻った。戻したのは日本政府である、中国政府ではない。

4)アジアで米中が戦えば、中国が勝つ

 東アジアでの軍事的な関係はすでに大きく変化している。そのような現実をキチンと理解したうえで意識的に平和を追求しなければならない。

 「軍事的に米中が尖閣諸島周辺で戦争すれば、今や、米軍が負ける」状態が到来している。米ランド研究所のレポートによれば、「軍事的に米国は、尖閣諸島を守るために中国と戦えない」としている。ランド研究所「アジアにおける米軍基地に対する中国の攻撃1996–2017)」レポートによれば、

・中国東海岸には1,250発の短・中距離ミサイル(射程5,500㎞以下)、巡航ミサイルが配備され、かつ命中精度も上がっている。米の中距離ミサイル配備数は数十発であり、到底対抗できる数ではない。
・アジアの米空軍基地は中国のミサイル攻撃で無化される。日本や東アジアの空軍基地・空母群は破壊され、空軍優位性を失う。嘉手納基地は破壊される。尖閣もミサイル攻撃の対象となる。
・中国の中距離ミサイルに対抗する米日韓のミサイル防衛システムはない。
・米中の軍事バランスは2017年には、台湾周辺:「中国優位」、南沙諸島:「ほぼ均衡」という評価である。

5)米国の影響から離れ、日中関係を改善するべきだ

 今なすべきことは、米国の影響から離れ、日中関係の改善を図るべきだ。米国の都合による米中対立の枠内で日中関係の改善は絶対に実現できない。日中関係の改善のためには、尖閣諸島の領有権での「棚上げ合意」を復活させることだ。以前の「棚上げ合意」に戻すことを打診し交渉し、関係改善に努めるべきだ。それ以外にない。

 いたずらに対立を煽ってはいけない。尖閣周辺の日本の漁民が困っているなら漁業協定を結べばいいのであって、尖閣諸島を日本の領土にしなければならないのではない。米軍事力を頼みにして、自衛隊を南西諸島に配置したら余計にこじれ、対立は続く。日中の軍事力からすればすでに大差がついている。いったん戦争がはじまった場合、自衛隊が尖閣諸島に上陸したら、瞬時にして自衛隊は全滅する。
 
 対立と戦争の原因となる政策を採るべきではない。対立や戦争が起きる原因をひとつひとつ慎重に潰していって、平和的な関係をつくり上げるのが私たちの望みだ。







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