SSブログ

バイデン政権の対中政策は?  [世界の動き]

バイデン政権の対中政策はどうなるか? 

バイデンの外交政策は?



s-1月21日、大統領就任演説.jpg
<1月21日、バイデン、大統領就任演説>

1)EUは対中国で米国と共闘する意志がない

 20年12月30日、習近平とEU首脳がオンライン会議を開催し、EUと中国との投資協定締結で大筋合意した。
 EUは「中国の過去の協定でもっとも野心的な内容だ」と評している。
 「投資協定」の内容は、「EU企業の中国への参入制限を緩和する」、「労働者保護に関し中国政府は、強制労働を禁じるILOの関連条約の批准に向け努力する」というものだ。
 バイデン政権発足の直前に成立させた中国とEUの投資協定の大筋合意は、メルケル首相とマクロン大統領が、対中国で米国と共闘する意志がないと、明確に表明したことを意味する。

 一方、20年12月、英国―中国間で、年間輸出入額100兆円規模の自由貿易協定をまとめた。

 EU、英国をせっついたのは、コロナ危機による景気減速が背景にあるとともに、それ以上に中国経済との分離は破滅を招かずにはいられない、という判断があるからだ。バイデン政権成立前の「政治的空白期間」を狙い、協定をまとめた。

 それはEU、英ともに、一方的に米国に従属するわけにはいかないという意思表示でもある。
 EU、特に独メルケル首相は、米国とは一定の距離をおいた独自の政治・経済国際協調体制構築を構想している。「トランプ米政権に振り回された」4年間に対する対応であり、EUが米国に振り回されず独自の道を歩む意思表示でもある。

 英国はEU離脱による孤立(英国支配層にとっては「オウンゴール」)という独自の事情も加わる。EU離脱は英国を「米国への追従」へと追いやるが、中国との関係を保っておくことで米英関係の平衡を保とうとしているのだ。

 全体として、米国の国力の低下を意識した対応とみていいだろう。

 中国との投資協定は、これまで欧米がやってきたように途上国に「民主主義」制度や価値観を教え導入させるための方法(=新植民地主義)と、位置づけることはもはやできない。すでに中国経済は十分に大きく、EU、英が「教え」を押しつける関係にはない。

 しかし、米国・バイデン新政権は、不快感を抱いただろう。

 バイデン政権は、同盟国であるEU、英、日などと連携して中国に対処したいと考えているが、政権発足前に、EU、英ともに、投資協定、自由貿易協定をさっさと結んでしまった。もっとも、バイデン政権の「願望」は、「公式」には貿易や投資の協定に反対する理由にはならない。そもそも米国は経済における自由化を主張してきたからだ。
 発足時にすでにバイデン政権には、EUの間に溝がある。ただこの溝はもともとトランプ政権がつくったものでもある。

 国際協調と同盟国との連携がバイデン政権の対中戦略の柱だが、少なくとも米欧間でそれが実る可能性は低い。
 
2)ASEANは米中等距離外交

 20年末に東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の合意に達した。RCEPは、中国と日本や太平洋諸国15カ国が加盟する。貿易の拡大と地域の経済成長の促進につながる比較的「緩い」経済連携だ。各国とも恩恵を受けるとともに、アジア経済の中核として、中国の地位が確立され中国に長期的利益をもたらす。

 中国とASEANのあいだには、2005年に「物品貿易協定」が発足し、10年初めにはASEAN先行6カ国と中国間で関税が廃止された。中国とニュージーランドの間には、2008年FTA(自由貿易協定)が発効した。
 その結果、中国、ASEAN、ニュージーランド間の商品貿易は、世界貿易全体の伸び率を大きく上回り、増大した。

 RCEPの発効は、アジアの産業活動が中国を中心に集中・再編されることを意味する。RCEPの未来は、少し前の日本と東アジア諸国の関係、「雁行的発展・垂直分業システム」として機能した歴史を、別の条件下で繰り返すと見ればわかりやすいだろう。

 ASEAN諸国は、ここ10年ほどは「米中等距離外交」の姿勢を堅持しており、その条件下で世界でも最も経済発展を成し遂げている。ASEAN諸国は、アジア地域での米軍の行動によって紛争や対立を引き起こすのを強く拒否する立場をとっている。

3)米中対立はどうなるのか?

 バイデン政権で、以前の米国は蘇るか?  その可能性は極めて低い。そもそもトランプ政権の登場が、それ以前の伝統政治が限界に達していたからだ。米中間層が没落し、格差は拡大し、ワシントンの「エリート政治」に対する反発が大きくなっていた。トランプはこの反発を自身への支持にかえた。
 バイデン政権は、何よりも金融資本、軍産複合体の支持をもとに、アンチ・トランプを政権の求心力の源として出発した。しかし、トランプ政権の政策も継承せざるをえない。外交政策、対中国政策は変わる余地が少ないだろう。

 今のところ、中国に対するバイデン政権の対応は、「前政権の強硬姿勢を継承しつつも、異なる手法で中国に臨む」というトーンを続けている。現時点は、同盟国であるEUや日本、ASEAN、インドなどと連携した対中政策へと再編するため調整している段階だ。

 1月25日、サキ米大統領報道官が「(中国に対しては)多少の戦略的忍耐で対応していきたい」と表明した。「戦略的忍耐」が失敗したオバマ政権の北朝鮮政策を連想させることを嫌ってか、のちに発言を修正したが、「……「戦略的忍耐」はバイデン政権の対中政策の基本方針になるだろう。しかし、あくまで当面だろう、その方針が米国の求める「実績」をあげるかは、極めて心もとないからだ。」(2月12日、日本経済新聞、呉軍華・日本総合研究所上席理事)

 国際協調と同盟国との連携がバイデン政権の対中戦略の柱だが、少なくとも米欧間でそれが実る可能性は低い。NATO内での対立は尾を引いている。EUや日本、韓国への軍事費負担の要求は引き続くだろう。上述の通り、メルケル首相とマクロン大統領は、対中国で米国と共闘する意志がない。

 日本は米国に従っている。米、インド、オーストラリアと連携して対中包囲網を形成しようとしている。ただし、米、印、豪、日で中国を包囲できない。この試みには見込みはない。ASEAN諸国はすでに米中等距離外交の立場をとっており、米国による対中政策に加担しておらず、対中包囲網にも参加していない。

 バイデン政権の中国との対決姿勢はいったん止まるかもしれない、しかしその先はわからない。
 バイデン政権の「戦略的忍耐」で、対決に向かう米中関係の流れはいったん止まるだろう。だが、これで安定軌道に入ったと見てはならない。金融資本、軍産複合体という米支配層の「忍耐次第」では、中長期的にはいっそう激しく揺れ戻す可能性がある。(2月21日記)







nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。