SSブログ

これからの世界はどうなるのか? [世界の動き]

これからの世界はどうなるのか?

 コロナ禍に襲われ解決できず、世界はある深淵を迎えている。年初にあたり、これからの世界はどうなるだろうかと、考えてみた。

1)米大統領選挙の結果から言えること

 20年の米大統領選挙は、いつも通り「大騒ぎ」になった。「大騒ぎして何も変わらない」というこれまでの歴史を繰り返すのだろうか?

 選挙の一つの性格を指摘しておきたい。20年の米大統領選挙に費やされた費用は、過去最高66億ドル(調査機関「責任ある政治センター」調べ)で、16年選挙の3倍近くにのぼった。バイデンが16億ドル、トランプが11億ドルの選挙資金を集めた。1人200ドル未満の小口献金の割合は低くなり、証券・投資会社や法律事務所などの大口献金の割合が高くなった。米フォーブス紙集計によれば、10億ドル以上の資産を持つ富裕者(とその配偶者)のうち、190人(合計6.4億ドル)がバイデンに、127人(合計3.3億ドル)がトランプに献金した(12月16日日経)。

 20年の米大統領選を見る限り、これまで以上に富裕層が選挙で大きな影響力を行使し、金権政治に一層傾いたと言える。「米政治は金次第」、これが米大統領選と米政治の一つの特徴だ。欧米日の支配層やメディアが、「民主主義」とたたえる米政治のリアルな姿だ。

 トランプを担ぐ右派ポピュリズムは、「エリート支配に対する非エリート層の反感」という性格を持ち、7,400万票も獲得した。ウォール街やシリコンバレーの強者におもねり、ラストベルトの弱者、白人の貧困者(プア・ホワイト)をないがしろにしてきたエリート政治への反発が、16年にトランプ政権を登場させたのだが、金融危機による中間層の没落、アフガン・イラク戦争により米国民に苦痛を強いたエリート政治への反発は、今もなお大きく残っていると票数は教えている。

 バイデンの勝利(約8,000万票)によって、既存の「エリート政治」が復活するならば、再び米国民の同じ不満と怒りを呼びおこしかねない。オバマ政権もヒラリー・クリントン候補も、民主党政権は、軍産複合体やウォール街と「親和性が高かった」。バイデンはその副大統領だった。

 バイデンの支持層は2つあり、ひとつは既得権益層である富裕層、ウォール街、軍産複合体。いま一つは、民主党左派に結集したエリート支配への反感、すなわち富裕層への批判勢力だ。

 すでに、バイデン政権が公表しはじめた人事において、既存の支配層と民主党左派との対立と闘争が始まっている。バイデン政権の要職には多くのオバマ政権の外交・経済チームが返り咲いている。左派は「大企業の幹部やロビイストを要職に起用すべきではない」(アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員)と主張している。

 票数に現われた3つの政治的グループ(確固たるグループを形成しているわけではなく支配層に組織された側面も持つ)は、どれも主導権を握ってはいない。そのため政権が発足しても、対立は続き現状を転換する政策を大々的に打ち出すことはできないだろう。米政治が混乱することは米国人民にとっては大変だが、米国が影響力を低下させることは、世界の人々にとってはいいことだ。

 米政権が変わっても、米国は簡単には変わらないだろう。
 とくに対外政策では、これまでのトランプ政権の政策(・中国との覇権争いと米中対立、・世界経済の分断、・イスラエル寄りの中東政策と中東での緊張の激化、・軍事負担をEU日本などの同盟国に求めるなど)と大きく変わることはない。国内政策は、格差拡大と米国社会の分断を修復する方向への転換を図ると予測されるが、上下院議員数からして大掛かりな転換は期待できそうにない。国民皆保険の実現などは、米国民の継続した闘争とさらなる盛り上がりが、必要になってくるのだろう。いずれにしても選挙だけでアメリカが変わるはずはない。
 
2)コロナ禍が「社会の見直し」を迫る、この先、世界は変わる

 コロナ禍は世界的に、不安定雇用者、低所得者層に打撃を与え、資本主義と民主主義の「揺らぎ」(米メディアの表現)を露呈させた。

 コロナ禍でデジタル化が加速し、それにより雇用が変化し、格差を一層拡大しつつある。中間層の賃金が停滞してきたが、さらに低下させかねない。デジタル化、AIなどの現代の産業革命は、この先格差を更に拡大し、確実に社会の分断を深める。テレワークのできない産業の不安定雇用労働者は、すでに収入は減少し、あるいは職を失っている。

 格差拡大・分断を防ぐには、教育や人材投資、労働者の権利尊重、人権尊重が重要であるにもかかわらず、手当はなされていない。そのような手当をしないところに新自由主義の特徴がある。

 例えば、日本社会はこの点では大きく遅れており、生産性は上がらず、デジタル化の波に乗りきれず、コロナ後にさらに格差を広げる。

 一足先に新自由主義によって中間層を没落させた米社会は、トランプ政権を登場させた。事態を改善するのではなく国内外に「敵」をつくりだしフェイクニュースを扇動して「プア・ホワイト」の支持を得た。トランプの登場は決して偶然ではない。米社会の分断、貧困化と米国の国際的地位の没落がその背景にあり、それへの一時的な対処とごまかし、すなわち根本的な解決の回避なのだ。

 われわれにとって心配なのは、日本政府と支配層が、米政治とその政策のあとを追ってきたところにある。ちなみに安倍政治は、トランプ政治のコピーであるともいえる。荒廃する新自由主義社会での米国政治に似た支配スタイルを採ってきた。貧困化と格差拡大を解決するのではなく、内外に「敵」をつくりだし、中国・韓国に対する排外主義を煽り、分断支配の「新しい支配体制」をつくってきた。その主な内容は、メディア支配と利用である。特徴的なのは、「」でTV・新聞などの主要メディアを支配し政権の影響下において巧妙に利用したことだ。これと並行し「」で、ネトウヨを政権影響下におき、政権擁護の情報の発信、政権を批判する人の人身攻撃を行った。ネットと個人との直接結びつきをつくり、世論を形成する手段を手にした。

 これは安倍政権が獲得したかつてない「政治手法」であり、非常に危険だ。

 米社会の分断と荒廃は、近い将来の日本社会の姿にほかならない。同じ新自由主義なのだから、同じ結果をもたらす。

 コロナ危機が促進させたいま一つは、中国経済の躍進だ。日本経済センターは12月10日に、中国が米のGDPを2028年に抜くという予測を公表した。19年調査では、36年以降の見通しだった。コロナ禍で早まった。20年の経済成長は、先進国は軒並みマイナスだが、中国はプラス成長(+2.1%予測)を維持する。(2035年時点の予測、中国の名目GDP:41.8兆ドル、米+日:41.6兆ドル。一人当たりのGDP予測は、中国:2.8万ドル、米国:9.4万ドル、日本:7万ドル。)

 中国はコロナを抑え込んだ数少ない国だ。一方、欧米社会は、コロナを抑えることができない。新自由主義による「自己責任」の考え方によって、国家は国民を救わない。欧米日社会は、共産主義による独裁ではなく自由社会だから、例えば中国のように、強制的にかつ大規模・一斉にPCR検査を実施することはできないのだそうだ。その結果、中国のように感染者と非感染者を分けることができず、感染を防ぐことができないのだそうだ。政府ができることはなくて、ひたすら国民に、マスクと三密回避、ソーシャルディスタンス、自粛を呼びかけるだけだ。正確には、コロナ封じ込めに成功しているのは、中国だけでなく、シンガポール、台湾、ベトナム、ニュージーランドである。これら諸国の成功例を学び導入することはできるはずなのに、やらない。メディアは成功例、その対策を報じない。日本には科学ジャーナリズムは存在しない。

 おそらくコロナ危機は、まだまだ長引く。ワクチンが効果をもたらすには、即刻ではない、数年かかるだろう。そのあいだに格差は拡大する。様々な社会の矛盾が顕在化する。社会は停滞し、貧困層にしわ寄せがくる。

3)現代の産業革命、環境負荷を避けるESG投資競争

 パリ協定の最後尾にいた日本政府も、遅ればせながら20年10月には「2050年CO2排出量実質ゼロ」(菅首相)を表明した。2011年3月の福島原発事故以後も、原発推進と高効率石炭火力発電推進をエネルギー方針としてきたが、原発事故後10年を経て世界のエネルギーは温暖化防止、サステイナブルなエネルギー源への転換が確実なものとなり、再生可能エネルギーへと舵を切らざるを得なくなった。日本はエネルギー転換で大きく出遅れた。

 再生可能エネルギーへの転換においては、石油や天然ガスなどの地下資源のように地政学的要因によるのではなく、技術力、充電器と組み合わせた効率的な電力システムをいかに構築するかという技術革新が、主導権を握るカギとなる。

 太陽光パネルはすでに中国企業がほとんどを生産している。風力発電も欧州と中国企業が先行している。風力発電量において中国はトップを走り、欧州は全面的に風力発電を導入し、すでに主要電源としている。

 現時点では、これらの発電システムと充電器を組み合わせた電力供給システムの構築が、エネルギー転換の資本主義的な競争になっているが、日本企業と日本社会は、あらゆる点ですでに大きく出遅れている。

4)債務が増大した 

 ほとんどの国で過去40年で、もっとも債務が増大した。危機に際し政府が財政政策を採り、債務を膨らませてきた。08年の金融危機時にも、今回のコロナ・パンデミックでも、政府・民間部門ともに債務が激増した。コロナによる世界的な経済危機にもかかわらず、世界的な金融緩和が株価を押し上げている。富裕層は金融緩和による資金を株式証券に投じている。このような道筋を通じても格差拡大、二極化をもたらしている。

 各国政府はコロナ対策にすでに合計10兆ドルを支出している。これは08年の金融時の支援策の約3倍の規模だ。国際金融協会(IIF)によると世界の債務残高の国内総生産(GDP)比は19年末で321%、わずか半年後の20年6月には362%に急増した。平時に、これほど急激な増加が起きたことはない。

 対GDPの債務比率の大きさで、日本はすでに突出しており、先進国のトップを走っている、もはや抜け出せないレベルだ。

 2008年の金融危機のあと、ギリシャ国債が暴落の危機に瀕した。危機になっても確実に債務は残ること、強引に返済が求められることを、ギリシャ国民の陥った悲惨な現実を通して、われわれに教えてくれた。ギリシャ政府は緊縮財政を採らされ、福祉予算や年金は削られ、国民生活は破壊された。その姿は、日本社会と多くの日本人が、近い将来に被る姿ではないかと想像させる。

5)政治的緊張の激化 

 米国の権威の低下(=欧米の言葉でいえば「民主主義への信頼の低下」)、中国の台頭を前にして、米中間の緊張が煽られている。相応して軍事的緊張も高まりつつある。コロナ危機が一層緊張を高めた。多国間協力がいくつか消えている。多くの国、国民は、米中のどちらかにつくかの選択を迫られているかのようだ。

 米中貿易摩擦から半導体などのハイテク産業での対立、経済制裁を振り廻しての世界経済の分断は、米政権が一方的に行ったことだ。米国は自らの世界支配と覇権維持の為には何でもやるという姿を、強烈にわれわれに教え込んでいる。この先も同じような態度をとるだろうことは、容易に予測できる。

 すでにASEAN諸国は、米中対立に対し「中立的対応」を採っている。より賢明な対応であろう。日本政府は、米政権の意向に従うばかりである。EUから離脱しよりどころを失った英国も、米追従の政策を採るようだ。

 米国の影響下にいることに決して未来はない。これは日本の支配層にとってもそのように言えるだろう。

 主役なき時代を迎えた。
 コロナ危機で、世界秩序が再編され、再構築される速度が増した。

***********

 購買力平価ベースのGDPでは、中国はすでに米国を追い抜いている。

購買力平価ベースGDP(出典CIA FACTBOOK:現在は削除されている) 
 世界の経済の比較に購買力平価ベースを使用(マクドナルド換算)
 出典 WORLD FACTBOOK、単位兆ドル(切り捨て)。
 1位:中国25.3兆ドル、
 2位:米国19.3兆ドル、
 3位:インド9.4兆ドル、
 4位:日本5.4兆ドル、
 5位:ドイツ4.1兆ドル、
 6位:ロシア4.0兆ドル、
 7位:インドネシア3.2兆ドル、
 8位:ブラジル3.2兆ドル、
 9位:英国2.9兆ドル、
 10位:仏2.8兆ドル、
 以下メキシコ、伊、トルコ、韓国2.0兆ドル

********************************


 こういった最近の世界のいくつかの変化は、米国の力の後退であり、米覇権の時代が終わりつつあることを示しているだろう。
 それとともに、この30年、40年続いてきた新自由主義政策によってもたらされた結果でもあるだろう。分断と格差・貧困をもたらした新自由主義政策は、支配層のプランとしては、もはや「有効性」を失ったと言っていい。
 
 時代の転換の一つの意味、内容である。

 この転換に対する人々の徹底した批判と変革のプラン、プランを実現する人々の新しい関係の構築が必要である。私たちの立場から考えれば、人々のつながり、その新しい関係を形成・再編しなければ、時代の変化に対抗できないし、ましてや私たちの望む社会を実現することができない。時代の「転換」に翻弄されるだけではないだろうか。

 ネットによって世界中と新たな関係が形成されたけれども、同時に人々の分断や情報コントロールに置き換えられた面もあって、なかなか単純ではない。現代社会の変化に即した、人々の新しい連携する関係を構想し、つくりださなくてはならない。

 私たちは混迷の時代にいる。現実世界は複雑であって先行きの不安が重くのしかかる。年初にあたり、すっきりした初夢を抱くのは難しいようだ。(2020年12月31日記)









nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。